「労災遺族が街頭で泣き叫ぶことがないように」大統領の発言に「本当?」/韓国の労災・安全衛生2025年7月1日

「本当に、本当にそうでしたか」 金美叔(キム・ミスク)金容均財団理事長が息を切らした。「これ以上遺族が街頭で泣き叫ぶことがないようにする」という李在明大統領の就任30日を迎える記者会見の冒頭発言を伝えられた後だった。
キム・ミスク理事長が話を続けた。「本当に、本当にそうであって欲しいです。」キム・ミスク理事長は2018年12月、息子の金容均(キム・ヨンギュン)氏を失った。キム・ヨンギュン氏は泰安火力発電所で一人で落炭を除去していて、ベルトコンベヤーに挟まれて亡くなった。彼が亡くなって六年目に、泰安火力発電所で再び下請け業者所属の労働者が機械に挟まれ亡くなった。キム・ミスク理事長は再び街頭に向かわなければならなかった。
「労災当事者だから、違う扱いをする」
「労災は続く、実践が重要」
李在明大統領は三日、「大統領の30日、マスコミが尋ねて、国民に答える」記者会見を行い、「国民の安全で平和な日常に責任を負う、国家の第一の責務を全うする」とし、安全な仕事場を約束した。
大統領は冒頭発言で「社会的惨事の真相糾明から、繰り返される労働災害の再発防止策作りまで、安全社会建設の責務を無視しない。」「死の仕事場を人生の仕事場に変え、これ以上遺族が街頭で泣き叫ぶことがないようにする」と話した。記者たちの質問で出た発言ではなく、大統領が準備して発表したメッセージだ。数多くの『労働問題』の中で労災に言及し、大統領の意志を示したという評価だ。
記者会見が終わった後、労災事故で息子を失ったキム・ミスク理事長、父親のムン・ユシク氏を失ったムン・ヘヨン氏(34)、アリセル家族協議会のキム・テユン代表に、大統領の発言をどう思うかと尋ねた。キム・ミスク理事長は「とても感謝している」とし「李在明大統領なら問題解決に本気だろう」と話した。彼女は「ヨンギュンが展示会(故キム・ヨンギュン氏三周忌追慕展示会)に大統領が来たが『私も幼い頃少年工で労災を受けた』と言った。直接経験したから違う扱いをするだろうと思った。」「もちろん大統領になったからといって、自分の思い通りになるわけではないということは私も知っているが、その言葉が心に響いた」と話した。
ムン・ヘヨン氏は『死の仕事場を人生の仕事場に変える』という大統領の前提自体を、信じなかった。今後も引き続き仕事場で人は死んでいくという考えからだ。ムン・ヘヨン氏は「大統領が街頭にいる遺族の心を推し量ってくれたこと自体は大きな慰めになるが、明らかに労災はまた起きるだろう。」「感謝するが、実践的な行動がもう少し伴って欲しいという願いが着いてくる」と話した。

市民災害の遺族だけを招いた大統領に失望
「労災を止めるためには、構造から直さなければならない」
李在明大統領の意志に疑問を投げかける見方もある。大統領は16日に世越(セウォル)号惨事、梨泰院(イテウォン)惨事、五松(オソン)地下車道惨事、済州航空旅客機惨事の遺族らに会う予定だ。労災の遺族たちはこの集いに招待されなかった。アリセル労災被害家族協議会のキム・テユン共同代表は「労災と関連した他の懇談会の日程があるようでもなく、どんな基準で惨事を選定したのかも解らない。」「不法派遣、惨事に対応する行政安全部マニュアルなどが網羅された惨事がアリセルだが、懇談会から抜けたのは、移住労働者に対するまた別の差別ではないかという気持ちまで生じ、(記者会見での発言も)宣言的なようだ」と話した。
信頼とは別に、遺族たちは、大統領の言葉が言葉だけで終わってはならないということには、声を一つにした。李在明大統領は大統領選挙の時期に「仕事をしたり、怪我をしたり、死なないように、仕事をしているすべての人のための労働安全保健体系の構築」という公約を出し、政府内の労働安全保健体系を統合・運営すると約束したが、内容が具体的でないという指摘を受けた。
労働部・産業安全保健本部を産業安全保健庁に昇格、危険性評価に処罰条項を新設、作業中止権の保障、重大災害処罰などに関する法律(重大災害処罰法)の死角地帯解消など、実質的な法・制度の改善案が出てこなければならないという意見が後に続いた。ムン・ヘヨン氏は「罰金数百万ウォンではなく、家族を失ったきちんとした命の値段程度の処罰を、会社は受けるべきだ。」「企業成長よりは生命、一人とその人を失った残った家族が考慮されなければならない時が、今は来るべきではないかと考える」と話した。
キム・ミスク理事長は、良質の雇用が作られれば、労災も自然に減るだろうと話した。「非正規職であれば、解雇されるかという危険でも話もできず、そのようなことが良い雇用と見ることはできないのではないか。」「誰もが仕事をしても危険でない雇用を作らなければならない」と強調した。
2025年7月4日 キム・ハンニョン記者 毎日労働ニュース
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