夫が職場に出勤したその時刻、妻は遺影を持って街頭に立った 2022年4月14日 韓国の労災・安全衛生
14日午前8時30分、普段なら夫が職場に出勤していたその時刻。クォン・グミさん(40)は夫の遺影を持ってソウルの東国製鋼の本社前に立った。先月21日、夫が東国製鋼の浦項工場で作業中の事故で死亡したことについて、東国製鋼が元請として謝罪し、再発防止対策を出すよう求めるデモだ。 産業災害の被害家族が断食と座り込みをして重大災害処罰法が制定され、今年1月27日に施行されたが、依然として頻発する労働者の死亡事故に、遺族は再び街頭に出た。デモには故人の母親、伯父など家族と、市民社会団体の活動家たちが参加した。
クォン・グミさんの夫、イ・ドンウさん(38)は、天井クレーンのブレーキの交換作業をしている途中、設備に挟まれて死亡した。修理中は設備は稼動してはいけないが、突然設備が動き出し、シートベルトが体に巻き付いて事故が起きたのだ。イ・ドンウさんは東国製鋼から設備の修理業務を請け負った下請け会社の所属だった。クォン・グミさんは妊娠14週目で、生前にイ・ドンウさんは子どもができたことを喜んで、「気を付けて子どもを育てよう」「これからも一生懸命に生きよう」と話していたという。突然夫を亡くし、しばらく悲しみに浸ったが、浦項からソウルまで上京するには理由があった。クォン・グミさんは「人の命が優先されなければならないのに、そうでないのが口惜しい」と言った。
イ・ドンウさんの死後、クォン・グミさんに聞こえてきたのは、イ・ドンウさんが間違っていた可能性があるという話だった。事業場では、事故が起こらないように安全管理をする責任は会社にあるが、よく会社は労働者のミスとして追い詰める。クォン・グミさんの話しだ。「どうして(働いて)人が死んだのに、その人が間違って死んだことになろうとしているのか、理解できませんでした。下請け会社の所属ですが、東国製鋼の工場で発生した事故なのに、元請は「知らない」と言っていました。余りにも口惜しくて、このままでは、口惜しい思いをする人たちが出てくると思いました。」クォン・グミさんは後で事故現場に行ってみて、イ・ドンウさんがどれほど危険な作業をしていたのかが解ったと言った。労働者たちは高さ数十メートルのクレーンに上って修理をしなければならず、床には古鉄が敷かれていた。
遺族は東国製鋼の経営責任者であるチャン・セウク代表取締役が公開謝罪し、今回の事故の構造的な原因を調査して、再発防止対策を立てるよう求めている。雇用労働部と検察に対しては、「法違反事項を徹底的に捜査し、厳正に処罰せよ」と指示している。市民団体は、東国製鋼が安全管理者と信号手の配置、クレーンの電源遮断の確認など、請負人としての安全措置が不十分だったと指摘した。下請け会社の社員の労災死亡事故に対して、元請けの責任を強化するよう産業安全保健法が改正され、重大災害法は元請けの経営責任者まで処罰できると規定する。
新政府の発足を前に、各企業は重大災害法のせいで厳しいと訴えている。これに応えて尹錫悦当選者は規制緩和を示唆した。クォン・グミさんは「幸せだった家庭は破壊されても、国だけが豊かに暮らせば良いのか」と反問した。「もし安全管理者が一人でも私たちの夫を見守っていたら、死亡までは行かなかったでしょう。事業主の立場から、国の利益のために(規制を)変えるということは、労働者には『死んでもかまわない』ということでしかないのでしょう。これ以上労働者が死なないように、法律を強化してください。私の夫、息子にも起こったことだから、みんなが声を出してくれたら良いですね。お金より人の命の方が大事じゃないですか。」クォン・グミさんは東国製鋼が過ちを認めるまでデモを続ける予定だ。
東国製鋼は、「事業場で事故が発生し、遺族の方々に大変申し訳なく、責任感を感じている」とし、「捜査を受けているため、個別事案については説明できないことをご了承ください」と話した。
2022年4月14日 京郷新聞 イ・ヘリ記者
https://www.khan.co.kr/national/labor/article/202204141545001