13年間ホルムアルデヒド作業、裁判所「白血病損害賠償せよ」 2022年4月13日 韓国の労災・安全衛生

資料写真は記事とは無関係/チョン・ギフン記者

13年間、化学物質のホルムアルデヒドに曝露して白血病を発病した労働者に、会社が損害を賠償すべきだという判決が出た。裁判所は、使用者が保護具や排気施設などをきちんと備えておらず、安全配慮義務を果たしていないと判断した。

慢性骨髄性白血病、業務上の疾病を認定
使用者側、「極めて少量の曝露で、責任はない」と反論

ソウル中央地裁は12日、界面活性剤メーカーの職員Aさんが会社を相手に起こした損害賠償訴訟で、原告一部勝訴の判決を行ったと発表した。Aさんが訴訟を起こしてから4年目に一審の結論が出た。

Aさんは2001年から8年間、界面活性剤の製造会社であるD社の代表が運営する食料品会社に勤めた。主に界面活性剤の実験と研究を担当し、ホルムアルデヒドの水溶液のホルマリンを投入する作業も担当した。ホルムアルデヒドは白血病の原因となる有害物質だ。

その後、Aさんは食料品会社からD社に移り、2009年から2年間は中国法人で、2014年までと同じ業務を行った。毎月2~3回ずつ、ホルムアルデヒドが入っている防腐剤20リットルを混合容器に注ぎ、年に1~2回はホルムアルデヒドを分ける作業を繰り返した。

2015年1月に慢性骨髄性白血病と診断された。勤労福祉公団も「ホルムアルデヒドの瞬間曝露量が多い」として業務上の疾病を認め、療養手当と休業手当を支給した。2018年5月、Aさんは保護具なしで作業をして白血病に罹ったため、(訳註:定年まで働けば受け取れたであろう)逸失退職金、既払いと今後の治療費、慰謝料などを支給するように、訴訟を起こした。

会社側は、「作業場に排気設備を備え、保護具が用意された」とし、「白血病の発病には責任がない」と反論した。極く少量のホルムアルデヒドに曝露し、労災判定もAさんの白血病を診断した病院の疫学調査によるもので、客観性を認めがたいと主張した。 更に、「Aさんが薬を処方してもらって、通院治療を受ければ就職できる状態だ」とし、労働力は失われていないと強調した。

排気施設不足に保護具の未着用
裁判所「安全装置なしでの過度な曝露による発病」

裁判所は、会社の帰責によって白血病を発病したとして、Aさんに軍配を上げた。裁判所は「事業場の一部の作業に関してしか排気装置が設置されていなかった」とし、「会社は必要な量に比べて少ない保護具を準備し、現状をきちんと管理していなかった」と指摘した。大半の作業者が保護具を着用していないにも拘わらず、管理・監督を疎かにしたという趣旨だ。

公団が警告したのに是正措置を執らなかったことも作用した。裁判所は、「被告は、勤労福祉公団から作業者が瞬間的に大量の化学物質に曝露するおそれがあるという警告を受け、保護具の具備と着用状態、産業安全保健表示の付着状態、排気施設と換気状態などが不十分だという指摘を受けた」と判示した。

 さんは普段から潰瘍性大腸炎を患い、白血病の原因になる可能性もあるという使用者側の主張も排斥した。裁判所は、2012年には既に投薬を中止するほど症状が好転しており、潰瘍性大腸炎は慢性ではなく、急性白血病の原因の一つだと見ている。

これらを根拠に、D社に80%の責任があると判断した。裁判所は「本事件の疾病は、A氏が、排気施設が整っていない作業場で、保護具も具備していない状態で、ホルムアルデヒドを取り扱う業務に従事していたところ、過度に曝露したことで発生したため、D社はA氏に発生した損害を賠償する責任がある」と判示した。

2022年4月13日 毎日労働ニュース ホン・ジュンピョ記者

http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=208370