南部発電の「パワハラ」は事実、下請け労働者の自害行為に「業務上災害」 2023年04月21日 韓国の労災・安全衛生

韓国南部発電釜山光ドリーム本部。/韓国南部発電ホームページ

『元請けのパワハラ』に苦しめられ、極端な選択を試みた韓国南部発電の下請け労働者が、業務上災害を認められた事実が確認された。勤労福祉公団は強圧的な業務指示と安全規則の不遵守など、南部発電の持続的な不当な要求があったと判断した。雇用関係上の揉め事ではなく、安全保健措置の不履行による業務上ストレスが認められたのは今回が初めてだ。

塩酸ガスを浴びた後、建物の屋上から投身

<毎日労働ニュース>の取材によれば、勤労福祉公団・釜山業務上疾病判定委員会は、2月14日、下請け労働者A(49)さんの骨折と適応障害、憂うつ障害を業務上災害と判定した。

南部発電の経常整備分野の下請け業者、韓国プラントサービス所属のAさんは、入社から4年ほど経った2021年8月21日午前6時50分頃、釜山光ドリーム本部のある建物の三階屋上から投身した。前日の午後10時から夜間の当直勤務をしていたところだった。命は助かったが、脊椎と足首に深刻な傷を負った。

Aさんが極端な選択を試みた決定的な契機は、「塩酸ガス露出」事故だ。Aさんは投身の三日前、元請けの運転員から塩酸タンクのバルブの整備を要請されて作業をした。この過程で、配管の塩酸ガスが顔にかかった。事故は続いて起こった。塩酸車が塩酸を補充している間にラインが破裂し、塩酸が床に撒かれた。元請けの管理者は、作業許可書もなく、Aさんに損傷部分を交換するよう指示した。Aさんは残留塩酸を浴びるところだった。

翌日も、元請けは安全措置もなしに作業を指示した。Aさんは高温の蒸気が噴き出しかねない整備作業なので危険だと伝えたが、元請けの管理者は「注意して組み立てて欲しい」とだけ要請した。このような状況が続き、家族にストレスを頻繁に訴えた。Aさんの妻は「夫は普段から、元請けの監督が作業環境を考慮せずに結果だけを出せと言うなど、不当な業務指示について話すことが多かった」と陳述した。

労使の共同調査でパワハラを三件確認し、労災申請

南部発電の「パワハラ」は、労使が二人ずつ推薦した調査委員が参加する共同調査委員会で明らかになった。「真相調査結果報告書」によると、△冷却水の熱交換器の供給バルブ交換作業(5月21日)、△塩酸タンクの荷役損傷部の整備作業(8月18日)、△オイルタンク上部の清掃作業(7月30日・8月2日)、などがパワハラ行為と確認された。作業手続きと安全措置義務違反も認められた。同年7月にも、下請けの所長が元請けの職員に、バルブの分解・組立作業をしたAさんが間違ったように言って、侮蔑したことが把握された。

これらについて昨年8月に療養給付を申請した。彼は「元請けのパワハラで事故に遭ってストレスを受け、合理的な判断ができない状況で自害行為に至ることになった」として、業務上災害だと主張した。南部発電は「発電所内の申告制度はステッカーで広報され、匿名での申告が可能だった」と反論した。南部発電の社長は、同年10月の国政監査で、「安全保護システムがあるにも拘わらず、安全管理が不十分だったことが残念だ」という趣旨の話しをした。

公団「生命の脅威で自害、ストレスの原因」

公団は元請けのパワハラによるストレスが投身の原因だと判断した。疾病判定委は「元請けの職員たちの不法で強圧的な業務指示が、真相調査の結果、相当部分で確認された」とし、「事故発生以前からあった職場内いじめと安全措置の不履行などによって恐怖と困難を経験した状態で、事故直前の塩酸ガス漏れ事故によって生命の脅威を感じただろう」と説明した。診療記録にも、元請け職員の安全規則の不遵守と不当な作業指示で苦しんでいたと記録されていたことも裏付けとなった。

Aさんは現在も下半身がほとんど使えず、車椅子生活になっている。憂うつ・不安・不眠などの症状が生じ、昨年4月からは薬物と相談治療を並行した。ヨンビョンの海戦に海軍副士官として参戦した経歴のあるAさんは、不当なことを我慢できない性格だった。かつての職場でも、同僚の不当な待遇に抗議して勧告辞職を受けたりもしていた。

Aさんを代理したチョ・エジン弁護士は、「被災者は元請けの危険な作業指示を拒否したのに黙殺され、下請けも、元請けとの関係悪化を憂慮して不当な指示に従えとしか言わなかった」とし、「今回の事件の労災承認を契機に元請けのパワハラが根絶され、下請け労働者が安全に働ける環境が造成されることを願う」と話した。労使共同調査委員会に参加したユ・ヒョンチョル仕事と健康センター長は、「下請け労働者の悲観的な決断の原因には、安全保健問題が適当に処理されていないことへの怒りがあった」とし、「安全保健上の危険放置による業務上ストレスが認められたことは、社会的な意味が大きい」と評価した。

2023年4月21日 毎日労働ニュース ホン・ジュンピョ記者

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