半導体労働者「副腎癌」、初の労災認定/韓国の労災・安全衛生2024年10月29日
半導体労働者に発生した希少癌の副腎癌を業務上疾病と認定する初めての判決が出た。
ソウル行政裁判所が、Aさんが勤労福祉公団に提起した療養不承認処分取り消し訴訟で、原告勝訴判決を行ったことが確認された。
Aさんは2000年11月から、ハイニックス清州工場(現キーファウンドリー)でエンジニアとして働き始め、半導体ウェハー製造の細部工程の一つである蒸着(薄膜)工程の装備の維持・補修を担当した。Aさんは該当工程の装備・設備に有害物質の液体ガスを投入したり、直接匂いを嗅いでガス漏れの有無を確認する作業をした。また、設備洗浄のために、部品をフッ酸(HF)水槽に入れてから抜いて、各種の有機溶剤で設備を磨く作業も行った。Aさんの勤務空間のクリーンルームは、半導体の製造過程中に発生した有害物質が直ぐにクリーンルームの外部に排出されない構造になっている。
Aさんは37歳だった2020年3月、副腎癌の診断を受けた後、翌年、勤労福祉公団に労災を申請した。勤労福祉公団は、Aさんが業務中にばく露した各種物質と副腎癌の間の関連性を認められる客観的な根拠が確認されないとして、申請を受け容れなかった。Aさんは勤労福祉公団に対して行政訴訟を提起した。
裁判所は勤労福祉公団の労災不承認処分は不当だと判断した。裁判所は「副腎癌がAさんが扱った有害物質によって始まる可能性があるということが、医学的・科学的には未だ明らかになっていないが、Aさんが扱った有害物質の種類が非常に多く、有害物質にばく露する環境で長期間勤務した後、一般的な場合より遙かに早い時期に副腎癌に罹ることになった」とした。続いて「他に副腎癌の原因になるような遺伝子の変異や家族歴もない上に、副腎癌と有害物質が無関係だということもやはり、医学的・科学的に明確に証明されたものでなければ、副腎癌と有害物質の間の相当因果関係を簡単に否定することは難しい」とした。
Aさんは「半導体労働者の健康と人権守り」(パノリム)を通して、「勤労福祉公団がきちんと判定していれば、難しい訴訟にまで行くことはなかっただろう。」「勤労福祉公団は障壁を低くすべきだ。現場の他の同僚たちにも労災と疑われる病気があるが、高い認定の敷居のせいで、申請するのは難しいと言っている」と話した。
Aさんを代理したイム・ジャウン弁護士は「先端産業の発展の過程で、労働者は究明されていない危険にばく露し続け、様々な健康問題に遭う。今回の判決は、そのような労働者の犠牲を補償し、産業発展を奨励することが、労災保険制度の社会的な機能だと見た」と話した。
2024年10月29日 京郷新聞 キム・ジファン 記者
https://www.khan.co.kr/national/labor/article/202410291454001