すべてのレベルの政府が労働者を酷暑から守るためにさらに努力しなければならない/Common Dreams, USA, 2023.8.9

アラバマ州、アリゾナ州、テキサス州をはじめとする多くの場所で、気候変動による猛暑により労働者が病気になったり死亡したりしている。これに対して、ジョー・バイデン大統領は7月27日、猛暑から労働者を守るため、暑熱安全違反の取締り強化や、危険性の高い産業における監督の強化など、いくつかの対策を発表した。
これらの行動は正しい方向へのささやかな一歩だが、いまはささやかな一歩で満足できる時ではない。大統領、連邦議会、連邦OSHA[労働安全衛生庁]、州・地方当局は、リスクを減らし命を救うために、いまこそ大胆な行動をとらなければならない。
われわれは、影響を受ける労働者の雇用と所得保障を確保するため、十分な資金を投入して公正な移行を行い、経済の脱炭素化を早急に追求しなければならない。しかし、このプロセスが進展する間、労働者は待ってはいられない。そして、世界中で温度計を壊し、労働者を危険にさらしている3桁の気温を前にしても、われわれは無力ではない。熱中症や熱射病は、他の労働災害と同様、予防可能である。
現実的で証拠に基づいた対策には、十分な休憩、豊富な新鮮な水、日陰への容易なアクセスなどがある。加えて、勤務時間の短縮、日中の涼しい時間帯への仕事の移動、労働者を一人にしないためのバディ制度は、猛暑が存在する屋内外のあらゆる環境で実施可能であり、実施しなければならない。
使用者が規制プロセスの結果を待つ理由はない。待つべきでない理由があるのは間違いない。 予防措置がなければ、より多くの労働者が病気になり、猛暑にさらされて死亡することになる。
法的には、米国労働安全衛生法の「一般的義務」条項が、既知の危険のない職場を提供するよう雇用主に求めていることを知ることが重要である。バイデンは、現在の猛暑という非常事態を前にして、取り締まりと監督の強化を命じている。
しかし、これは緊急事態であり、もっと多くのことができるはずだ。猛暑の危険性に焦点を当てた特定の職場安全基準は、訓練、軽減措置、取り締まりに重点を置くことで、労働者をより多く、よりよく保護することができる。
そのために

  • バイデン大統領は、連邦OSHAに対し、労働者を熱ストレスから保護するための緊急暫定基準(ETS)を発行するようただちに命じるべきである。炎天下で何時間も労働した後に死亡する労働者が緊急事態でないとすれば、何が緊急事態なのか。
  • 議会もただちに行動を起こし、連邦OSHAが熱ストレスに関する暫定基準を発行することを法律で義務づけるべきである。これによって、OSHAが発行する緊急基準を補完し、強化することができる。
  • 連邦OSHAはすでに、熱ストレスに関する恒久的な安全基準を作成するための長いプロセスを開始しており、これはできるだけ早く完成させなければならない。
  • 現在、極端な暑さにさらされる労働者を保護するための職場安全規則を定めているのは、50州のうちわずか5州のみである。
  • 全州の労働安全当局は、熱ストレスに関する州レベルの基準が広範囲に及び、強力に保護されるよう、早急に措置を講じるべきである。この作業は、職場の酷暑への曝露をカバーする具体的な規則が現在存在しない45州において、とくに緊急の課題である。州レベルの基準は、連邦規則制定よりも迅速に完成することが多く、連邦労働安全衛生法の下では、少なくとも連邦基準と同程度に強力でなければならない。
  • 自治体当局は、リスクの高い産業で働くすべての被災労働者に対し、休息、日陰、水、その他の措置を義務づける地方条例を検討することも可能であり、また検討すべきである。マイアミでは、We Count(私たちの組織である全国労働安全衛生評議会の関連組織[全米COSH])が主導するキャンペーンによって、数百人の農業労働者が集まり、約8万人の農業・建設労働者を保護する自治体の暑さ条例を要求している。

信じられないことに、テキサス州は反対の方向に進んでいる。ダラスとオースティンの市議会は猛暑条例を可決し、とくに猛暑の間は建設労働者に4時間ごとに10分間の休憩を与えることを使用者に義務づけた。
しかし、テキサス州議会は最近、いわゆる「デス・スター」法を可決し、グレッグ・アボット州知事が署名した。この法律は、民主的に選出された地方議員によって可決されたこれらの条例やその他の条例を覆すものである。この新法は9月1日に施行されるが、テキサス州の気温はまだ危険なほど高い。
ダラス市は2015年、ロエンディ・グラニージョの予防可能な死を受け、暑さ対策条例を制定した。この25歳の建設作業員は、2015年のテキサスの熱波の中、エアコンのない現場で広葉樹の床を施工中に熱中症で死亡した。死亡時の体温は110°F だった。
2016年に開催された労働者の安全と健康に関する全米会議で、全米COSHはロエンディの悲劇的な死後、他の労働者のために擁護活動を行ったグラニージョ一家を表彰した。この一家は、移民家族が直面する課題を描いた映画『アメリカン・ドリームを築こう』にも登場した。
いまこそ、ロエンディ・グラニージョに起こったことを無視するのではなく、思い出す時だ。そして、われわれの家を建て、私たちの食卓に食料を運び、その他の必要不可欠な商品やサービスを提供する何百万人もの労働者のために闘う時だ。記録的な気温は、そうした労働者たちをいままさに危険にさらしている。政府はあらゆるレベルで、いますぐ対応しなければならない。

安全センター情報2023年10月号