「加湿器惨事の責任を問えないのは民主党の責任」チェ・エヨン(前・社会的惨事特別調査委員会副委員長)インタビュー~環境保健市民センター関連メディア報道 2020年1月4日掲載
1日に世越(セウォル)号の遺族たちの要求で、社会的惨事特別法が改正された。特別法が改正されると、チェ・エヨン社会的惨事特別調査委員会・副委員長が辞任した。チェ副委員長は、社会的惨事特別調査委員会の一つの軸である加湿器惨事を担当していた。
今回改正された社会的惨事特別法の何が問題なのか、意見を聴こうと、17日にチェ・エヨン前社会的惨事特別調査委員会副委員長に電話で連絡した。以下は、チェ前副委員長と行った一問一答を整理したものだ。
民主党、環境部を口実に世越(セウォル)号問題だけに集中する方向に整理した
-社会的惨事特別委員会の副委員長を辞任されて1週間が過ぎましたが、どのように過ごされましたか?
「辞表は提出しましたが、受理は未だされていない状態です。残った休暇を出して、形式的には休暇中の状態です。復帰する環境保健市民センターで私が使うモニターなども少し移動しておきました。環境保健市民センターに復帰して、これからやるべき加湿器殺菌剤問題に関する活動計画や、別の石綿や、元々していたそんな環境保健活動について、構想しているところです。」
-10日に通過した社惨委法の改正に、加湿器殺菌剤惨事が含まれていないことに反発して辞任されたと聞いていますが、改正された内容は何ですか?
「社会的惨事特別調査委員会法が国会で改正されました。改正の過程で、特に世越号惨事の遺族の方たちが強く要求した事項がいくつかあります。その中に一つが、調査期間を2年に延長して欲しいということと、もう一つは、調査員の数が足りないので、30人をさらに増員してくれということです。そして捜査権をくれということと、また調査対象に対する控訴時効が完了しつつあるので、控訴時効を中断して、後で司法処理できるようにして欲しい等々、いくつかの核心的な条項があって、大体受け容れられるか、でなければ少し変形されたりしました。しかし調査官の数を現在の120人に凍結する代わりに、今の加湿器殺菌剤真相究明のパートに28人の調査官がいるので、その数を世越号真相究明調査側にさらに回す方向に話ができたのでしょう。」
-民主党はなぜそのようにしたのですか?
「野党・国民の力の意見を部分的に受け容れなければならず、被害者の要求と、担当部署である環境部の意見も聴いたということです。そして、被害者の要求というのは、世越号の遺族たちが強く要求した部分です。加湿器殺菌剤の場合は一つにはまとまりませんでしたが、初めは、一部は特調委の延長について批判的でしたが、後には、多くの被害者グループは、特調委の延長が必要だという意見を出しました。
私たちの特調委は、元々、私たち自らが、さらに延長して欲しいと言える立場でありませんでした。私たちが2年間で真相究明をすべてすると約束したところでもあるので、約束を守るために最善を尽くすしかない、というのが私たちの立場でした。環境部の場合、加湿器殺菌剤の部分はさらに延長する必要はないという立場です。そして実際には、環境部は私たち特調委の調査対象機関です。それもとても核心的な対象機関です。だから、環境部は調査されたくないのでしょう。そこで真相究明はできたとか、特調委をこれ以上延ばす必要がないとか、このような形で責任を回避、または消極的な姿勢だったのですが、被調査対象機関の話を聞いて調査機関の機能を除くという、理解できないことが起こったのです。彼らはすでに環境部の立場の意見の肩を持つ「国民の力」の立場をまとめるということを口実に、加湿器殺菌剤の真相究明パートを除いてしまったのでしょう。」
-被害者が特調委の延長に反対したというのに、なぜそうしたのでしょう?
「被害者全体が批判的であるのではありません。被害者は特調委に大きな期待をかけたし、真相究明はもちろん、被害対策問題においても特調委が大きな役割をするものと期待しました。しかし、この2年間やって、被害救済法が改正されて、部分的に被害の認定範囲が拡大するという若干の進展がありました。しかし、依然として申告された被害者7千人の半分程度しか被害者と認められず、認められた被害者の絶対多数は、未だ政府や企業から賠・補償を受けられていません。そこで認められない被害者が『特調委は何をしたのか?』『互いに約束しなかったか?』『必要ない。』と言って、強く特調委無用論というか、批判を提起したのは事実です。」
-それでは、民主党がわざとしなかったと思われますか?
「はい。実際2年前に社会的惨事特別調査委員会が発足した時、世越号問題と加湿器殺菌剤の問題はそれぞれ違う社会的な問題だが、被害規模が大きく、事件発生以後に対処する過程で、政府の誤りがあまり大きく、それがより大きな惨事に悪化したという側面が互いに似ていて、『社会的惨事』という名で縛って特別調査委員会を作ったのです。そこで、組織構造や運用なども世越号と加湿器殺菌剤問題を均等に運営し、そこから出てくる教訓も、私たちの社会がより安全な社会に進むために、これ以上私たちの生活の中に不安感を作ってはならず、安全な社会に行かなければならないという共同のミッションがあったのですが、今、民主党が加湿器殺菌剤の問題は、環境部を口実にして、『終わった、或いは、これ以上必要ない』といった形の判断で、世越号問題だけに集中して特別調査をするという方向に整理したのです。特調委内では、真相究明は外れたが、被害救済や安全社会の部分は残っていると言います。しかし、真相究明が正しくなされない状態で被害救済や安全社会を作るということは、とても虚構的で欺瞞的だと思います。」
-それでは、しない理由は何だと思いますか?
「実際、その部分が理解できない部分です。ただ、考えてみれば、世越号惨事の部分は民主党なので、文在寅政府スタートの背景の直接的な契機になった惨事のせいで、大きな負担が依然としてあり、世越号の遺族たちがとても体系的に問題提起を粘り強くするので、政治的な負担が大きくあるのですが、加湿器殺菌剤の場合は、そのような政治的な負担をほとんど感じていないということですね。その上、私たちが問題提起する内容を見れば、現在の文在寅政府の行政府を構成する環境部から産業資源部、公正委、国防部、検察、実際に重要な政府機関20個余りがすべて網羅されていて、現在の官僚たちが、かつて加湿器問題に直・間接的に責任があります。企業らも、我が国で国内屈指の企業らが加湿器殺菌剤の問題に関与していて、彼らに対する責任がずっと問われています。
また、被害の規模も、私たちが推測したところ、60万から70万程度の被害者がいて、それに死亡者は最大2万人に達するのに、申告された数字は7千人で、そのうちの死亡者は1600人程度だから、これから多くの被害者を捜し出さなければならないという負担感、こういったものが見えないところでずっと作用をして、この際、加湿器殺菌に問題を省いて行こうという、政治的な判断をしたのではないかと思います。」
社会的惨事特調委の活動延長法律改正で加湿器殺菌剤の真相究明削除に対し『良い決定』13.7%vs『間違った決定』65.5%
『加湿器殺菌剤真相究明を含む法改正の再推進』:『同意』73.5%vs『非同意』10.2%
-社惨委が世越号を中心に話されることについて不便な思いもあったようです。今回の改正だけでなく、初めから社惨委は世越号を中心として注目されなかったのですか?
「実際、メディアや社会では、私たち社会的惨事特調委を世越号二期特調委という形で呼びますが、そのことは世越号問題をいうときに、なにしろ朴槿恵政府の時の世越号一期特調委があったのに、まともにしなかったじゃないですか。だから、そうした側面があることはあります。しかし、特調委の運営や予算、人材などの部分は、概ね世越号や加湿器殺菌剤の問題を同等な位置に置いて運営をしてきたと思います。そうした点で、このように状況が急変したのは、残念な思いが大きいです。」
-社惨委がスタートして2年を越えたじゃないですか。加湿器殺菌剤惨事に対してどの程度の成果がありましたか?
「初めに約束した2年間の真相究明と被害対策、再発防止のための安全社会安全制度作りのミッションを、私たちは結局は達成できませんでした。しかし、被害対策については、色々と環境部がしてきた被害対策の問題点をたくさん指摘しました。特に、被害者が受ける様々な身体的な健康被害と精神的な被害の部分を、実際の家族の事例調査によって明らかにし、被害救済法を改正する過程に積極的に介入して、被害者の思いが反映されるようにした部分が明らかにあります。また、真相究明においては、元々加湿器殺菌剤の製品自体が50種で1000万個程度売れたとなっています。そしてその中に、この間政府が確認したものはおよそ10種類にしかなりません。もちろん私たちも残りの製品を網羅できなかったのですが、少なくとも半分以上の製品については成分の調査もし、販売規模や、誰が作って売ったのかについての、極めて基本的な調査は、ある程度しました。そしてまた、聴聞会で企業の責任と政府の責任を明らかにし、また生放送を通して、国民がそのような内容を少しは知るようになった成果があったと思います。
また、被害規模を私たちが確認したことも、とても重要な内容だと考えます。今まで環境部や政府は、加湿器殺菌剤による被害者が何人なのか、調査や捜査をまともにしたことがありません。環境部の委託調査によって間接的に確認した程度で、それも環境部が公式に認めていないのです。それを、私たちがおよそ全国の5千世帯以上の国民を無作為に調査して、彼ら中に加湿器殺菌剤を使ったことがある人、また健康被害をこうむった人たち、こんな形の調査を1万 5千人以上の世帯構成員を対象に行って、およそ627~894万人が加湿器殺菌剤を使っていて、その中の67~95万人程が健康被害を受け、そのうち1万4000~2万人が死亡したと、そのように推定しました。この部分は、この間漠然と知らされた加湿器殺菌剤惨事の被害規模を、政府機関である社会的惨事特調委が具体的な方法で推定したという点で、意味あることだと思います。ところが、政府の責任について、公正委や環境部などがある程度は調査したのに、明確に責任を問う、司法的な刑事責任を問う流れまでには至っていない部分は、残念な部分でしょう、」
-時間が足りなかったのか、でなければ、他の理由があってできなかったんですか?
「実際、世越号の遺族たちが、世越号惨事の真相究明が正しくされなかったと言って要求をした部分が、私たちにもすべて当てはまります。調査期間も、事実2年は実際に進行をしてみると、とても短いです。また、コロナ問題も相当な影響を与えたのも事実です。また、私たちが調査をしますが、調査の対象機関や個人、会社などが、自分たちに問題点がある資料や証拠を素直に出さないことが多いですね。調査を最初から受けないケースもも多かった。そのような部分は、捜査でない調査が持つ、とても大きな限界でしょう。
実際、世越号は2014年に発生しました。しかし加湿器殺菌剤の問題は2011年に知らされましたが、実際の製品が販売され始めたのは1994年で、今から短くて10年、長くて26年にもなる昔の問題です。そうなると、調査の過程も非常に難しく、30年ほど前の話の真実を掘り起こすことは容易なことではないでしょう。その上、永くなる過程で、責任者に対する司法的な責任を問うということは、控訴時効はほとんど大部分が過ぎてしまった問題なので、別の見方をすれば、世越号よりはるかに難しい事件です。すると、少なくとも世越号くらいの支援をしてくれて、真相究明をするべきなのに、むしろ加湿器殺菌剤問題はこれ以上する必要がないというやり方で、手足をみな切ってしまう状態なので、理解できない状況です。」
-ちゃんと理解がいかないのは、環境部は加害者なのに、なぜ民主党や国民の力は環境部の意見を大事にするのでしょう?
「重要な指摘をされました。そうすれば、企業の調査は足りなくても、検察が2016年度に一次、2019年度に二次の調査をして、重要な企業はすべて捜査線上に上げて、司法処理をしていっています。ところが、政府の責任については、ほとんどそのようなことをせず、特に、2016年度の検察の捜査でも、私たちがその当時、市民団体や被害者が政府の責任についても告発しましたが、非公開で捜査して終結させてしまったのです。そこで私たち特調委が、環境部産業部、また当時技術標準院の公正委など、20余りの政府機関に対して詳細に調査をして、また彼らの責任を一つ一つ確認していく過程で、別の見方をすれば、調査の刃先が政府機関へ向かって問題点を探し始め、被害対策のパートでも、政府が企業に対して被害救済法を適用する上での問題点を把握し、監査院に監査請求もしてと、このような形で圧迫していく状況ですね。そうなると、政府関係者は非常に負担になる状況にならざるを得ません。」
世越号と共に社会的な惨事と見た、2017年の立法趣旨に戻さなければ
-控訴時効の問題もあるようですが、加湿器殺菌剤惨事に対する控訴時効は大丈夫なのですか?
「普通、控訴時効は5年から7年ほどです。そのために今の2020年現在で見た時、2015年または2013年か、それ以前に発生した責任を問うことはできません。公訴時効が過ぎました。しかし、すべてが過ぎたのではありません。未だ、加湿器殺菌剤被害者の中で亡くなる方たちもいたりするので、そして2013年は朴槿恵政府です。朴槿恵政府の時に加湿器殺菌剤問題に関して、隠したり縮小したり歪曲する行政行為があったのでは、と疑っています。司法的な責任を問える余地がまだ残っています。もし調査期間が延びて、そのような部分を調査して、控訴時効を世越号のように停止させて、捜査して責任を問えば、ある程度は真相究明と法的責任を問うことができる契機が作られると思うのに、加湿器殺菌剤の真相究明ができないようにしたので、加湿器惨事に関する司法的な責任を問える機会は消えることになるので、その部分に対する責任は、民主党と文在寅政府に明確にあると考えます。」
-それでは、今でも法を変えるべきだと考えますか?
「今からでも、世越号と加湿器殺菌剤問題を社会的惨事という概念で見ていた2017年度当時の立法趣旨を、正常に戻すべきだと考えます。しかし可能性は殆どなさそうです。現在、民主党と国民の力が、いずれも、既に自分たちの意思と趣旨をすべて明らかにし、法は本会議を通過し、何日か前に文在寅政府の大統領府で、通過した社惨委改正法を既に最終議決したので、それを簡単に変えられるとは思いません。」
-現在の加湿器殺菌剤惨事の被害者はどんな状態でしょうか?
「加湿器殺菌剤の被害者は極めて難しい状況でしょう。事実上、申告した被害者と申告していない被害者に区分できるんですが。申告していない被害者が、私は、はるかにたいへんだと思います。なぜなら、申告された死亡者は1600人程ですね。申告されていない死亡者は1万人を越えます。 1万人を越える死亡者は、最初から自分がなぜ死んだのかも判らない状態だから、遺族たちも自分の家族がなぜ死んだのかも判らない、本当に口惜しい状態でしょう。死亡者だけでもそうで、今でもとても深刻な病気を病んでいたり、でなければ幼い時、または加湿器殺菌剤を以前に使った時に重症になって入院していた、そのような苦痛の記憶、そのような苦痛の責任が加湿器殺菌剤にあるということを知らない状態です。誰が教えなければなりませんか? 国が教えるべきではありませんか? しかし国がそれを回避して放棄している状態です。」
-これから加湿器殺菌剤惨事問題をどのように解決していくべきだと思いますか?
「実際、合法的な空間である特別調査委員会での真相究明は、とても制限的な、いくつかのことしかできない状況なので、非常に難しい状況になりました。それでも永く見て、市民社会が前に出ます。被害者の中にも、永く見て活動する方たちがおられるので、社会的惨事特調委が作られる前から活動してきたやり方の通りに、多くの市民の支持と激励の中で、永く見て、この問題を解決していくための、そのような市民・社会活動と被害者運動が今後一層重要になったと見ることができます。そして、1年半延長された特調委も依然として役割を果たすべき部分がありますね。特に、被害対策や再発防止対策、そしてとても部分的ですが、真相究明に関する一部の活動、このような部分は依然として重要なので、そんなことも体系的に進行しなければならないと思います。」
-では真相究明はできると思われますか?
「特調委が延長された1年6ヶ月間で、真相究明は事実上難しいと見なければなりません。今、加湿器殺菌剤問題に『それはすべて解決されたのではないのか』と考える方たちが多く、政府が口を閉じているために、メディアも部分的な関心しかない状態でしょう。また、国民の5人に1人が製品を使ったのです。だから、これは私たちの問題です。知らずにそうして使った人たちが、私たちの周辺を探して見ると、途方もなく多いのです。そして、そのような問題について関心を持たなければ、日常生活の中で、またどんなおかしな生活化学製品やそんなものが、また被害者の生命と健康を脅かすかも知れないということです。そうした点で、国民の関心と消費者の参加が、これからの加湿器殺菌剤の真相究明にはとても核心的な部分になるだろうと思います。」
-最後に読者たちに一言お願いします。
「ずっと報道していただき、関心を持つ読者が多いです。その方たちの期待に沿えない状況については申し訳ないと思います。しかし、元々私は環境運動家で、環境運動のやり方の者が、市民運動のやり方でこの問題を解決しようと努力してきました。何とかしてみて、世越号と一緒に合わせられて、公式的な特別調査委員会が作られて、被害者の推薦で2年間、責任を持って活動しましたが、私に与えられたミッションを達成することができないという格好になって、とてもすまなく、申し訳ないと思います。しかし申し上げたように、私は再び私の場所である環境保健市民センターの活動家に戻って、以前のように、しかしより永い観点と見解を持って、この問題を引き続き扱います。そして、まだ見付けていない被害者もこれから見付け出し、またその人たちと一緒に、この問題を解決するための活動を続けます。引き続き見守って下さり、関心を持ってください。」
イ・ヨングァン記者
http://eco-health.org/bbs/board.php?bo_table=sub02_03&wr_id=1036
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