アスベスト管理に対する安全衛生庁(HSE)のアプローチ「3 戦略的アプローチの採用」-イギリス下院労働・年金委員会報告書から, 2022.4.21

アスベスト管理に対する安全衛生庁(HSE)のアプローチ-イギリス下院労働・年金委員会報告書,2022.4.21
1 はじめに
2 今日のアスベスト・リスク
3 戦略的アプローチの採用
4 HSEによる執行
5 アスベスト産業の規制
結論と勧告
付録1:アスベスト曝露限界値
付録2:国際的アプローチ

「そのまま」管理か除去か

30. アスベスト規則を補完する承認実施基準[Approved Code of Practice]は、アスベストが良好な状態にあり、よく保護されていて、攪乱されそうにない場合には、義務保持者はそれをその場所に残しておくことができるとしている。

31. われわれは、政府、HSEとアスベスト規則が、アスベスト除去をより強調すべきかどうかについて異なる意見を聞いた。労働組合、一部の被害者代表やキャンペーン団体はわれわれに、可能な場合には除去を支持すると話した。
・TUC[労働組合会議]は、良好な状態にあり、攪乱されそうにないアスベストは、その場所に残すことができるというこれまでの助言は、「常に一時的措置と考えられてきた」と述べた。職場はいまや、「すべてのアスベストを特定、管理、及び安全に除去・廃棄する計画」をもつべきであると述べた。
・GMB労働組合は、現行のアスベスト規則は、「何もしないことを正当化し、是正の費用を回避するために、義務保持者が『良好な状態にある』というゆるい定義を採用することが可能」であることから、「そのまま残された封じ込めされたアスベストは除去するよりも安全であるという仮定を取り除く」ように改訂すべきであると述べた。
・通信労働組合は、その「強く堅持している見解」は、「イギリスで進行中のアスベスト危機は、たんにアスベストのレベルを測定し、アスベストをそのまま維持して管理することによっては解決されない」ということであると述べた。
・アスベスト被害者支援団体フォーラムは、アスベストの除去に対する現在の規制アプローチは、「無節操な義務保持者に、アスベストをいつまでもそのままにしておく余地をあまりにも与えすぎている」と述べた。その見解によれば、「遅かれ早かれ[アスベスト含有物質は]劣化したり、攪乱されたりして…生命を危険にさらす」。
・労働安全衛生に関する全政党議員連盟はその2015年報告書のなかで、「アスベストをその場所で管理する方針を維持することは、もはや適切ではなく、変更されなければならない」と言っている。報告書は、「イギリスで中皮腫を根絶する[ための]唯一の方法は、アスベストを除去することによる[ものである]」と続けている。それは、「遅くとも2035年」までに「イギリスのすべての職場においてアスベストを根絶するための明確なスケジュール」を要求している。
・2020年3月にCharles Pickles氏は、アスベストを管理する義務は「証拠に基づき、リスクに基づいた、段階的な除去を実現するために…強化する必要がある」と発言した。彼は、「資金に限りがあることから、段階的に行われなければならない」と述べた。2021年11月に彼はわれわれに、「…現在の規制ではわれわれの安全を確保できず」、建物の老朽化が進むにつれて、「繊維を飛散する可能性は高くなる」と話した。彼は、約60年前に建設されたプレハブ建設であるシステムビルド「CLASP」学校に懸念があると言って、その築年齢、使用方法やアスベストの種類はリスクが「たんにそのまま管理する政策で対処するには高すぎる」と説明した。労働組合共同アスベスト委員会も、安全であり得ないCLASPタイプの建物の解体・代替を要求している。

35. アスベスト除去をより一般的かつ迅速に行うことに警戒を表明する者もいた。Peto教授は2021年12月にわれわれに、大規模に除去を行うことが曝露のリスクを増加させることを懸念していると話した。彼は、「[アスベストが]設置されている間または設置後すぐに、建物内の深刻な環境曝露が生じたという非常に強力な証拠がある」と述べた。ひいては、「アスベストを除去することによって問題を再現する現実の危険性がある」と、彼は言う。彼は、1980年代に行われた実験では、「アスベストをすべて除去した建物では、除去中にレベルが非常に上がり」、また、「6か月後に再び建物が占拠されたときにはさらに高かった」と付け加えた。彼はわれわれに、「アスベストはがんを引き起こすから、われわれはそれをすべて除去しなければならない」という単純な質問ではないと話した。

36. 「Airtight on Asbestos」キャンペーンは、除去計画が意図しない曝露の増加につながるかもしれないというPeto教授の主張は、「証拠がわずか、またはまったくない憶測に基づいたものである」と述べた。さらに書面による証拠でPeto教授は、「費用-便益的影響を考慮」しない、また、学校に関しては教師や生徒についての現在の曝露レベルに関するより多くのデータを得ることをしない、アスベスト除去の全国計画-及び大気測定-に対する反対を繰り返した。しかし、彼は、「アスベスト除去が計画された少数のCLASP学校とその他の学校のランダムサンプル」を対象に、「アスベスト除去の前後」に電子顕微鏡を用いて「系統的な長期大気サンプリング」を行うパイロット調査は可能だと言った。彼は、これを「1975年以降生まれの教師と1995年以降生まれの若者の肺内アスベスト不可に関する調査」と組み合わせることが可能であり、この種の調査は、「ほとんどのアスベストが信頼性の高い測定ができない偶発的大量曝露により吸入される可能性」を含め、「難しい諸問題」に対する理解を改善するのに役立つだろうと述べた。

37. 専門家団体である労働安全衛生協会(IOSH)も、「『そのまま[in situ]』管理と除去・廃棄の双方に関連するハザーズとリスク」があると述べた。非営利の研究機関である職業計測研究所(IOM)も、「アスベスト管理に関わるリスクが除去と建物の再利用の加速によるリスクを上回るかどうか、またどのような条件で上回るのか明らかにするための、十分に計画された研究計画」が必要だと述べた。IOMは、「これらの問題について限られた証拠しかない」が、「異なる戦略やシナリオによる健康に対するリスクを推計するためのデータを収集することは可能なはずである」と言う。John Cherrie教授はわれわれに、IOMは「アスベストの将来の潜在的リスクの体系的評価と除去計画をもつことの利益または不利益を探る方法としてこれを利用すること…を提唱してきたと話した。彼は、「われわれは、建物の解体や建物の修復のプロセスのゆえに、建物からのアスベストの除去を時がたつにつれゆっくりと進めている」が、このプロセスを早くすべきか遅くすべきかという質問に対しては、「われわれは、どちらか一方と言えるような証拠をもっていない」と言った。

38. 一方、専門家団体である英国職業衛生協会の最高責任者であるKevin Bampton教授も、アスベスト廃棄の用意を「郵便番号宝くじ」と表現して、除去計画を安全に加速させるためのアスベスト市場の現在のキャパシティに疑問を呈した。彼は、「時間を設定するとすれば、われわれはいくらかの避難口があることを確保しなければならない」と付け加えた。

39. HSEは、アスベスト含有物質の除去は、「アスベスト含有物質をその場所に残しておくことに伴うリスクが除去に伴うリスクを上回るのであれば、積極的に検討」されなければならないと述べた。われわれに、そうすることのリスクのゆえに、イギリスにおけるアスベスト含有物質の一般的な除去を義務づけてはいないと話した。

「[…]HSEは、除去することが危険な作業であり、当該労働者をこの著しく増大するリスクに曝露させることから、イギリスにおいてすべてのアスベスト含有物質の除去を義務づけてはいない。イギリスが…大規模な除去計画に着手するとすれば、除去から生じる曝露のリスクとそのまま残しておくことに伴うリスクの間のバランスを慎重に考慮する必要がある。イギリスの建物に存在するアスベストの量、分布と種類、能力のあるアスベスト除去業者の利用可能性、アスベスト廃棄物処理チェーンへの影響に関するさらなる情報が必要である。」

40. HSEによって促進された2015年の関係者ワークショップで、アスベストに関する3つの今後の研究優先事項が確認された。3つのうち2つの分野は、すべてのリスクと利益及び安全な除去慣行の範囲を考慮して、アスベストをそのまま管理するべきか、あるいは除去すべきかという問題に関連したものである。HSEはわれわれに、「昨年はCOVIDのために研究能力が制限され、[これらの研究課題に対処する]進展が制限された」と話した。パンデミック前数年間の進展も比較的限定されていた。HSEは、そのまま対除去のアスベスト管理の比較リスク評価について「間もなく…作業を再開する予定」と言いながら、アスベスト規則の現在の法定レビューでこの分析による結果を使用することは予定していないことを示した。「アスベスト管理と安全な除去の有効性に関するエビデンスベース」を構築することを目的とした研究について、HSEは、認可アスベスト除去作業者の個人曝露を測定する研究の完了(上記第2章参照)に続いて、現在「今後の作業について費用を計上する計画はない」と述べた。

41. Sarah Albon氏は、「これらの[アスベスト含有]物質の一部がどれくらい長く攪乱されずにあり、損傷されずに残るか、われわれが知っているとは思わない」と述べたが、以下のようにも言った。

「イギリスの計画は、アスベストをいつまでも残しておくことだけだと言うことは正しくない。われわれはまた、必要に応じて、アスベストはイギリスの建物から徐々に除去されるべきであると考えている。それはリスクを生じさせ、もし攪乱されなければリスクは比較的低いが、それでもそこにあるのだから、われわれは除去することをめざすべきである。しかし、イギリスの状況で適切だと考えないことは、それに期限を設定することである。理由のひとつは、膨大な量があることである。」

42. 障害者・保健・労働大臣のChloe Smith下院議員は2月2日にわれわれに、政府は「非居住用建物にもはやアスベストが存在しないようにすることに向けて-時間をかけ、かつもっとも安全なやり方で-取り組むことは正しいと明確に表明している」と話した。しかし、彼女は、この目標は「私が指示することのできる戦略文書」の一部ではないことも明らかにした。さらに彼女は、政府の見解が以下のとおりであることを明らかにした。

「[…]建物が良好な状態にある場合には、行う最善のことはアスベストについて計画をもつことであって、除去はそれが予防するよりも多くの曝露を生み出す可能性があることから、積極的に除去を行うことではない。」

長期的統合戦略

43. Liz Darlison氏はわれわれに、HSEの規制的役割よりはるかに広いアスベストの遺産に対処するために、「国家タスクフォース」が必要であると話した。彼女は、フランスの事例の上に構築する、「至るところにあるこの発がん物質をわが国から取り除くための40年ビジョン」が必要だと述べた。フランス労働省のNicolas Bessot氏はわれわれに、フランスには「40年のうちにすべての建物からアスベストを除去しなければならないとした一般的計画がある」と話した。ポーランドでは、積極的にすべてのアスベストを除去することを目的にした「アスベスト除去計画」がある。ポーランドの計画には、建物所有者に対する政府の金融助成金も含まれている。

44. 英国職業衛生協会も、「アスベストは国家横断的な戦略を必要としている」と主張した。それは、「将来の傾向、とくにグリーン・エコノミーの発展」や、アスベスト繊維への職場曝露に対するこれらの傾向の可能性のある影響「について考慮する必要がある」と述べた。彼は、「建物は永遠に続くわけではない」、「いまは安全で、攪乱されるおそれのないものも、どこかの時点で攪乱されるようになる」と言った。英国職業衛生協会はまた、安全なアスベスト除去に対する財政的・金融的インセンティブの改善は、「より効果的な規制体制に対する必要な補完措置」だろうとも述べた。同協会は、「よりよいアスベスト管理のために規制システムを統合する大きな機会を逸している」と付け加えた。

45. 社会住宅に関するアスベスト規則のギャップと見ていることに言及した証人もいる。一定の居住用建物の共用部分はアスベスト規則の対象になる一方で、個々の居住用施設(例えばフラット、居室または家屋)はそうではない。社会住宅はより広い規制の対象であり、家主が適切に維持作業を実施するものと期待されている。にもかかわらず、アスベスト調査者・分析者を代表する業界団体であるアスベスト分析・コンサルタント協会は、アスベスト規則が社会住宅内のすべての区画を対象としていないことは、その「最大の欠点」であると述べた。労働組合UNITEも、「この住宅ストックの非常に劣悪な状態」のゆえに、「社会住宅についてとりわけ懸念している」と述べた。一方、Joanne Gordon氏はわれわれに、会員は社会住宅におけるアスベスト管理を懸念していると話した。彼女は、最近のひとつの事例を紹介した。

「[…]月曜日になってから、借りた家に建築業者が入ったという女性から電話があった。彼らは、アスベストがあるかどうかわからないが、ともかく作業をしようとしたところ…アスベストであることがわかった。建築業者もおそらく知らないだろう。」

46. また、IOSHは、ネットゼロへの移行が建物の大規模な改修につながり、「その結果、大量のアスベストが攪乱されるだろう」と述べた。また、「建物のより広い管理の一部としてとられるアプローチ」を提案している。われわれに対する証拠のなかでNicolas Bessot氏も、建物の改修の危険性を認めている。彼は、このことが、「繊維を飛散させる可能性のある」作業を行おうとする建物所有者または企業は、当該作業開始前に「認可を受けた業者」により建物のチェックを受けなければならないなどの、2017年のフランスのアスベスト規制強化につながったと述べた。それに続くいかなる作業も、当該業者の勧告に従わなければならない。この新規制は、2020年に施行された。

47. Sarah Albon氏は、HSEは他の政府部局と協力して、建物の大規模改修に対処するために取り組んでいると述べた。

「われわれは、BEIS[ビジネス・エネルギー・産業戦略省]や他の部局と緊密に協力して、ネットゼロへの移行に伴いイギリス全体の建物で行われるだろう膨大な量の改修について検討し、様々な熱源、様々な暖房システムやよりよい断熱材について検討している。
建物で大量の改修・修復が行われ、その作業のなかでアスベストが攪乱されるリスクが高まるだろう。」

48. また、Chloe Smith氏は、政府のアスベスト管理戦略は「政府横断的な戦略」であり、「[アスベスト]規則を通じていのちを与えられる」と述べた。彼女は、「同時に[ネットゼロの達成と安全なアスベスト管理の]両方の目標を俯瞰できるように、BEISの同僚と協力していくだろう」と述べた。

49. 2012年アスベスト管理規則のもとでは、良好な状態で攪乱されそうにないアスベスト含有物質は、建物の義務保持者はその場所[in place]に残しておくことができるとされている。HSEが認めているように、アスベストを含有する建物は永遠に残るわけではないが、われわれは、これらの物質の一部がどれくらい長く、攪乱されず、損傷されずに残るのか知らない。TUC[労働組合会議]を含め一部の人々は、より強力なアスベスト除去プログラムを要求している。彼らは、現行の管理の方針は常に一時的な解決策であり、請負業者その他による想定外の攪乱は常に起こると主張している。彼らは、現在の体制は、アスベスト除去の費用に直面したときに、悪質な義務保持者に見て見ぬふりをする柔軟性を与えすぎていると考えている。

50. しかし、大規模な除去にはリスクと不確実性がつきものである。にもかかわらず、HSEは、除去の費用と便益をよりよく理解し、より安全な除去のための選択肢を評価するための研究への投資を怠ってきた。ネットゼロ目標への対応として、建物の改修が劇的に増加すると予想されることは、今後数十年間に、より多くのアスベスト含有物質が攪乱され、それによって費用-便益分析も変化するであろうことを意味している。アスベスト管理を個々の義務保持者に委ねる一連の規制に依存するだけでは不十分である。科学的、疫学的、財政的及び行動学的観点から何が最良であるかの証拠のうえに構築された、長期的アスベスト除去のための政府横断的かつ「システム全体にわたる」戦略が必要である。

51. [労働・年金]大臣とHSEはわれわれに対して、イギリスの建物からアスベストを徐々に安全に除去していくことが目標だと話した。われわれはその目標に同意するが、HSEも政府も、これを達成するための明確かつ包括的な戦略をはっきりと話さなかったことを大変残念に思っている。政府の目標に見合う十分に開発された長期的な計画、費用と便益の分析の上に構築され、より広範な政府の政策と統合されたものがないのである。さらに、政府はこれまで、すべてとは言わないまでも、ほとんどのアスベストを除去するための明確な時間枠を設定することによって、その意図を知らしめることに失敗している。

52. われわれは、40年以内に、非居住用建物からアスベストを除去する期限をいまこそ設定することを勧告する。政府とHSEは、まずもっともリスクの高いアスベストを除去すること、及び学校を含めもっともリスクの高い環境からの除去に焦点を置いた、これを達成するための戦略的計画を策定・公表すべきである。この計画は、まず第一に、関係する費用と便益を考慮しつつ、より安全なアスベストの除去・廃棄に関する証拠を迅速に改善することを約束すべきである。それは、ネットゼロ目標やより広範な廃棄物管理戦略と関連した建物環境の改善提案と統合-及びそれを全面的に考慮に入れるべきである。

規則第4条

53. アスベスト管理規則(2012年)第4条は義務保持者に対して、以下によってアスベストのリスクを管理することを義務づけている。
・何らかのアスベスト含有物質が存在するかどうか評価し、みつかった場合には、量、その所在と状態を記録する。
・すべてのアスベスト含有物質の所在と状態の最新の記録を作成及び維持する。
・特定された物質のリスクを評価し、当該リスクを管理する方法を設定した管理計画を策定する。
・計画は少なくとも12か月ごとに見直しながら、最新のものであり続けるように、実施し、見直し、監視する。
・それに関わる作業を行う、または攪乱する可能性のあるすべての者に、アスベスト含有物質の所在と状態に関する情報を提供する。

54. 規則は、アスベストを含有すると疑われる建物を調査し、またはアスベストの状態をチェックするために検査すべき頻度は特定していない。アスベスト規則に付随する承認実施基準は、検査の頻度は、アスベスト含有物質の所在や建物の用途などの要因に依存するとしている。しかし、アスベスト調査を踏まえて策定されるアスベスト管理規則は、少なくとも12か月ごとに見直されなければならない。

55. 本章でわれわれは、義務保持者がアスベストを管理するのを助けるために、定期的な環境大気測定をより使用するよう義務保持者に求める最近のキャンペーンについて検討する。われわれはまた、建物内のアスベストに関する情報をどのように利用者や現場で働く請負業者と共有するかについても検討する。最後にわれわれは、義務保持者の規則第4条の遵守について明らかな証拠があるかどうかを検討する。

アスベストの監視

56. アスベスト管理規則に記録されたすべての特定されたアスベスト含有物質は、目視によって検査され、その状態が義務保持者によって定期的に評価されなければならない。アスベスト規則は、アスベストについての定期的な大気の「環境」測定を要求してはいない。2019年にシンクタンクResPublicaに主導され、アスベスト・キャンペイナーによって支持された「Airtight on Asbestos」は、その安全を確保するために、HSEが、もっともリスクの高い建物の「定期的な感度のよい大気測定」を実施することも義務保持者に求めることを提案した。書面による証拠のなかで同キャンペーンは、「もっとも危険な種類のアスベスト(アモサイト-茶石綿)が建物の構造(例えば断熱材や鉄骨)に含まれ、パネルによって隠された、システムビルド「CLASP」学校の事例に言及しつつ、「アスベストが攪乱されているかどうかを目視で確認することがつねに可能とは限らない」と述べた。教育労働組合のグループである労働組合共同アスベスト委員会もその書面による証拠のなかで、アスベスト繊維の定期的な環境測定を要求する規則の欠如は、「アクセスすることのできないアスベストによるリスクが知られていないことを意味している」と言っている。

57. 「Airtight on Asbestos」キャンペーンは、そのような環境測定は、一部のリスクの高いアスベスト含有物質の分類を監視するために、定期的環境大気測定が用いられているフランスを含め、欧州におけるベストプラクティスとも一致している。フランス労働・雇用・統合省のNicolas Bessot氏はわれわれに、フランス政府は、「アスベスト繊維は見ることができない」ことから、大気測定を「重要」と考えていると話した。彼は、それらについては、「測定」はアスベストに対する戦争の重要な一部であると言った。

58. われわれが聞いたアスベスト産業の代表は、異なる見解をとった。アスベスト分析・コンサルタント協会管理委員会メンバーのDarren Evans氏は、目視による検査は、「それがアスベストが攪乱され、繊維が飛散する場合である」ことから「もっとも重要な要素」であると述べた。英国アスベスト訓練協会会長のGraham O’Mahony氏は、「アスベストが良好な状態にある建物または室内で大気検査をして、何らかの利益をみる」ことはできないと述べた。IOSHの安全衛生(政策・運用)責任者Ruth Wilkinson氏は、彼女は「目視検査対大気サンプリングについては同じ立場にいる」と述べた。彼女にとっては、「そうすることが必要な場合、攪乱があったかもしれず、除去した場所に再入場するための保証が必要かもしれない場合に、目視検査を行い、大気サンプリングを使用することが重要である」。一方、TUCも、大気測定体制の増強による追加的価値に疑問を呈した。TUCは、「進行中のアスベスト危機はたんにアスベスト・レベルを測定することによって解決はしないだろう」と述べ、代わりに、「公共建物からアスベストを根絶し、曝露のリスクを除去するコミットメント」が必要だと主張した。

59. Julian Peto教授も、定期的大気測定の現実性に疑問を呈した。彼はわれわれに、「今後10年間に建物の占有者にどのような累積曝露が進行していくかについて、何らかの正確な知識を与える大気測定を行うことが技術的に可能とは考えない」と話した。Peto教授は-疾病リスクの観点から鍵となる-累積曝露は、人々の肺を計測することによってもっともよく評価することができるというのが彼の見解だと述べた。労働組合共同アスベスト委員会と「Airtight on Asbestos」キャンペーンの双方は、Peto教授の証拠を聞いた後に、われわれに書いた。彼らは、学校などの個々の場所における積極的なアスベスト管理という具体的目的のためには-過去の曝露の影響を測定する-肺内繊維分析の寄与に疑問を呈した。

60. その回答のなかでHSEは、「フランスでとられているアプローチがイギリスでのアプローチに追加的利益を提供するという証拠はない」と述べた。HSEは、繊維が飛散するかどうかの主要な決定要因は、アスベスト含有物資の物理的状態であり、それは目視による検査によって評価することができると言う。われわれに対する証拠のなかでSarah Albon氏は、「なぜより多くの定期的な大気品質監視が行われていないのか知りたい一部の人々による誤解が時々ある」と話した。Albon氏は、アスベスト繊維の定期的な大気測定は「警告としては不十分な方法…」であり、損傷されていないアスベストは「吸入され、人々を害する可能性のある繊維を飛散する可能性がきわめて低い」というのがHSEの見解であると述べた。彼女は、「アスベストの性質とアスベスト繊維が重くすぐに沈降するという事実」は、大気測定のタイミングを慎重に図らない限り、間違った保証を与えるリスクがあることを意味していると述べた。しかし、Robin Howie氏は、アスベスト繊維が実際に、「長時間影響を受けた建物内の大気中に残る」可能性があることを示す証拠があると述べた。HSEは違う主張をする。HSEは、彼らの証拠は、「物理的損傷の結果生じた大気中アスベスト繊維は10秒後に50%、60秒後には90%減少・沈降する」ことを示しており、それによってHSEは、小さな繊維ほど沈降するのに時間がかかることを認めていると述べた。したがって、以下のように結論づけている。

「[…]適切な粉じん攪乱シミュレーション作業と結合されない限り、建物内で環境大気測定を実施する価値はわずかしかない。」

61. Albon氏はわれわれに、彼女が知っている限り、アスベストについて環境バックグラウンド曝露限界値を導入している国はなく、「何らかの作業または何らかの攪乱若しくは何か他のことがない場合、アスベストの量は安全または受容可能と宣言される」と述べた。彼女は、フランスなど一部の国が導入しているのは、「存在するアスベストを除去するか、またはいくつかの他のかたちの介入をするために、さらなる作業をする必要はないか、または何らかの作業をすべきか」理解するために、環境レベル監視を活用するという考え方であると言う。Curran教授は、HSEはさらに、「われわれ独自のアプローチを検証」するために、EUフォーラムに参加し続けていると述べた。

62. われわれは、アスベスト繊維の定期的測定のために大気測定の使用の大幅な拡大が必要であるということに納得していない。そのようなモニタリングは、アスベスト除去作業後の現場の評価や、潜在的に、例えばアスベスト含有物質が損傷または隠されている場合の管理上の判断に役立てるうえで、明らかに重要な要素である。また、繊維の飛散を測定する体系的かつ慎重にサンプリングされた研究計画の一部としても重要な役割をもっている。にもかかわらず、定期的な運用目的のためには、われわれが聞いた意見のバランスは、定期的な目視検査を引き続き優先すべきであるというものだった。
63.われわれは、HSEがイギリス及び権限を委譲された政府内の関係者と協力して、定期的なアスベスト繊維の環境大気測定に関連した証拠のレビュー・共有を継続するよう勧告する。われわれは、HSEが12か月以内に、これらの開発に関する政府の最新の評価に関する情報を書面で知らせるよう求める。

アスベスト・リスクのコミュニケーション

64. アスベスト規則は非居住用建物の義務保持者に対して、アスベストを攪乱させる可能性のある利用者と請負業者に、その所在と状態を知らせることを義務づけている。数人の証人は、建物内のアスベストの所在と状態に関する情報の周知は十分でないと報告した。
・労働組合共同アスベスト委員会は、彼らの証拠は、「義務保持者が実際には、[アスベスト]攪乱のレベルについて占有者と協議するのを怠っている」と述べた。
・Darren Evans氏は、アスベストの所在を記録した調査は「棚に置かれているだけ」のことが多いと述べた。彼は、それを「チェックボックス」と表現し、「管理計画のもっとも重要な点」と「施設を訪れる誰か、請負業者、メンテナンススタッフ等による攪乱を防止する要求事項」に関する「理解と現実の認識が不足している」と言った。
・Charles Pickles氏もわれわれに、紙の上の建物内のアスベストに関する情報は、建物の利用者がアクセス不能なことが多いと話した。彼は、「管理人の机の上の調査書類はまったく不透明」であり、また、「現行制度では主要なフロー」であると言う。
・IOSHは、「認可請負業者が、依頼人の管理手続のなかに含まれていない非認可下請業者を使用する」結果としての「2つの主要な曝露」について説明した。IOSHはまた、「アスベスト登録が調査結果や図面とともに3冊のレバー式アーチファイルで構成され」、義務保持者または他の素人、若しくは現場に行く請負業者にとって「解釈するのが複雑な作業だった」、大規模な現場を知っていると話した。

65. Kevin Bampton氏はわれわれに、アスベスト・リスクのコミュニケーションには「問題がある」と話した。彼は、施設または商品を購入する場合に、エネルギー効率に関する明確な情報が定期的に含められるエネルギー性能証明書との比較をしてみせた。彼は、アスベストについては同等の仕組みが実施されておらず、他の建物の情報技術を利用する機会もないと言う。この点についてCharles Pickles氏はわれわれに、建物利用者に対するデジタル保存された情報のコミュニケーションを改善するために、デジタル「QRコード」を利用することができると話した。

66. 建物内のアスベストに関する情報は、義務保持者から使用者・請負業者への伝達が不十分であることが多い。アスベストに関する情報を含めた調査・管理計画が、常に最新の利用可能な文書として維持されているとは限らない。アスベスト・リスクに関するコミュニケーションを改善するためにデジタル技術を活用する機会が失われようとしている。

67. われわれは、建物の請負業者・使用者にアスベスト情報・リスクを伝達する義務保持者の義務を明確にするために、HSEが義務保持者とともに取り組み、また彼らを手引きするよう勧告する。われわれはまた、HSEが政府内の他の部局と協力して、建物の管理及びパンデミックへの保健対応におけるデジタル技術の利用からの教訓を活用して、建物内のアスベストに関する情報の伝達・利用の方法の改善に資金援助するよう勧告する。

管理義務の遵守

68. 義務保持者とその組織は、アスベスト規則を遵守する費用を負担しなければならない。これは、彼らが遵守することを当然と思い込むことはできないことを意味している。Kevin Bampton教授はわれわれに、HSEによる監督のレベルは「どれだけのアスベストが攪乱され、どれだけうまく管理されているか知るには不十分である」と述べた。彼は、「知識に実際のギャップ」があり、誰かが「実際に何が起こっているか明確に伝えることができる」とは思わないと言う。Darren Evans氏も同様の意見だった。彼は、「HSEは非常に資金不足で、人材も不足」しており、アスベスト「規則は守られていると思っているが、わからない」と言った。

69. Graham O’Mahony氏は、規則は「それなりに有効」だと考えているが、最大の問題は建物の義務保持者と所有者にとって遵守にかかる費用であると話した。彼は、以下のように述べた。

「究極の管理は、何に費用をかけるかである。アスベストの場合、諸刃の剣であり、多くの組織にとって二重費用であり…アスベストを除去することは建物の所有者にとって何の得にもならない。建物の所有者が建物に低照度LED証明を設置すると決めた場合には、明らかにエネルギー費用を低減することになるが、アスベストについては管理に膨大な費用がかかり、多くの義務保持者は除去と修復の二重の費用に直面することになるだろう。」

70. Bampton教授はわれわれに、「分析者からは、物事がしなければならないようには管理されておらず、あるべきように監視されていないことを示唆する、多くの逸話的証拠が分析者から得られている」と話した。Ruth Wilkinson氏は、彼女がとくに懸念しているのは中小企業であり、「われわれはそこで何が起きているのかをどのように監視・チェックするのか」と述べた。IOSHは2018年に、500人の建設労働者の調査を委託した。その結果、調査回答者の3分の1(32%)が、新しい現場で作業を開始する前にアスベスト登録をチェックしたことがなかった。

71. UNITE労働組合は、「規則の遵守は万全ではなく、多くの組織が、建物内のアスベストの場所を特定することを怠っているか、または建物が荒廃するのを放置している」と述べた。TUCも、「アスベスト規則は、それが優れたものであっても、遵守されていない」と述べた。アスベスト業務を専門にしているThompsons Solicitors[法律事務所]は、イギリスの労働組合に代わって管理している独自の「アスベスト曝露登録」が、「現行のアスベスト規制が遵守されていないことを示している」と述べた。

72. 労働組合共同アスベスト委員会は、2021年に実施したシステムビルト「CLASP」学校への情報提供依頼の結果を説明した。これらの学校は、かなりのアスベスト含有物質を使用して建設された。回答した60校のうち、うち、37校がアスベストについての「最新の調査結果」をもっていると答えたが、義務保持者が「一定の高さ以上の場所を省略」するなど調査の限定をしていて、「すべてのアスベストの所在を特定」していたのは17校だけだった。

73. Sarah Albon氏はわれわれに、HSEは、ビジネスや組織の代表的な割合を監督するだけの資源を供給されていないと話した。彼女は、「監督であれ、コミュニケーションまたは教育であれ、リスクのもっとも高い分野に…的を絞る」よう心がけていると述べた。Albon氏は、(2021年10月に実施された)最新の建設業監督キャンペーンの結果は、完了した千件を超す監督のうち、アスベストが考慮された現場の「83%で遵守が持続」しており、現場の13%が「ほぼ問題がないが、改善が必要な分野がいくつかある」で、「遵守が本当に悪いレベルはわずか4%の現場」であったことを示していると述べた。
74.また、HSEは、教育省(DfE)と協力して、どのようにイングランドの学校におけるアスベスト管理を改善しているかについても説明した。HSEは、「CDC2プログラム」の一環として、イングランドにおける政府出資の学校と継続教育カレッジについての最新の状況データを収集するDfEの計画に言及した。HSEは、この調査には、「アスベスト管理義務を含む特定の保証項目」が含まれるだろうと述べた。しかし、CDC2プログラム・ガイド(2021年3月)は、調査チームはアスベスト登録・管理計画の存在はチェックするが、「内容はレビューしないだろう」ことを明らかにしている。

全国登録

75. われわれは、場合によっては、まず最初に公共建物を目標にして、非居住用建物に関する情報の一元的デジタル登録というアイデアが、アスベストに関する情報の改善とそれを効果的に管理する方法の改善に役立つかどうか尋ねた。「Airtight on Asbestos」キャンペーンは、証人のひとりCharles Pickles氏の支持を得て、以前、公共建物におけるすべてのアスベストの一元的登録を開発することを提言している。2001年に開始されたアスベスト登録キャンペーンも、全国的登録は「他の何らかの単一措置よりも、建物のアスベストの安全に責任を負う者(「義務保持者」)の注意を喚起するのにおそらく有効だろう」と述べた。TUCは、全国的登録が有用であり、「たしかに除去の対象となる場所を絞り込むのに役立ち、場所にアクセスする労働者その他の者に透明性を提供する」だろうことに同意した。しかし、TUCはまた、「すべての公共建物におけるアスベストの存在の記録を維持することは、HSEにとって非常に高価な作業になるだろう」とも考えている。

76. 英国職業衛生協会は同様に、HSEが全国的データベースを開発するのに最適な場所かどうか疑問を呈したが、とりわけ他のデータ、例えば傷害や執行についてのデータと連携させた場合の、その価値を認めている。全国的で、デジタル化されたデータベースを実施するための投資のレベルは比較的控えめだろうと示唆した者もいた。このアイデアを達成するために、2020年にコンサルタントであるAndrew Paten氏とDavid Ungoed-Thomas氏によって設立されたコミュニティ利益会社である英国全国アスベスト登録(UKNAR)は、「目的に合ったものを委託して構築するために必要な費用はわずか100万ポンド」で、アスベスト含有物質をもつ義務保持者は「建物当たり年100~200ポンドの年間ライセンス料を支払うことになろう」と述べた。UKNARは、「大規模なシステム間でシームレスに情報更新できるようにするためにいまやアプリケーション・プログラミング・インターフェースを開発・使用することができるので、義務保持者または彼らのコンサルタントがオンラインで最新の情報を容易にシステムにアップロードすることができる」と述べた。

77. HSEの分析で報告されているように、ポーランドは2017年に全国的「基本[base]」データベースを創設している。ロッテルダムのエラスムス医療センターのAlex Burdorf教授はわれわれに、オランダでは学校について一般の人々がアクセスできる「全国登録」があると話したが、彼は、これにはその他の公共建物は含まれていないと述べた。HSEもまたわれわれに、産業界の参加者によってアスベスト調査、管理及び除去情報が更新・追跡される、「LAVS」と呼ばれる、オランダのウエブベースのシステムについて言及した。HSEは、このシステムは「手続を簡素化し、透明性を高めることを意図したものである」と述べた。

78. ドイツ連邦職業衛生保健研究所(BAuA)のThomas Kuhlbusch教授は、ドイツにはアスベストの公的登録はないが、このトピックは多くの議論の対象になっており、賛成派は登録が透明性を高めるだろうと言っていると述べた。彼は、登録が更新を維持し続けられるかどうかに議論は集中していると言った。Nicolas Bessot氏は、フランスには、「アスベストに関する一般的なデータベースはない」が、「アスベスト除去計画に取り組んでおり」、2022年に利用可能になる見込みであると述べた。彼はまた、認可された業者によって行われた建物評価を記録する「一般的データベースについて検討している」が、部分的には「膨大な」費用がかかることから、決定には至っていないと述べた。

79. Charles Pickles氏はわれわれに、全国的データベースは責任説明を改善するだろうと話したが、データベースを維持するのはHSEの仕事ではないと主張した。彼は、「上位10のデータベースがイギリスの記録の80%かそのあたりを包含」し、「これら10のデータベースを連携させることが問題」というのが、彼の推計であると言った。彼は、全国的登録を開発するうえで「学校が良いスタート地点になるだろう」と考えている。

80. Darren Evans氏は、彼の業界団体は全国的デジタル登録というコンセプトを支持していると述べ、「抜けを目立たせるかもしれない」と述べた。Ruth Wilkinson氏も、IOSHは「透明性の目的のために登録を支持する」だろうと述べた。彼女は、登録が適切な情報を含んでいることを確保するために「明確なプロセスが実施されている」必要があり、また、建物の利用者に不安を生じさせる可能性を踏まえて、その内容の普及方法に注意が必要だろうと述べた。

81. Sarah Albon氏はわれわれに、「どのような登録も提供されるデータに応じて良いものになり」、また、「ごみを入れればごみしか出てこない」リスクがあると話した。彼女は、個々の建物についてすでに別々に保有されているデータを一元的に保有することは「行うのに費用がかかり」、義務保持者にとって定期的に更新することが「負担になる」可能性があると述べた。彼女は、「監査が非常に困難であり」、「全国レベルでデータを保有することでどのようなさらなる利益を、誰が得るか予測するのが難しい」と付け加えた。障害者・保険・労働大臣であるChloe Smith下院議員は、「全国的登録が義務保持者に課せられた責任を希薄化するのは見たくない」と述べた。

82. 建物の義務保持者がアスベスト管理規則の要求事項を遵守しているかどうかは、ほとんど知られていない。HSEは、その監督計画からいくらかのデータを収集しているものの、アスベストを含有する非居住用施設のごく一部をカバーしているにすぎない。HSEは、アスベストに関する情報の一元的登録がよりよい遵守データを提供するかどうか疑問視している。われわれの見解は、データの一元的報告の実施は、場合によっては、データが一元的に共有され、外部レビューの対象になるかもしれないと知っていれば、義務保持者はその施設内のアスベストについて調査を委託し、記録を更新するだろうというものである。その結果得られたデータベースは、執行活動のためのサンプリングの枠組みを提供するとともに、リスクに基づきかつ対象を絞った執行アプローチを引き出すために分析することができるだろう。また、アスベストの遺産を管理するための長期的戦略的アプローチを支援する重要な背景データも提供するだろう。しかし、われわれは、中央登録の開発を主導するのは政府デジタルサービスなど政府内の他の部門であり、このコンセプトは慎重に検証する必要があることは認めている。

83.われわれは、HSEが政府内の他の部門と協力して、所在と種類を記述した、非居住用建物内のアスベストの一元的デジタル登録を開発するよう勧告する。まず最初に、一元的登録のコンセプトは、学校や病院などの公共建物のアスベスト・データを使って検証することができる。一方でわれわれは、HSEが、義務保持者がアスベスト規則に基づく義務を実際にどの程度遵守しているか確認するための監督計画を補足する調査研究を実施することも勧告する。