8年間火災を鎮圧し『希少がん』で殉職、裁判所「公務上疾病」 2022年3月28日  韓国の労災・安全衛生

資料写真/イメージトゥデイ

消防公務員が8年以上も火災を鎮火し、希少がんの「肉腫がん」を発病して死亡したことに、有害物質への曝露による公務上の疾病に当たるとする判決が出た。消防士に縦隔腫瘍が発生した事例は初めて知られた。

ソウル行政裁判所は27日、殉職した消防士Aさん(死亡当時50歳)の妻が、人事革新処に提起した公務上療養不承認処分取り消しなどの訴訟で、原告一部勝訴の判決を行ったと発表した。

8年間、綿マスクをつけて火災を鎮圧
裁判所「化学・発がん物質に長期間曝露」

1996年に消防公務員に任用されたAさんは、約23年間勤務し、8年6ヵ月間は火災鎮圧業務を担当した。2016年10月に光州消防安全本部に発令され、勤務中の2019年2月に腫瘍が発見された。その後、「前縦隔の線維化縦隔炎」と診断され、一年間薬物治療を受けたが症状が悪化したため、翌年手術を受けることにした。

大学病院で組織検査を行った結果、「前縦隔の未分化多型肉腫がん」と診断され、結局2020年7月に亡くなった。肉腫がんは癌患者全体の1%程度の希少がんとして知られている。

遺族は人事革新処に、公務上の療養承認申請と殉職危険職務の殉職遺族給付を申請した。しかし「業務と傷病の発病に関する関連性を裏付ける根拠がない」という理由で拒否され、Aさんの妻が昨年6月に訴訟を起こした。

裁判所は相当因果関係が認められるとし、人事革新処の処分を逆転した。肉腫がんに関連する個人的な素因が見付かっていない事実と、Aさんが普段から非喫煙者だったという部分が後を押した。

特に、保護装備が不十分なまま火災鎮圧に当たった点が、肉腫がんの発病に影響を与えたとみた。判決は「故人は火災現場で火災鎮圧と火災原因の調査業務を行う中で、様々な有害化学物質や発がん物質に長期間曝された」と説明した。

裁判所の説明によると、実際、消防公務員は2000年代初頭までは、空気呼吸器などがきちんと普及されておらず、綿マスクだけで鎮火に当たった。しかも、交代する勤務者と空気呼吸器を一緒に使うケースも多かった。火災の調査段階でも、一般の防塵マスクだけを使用した。Aさんは1996年から2002年まで火災鎮圧業務に投入された。

交代勤務で休日が不足し「免疫力が低下」
殉職を認定し、危険殉職遺族給付は否定

Aさんが昼夜間交代勤務を繰り返したことも公務上の疾病の根拠となった。 Aさんの休暇日数は2018年は3.5日、2019年は5.1日に過ぎなかった。2019年12月から死亡直前の2020年5月までの時間外勤務時間は、合計816時間、休日勤務日数も20日に達した。裁判所は「故人に、長期間の業務上の過労とストレスが累積したと観られ、免疫力に悪影響を及ぼした可能性が高い」と判断した。

続いて「前縦隔肉腫がんの原因は明確には明らかにされておらず、有害化学物質ががんの発病に影響を与えるという事実が医学的に究明されてはいない」とし、「そういった理由だけで、故人の業務と傷病との間に因果関係がないと判断するのは妥当ではない」とした。他の原因は発見されず、統計的に消防士のがん発病リスクが高いという分析もあるということだ。

これを前提に、裁判所は、Aさんが殉職公務員に該当すると考えた。ただ、公務員災害補償法に定められた「危険職務殉職公務員」の要件は備えていないと判断した。災害現場で受けた災害が、前縦隔肉腫がんの直接的な原因ではないという意味だ。

遺族を代理したキム・ヨンジュン、キム・ウィジョン弁護士は、「今回の判決は、消防公務員の業務と希少がんとの相当因果関係が認められたことに意義がある」とし、「特に、有害物質に曝露する可能性や、長期間の超過・夜間・交代勤務に伴う業務上の過労などが有意義に反映された」と話した。

2022年3月28日 毎日労働ニュース ホン・ジュンピョ記者

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