重災法以後『現代自動車グループ』で23人死亡、『最悪の殺人グループ』に/韓国の労災・安全衛生2024年09月27日

資料写真/チョン・ギフン記者

「重大災害処罰等に関する法律」(重大災害処罰法)の施行以後、最も多くの死亡事故を起こした殺人企業集団は「現代自動車グループ」であることが明らかになった。2022年1月27日の法施行以降、今年3月までに、現代自動車グループだけで重大災害が23件(23人死亡)発生した。2位の企業(ハナ、中興建設)の11件を二倍以上上回った。経営責任者の現代自動車グループのチョン・ウィソン会長に向けられる批判は、避けられそうにない。23件の重大災害にも拘わらず、現代自動車グループが起訴された事件は一件もなく、捜査機関の『大企業への忖度』という指摘も出ている。大手企業全体(46社)に拡大しても、起訴されたグループ系列会社と子会社は8件に過ぎない。

現代自動車グループ、死亡者10人の内、7人が下請け
防げる「在来型の事故」がほとんど

<毎日労働ニュース>が23日、国会・環境労働委員会のパク・ヘチョル「共に民主党」議員室から入手した『重大災害死亡発生元・下請け事業場(2022年1月27日~2024年3月30日)』を全数調査した結果だ。同期間に発生した重大災害1288件の内、約12%(153件)が大企業で発生した。<毎日労働ニュース>は公正取引委員会が5月に発表した『2024年度公示対象企業集団(88ヶ所)』を基準に、グループ別に系列会社・子会社を集計し、重大災害大企業を分析した。

その結果、現代自動車グループが23件(死亡23人)で、重大災害を最も多く起こした企業という汚名を着せられた。現代自動車グループでは、現代建設(8件)、現代製鉄(4件)、現代エンジニアリング・現代B&Gスチール(各3件)、現代自動車(2件)、現代スチール産業・現代モービス・起亜(各1件)など、系列会社の全般で続く死亡事故を防げなかった。

現代車グループの死亡者の内、70%(16人)は下請け労働者だ。死亡者の大部分が墜落・挟まれたなど『在来型の事故』に遭った。現代自動車グループ系列会社の中で最多の死亡者を出した現代建設では、『転落』事故が6件と最も多い。特に、昨年9~10月と今年1~2月の一ヶ月間隔で、死亡事故が4件起きた。

現代自動車グループの系列会社全般で、似たようなタイプの事故が繰り返された。安全保健責任者の大半が、重大災害処罰法施行令上の安全保健管理体系に違反していた情況が濃厚だ。

ソウル市瑞草区の現代自動車グループの全景。/<資料写真・ホン・ジュンピョ 記者>

ハナオーシャンでは大事故、DLグループは死亡が11人

重大災害多発大企業集団の共同2位は「ハナグループ」と「中興グループ」が占めた。それぞれ死亡事故11件(死亡11人)が発生した。ハナグループでは、ハナオーシャン(旧:大宇造船海洋)が6件で最も多く、ハナオーシャンとハナ建設がそれぞれ4件と1件を記録した。中興グループでは、大宇建設(7件)・中興土建(4件)で死亡事故が起きた。

グループの総帥が国政監査場に二回も呼ばれた『DLグループ』もやはり、死亡事故が10件で重大災害最多発生大企業の3位に名前を上げた。死亡者は11人で、ハナと中興グループと同じだった。DLE&Cが、7件の重大災害で8人の労働者が命を失った事業場と集計された。

大企業40社の集団で重大災害が『再発』

殺人企業グループの4位は9件を記録したロッテグループ(ロッテ建設で7件、ホテルロッテ・ロッテリゾートで各1件)だ。 SKグループは8件(死亡9人)で、その後に続いた。

上位6グループを除いても、40の大企業集団で重大災害が続いた。

8件に止まった大企業の起訴、現代車は「不起訴」

問題は大企業の捜査と起訴が非常に遅いという点だ。法施行以後、今年3月までの起訴比率は僅か5%に止まる。民主党のキム・ジュヨン議員が労働部から受け取った(非識別処理された)重大災害処罰法違反罪の控訴状60部を、<毎日労働ニュース>が分析した結果によれば、現在までに起訴された62件の中で、大企業集団(系列会社・子会社含む)は8件に止まった。

特に、重大災害の最多発生大企業である現代自動車グループは、検察が不起訴で終えた事件もある。2022年3月、現代自動車全州工場で商用トラックの品質検収をしていた労働者が、車体の位置を調整している間に、挟まれる事故で亡くなった事故で、現代自動車の代表理事が捜査を受けたが、無嫌疑で終結した。現代車グループの四回目の事故だったにも拘わらず、雇用労働部が昨年9月に無嫌疑の意見で検察に送致し、全州地検が同年11月に不起訴にした。現代自動車が重大災害処罰法上の安全保健確保義務を履行していたというのが理由だ。

捜査と起訴が遅いことも批判の対象だ。現代車グループは2022年3月から重大災害処罰法の適用を受ける死亡事故が発生したが、検察は二年六ヶ月が過ぎても1件も起訴しなかった。法の施行以後、サムピョ産業(2022年1月29日)に続いて、二番目に重大災害が発生した現代建設(2022年2月16日)も、今でも捜査中だという。法が施行された年の2022年に起きた大企業重大災害の8件だけが起訴された状態だ。その後に発生した死亡事故に関して起訴された事例は、9月23日に代表理事が拘束起訴された永豊グループの石浦製錬所(2023年12月)だけだ。災害発生日から起訴までにかかった時間も平均455日で、一年を遙かに超える。捜査期間が800日を超えた事件も2件ある。

キム・ジュヨン議員は「大企業に対する捜査と起訴が特に遅い現象は、労働部と検察が大企業の顔色を伺うためとみられるが、重大災害処罰法の実効性を落とすもので、職務遺棄に他ならない」とし、「迅速で厳正な捜査と起訴によって、労働者の生命保護のための責任を果たさなければならない」と批判した。

捜査期間が一年を超え「捜査意志不足という誤った信号」

専門家たちは捜査機関の『意志不足』を原因に挙げる。チョ・ジェミン弁護士は「重大災害処罰法上、安全保健確保義務を完璧に履行することは難しいが、中小企業は起訴し、大企業と公共機関は不起訴で終え、裁判さえ受けていないのが実情」で、「検察が不起訴を続けること自体が公正性を喪失したものであり、制度の補完が必要だ」と指摘した。ソン・イクチャン弁護士は、「重大災害処罰法は、経営責任者が行うべきことをすべてやったにも拘わらず、事故が起こったかどうかを調べろという法だが、大企業だけが起訴件数が少ないのは理解し難い。」「経営責任者がきちんと安全保健確保義務を履行したとすれば、重大災害の発生が減るのが正常」だと批判した。

パク・ヘチョル議員は「一つの企業集団で23件の重大災害死亡事故が発生したということは、グループレベルでの安全保健システムが作動していないという証拠なのに、労働部と検察が大企業の経営責任者だけに特恵を与えているという認識を持たせる。」「大企業は形式的な安全保健体系さえ整えれば処罰を避けられるという、誤った信号を与えかねない」と批判した。

国会・環境労働委員会のイ・ヨンウ民主党議員も「災害発生日から一年以上も捜査する状況は、捜査機関の人材から捜査方式までの全てを点検しなければならないということ」で、「労働者の死には企業責任を徹底的に問い糺す」と批判した。

2024年9月27日 毎日労働ニュース重大災害特別取材チーム カン・イェスル、イム・セウン、ホン・ジュンピョ記者

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