病院から籠城現場まで…病んだ「チョン・テイルたち」をケアする人々-韓国労働者と緑色病院の活動/JTBC 2020年11月19日

鈴木明(在ソウル)

1970年11月13日、ソウルの縫製労働者チョン・テイル(全泰壱)が、「勤労基準法を守れ」「我々は機械ではない」と自らの体に火を放ち、訴えました。彼は、劣悪な労働環境が労働者の健康を害していることを、労働者への実態調査をとおして把握し、法違反の改善を労働部、大統領に求めましたが、対応はありませんでした。チョン・テイルと彼の仲間は、労働者を保護することのできない「勤労基準法」の本を火刑に処するデモンストレーションを準備しましたが、権力の弾圧で集会は不発となる中、チョンテイルは意に秘めていた行動をとったのでした。先週、チョンテイル烈士50周年の多くの報道がされました。

ご紹介するニュースは、このチョン・テイルの名前をタイトルにしたものです。昨年、全国安全センター総会で講演したイム・サンヒョクさんが院長を務める「緑色病院」のスタッフの活動を報道しています。

JTBC<ニュースルーム> 2020年11月19日病院から籠城現場まで…病んだ「チョン・テイルたち」をケアする人々

<アンカー> 死なずに働く権利、あまりにも当然の文句ですが、現実にはそうではありません。仕事中に落ちて、窒息して命を落とした人々。また、働いて病気や怪我をする人まで合わせると、今年の上半期だけで、その数が5万人を超えます。このように多くてもすぐ忘れられたりしますが、一方では、病気の労働者たちを黙々とケアする人たちがいます。

<密着カメラ>ホン・ジヨン記者が、その人たちに会ってみました。

〈記者〉
ある労働者のレントゲン画面です。

肺に見える穴が、年々、広くなります。
最も深刻な段階の「じん肺1級」の判定を受けました。
映像の主人公を診療しに行きます。

『こんにちは、具合はどうでしたか、今日の昼間は?(大丈夫でした。)このじん肺というのは、まあ、ほとんど良くなることはないから。』

20年以上、大理石加工の仕事をしました。

[キム・ジョングン/石材加工労働者:2015年度に、いつだったか急に肺から水が出てきました。]

息をするのがつらく、マスク着用も困難です。
それでも労災が認められて、もうすぐ肺の移植を受けることにしました。

[キム・ジョングン/石材加工労働者:1988年度に石材技能士の資格を取ったことがあったんです。それを見つけて(労災認定の)恩恵を受けたんです。私は幸運です。正直、すごくラッキーです。]

すぐ向かいのベットには、江原(カンウォン)道、太白(テベク)の炭鉱で15年間働いた労働者がいます。石炭を掘って吸い込んだ粉のため、やはりじん肺を患っています。

[チャン・ヤンデ/炭鉱労働者:(朝昼晩と、これをずっと使うんですか?)そうだよ。息を吸うのが楽になる。呼吸器(道具)を使うのが助けになるんだと。]

これ以上、どんな仕事もできない状態です。

[チャン・ヤンデ/炭鉱労働者:食堂の仕事もして、渡り歩いて、これ以上はダメみたいで…咳がひどいじゃない。石炭の中に石みたいなのがあるじゃない。カッて吐いてみると、石の塊みたいなのが出てくるよ。]

彼らがいるところは、緑色病院です。

韓国最大規模の労働災害であるウォンジン(源進)レーヨン事件の被害労働者をケアするため、20年前に誕生しました。

[ユン・ガンウ/緑色病院職業環境医学科:職業病は社会が恥ずべき病で、過去にはとてもひどい埃でも、マスクすら支給されない作業環境で働かれたので…]

[イム・サンヒョク/緑色病院長:20年前も今も労働者が持っている病気、事故の量は、そんなに減りはしなかったです。]

チョン・テイル(全泰壱)烈士50周忌、2020年の労働現場は、未だに劣悪です。
労働災害の労働者のため、医療陣と相談士、研究陣が一丸となりました。
「人権治癒119」です。

[イム・サンヒョク/緑色病院長:特殊雇用労働者の問題、次に、脆弱な小規模事業場労働者の健康の問題は、むしろより酷くなっている。]

心の傷を治療する心理相談も行います。
40代の女性Aさんは、去る5月、プチョン(富天)のクーパン物流センターで働きました。
短期アルバイトで働き、コロナ19に感染しました。

[寝て起きても、夢じゃないのか。本当に悪夢を見たよう。これは夢だ、早く覚めなきゃ…]

うつ病の薬では足りず、ずっと相談を受けています。

[Aさん・クーパン短期労働者(コロナ19集団感染):子どもが学生なので、通っている塾から連絡が来て。外で通り過ぎると、あの家だと後ろ指されて、やたらと避けて通って。]

相談士たちは、労働災害が精神的な後遺症も残し、引き続きケアしなければならないと説明します。

[ホン・ジョンヨン/社会活動家と労働者心理治癒ネットワーク「トントントク」:職場で困難にあう時、いつも働くところなので、より話をするのが大変だったりします。]

労働者を直接訪ねたりもします。
今度は、国会正門でハンスト中の労働者たちです。
先月にもここで2週間ハンスト闘争を繰り広げ、病院に運ばれたりもしました。
行ってみましょう。

SKブロードバンド傘下の下請会社の労働者たちで、7月に全北全州で働いていた労働者8人が、忠清地域に不当配転され、座り込みを続けてきました。
国会が法で非正規職労働者を保護せよと、声を挙げています。

「(腕を)楽に膝に下ろしてください。もう一回測りますね。血圧が150の100ですね。(3日間このくらいです。)あら、そう。」

いつでも健康が急に悪くなり得ます。

[塩も少し備えて取るのが良いと思います。このハンストは期限があるんですか?(いいえ。)期限がないんですか。(ハンストの目的があるので…)]

医療陣はハンストを、労働者の最後の手段だと言います。

[イ・ボラ/緑色病院呼吸器内科:前にハンストをして健康を害し、倒れて病院に担ぎ込まれたのを見たのに、また…]

闘う労働者への現場の診療も、労働環境改善のための活動だと言います。

[イ・ボラ/緑色病院呼吸器内科:尊厳を守るために、不当さを知らせるために闘うことに、役立ちたいです。診察室に座って患者を待つのは、来ることができる患者だけ診るという姿勢ですよ。]

今この瞬間にも、多くの労働者が病気にかかったり、負傷し倒れています。
現場の医療陣と相談士は、皆が連帯し、死なずに健康に働く権利を守らなければならないと言います。
彼らの犠牲が無駄にならないよう、健康な労働環境を作ることが私たちの役割です。