国土部・労働部の縄張り争いで、建設安全特別法案が足踏み 2021年5月20日 韓国の労災・安全衛生
建設現場が『死の仕事場』から抜け出せない。建設業での産業災害を根本的に予防するには、格別の措置が必要だという声が高い。建設安全特別法の制定案が昨年9月に発議されたのも、このような理由からだ。しかし、国会で議論される前に、政府部署間の葛藤によって法制定に赤信号が点いた。
今日も建設労働者が一人、冷たい死骸になる
昨年産災で死亡した882人の内、建設労働者は半分を越える458人だった。今年も同じような傾向が続いている。正義党のカン・ウンミ議員が雇用労働部から受け取った重大災害分析資料を見ると、1~4月の間に発生した重大災害66件(死亡者64人)の内、52%は建設業で発生した。
建設労働者の訃報は今も続いている。13日午前11時15分頃、天安の公園造成工事の現場で、測量の補助業務を行っていた労働者が、作業中の掘削機の傍を通って掘削機の後部に当たって死亡した。今月11日には、金浦の近隣生活施設の工事現場で、3階の高さに足場を組み立てていた労働者が、仮設の足場の上で作業中に、11メートル下に墜落して亡くなった。
毎週9人が亡くなる建設現場の格別の措置『建設安全特別法』
建設業の災害を防ぐだけでも、産業災害の死亡事故を半分に減らすことができる。昨年、労働者38人の命を奪った利川のハンエクスプレス惨事の後、政府が『建設安全特別法制定』を言い出した背景だ。
建設安全特別法は、産業安全保健法や重大災害処罰法とは別に、もっぱら建設産業の災害の予防に焦点を合わせている。設計から施工・監理に至るまでの全過程で、『安全』を最優先に置いて、適正工期と費用を保障するのが法案の骨組みだ。政府の立法案を基に、国会・国土交通委員会の共に民主党・キム・ギョフン議員が昨年9月に発議した。
キム・ギョフン議員は「建設現場で起きる事故を減らすには、発注者や企業の経営陣など、相対的に権限の大きい主体が相応の責任を負うべきだが、実際の事故による被害は、権限が相対的に小さい下請け労働者が負っている。」「発注者が適正な工事費用と工事期間を提供し、元請けが安全管理の責任を負うように、建設工事の主体別に、権限に相応しい安全管理責任を付与した」と話した。
制定案によれば、発注者は、設計・施工・監理事業者に適正な工事費用と工事期間を保障し、事業者を選定する時は、価格だけでなく安全管理の力量を検討する。元請け(施工者)は、着工前に、工事期間と費用、安全施設と仮設構造物を直接検討し、安全な作業環境であるかを確認する。現場では、二つ以上の同時作業がないように安全管理を総括するのも、元請けの役割だ。監理者には、元請けが安全管理計画を遵守しなかったり安全施設がキチンと設置されずに事故が心配される場合は、直ちに工事を中止できるように工事中止命令権を付与した。また、労働者が業務上災害に遭った場合、経済的な補償が適切になされるように、建設事業者は労働者災害保険に義務的に加入しなければならない。個人の保護具を着用をしないなど、基本安全規則を守らない労働者は作業から排除できるようにする内容も入れられた。
このような安全管理義務を守らず産災死亡事故が発生すれば、設計・施工・監理事業者はもちろん、発注者と元請けの最高経営者も刑事処罰の対象になる。5年以内の再犯は加重処罰される。会社には営業停止処分がされたり、売上額に比例する課徴金が賦課される。
国土部・労働部の安全管理権限を巡って衝突
建設安全特別法は、「国民の力」と建設業界の反対で、公聴会の日程も決められていない。今年初めに重大災害処罰法が制定され、与党も後退の動きを見せている。重大災害処罰法によっても、事業主や経営責任者に1年以上の懲役や10億ウォン以下の罰金刑が可能で、建設安全特別法で発注者と経営陣の責任を再び問うことになれば、『重複処罰』に当たるというのが理由だ。このため、与党は経営陣の処罰条項を削除して、課徴金などの処罰レベルを大幅に下げた新しい法案を再発議する方案を推進中だ。
問題は国土部と労働部が建設現場の安全管理権限を巡って衝突しているということだ。建設安全特別法は建設技術振興法に基づいて作られた。建設安全特別法は、国土部長官と許認可機関、発注庁、国土安全管理院に、建設工事の不良施工と、建設事故を防止するための現場点検の権限を付与している。また、是正命令と営業停止などの行政措置ができるようにしている。
労働部は「不良施工の有無などの建設品質を管理・監督する国土部に、労災予防まですることができるように法的な根拠を作るもの」として、建設安全特別法自体に問題を提起している。特別法は産業安全保健法に優先するので、法体系にも問題があるという立場だ。
2月に国務調整室が国土部と労働部の意見調整を試みる過程で、労働部は法案名を『建設品質管理法』に変えようという意見も出した。労働部の関係者は、「部署間の縄張り争いと誤解してはいけない」としながら、「部署間の協力が必要だが、法で規定する部署の役割は明確であるべきだ」と強調した。同時に「国土部が法案の1条(目的)と2条(定義)、,3条(他の法律との関係)を調整すべきだ」とした。
国土部の関係者は「詳しい話しは難しい」としながら、「建設安全の側面で、施設と労働者は不可分の関係だ」とした。この関係者は「建設安全特別法の趣旨を生かして、補完する部分は補完して、国務調整室で引き続き議論する予定」と説明した。
建設労働者「命が懸かった問題に。部署間の揉め事は話にもならない」
政府部署が法案に異見を出して、被害は建設労働者が被っている。建設連盟のソン・ジュヒョン政策室長は、「産業安全保健法の全面改正に、建設元請けの責任を明確にすることを要求したのに受け容れられず、重大災害処罰法からも発注者と『(建設機械・装備)リース』が除かれ、建設産災を防ぐには力不足」とし、「最も重要なのは『安全を保障する工事期間の確保』だが、建設安全特別法が唯一この内容を扱っている」と指摘した。
連盟は「建設現場の重大災害は、工事期間と工程を管理する元請けの無関心と、発注者の管理監督の不在が作る構造的な問題」で、「部署間の争いによって建設安全特別法の制定が失敗に終わってはならない」と強調した。
丁度、国土部と労働部の長官が交替した。労働界は、建設労働者が、一日でも怪我をせず、死なずに働けるようにしようとするなら、両長官が額を突き合わせるべきだと提案した。
2021年5月20日 毎日労働ニュース キム・ミヨン記者
http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=202904