アスベスト管理に対する安全衛生庁(HSE)のアプローチ「付録2:国際的アプローチ」-イギリス下院労働・年金委員会報告書から, 2022.4.21

アスベスト管理に対する安全衛生庁(HSE)のアプローチ-イギリス下院労働・年金委員会報告書,2022.4.21
1 はじめに
2 今日のアスベスト・リスク
3 戦略的アプローチの採用
4 HSEによる執行
5 アスベスト産業の規制
結論と勧告
付録1:アスベスト曝露限界値
付録2:国際的アプローチ

1)以下の表は、ドイツ[独]、オランダ[蘭]、フランス[仏]でとられているアスベストを規制するアプローチに関する詳細を示している。われわれの証人であるThomas Kuhlbusch教授(独)、Alex Burdorf教授(蘭)、Nicolas Bessot氏(仏)によって提供された追加的証拠に基づいている。
編注:日本[日]の情報を追加した。

アスベスト政策・規制に責任のある政府の省・機関は?

英:労働・年金省と安全衛生庁。鉄道道路事務所と地方自治体もアスベスト規制の執行に責任を負っている。

独:連邦内務・コミュニティ省は、アスベスト作業に関係しない政策・規制制度に責任を負う。連邦労働・社会問題省は、アスベスト含有物質が関わる建設及び建物改修作業に関連した政策・規制制度に責任を負う。連邦労働・社会問題省とつながりのある連邦労働安全衛生研究所(BAuA)は、アスベストに関するものを含め労働安全規制に関して調査研究を実施し、政府諸省に助言する。連邦州は、アスベスト規制の執行に責任を負う。

蘭:社会問題・雇用省。使用者、被用者と独立した専門家からなるオランダ社会経済評議会も助言を提供する。

仏:(建物作業が計画されていない場合)保健省。(アスベスト含有物質が関わるかもしれない建物作業が計画されている場合には)労働省。地域保健機関と地方分権化された労働監督官を通じてGeneral Management of Labourも規制の執行に責任を負う。企業の監査役も勘定証明の一部として役割を負う。

日:厚生労働省・環境省ほか。

アスベストについての職業曝露限界値(繊維/cm3)は?

英:0.1繊維/cm3の管理限界(0.6繊維/cm3の短時間曝露限界)。0.01繊維/cm3のアスベスト除去作業後に一般占有のために除去現場を引き渡す前のクリアランスレベル指標。

独:0.1繊維/cm3(許容濃度)。0.01繊維/cm3(受入濃度)。ドイツでは、超えてはならない「許容[tolerance]」と達成されるべき「受入[accep-tance]」を区別している。受入濃度の0.001繊維/cm3への引き下げを議論中。0.0005繊維/cm3(アスベスト除去作業後一般占有のために除去現場を引き渡す前のクリアランスレベル指標)。

蘭:0.002繊維/cm3(2017年1月以降)。規制は、使用者はアスベスト曝露レベルを「技術的に可能な限り低く」低減させることを求められることも明らかにしている。アスベストについての職業曝露限界値は法的拘束力がある(勧告ではない)。

仏:0.01繊維/cm3。規制は、使用者はアスベスト曝露レベルを「技術的に可能な限り低く」低減させること、したがって職業曝露限界値を「十分に下回る曝露」を達成することを求められることも明らかにしている。0.005繊維/cm3(労働法典で参照されているアスベスト除去作業後のクリアランスレベル指標)。この限界値の0.002繊維/cm3への引き下げを議論中。

日:0.15繊維/cm3。クリアランスレベル指標は設定されていない。

環境曝露限界値(繊維/cm3)は?

英:環境限界値はない。

独:環境限界値はない。

蘭:0.0028繊維/cm3クリソタイル(白石綿)。0.0003繊維/cm3(アモサイトまたは茶石綿を含め)アンフィボル。想定外のアスベスト飛散における評価に用いられる「望ましい限界値」とされている。

仏:0.005繊維/cm3。「それを超えた場合に建物の所有者が(アスベストを含有する一定の物質または製品を除去するなど)一定の措置を講じなければならない閾値」とされている。環境曝露限界値の0.002繊維/cm3への引き下げを議論中。

日:環境限界値は設定されていない。

アスベストがみつかった場合にそのまま[in situ]残すことはできるか?

英:アスベストが良好な状態で、よく保護されていてかつ攪乱されそうにない場合には、アスベスト含有物質を建物内に残しておくことができる。

独:アスベストが損傷されておらず、堅固に埋め込まれ、アスベスト繊維の飛散が予期されない場合には、アスベスト含有物質を建物内に残しておくことができる。いったん取り扱い[handling]がされたら、アスベストは建物から除去されなければならない(何が「取り扱い」を構成するかはガイドラインで定義されている)。

蘭:アスベストが損傷されておらず、アスベスト繊維の飛散が予期されない場合には、アスベスト含有物質を建物内に残しておくことができる。飛散性物質から繊維が飛散するリスクがある場合、または建物が改修若しくは改造される場合には、アスベストは除去されなければならない。

仏:アスベストが損傷されておらず、(0.005繊維/cm3を超える)アスベスト繊維の飛散が予期されない場合には、アスベスト含有物質を建物内に残しておくことができる。アスベスト含有物質が劣化し、0.005繊維/cm3を超える飛散がある場合には、建物の所有者は曝露リスクを低減させることを求められるだろう。建物の要素の除去を含め建物作業が計画され、当該作業の範囲内にアスベストが存在する場合には、たとえそれがよい状態に合ったとしてもこのアスベストは除去されなければならない。アスベストをそのまま残すことが受け入れ可能と考えられる場合には、物質の分類に応じて、規則は建物の所有者に、その状態を評価するために少なくとも3年ごとにアスベストがレビューされているようにすることを求められるかもしれない。

日:他国のような条件なしに、残しておくことができる-基本的に何らかの建物作業が計画されないと規制が発動されない。

非居住用建物の調査者は認証または認定されていなければならないか?

英:法的には公式の認証または認定は求められていない。

独:法的には公式の認証または認定は求められていない。

蘭:必要(「Ascert」制度)。

仏:必要。(訓練提供者についての認証要件を含め)2つの認証のレベルがある。

日:2023年10月から厚生労働大臣が定める講習修了者でなければならないという規制が実施される。

非居住用建物にアスベスト管理計画は必要とされているか?

英:必要。

独:助言されているが、必要とされてはいない。

蘭:必要。建物の「リスク登録・評価」の一部として。

仏:必要。アスベスト技術ファイルの一部として。

日:必要とされていない。

非居住用建物で目視による調査に加えてアスベストの定期的大気測定が行われているか?

英:行われていない。大気サンプリングは、リスクアセスメント作業、及び、アスベスト含有物質が関わる作業完了後にクリアランスレベルが達成されていることをチェックするために使われる。

独:行われていない。大気サンプリングは、リスクアセスメント作業、及び、アスベスト含有物質が関わる作業完了後にクリアランスレベルが達成されていることをチェックするために使われる。

蘭:行われていない。大気サンプリングは、普通目視で発見された後のリスクレベルの評価のための使用に限られている。

仏:行われている。一部の範疇のアスベスト含有物質について、繊維値が0.005繊維/cm3未満であることを確保するために使用される。

日:行われていない。

アスベスト繊維の大気測定はいつ行われるか?このために定期的及び大部分の場合どのような顕微鏡技術が使用されるか?

英:位相差顕微鏡。

独:走査型電子顕微鏡がもっとも多く使用される方法。位相差顕微鏡も職場の大気中のアスベスト分析のために使用される。

蘭:「通常の状態」については位相差顕微鏡が使用される。走査型電子顕微鏡は「アスベスト除去のための全国アスベスト追跡システムへの届出が必要なリスクの高い状態」について使用される。

仏:透過型電子顕微鏡。

日:基本的に位相差顕微鏡。

非居住用建物のアスベストの全国登録が維持されているか?

英:いない。公共建物内のアスベストについての2つの全国登録。-デジタル・アスベスト登録:試験運用中、オープンアクセスにしていない、テクニカル・ドローイング、等。-小・中学校アスベスト登録:アスベスト情報を付けた学校建物のマップ、

独:いない。オープンアクセス。

蘭:いる。

仏:いない。

日:いない。

アスベストを除去する業者は認可[ライセンス]を受けていなければならないか?

英:必要-0.1繊維/cm3の管理限界値または短時間曝露限界値を超えると予期される作業、若しくはアスベスト断熱板など一定のリスクの高いアスベスト含有物質が関わる作業について。不要-管理限界値または短時間曝露限界値を超えないと予期される作業、若しくは例えば一定のアスベスト製品が関わる作業について。

独:必要。

蘭:必要。アスベストの量が少なく、リスクが低いと考えられる場合の一部の例外。

仏:必要。

日:認可[ライセンス]制度がない。