「金鎔均死亡事故」元請け韓国西部発電の前代表に無罪判決 2022年2月10日 韓国の労災・安全衛生

金鎔均財団の金美叔理事長が10日、大田地裁瑞山支院で開かれた故キム・ヨンギュン労働者死亡事件の元・下請関係者に対する一審判決公判が終わった後、裁判所の甘い判決に目を瞑ってぼう然としている。/ニュース1

韓国西部発電・泰安火力発電所で発生した下請労働者の金鎔均(キム・ヨンギュン)さん(当時24歳)の死亡事故に関して、元請の韓国西部発電の当時の代表に一審判決で無罪を言い渡された。別の元請関係者にも執行猶予または罰金刑が宣告され、「軽い処罰」と批判されている。

大田地裁瑞山支院は10日、業務上過失致死・産業安全保健法違反などで起訴された韓国西部発電のキム・ビョンスク前代表に対し、「罪を問うことができない」とした。検察は懲役二年を求刑していた。

裁判所はキム前代表に対して、キム・ヨンギュンさんの死亡原因に挙げられたベルトコンベヤーの危険性や、下請業者・韓国発電技術との業務委託契約上の問題点を具体的に認識できないと判断した。

同地裁は判決理由について、「韓国西部発電の代表取締役として、業務上の注意義務に違反したとは考えにくい」とした上で、「故意に防護措置を履行しなかったとは言えない」とした。

しかし、キム前代表を除いた残りの被告人15人(法人2社)には、すべて有罪が認められた。ただし懲役刑・禁錮刑には執行猶予、または罰金刑だけが宣告された。

裁判府は、下請け会社の韓国発電技術のペク・ナムホ元代表に懲役1年6月、執行猶予2年、社会奉仕160時間を言い渡した。また、韓国西部発電の関係者8人には、それぞれ罰金700万ウォン~懲役1年6月、執行猶予2年を、残りの韓国発電技術関係者4人には700万ウォン~懲役1年6月、執行猶予2年が言い渡された。このうち11人には、社会奉仕120~200時間も同時に命じた。

両罰規定によって一緒に起訴された韓国西部発電には罰金1000万ウォン、韓国発電技術には罰金1500万ウォンがそれぞれ宣告された。

裁判所はキム前代表を除いた他の被告人に対し、「この事故が発生するわずか5カ月前に、他の事業所で二回にわたって勤労者が狭窄される事故が発生したにも拘わらず、被告人はこの事故を防げなかった。」「韓国西部発電は自らの勤労者ではなく、協力会社所属の勤労者に対する十分な安全保護措置を執らなかった」と述べた。

続いて「韓国発電技術は、所属の労働者が安全な作業環境で勤務できる十分な措置を執らず、一次的な保護義務者として被害者を保護できなかった責任を負担すべきだ」とし、「被告人一人ひとりの安全措置義務違反行為が集まってこの事件事故を誘発し、総合して違法性と非難の可能性は重い」と判示した。

▲ベルトコンベヤーの危険性を考慮した防護措置を備えておらず、▲労働者に二人一組でベルトコンベヤーの点検作業等を行わせなければならないにも拘わらず、被害者に単独で上記の点検作業を行わせ、▲労働者が点検作業等を行う際にベルトコンベヤーの運転を停止させないなど、業務上の注意義務あるいは産業安全保健法上の安全措置義務に違反したというものである。

金鎔均財団の金美叔理事長が10日、大田地裁瑞山支院で行われた故キム・ヨンギュン労働者死亡事件の元・下請関係者に対する一審の判決公判が終わった後、記者会見を行っている。/キム・ヨンギュン財団

 

これに対し、キム・ヨンギュンさんの母親が理事長を務める金鎔均財団は、「余りにも惨憺たる結果だ」と憤った。

金鎔均財団は判決の直後に声明を出し、「裁判府は特に元請の韓国西部発電と下請けの韓国発電技術の業務が密接な関係があることを認めながら、キム・ヨンギュンさんの死亡に対する元請の産業安全保健法違反罪を認めず、事実上、処罰とも言えない判決を行った」とし、「余りにも明らかな証拠があるにも拘わらず、裁判府は死亡者がいるのに、責任を負うべき、間違った者はいない」としたと指摘した。

続いて「今日のこの判決は、韓国社会に対し、そしてキム・ヨンギュンが死亡に至ったその職場で働きながら生きていく同僚、労働者にとって、安全と生命よりも利潤を追求することが優先するということを、裁判府が認める残忍な判決だ」と糾弾した。

金鎔均財団は「一朝一夕にすべてが変わることはないが、いくら法を作って労働者たちが大声を出しても、裁判府と事業主たちの認識は変わらないということを確認することになる。」「最近、ハンエクスプレス、韓国馬事会などの裁判でも、重大災害が発生しても事業主たちは何の責任もない」とする無罪判決が出された。これは重大災害処罰法が施行されていなかったためではなく、産業災害に対する裁判府の認識が不十分だという問題だ」と批判した。

続いて「キム・ヨンギュン裁判の被告人である事業主たちも同じだ。」「キム前代表と韓国西部発電は、嘆願書を出して、反省の姿勢を見せるよりも責任を少しでも回避しようとする態度を見せた」と付け加えた。

更に「単純な事故のように、個人の過ちを判別するのでは、構造的に責任のある位置にいる者は知らなかったという理由で責任を免れている現実を変えられない」と嘆いた。

また、「改正前の産業安全保健法にも既に多くの内容が盛り込まれていたが、現実を認めない裁判府の法解釈では、いくら法を改正し、新たに作ってもすべて無駄なことだ。」「このように元請の責任を認めなければ、重大災害処罰法が施行されたとしても、全く適用されない可能性があるからだ」と指摘した。

金鎔均財団は「職場での死を止めるのには、処罰だけが全てではないが、生命に直結する問題に責任を取るべき人がきちんと責任を取るように、裁判所が厳正な法適用をすることは核心的な輪であるはず」とし、「そのために、金鎔均財団は今後も二審、結審まで、いくらかかっても最善を尽くして対応する」と強調した。

故キム・ヨンギュンさんは、2018年12月10日、韓国西部発電の泰安火力発電の9・10号機の石炭運送設備(コンベヤーベルト)に挟まれ死亡した。この事件を契機に「危険の外注化」問題が社会的に喚起され、別名『金鎔均法』と呼ばれる産業安全保健法の改正が同年末に国会で処理されるなど、法制度改善が続いた。文在寅大統領が大統領府に遺族を招待して直接慰めるなど、社会的な関心の高い事件だった。

2022年2月10日 民衆の声 チェ・ジヒョン記者

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