メンタル労災・全国一斉ほっとライン2024【フリーダイヤル0120-631-202】10/11、12パワハラ・セクハラ・カスハラ相談を実施します~10/10は「世界メンタルヘルスデー」
目次
北海道・山梨・東京・神奈川・愛知・大阪・京都・兵庫・岡山・広島・徳島・福岡など日本全国で無料電話相談
本年も標記ホットラインを行います。
10月11日(金)、12日(土)の両日、10時から18時。
主催は全国労働安全衛生センター メンタルヘルス・ハラスメント対策局です。
本ホットラインには、ひごろ現場でメンタルヘルス・ハラスメント相談に対応している全国各地の労働組合等が協力します。
【協力団体】コミュニティ・ユニオン全国ネットワーク、札幌地域労組、下町ユニオン、よこはまシティユニオン、女のユニオン・かながわ、山梨ユニオン、名古屋ふれあいユニオン、名古屋シティユニオン、愛知健康センター、きょうとユニオン、なにわユニオン、ひょうごユニオン、ひょうご働く人の相談室、ユニオンおかやま、スクラムユニオン・ひろしま、連合福岡ユニオン …など
ホットラインの趣旨
はじめに
2024 年9 月現在、斎藤元彦兵庫県知事のハラスメントのニュースが、メディアを賑わせています。また、大手コンビニグループや航空会社などがカスハラに対する指針を公表したり、自衛隊のパワハラ、セクハラのニュースも記憶に新しいところです。
そんな世間のハラスメントに対する関心が高まる中、今年も10 月10 日の世界メンタルヘルスデーに合わせ、全国一斉に、精神疾患の労災に関する電話相談を行います。
「働き方改革」関連法が施行されてから5 年が経過しました。建築、運送、医療の現場では2024 年問題があり、人手不足が加速しています。そして、一部の企業では働きやすい職場づくりが進められていますが、一方で、相変わらず職場のハラスメント相談は後を絶ちません。そして、被害者が相談しても全く改善しなかった、相談することもなく退職を余儀なくされたといった事例も数多くあります。そんな事例は、本人だけの行動で解決できる問題ではない場合がほとんどで、労働組合に加入して、会社の責任での対応、再発防止を要求していく必要があります。労災請求するにしても、労働時間やハラスメントの事実関係の認定については、労働基準監督署に任せるのではなく、職場の同僚などの協力が非常に重要です。そんな問題に対して、手助けをするべく、相談を行います。
1 精神疾患の労災の請求数、認定率と、認定に関する問題について
2023 年9 月1 日から、精神疾患の労災についての、見直しされた新しい認定基準が施行されました。
パワハラ、セクハラ、カスハラなどの項目が、認定に使われる心理的負荷基準の類型に追加されたり、発症後の悪化について、見直し前は「特別な出来事」という名称で列挙された事項に当てはまる出来事がなければ業務起因性がないとされていたのが、それが無くても、業務による強い精神負荷が認められる出来事があった場合は、悪化分が認定されるようになったりと、認定率を上げる方向の変化が多かったのですが、実際
の効果はどうでしょうか。グラフ1 にて、ここ数年の、精神疾患労災の請求数、認定率を示します(認定率は、その年度の認定数/決定数で計算)。
上述の通り、新基準は2023 年9 月からの施行なので、2023 年度のデータは半年分が新基準での判定となっているはずですが、認定率は上がっていません。むしろ、2022 年度よりも下がっています。それはなぜなのでしょうか。劇的に認定率を変化させるほどの変更ではなかったというのは確かにそうかもしれません。
しかし、それに加えて、色々問題が見えてきています。以下に、よくあるケースを2 点ほど紹介いたします。
① 出来事が、パワハラではなく、上司とのトラブルに分類される
精神障害が労災として認定されるためには、業務中にあった出来事が、監督署の調査において精神的負荷「強」であると認定されなければなりません。そして、パワーハラスメントの項目は、基本的な精神的負荷が「強」とされており、上司とのトラブルは、基本的な負荷が「中」とされています。そして、パワハラと思って挙げた出来事が、上司とのトラブルに分類されて、精神的負荷「中」とされてしまうケースがあります。
もちろん、なんでもかんでもパワハラで「強」にしろと言っているわけではなく、妥当と思えるケースもあるのですが、中にはどう考えてもおかしい判定がされていることがあります。
② 発症後の出来事は無視されて、発症日から6 カ月前までの出来事だけ捉えられる
精神障害の労災の認定は、基本的に発症日から6 カ月前までの出来事で判定されてしまいます。しかし、具合が悪くなっても頑張って働き続ける人は少なくありません。すぐに病院にかからずに、いよいよ症状が悪化してから、医師にかかり休業に至ることはよくあります。そんなケースでは、発症日が休業を始めた日の1年前と判断され、その発症日から休業までの症状悪化分1 年間のできごとはすべて無視というような事例も
あります。
精神障害の労災の請求数は年々増加しています。それに伴い、相談件数も増えています。上記のような、納得のない判定が無くなり、請求人が適切な調査、補償を受けられるよう協力いたします。
2 ハラスメント相談、職場復帰・改善は、一人でも入れる労働組合、ユニオンへ
職場のハラスメント相談が高止まり状態です。2023 年度のデータでは、厚生労働省が行っている総合労働相談で、「民事上の個別労働紛争」の26 万6162 件のうち、「いじめ・嫌がらせ」が6 万125 件(22.6%)と、12 年間ずっと第1 位です。他の行政機関や当センターやユニオンの相談でも、同じような傾向が続いています。
加害者に責任があることは言うまでもありません。しかしながらそれを放置、時には助長するような職場環境、労働条件そのものを原因があることも少なくありません。ハラスメントについては、相談体制の整備しか法的な義務がありませんし、それが十分に機能していないからこそ、行政機関等への相談件数が減らないのです。やはり解決にはきちんとした労使交渉が必要であり有効です。
3 公務員、民間問わず、とにかく迷わず相談を!
斎藤知事の件では、告発者の渡瀬さんが自殺しました。また、財務省の赤木さんの自殺も忘れてはならないことです。国も地方自治体も、権力による圧力、パワハラがひどく、しかし文句も言えない。あげくに、自死を選んでしまう方がいるという悔しい状況です。
また、今年2024 年5月には長崎の労働局で同僚への上司からのパワハラを訴える裁判が起き、さらに9 月には、北海道の自衛隊で内部告発した人が、その件で組織ぐるみの報復をされたとして損害賠償裁判を起こしています。民間なら、裁判に踏み切る前に、労働組合に加入して、団体交渉で改善を要求できるはずが、公務員は争議権がないので、個人が組織に対抗するには訴訟をせざるを得ないのです。
しかし、自殺にしても裁判にしても、もうこれしかないと思い詰める前に、とにかく相談していただきたい。3 人寄れば文殊の知恵という言葉もありますし、また、1人では重たい荷物も、複数人で担げば気が楽になります。それで、もし荷物を落としてしまったとしても、その時はみんなの責任です。とにかく、話をしましょう。
公務員の方の話ばかりしましたが、民間の相談者も当然同じです。とりあえず相談してください。重すぎる荷物は一緒に運びましょう。
4 事例紹介
① パワハラで休業。ユニオンに加入し、会社との交渉で職場改善、復帰。
生命保険会社の営業所で働いていたA さんは、上司からのパワハラが原因で会社を休業し、安全センターに相談に来られました。
事情を聞いて、労災請求よりも、職場改善を目指すのが良いだろうということで、ユニオンに加入して、会社と交渉開始。ユニオンは上司のパワハラについての調査やA さんの職場復帰に向けた環境整備を要求。
団体交渉では、A さん自身が職場の状況や自分の思いを伝えました。その結果、会社は上司に「不適切な言動」があったことを認め、就業規則に則った措置を講じると回答。そしてA さんは、休業から約10か月後、職場に復帰することができました。
② 長時間労働やパワハラで精神疾患を発症し休業。既往症があるも、出来事の心理的負荷が認められ労災認定。
金属加工会社で働くB さんは、職場の同僚社員が次々と退職する中で、仕事の負担が大きくなり長時間労働をおこなわざるを得なくなりました。また、社長や上司からのパワーハラスメントを受けたことで精神疾患を発症し、病院に入院することになりました。
B さんから相談を受け、時間外労働の時間数やパワーハラスメントの内容について聞き取りをおこないました。その中で、B さんは既往症として精神疾患を発症しており、かつ障害基礎年金2級を受給中であり、過去に入院歴も複数回あったことがわかりました。
以前の認定基準では、既往症があった場合、悪化する6ヶ月以内に「特別な出来事」に分類される出来事(1ヶ月に160時間を超えるような時間外労働等)がなければ、労災認定されませんでした。しかし、昨年9月の労災認定基準の改正により、「業務による強い心理的負荷」があれば、「悪化した部分について」労災認定することになりました。B さんの場合、既往症がありましたが、同僚社員の退職により時間外労働
が150時間を超える月があったことが考慮され、労働災害と認定されました。
③ うつ症状で休業も、労災は出来事が発症日以後のこととされ不支給。
港湾作業の会社で、クレーン部門の部長をやっていたC さん。ある日、部下が業務中クレーンの事故にあいました。幸いけが人はなかったのですが、危うく大けが、最悪はだれか亡くなっていてもおかしくないものでした。C さんは改善しようとするも、上司も部下も危険な状態の作業を止めず、いつか取り返しのつかない事故が起きたらと不安が止まらなくなり、うつ症状が出て休業しました。
しかし、医師の問診や調査官の聞き取り時、「1 年ほど前から物覚えや集中力が落ちている」と言ったことで、発症日を休業の1 年前とされました。そして、事故やその後の対応は、発症日以後のことだったので補償とは関係なしとされ、労災補償は不支給となりました。
なので、症状の悪化をキーポイントとして、上記の事故や、それにまつわる人員削減、業務量の変化などを考慮に入れてもらうべく、再審査請求の準備中です。
④ セクハラで精神疾患を発症し休業。会社と和解するも、労災は不支給。
生命保険会社で働くD さんは、上司からのセクハラ行為を3年近くにわたって受け、精神疾患を発症し休業を余儀なくされました。
ユニオンに加入し、会社と交渉を開始しましたが、なかなか解決には至らず、交渉開始から約11 か月後、労災請求と裁判提訴をしました。多くの傍聴者の中での意見陳述、その間に2度の抗議行動などを行いながら裁判を進めると、裁判所から和解協議が打診されました。そして、和解協議と並行して団体交渉も継続。セクハラ防止策、起こった場合の相談先が適切に対応するための対策などを一つ一つ詰めていきました。最終的に、会社はこの件についてD さんに遺憾の意を示し、行為者当人からの謝罪はなかったものの、D さんの納得する条件が示され和解することができました。D さんが職場に復帰することはかないませんでしたが、セクハラを認めない会社に屈することなく声を上げ続けたというのは、今後多くのセクハラ被害者を勇気づけることでしょう。
ただ、会社は上司が行っていたつきまとい行為をセクハラとして認めて和解したのに、労災の調査ではセクハラと認められず不支給になっています。その後、審査請求するも棄却され、現在再審査請求中です。
⑤ 度重なる暴言と嫌がらせ、さらには暴行や罰金まで科されるというパワハラを受け、ユニオンに加盟して会社と交渉、裁判中。
食品加工会社で働くE さんは、工場長からの執拗なパワーハラスメントを受け、個人加盟の労働組合・ユニオンに相談しました。E さんは、工場長から「ボケ」などと罵声を浴びせられ、滑舌が悪いのをなおすといわれ、仕事中に歌を歌わされることがあったり、顔面を殴打され唇が切れたこともありました。また、「時間管理の訓練」として、有名豚まん店全店を回り1個ずつ買わされ、朝食やタバコや菓子を買いに行かされましたが、その代金は払ってもらえませんでした。
さらに退勤後や休日に大量の報告書の作成と提出を命令され、提出が遅れたことに対して罰金を払うように指示され、ついには毎月4万円、ボーナス時には8万円を罰金として徴収されるようになりました。その総額は約467万円にものぼりました。
E さんは、ユニオンに加入し会社との団体交渉をおこないましたが、会社側との見解に相違があったため、ユニオンの支援を受けて、徴収された罰金や未払い残業手当、慰謝料などを合わせて約1600万円の支払いを求める訴訟を提起しました。
*各地の相談電話番号と日程
*なお、上記の各団体では、日常的にメンタルヘルスなどの労災、ハラスメントの労働相談を受け付けています。もしほっとラインの開催時に電話できなかったとしても、遠慮せずにお電話ください。