外国人労働者の労災隠し:RSD(反射性交感神経性ジストロフィー)で障害等級9級に認定/京都

労災隠しの果てに

昨年5月、京都府内で行われていた土木工事の作業中に、左環指骨折の災害に被災したにも関わらず、事業主らによって労災隠しにあった韓国籍の労働者Kさんが、症状固定を受け、ようやく韓国に帰国することができた。被災からセンターにたどり着き、同年10月に労災申請が実現するまで数か月を要した。事故当初、事業主らはわずかな金品をKさんに支給して解決を図ろうとし、また、Kさんは在留資格をすでに失っていたため、工事現場と地元の病院では別の日本名を名乗り、大阪市内の病院には親方の名前で国民健康保険を使っていた。
しかし、結局自己負担分をまかないきれず、また指の骨折が原因でRSD(反射性交感神経性ジストロフィー)を引き起こし、左腕全体の機能が損なわれていた状態にあり、療養が長引いていた。

障害補償対象

その後、Kさんは休業補償給付を受けながらリハビリに励んでたが、RSDは治療方法など解明されていない領域が多い症状であり、回復の見込みも不明であるため、2007年3月末には労働基準監督署から症状固定を通知され、障害認定を受けるにい たった。
RSDの労災上の取り扱いが明確になったのはここ数年のことで、Kさんが来日間もなく同じ症状に苦しんでいたとしたら、障害が認定されなかったかもしれない。外傷が治癒しているにもかかわらず、慢性疼痛が残り、接触により左腕全体に激しい痛みが発生すると言われても、本人以外には分からないからである。

現在は症状の程度に応じて7級、9級、12級のいずれかが認定されるので、できるだけ高い等級の認定を期待していたところ、9級に認定された。年金ではなく一時金ではあるが、将来にわたって服することができる就労が相当な程度制限されるものであると判断されたことになる。

ちなみにKさんは、骨折した当日、応急処置を受けた後に作業現場に戻り、今度は全く別の災害で目を損傷(災害のため片目の視力が0.6以下になった等)したため、別途12級の障害認定も受けている。労災患者が応急処置を施されただけですぐに就労し、別の労災に遭うという間の悪い話もあったものではないが、「腕も悪い、目も悪い。日本に来て10年間、土方以外のことをしたこともなく、他に何もできない」と、日を追うごとに帰国後の生活に不安を募らせていた。

外国人、特に在留資格のない外国人労働者の場合、労働基準監督署に出頭することをリスクととらえ、業務災害に遭ったとしても申請しないケースもあるが、一見「すぐに治るケガ」であっても本件のような事例もある。この10月からすべての事業所に外国人雇用状況の届出が義務付けられるようになったが、外国人労働者の権利を守るという趣旨で施行されている当該制度が、かえってオーバーステイなどの事情で届けられない外国人労働者の労災隠しに拍車をかけるのではないかと懸念している。

関西労働者安全センター

安全センター情報2007年11月号