重大災害法で初の実刑判決・・・労働界「事業主に警鐘」 2023年04月27日 韓国の労災・安全衛生

民主労総の組合員が2020年11月24日、ソウル汝矣島の「共に民主党」本部前で、労災で死亡した99人の遺影を椅子に置いて重大災害企業処罰法制定を要求する集会をしている様子。/キム・ミョンジン記者

「(言いたいことは)ありません。」

重大災害処罰法違反で起訴された元請けの代表理事に初めての実刑判決が宣告された26日、昌原地裁馬山支院で、韓国製鋼の代表理事のS氏は宣告直後に、「最後に言いたいことがありますか」という判事の質問に、「ない」と答えた。この日『安全第一』というマークが着いた作業服を着て被告人席に立ったS氏は、直ちに法廷拘束された。裁判所が「厳重な処罰は避けられない」として一年の刑を宣告した時も、S氏は大して慌てた様子もなく、結果を受け容れる様子だった。

この日の宣告は、昨年3月に慶尚南道の韓国製鋼の工場で、下請け業者所属の60代の労働者のAさんが、クレーンから落ちてきた重さ1.2tの防熱板の下敷きになって死亡してから1年1ヶ月目に行われた。AさんはS氏が代表取締役である韓国製鋼と請負契約を結んだカンベク産業所属の下請け労働者だった。Aさんはこのような『重量物取扱作業』に必要な作業計画書もない状態で作業して死亡したことが明らかになった。S代表に実刑判決が出た背景には、該当の事業場では類似の事故が繰り返し発生したという事情が考慮された。今回の判決で拘束されたS氏は、2011年と2021年に安全措置義務違反で罰金刑を受け、2021年5月には労働災害死亡事故で刑事裁判を受けてきた。裁判所はこのような事実を挙げ、判決文で、「数年間にわたり安全措置義務違反の事実が数回摘発され、労災死亡事故まで発生させたのは、勤労者の安全権を脅かす構造的な問題があることを示すもの」とし、「(それにも拘わらず)経営責任者として、安全保健確保義務を履行しなかった」と判示した。被告人側の「準備期間が足りなかった」という反論には、「重大災害処罰法が制定・公布された日から施行日まで、1年の施行猶予期間があった」として受け容れなかった。

6日、重大災害処罰法第一号宣告だったオンユ・パートナーズのケースでは、元請けの代表理事が懲役1年6月に執行猶予3年として実刑は避けた。民主労総のチョン・ギホ法律院長は、「(今回の判決が)事業主に、労働者の生命や健康権など、産業安全にきちんと責任を負えという警鐘を鳴らした」と話した。

労働界は初めての実刑判決を歓迎しながらも、軽い量刑は問題だと指摘した。クォン・ヨングク弁護士(重大災害専門家ネット・共同代表)は、「法定の下限刑が懲役1年という事実を考えると、宣告の量刑が法定の下限にとどまったという点で残念だ」と話した。ソン・イクチャン弁護士は、「重大災害処罰法の以前でも、産業安全保健犯罪が繰り返された場合には実刑が宣告されていたので、1年という刑量が特に重いわけではない」と話した。

最高裁の量刑委員会は2021年に、産業安全保健法の安全・保健措置義務違反で労働者が死亡した場合の勧告量刑の範囲を、従来の懲役10ヶ月~3年6ヶ月から懲役2~5年に大幅に引き上げた経緯がある。

法人に対する罰金刑1億ウォンも、元請け業者の売上高や規模に比べて非常に軽いという批判も出ている。韓国製鋼の昨年の売上高は8340億ウォンだった。ムン・ウンヨン弁護士は「法人の経営に負担を与えない処罰がどのような法的な抑制効果をもたらすのか」と指摘した。

一方、韓国経総は「現場の安全・保健措置の可否を直接管理・監督できない代表理事に、単に経営責任者という身分にあるという理由だけで、更に厳格な刑罰の基準を適用するのは非常に苛酷な処置」と反発した。

2023年4月27日 ハンギョレ新聞 キム・ヘジョン記者

https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/1089565.html