凍えて死に、焼かれて死ぬ移住労働者・・何も変わっていない 2022年3月3日 韓国の労災・安全衛生

インド出身の移住労働者が火災で死亡した坡州のある食品工場のコンテナ宿舎。火災で黒く煤けている。/クォン・ドヒョン記者

鍋、茶碗、椅子、Tシャツ、スニーカー、タオル、小型冷蔵庫、マットレス。先月23日に訪れた坡州市のある工場のコンテナの前のあちらこちらには、黒く焼け焦げた調度品が散らばっていた。コンテナの内部の物の量や種類から見て、一日や二日ほど滞在した場所には見えなかった。ここに住んでいたのはインド出身の移住労働者のAさん(46)。前夜に火事が発生し、彼はここで死亡した。

2020年12月、カンボジア出身の移住労働者がビニールハウスの宿舎から遺体で見つかった後、移住労働者の劣悪な住居施設が社会問題となっている。政府は対策を立てた。しかし、依然として移住労働者は家らしい家に住むことができず、このような家に住み、亡くなっている。

雇用労働部は昨年1月、農漁業分野の移住労働者の住居施設改善対策を発表した。事業者が不法な仮設建築物を移住労働者に宿舎として提供すると、新規の雇用許可を認めず、現場を点検して劣悪な住居施設を管理・監督するという内容だ。また、現在の事業場で、ビニールハウス内のコンテナ、組み立て式パネルなどを宿舎としている移住労働者には、希望によって事業場の変更を許可することにした。

しかし、今回のAさんの事例は労働部の対策の適用対象ではないというのが労働部の立場だ。住居施設対策は、韓国と雇用許可協約を交わした16ヵ国出身の労働者を使用する雇用許可制の事業所にしか適用されないという。

ある労働部の関係者は「雇用許可で来た外国人労働者には、住居施設の指針に従って宿舎の環境を厳しくチェックし、許可を出す」が、「Aさんは雇用許可制で来た労働者ではないために労働部の管理対象ではなく、知らなかった」と話した。

別の関係者は「住居施設の対策は、E-9(非専門就業)とH-2(訪問就業)ビザを使用する雇用許可事業場に限られる」とし、「(Aさんがいた工場は)労働部の領域外の事業場」と話した。統計庁の資料によると、昨年5月現在、全外国人就業者85万5000人のうち、E-9とH-2ビザを持つのは約36%だ。多くが雇用許可の対象ではないという理由で、住居施設対策の死角地帯に置かれている可能性がある。

コンテナのような仮設建築物を『臨時宿舎』として使用する場合は、建築法第20条によって地方自治体に届け出ることとされている。違反すれば5000万ウォン以下の罰金に処されると規定されている。しかし、Aさんが住んでいたコンテナは、自治体に臨時宿舎として届けられていない。

仮設建築物は、一般的な建築物と異なり、消防安全など様々な規制が欠けていることから、継続的な住居として使用してはならない。国土部は具体的な申告・取り締まりなどの手続きは地方自治体が担当するとしている。

坡州市はこれに難色を示し、仮設建築物に関する事務は、市ではなく、町村の行政福祉センターで行うとした。該当の行政福祉センターは、担当職員は一人だけだと困難を訴えた。関係者は「計画を立てて全体的な取り締まりと摘発をすれば良いのだが、建築担当者は現在の業務処理にも追われているため、不法仮設建築物は届け出に頼ることになる」とし、「抜き打ち点検や一斉取り締まりは難しい。坡州市だけでなく、全国的な問題だろう」と話した。

労働部の住居施設対策ではなくても、勤労基準法第100条は、使用者が寄宿舎を設置する際には、適切な空間を確保し、トイレ、冷暖房設備、消防施設などを備えなければならないと規定している。但し、同規定に違反したとして刑事処罰された事例は多くない。

2022年3月3日 京郷新聞 イ・ヘリ記者

https://www.khan.co.kr/national/labor/article/202203032117025