尹錫悦政府に「重大災害法無力化」を建議した経総、労働界は「厚顔無恥だ」 2022年5月16日 韓国の労災・安全衛生

民主労総の梁慶洙委員長が9日、尹錫悦政府発足に対する民主労総の立場発表記者会見で、重大災害処罰法の改悪中止、社会公共性強化、労働基本権保障などを要求して発言している。

尹錫悦政府がスタートした途端、財界の「重大災害処罰などに関する法律」(重大災害処罰法)無力化の試みが露骨になっている。韓国経営者総協会(経総)は16日、重大災害の発生時に、代表取締役が責任を逃れられるように道を開く内容の「重大災害処罰法施行令改正建議書」を関係省庁に提出した。全国民主労働組合総連盟(民主労総)は声明を出し、「厚顔無恥だ」と強く批判した。

議論になった内容は大きく三つだ。経総は施行令に適合する経営責任者が選任された場合、代表取締役の責任を免れる規定を設けるべきだと要求した。安全保健担当理事を選任すれば、企業の代表理事は重大災害処罰法による義務と責任を負わないという主張だ。

これは重大災害処罰法の趣旨に正面から反対する主張だ。重大災害処罰法の趣旨は、経営責任者が安全管理の責任を負うべきだということだが、経営責任者だけは処罰から免れるようにして欲しいと要求するものだ。

また、経総は施行令によって、重大労働災害の範囲と処罰適用の対象を大幅に減らすべきだと主張した。経営責任者が遵守すべき「安全・保健関係法令」等を、「産業安全保健法など」に限定すべきだとか、施行令に委任もしていない経営責任者の義務の一部を、施行令に条項を新設する方法でその範囲を狭めてくれ、という要求が代表的だ。

この他にも、下請け、特殊雇用労働者に対する元請け責任を最小限に規定した条項も削除すべきだと建議した。現行施行令には、元請けの経営責任者に、下請け、特殊雇用労働者の安全・保健のための管理費用基準を作って、建設・造船業の労働者を保護するための工事期間算定基準を準備する義務を付与しているが、この条項自体を削除してくれということだ。

経総の建議書を見た民主労総は「残酷でイライラする心情だ」と批判した。

民主労総は「国民の生命と安全が政府の最優先価値だと言った尹錫悦政府は、対外的な国政課題の発表では曖昧にし、細部履行計画には重大災害法施行令と法改正を明示した」とし、「経営界は待っていたかのように、就任式から一週間も経たないうちに、最初の経営界の要求として、施行令の改悪要求を提出した」と指摘した。

民主労総は「コロナ禍でも最高の売上と営業利益を達成している経営界は、労働者市民の死に対する最小限の反省と改善も見られない」とし、「結局、法が曖昧ではないかという経営界の主張は虚偽であり、処罰から免れたいという破廉恥な要求で一杯だ」と批判した。

民主労総は「厚顔無恥な経総と事業主団体と、施行令の改正を明示した尹錫悦政府を強く糾弾する」とし、「施行令の改悪による法の無力化を引き続き進めるなら、民主労総は労働者市民と共に強力な闘いで対抗する」と警告した。

韓国労働組合総連盟(韓国労総)も同日声明を出し、「経総が出した建議書は、憲法で保障された国民の生命権を全面否定する主張だ」とし、「経総の建議書に盛り込まれた内容通りに重大災害処罰法が改悪されれば、職場で続く労働者の死は止まらない」と警告した。

尹錫悦政府は発足前に出した国政課題で、「法令の改正等によって現場の不確実性を解消し、指針・マニュアルによって経営者の安全と保健確保義務を明確化」するとし、重大災害処罰法と施行令の改正意志を明らかにした経緯がある。

2022年5月16日 民衆の声 ナム・ソヨン記者

https://www.vop.co.kr/A00001613027.html