「重大災害処罰を避ける費用、労働者の生命保護に使うべき」 2022年3月27日  韓国の労災・安全衛生

安全保健公団のアン・ジョンジュ理事長が24日、ハンギョレ新聞社でインタビューを受けている。/キム・ギョンホ専任記者

「重大災害処罰などに関する法律」(重大災害法)の施行を前後して、産業災害予防専門の公共機関の韓国産業安全保健公団も忙しくなった。法令の教育・広報に加え、災害調査業務は一層厳しくなったからだ。今年1月に就任した安全保健公団のアン・ジョンジュ理事長(65)も同じだ。24日にハンギョレ新聞とインタビューしたアン理事長は、光州市のマンション崩壊事故など、最近でも後進的な事故が続いていることに、「企業が重大災害法の処罰を避けるために注ぎ込む費用と人材を、事故予防の投資と労働者の生命保護のために使わなければならない」と話した。

アン理事長はインタビューの間中、最近発生した重大災害を批判した。光州の現代産業開発のマンション崩壊事故で6人が死亡した事故や、楊州のサムピョ産業で崩れた土砂に埋まった3人が死亡した事故については、「2022年の韓国で、決して起きてはならない、あきれた後進的な事故だ」と指摘した。また有毒性洗浄液を安全措置なしで使用して、労働者が急性肝中毒になった事故に対しては、「売上高の0.01%さえ投資していれば防げる事故だった」と批判した。

こうした事故を防ぐために重大災害法が制定されたが、間もなくスタートする新政府は重大災害法について不満を示し、企業がこれに力を加えて「法の揺さぶり」を掛けている状況だ。その前に、大統領職引継ぎ委員会は、労働部の業務報告の過程で、重大災害法に対する企業の懸念を伝えた。重大災害法を巡る論議についてアン理事長は、「(重大災害法の)過度な処罰や法令の曖昧性などについては、責任をもって答弁する立場にない」としながらも、「韓国で、こうした法まで制定・施行された背景は、これまで労災死亡事故などに対して『軽い処罰』をしてきたことが大きいと見るべきだ。重大災害法は、安全保健確保の義務を忠実に履行すれば処罰されないため、企業は処罰を避けるために注ぎ込まれる費用と人員を、事故を減らすための投資と労働者の生命保護に使うべきだ」と話した。

公団は、職員が直接現場を訪ねて災害予防活動を行う「現場パトロール」活動や、安全保健経営システム構築のコンサルティング活動を行っている。アン理事長は「同じタイプの事故が発生する悪性職場、特に、安全保健投資能力が十分であるにも拘わらず、これを怠って事故が発生した企業に対しては、三日を置かずに現場に行き、重点管理・点検する方法を検討中だ」と明らかにした。彼は「イギリスなど、一部先進国では不法・手抜き工事で社会的に物議を醸した企業などを対象に、こうしたやり方の安全保健管理をしている」とし、「公団の点検で違法な事項が摘発されれば、慌てることになる」ということを確実に刻印できる点検の方法を検討する」と話した。

アン理事長は、災害の科学的な原因を分析する『災害調査』を公団が担当している以上、公団職員に『調査権』が与えられるべきだという意見も述べた。公団の『災害調査意見書』は、労働災害の刑事事件の主な証拠として利用されるだけでなく、事故の予防対策作りにも使われる。現在、公団職員には法令上の調査権がないため、調査権と捜査権のある労働部の勤労監督官と一緒に災害調査を行っているが、重大災害法の施行以後、公団独自の資料提出や面談要求にキチンと応じないなど、企業の非協力的な事例が増えている。アン理事長は「調査の信頼性を確保するために、公団の事故調査権に関する制度的な根拠をもう少し明確にする必要がある」と述べた。

環境・保健専門の記者出身のアン理事長は、1988年、『源進レーヨン二硫化炭素集団中毒事件』を初めて報道し、韓国社会での『職業病』問題を初めて社会問題化した。そんな理由で、彼は労働災害事故だけでなく、職業病を予防できる『産業保健』についても関心が深い。実際、昨年は、職場で『事故』で死亡したのは828人だったのに対し、『疾病』で亡くなったのは1252人で、424人も多い。アン理事長は「有毒性洗浄液集団急性中毒事件や、持続的に提起された給食室の調理師の肺がん発生など、職業性がんの問題は職業性疾病の問題をよく解らせてくれる」とし、「産業保健の分野に対する全幅的な予算と人力の支援がなければならない」と話した。

アン理事長は産業保健学博士で、現政権で大統領直属の政策企画委員会・持続可能分科委員長兼安心社会小分科長、社会的惨事特別調査委員会の委員などを務め、1月10日、安全保健公団理事長に三年の任期で就任した。

2022年3月27日 ハンギョレ新聞 パク・テウ記者

https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/1036393.html