「給食労働者が倒れると学校給食も崩れる」市民社会、100万請願運動に/韓国の労災・安全衛生2025年9月16日

環境にやさしい無償給食の実現を導いた汎国民運動が、十数年ぶりに再び動き出す。学校給食労働者が肺がんと筋骨格系疾患などの各種労働災害で倒れ、学校給食も危機に面しているためだ。市民社会団体は、安全な学校給食室を作らなければ、無償給食も持続不可能だと強調した。
全国民衆行動など各界の市民社会団体で構成された『安全な労働、幸せな給食100万請願運動本部準備委員会』(準備委)」は16日、国会疎通館で記者会見を行い、安全な学校給食室のための対策作りと制度改善を要求した。
準備委は「現在の学校給食室の状況は、私たちの子供たちの健康に責任を負う幸せな所ではなく、絶望の給食室になっている。」「調理労働者が肺がんで亡くなり、人員も不足して給食をきちんと作ることもできず、過労で苦しめられ、低賃金に涙を流し、同僚たちが次々と去っていく、恐ろしい仕事場に変わっていった」と指摘した。
準備委は「これ以上、社会は学校給食室の高危険、高強度、低賃金の事態を一つの学校の問題として留まらせてはならない。」「国家は、学校給食室を子供たちと労働者が共に健康で、幸せな所にすべき責任がある。これを実現するためには、先ず学校給食法の改正が切実だ。同時に、根本的でありながらも総合的な対策作りのために、国会と教育庁、市民社会と保護者すべてが乗り出さなければならない」と訴えた。
環境にやさしい無償給食は、全国民的な支持の中で、2011年に全面的に施行された。それから10年を越える時間が流れる間、学校給食室は『死の仕事場』というレッテルが貼られた。換気設備もまともに備わっていない状況で、『調理ヒューム』という発がん物質をそのまま吸い込んで仕事をすることになり、学校給食労働者の肺がん労災が続いたためだ。
2021年に、学校給食室で仕事をしていて肺がんで亡くなった学校給食労働者の労災が初めて認められた後、今までに14人の学校給食労働者が肺がん労災で亡くなった。今この瞬間にも、肺がんで苦痛を受けている学校給食労働者の内、労災が認められた人たちだけで178人に達する状況だ。しかし、最も基本的な対策に挙げられる換気設備の改善さえ、教育部と教育庁、雇用労働部の「責任先送り」の中で遅れている。
これに加えて、最低賃金にも及ばない基本給と休み中の無賃金などの低賃金問題、他の公共機関に比べて途方もなく多い一人当りの食数人員による高強度労働の問題が重なり、学校給食室を離れていく労働者が増えている。
民主労総サービス連盟全国学校非正規職労働組合(学非労組)のミン・テホ委員長は、大統領が直接乗り出して労災根絶を強調するこの時期にも、学校給食労働者の労災は無視されるという現実に慨嘆した。ミン・テホ委員長は「昨日、労働部は労災対策を発表した。しかし学校給食労働者14人の生命を奪い、肺がんの労災申請が急増して180人を越えているが、学校給食室の肺がん労災対策はない。」「民間企業に責任を問うように、反復的で慢性的な労災のデパートである教育庁に、課徴金5%を適用することもなく、学校登録を抹殺することもない。教育部長官と教育監が責任を負うこともない」と指摘した。
ミン・テホ委員長は「学校給食室では、昨年一年間に3414人が退社した。2022年から15.7%増加した数で、毎年、離脱が続いている。」「数年前から部分委託が拡大し、今年、京畿道華城の南陽高校をはじめ、64校が委託に移った。給食労働が崩れると、無償給食が、子供たちの食卓が崩れること」と糾弾した。
ミン・テホ委員長は「100万請願運動に、保護者、学生、教職員と人生の現場で苦労するすべての国民の参加と連帯を訴える。」「国会が先に学校給食法を全面改正し、給食労働の生命と安全を保障し、最低賃金制度のような最低調理人材基準を大統領令で準備することに力を貸して欲しい」とお願いしだ。
準備委の要求は、▲学校給食法の改正で給食労働者安全と人材基準の法制化、▲給食室外注化の中止、▲労災根絶のための汎政府総合対策準備、▲学校給食委の設置と保護者、労働者代表の参加、▲休み中の無賃金問題解決などだ。
学校給食法改正案は、第22代国会が開院した直後、進歩党のチョン・ヘギョン議員が代表発議した。現行法は「学校給食の質の向上と生徒たちの食生活改善」だけを目標にしているが、ここに学校給食室の労働環境に関する問題を追加し、学校給食労働者の安全を守るための根拠条項を作ることが骨子だ。
具体的に、国家と地方自治体に、学校給食労働者の健康保障のための責任を付与し、教育監傘下の学校給食委員会で、一人当りの食数人員と学校給食労働者の勤務環境、処遇改善に対する事案を議論するようにした。しかし、該当の改正案は小委員会に回付されて1年が過ぎても議論すら始まっていない。チョン・ヘギョン議員の他にも国会教育委員会の与党幹事である「共に民主党」のコ・ミンジョン議員が7月に同様の趣旨の改正案を発議した経緯がある。
2025年9月16日 民衆の声 ナム・ソヨン記者