印刷労働者の尿から「1級発がん物質」/韓国の労災・安全衛生2025年9月17日

印刷労働者の尿から1級発がん物質のベンゼン反応が検出された。基準値を超過した事例まで確認され、監督と実態調査の必要性が提起されている。
梨花女子大学ソウル病院のチョン・ウチョル国家検診センター長は17日の『印刷業発がん物質ばく露危険改善』討論会で「(印刷労働者の)特殊健康検診結果、発がん性化学物質であるベンゼンへのばく露の可能性を、生物学的な指標で確認した」と明らかにした。ソウル労働権益センターと梨大ソウル病院は三年間、ソウル地域のジュエリー・印刷労働者を対象に、特殊健康診断を実施してきた。今年一人の印刷労働者からトルエン反応が検出され、事業場七ヶ所の労働者15人を対象にベンゼン調査を別途に行った。トルエンはベンゼンと化学式が似ていると知られている。
ベンゼンは人の身体に入り、ミューコン酸という物質として排出される。調査に参加した15人の印刷労働者の内、ミューコン酸が検出された労働者は10人だった。ミューコン酸の基準値(500マイクログラム)に近い数値も多かった。59歳の男性(222.72マイクログラム)、75歳の男性(190.11マイクログラム)、63歳の男性(151マイクログラム)などが100マイクログラムを超えた。基準値を超過した人(524.42マイクログラム)もいた。チョン・ウチョルセンター長は「法的な規制や物質安全保健資料(MSDS)によれば、ミューコン酸はめったに検出されてはならない。」「この結果に影響を与える要因は、作業場の洗浄剤以外に、別のの環境的な要因を考慮し難いと思われる」と診断した。
印刷労働者の体からミューコン酸を確認したソウル労働権益センターと梨大ソウル病院は、印刷事業場一ヶ所を追加し、八ヶ所のバルク試料(洗浄剤)製品を分析した結果、二ヶ所からベンゼンが検出された。トルエンは八カ所すべてで確認された。
零細事業場であるため、作業環境の改善は容易ではない。ソウル勤労者健康センターのチェ・ヨンチョル副センター長は討論会で、「(発がん物質への)ばく露を防ぐためには、換気施設をきちんと整備することだが、大部分の零細企業が賃借人として入居していて、騒音による苦情が多く、ドアを開けたままで作業することさえ難しいケースも多々ある。」「小規模事業場に適切な換気装置を設置する専門性のある供給者も不足し、事業主の立場からでも、どこからどのように手を付ければ良いか解らない困った状況」と指摘した。
同日の討論会は、「共に民主党」のイ・ヨンウ議員と「国民の力」のキム・ウィサン議員、「進歩党」のチョン・ヘギョン議員が共同主催した。イ・ヨンウ議員は「印刷業での発ガン物質ばく露の深刻性を広く知らせ、政府と関係機関の積極的な対応方案を模索する」と話した。キム・ウィサン議員は「特殊健康診断の実効性を強化し、零細事業場に対する実質的な支援方案を導入する」と約束した。チョン・ヘギョン議員も「業種単位の健康管理体系を導入し、生物学的なばく露指標の調査を義務化しなければならない」と主張した。
2025年9月17日 毎日労働ニュース カン・ハンニム記者
https://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=230273