ゴム工場のアスベスト(石綿)混入タルクでアスベスト疾患、労災認定:知らされていない危険性/兵庫
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神戸・長田のゴム製造会社・三ツ星ベルト
関西労働者安全センターから、神戸・長田のゴム製造会社で働き胸膜中皮腫で亡くなられたOさんの遺族を紹介されたのは、クボタショック直後の2005年7月のことだった。
Oさんは、三ツ星ベルトで約30年間働き(下請会社の従業員として三ツ星で働いていた期間を含む)、同年3月に胸膜中皮腫で亡くなられた。医師から「この病気は労災になる」との説明をうけた遺族が、関西センターに相談されたのだった。関西センターから連絡を受けた際に、片岡さんから「ゴム製造の過程においてタルクが使用されている」、「タルクにはアスベストが含まれている」とのアドバイスをもらった。
アスベスト混入タルク・ベビーパウダー
タルクは、「滑石」と呼ばれる白色の鉱物を砕いて粉状にしたもので、建材や塗料をはじめ、様々な工業製品の充填材・増量剤、混和剤、結合材として使用されている。純粋なタルクはまれで、様々な鉱物が不純物として含まれており、アスベストを含有する場合がある。1986年に一部のべビーパウダーにアスベストが混入していることが明らかになり、大きく報じられたことがあるが、これはベビーパウダーに使用されていたタルクに、アスベストが混入していたためだった。ゴム工場では、製品同士がくっつかないように振りかける「打ち粉」として、またゴムに練り込んだりする(白色のゴムを製造する際)など様々な用途でタルクが使用されてきた。
打ち粉でタルク、通路真っ白
面談を行い、早速Oさんの古くからの同僚の方にお会いすることができ、「ゴム製造のあらゆる過程において、ゴム同士がくっつかないように打ち粉としてタルクと使用していた」、「通路はタルクの粉で真っ白になっていた」、「安全対策は何ら行われていなかった」、「タルクにアスベストが含まれていることは知らなかった」と、お話をうかがうことができた。そこで申請の準備を進め、会社に証明をもらいに行った。
事業主証明拒否で申請妨害
会社の安全担当者は、「ゴム会社で使用するタルクは品質の悪い物でした」ということは認めるものの、「古い資料が残っていないので調査をさせてほしい」ということだった。しかし、結局会社は事業主証明を拒否し、その根拠は「1987年にタルクの納入業社が提出した『アスベストが混入していない」との証明書がある」とのことだった。Oさんが三ッ星ベルトを退職したのは1983年であり、1987年時点の証明書では過去のタルクの安全性までを証明できないことは明らかであるにも関わらず、申請の妨害をおこなってきたのである。
タルク納入業者がタルク労災第1例と共通
2005年11月に神戸西労基署に申請を行ったが、会社の非協力的な姿勢は変わらず、調査は難航した。0さんの死亡診断書には「悪性胸膜中皮腫」と記載されていたが、局医の調査では「びまん性胸膜肥厚」とのことだった。しかし、肥厚の厚さや広さが認定基準を満たしていたため、担当官の調査も積極的になってきた。タルクの納入業社を調査し、納入元が中国・北朝鮮・韓国からであることが判明した。以前、オーツタイヤにおいてタルクの使用により肺がんを発症し労災認定された事例があるが、オーツタイヤで使用されていた
タルクと三ッ星ベルトのタルクが同じであることが決め手となり、2006年12月末に認定の通知が届いた。
タルクと石綿関連疾病の関連についてはあまり知られていないため、センターとして1月18日にマスコミ発表を行った。Oさんの奥さんは三ッ星ベルトで働いたこともあり、「タルクで真っ白になり、どろどろになって働くのがゴム業界だと思っていたし、タルクが悪いものとは思ってもいなかった。会社に恨みはないが、苦しんで亡くなったお父さんがかわいそうで…」と、闘病時を振り返り訴えられた。
ゴム製造職場アスベスト被害に注目を
また当日は、ゴム加工機械の製造・修理に携わり肺がんとなり労災認定されたYさんも同席され、「ゴム会社に頻繁に出入りしていたが、工場内を一回りするだけで、顔や髪が白くなるほどだった」と話し、「ゴム業界でも石綿被害があることを知って欲しい」と訴えた。
2006年7月には、住友ゴムで45年間働き中皮腫で亡くなられたMさんも、アスベスト新法により認定されたが、会社はタルクの危険性については認めなかった。Mさんの他にも、この間センターで相談を受け、元住友ゴムの労働者で石綿手帳を交付された方が2名おられるにも関わらず、会社の対応は変わっていない。国も、企業も、専門家も、タルクに危険性や詳細なデーターを公表すべであり、企業は退職者への健康診断を早急に実施すべきである。
安全センター情報2007年4月号