EUはよりよいアスベストからの労働者の保護に合意/European Trade Union Confederation (ETUC), 2023.6.28
がんを引き起こすアスベスト繊維からの労働者の保護が大幅に改善される予定である-しかし、EUグリーンディールの一環である建物の改修に携わる人々を保護するには、施行が遅すぎる危険性がある。
労働におけるアスベストに関する指令の改正に関する欧州委員会、欧州理事会及び欧州議会の間の三者交渉の結果、EU全域におけるアスベストの職業曝露限界値が2,000繊維/m3[0.002繊維/cm3]に設定されることになった。
この新しい限界値は、現行の100,000繊維/m3[0.1繊維/cm3]よりも50倍低いが、長い実施期間の対象となる。
・ 2年以内に、加盟国は、現在の曝露限界値を10,000繊維/m3[0.01繊維/cm3]に引き下げなければならない。
・ 6年以内に、加盟国は、曝露限界値を2,000繊維/m3[0.002繊維/cm3]に引き下げなければならない。
さらに、アスベスト繊維を計測する測定方法も変更しなければならないだろう。加盟国はまた、より近代的で正確な電子顕微鏡法を段階的に導入するために、6年の猶予を与えられる。
リノベーション・ウェーブ[改築の波]
EUでは毎年、約9万人がアスベスト関連がんで命を落としており、職場死亡原因の第1位となっている。
400万人から700万人のEU労働者がアスベストに曝露しており、その数はグリーンディールの一環としての建物の改築[リノベーション]の結果、今後10年間で4%増加すると予想されている。
そのため、欧州の労働組合運動は、加盟国に対して、本日の合意で予測されているよりも早く、より低い曝露に移行するよう求める。
欧州の労働組合運動はまた、この問題に関する科学的研究をさらに進めるとともに、訓練の改善、企業に対する認証、規制の適用除外の廃止を引き続き求めていく。
欧州労働組合連合のクレス=ミカエル・スタール副事務局長は、次のように述べた。
「何十年もの間、何百万人もの人々が、知らず知らずのうちに職場でアスベストに曝露したために、がんによって無残にも命を削られてきた。
本日の合意は、職場がんというスキャンダルを終わらせるための重要な一歩である。
しかし、実施期間が長いということは、労働者がより安全な限界値の恩恵を受けるのが、改築の波が完了した後のことになってしまうことを意味している。
だからこそ、加盟国は実施期間が終わるのを待つのではなく、可能な限り早くより低い限界値を発効させることが不可欠である。」
欧州建設林業労連トム・デリュー書記長
「三者交渉で達成された合意は、建設労働者をアスベストから守るための重要な一歩である。われわれはいま、この妥協をそのまま採択するよう、欧州諸機関に求めている。
これが、労働者保護のための真の措置を確実に講じ、リノベーション・ウェーブによるアスベストのパンデミックの可能性を減らす唯一の方法である。いまこそ、予防措置、建設労働者の訓練、執行措置に投資すべき時である。これは、適切かつ頻繁な監督と、抑止的な制裁措置を意味している。」
※https://www.etuc.org/en/pressrelease/eu-agrees-better-protection-workers-against-asbestos