サムソン系列会社の労働者、労災申請を避ける理由は「不利益憂慮」

「半導体労働者の健康と人権守り」(パノリム)が3日、故ファン・ユミさんの遺骨が撒かれた江原道高城郡のある野山を訪ね、遺影の前に『サムソン電子系列会社の労働安全保健実態調査研究報告書』を置いた。ファン・ユミさんはサムソン電子の半導体工場で働いて急性白血病に罹り、2007年に亡くなった労働者だ。/パノリム提供

サムソン電子の系列会社の労働者が、不利益を憂慮して労災申請をしなかったケースがあるという調査結果が出た。会社の安全保健教育が形式的で、役に立たないという証言もあった。

金属労組・全国サムソン電子労組などが参加する『サムソン電子系列会社労組連帯』が、サムソン電子系列会社の労働安全保健実態調査研究報告書発表会を行って明らかにした。昨年7月から約七ヵ月間、サムソン電子の761人、サムソン電子サービスの894人、サムソンSDIの36人、サムソン電子販売の110人など、四つの事業場の労働者、1801人が今回の調査に参加した。労組連帯の依頼を受けた韓国労働安全保健研究所、「半導体労働者の健康と人権守り」(パノリム)がオン・オフラインでのアンケート調査、深層面接などの方法で研究を行った。

報告書によれば、一年間に業務上の事故や病気を経験したのに労災申請をしなかった理由は、「症状が軽微で」を除けば、「不利益を憂慮して」が最も多かった。サムソン電子で26.0%、サムソンSDIで47.4%、サムソン電子サービスで5.5%、サムソン電子販売で33.3%だった。報告書は「労組が強いサムソン電子サービスを除けば、すべての会社で『不利益への憂慮』が圧倒的に高かった」と説明した。

金属労組が昨年発表した「サムソン考課制度の現況と弊害実態研究」報告書には、実際に労災隠蔽の証言が出てくる。サムソンSDIの労働者のAさんは「業務中に負傷すれば、安全事故なのにそのまま隠す。考課評価に安全事故の項目があるが、社員の責任を問う。(労災を)隠蔽するしかない」と話した。

業務上の事故や疾病と疑われても、労働者が自分で治療費を負担するケースも少なくなかった。事故、筋骨格系疾患など、労災だということが割と簡単に判るケースでは、一部で労災申請があったが、大部分の疾病は労働者が自分で治療費を負担していると調査された。

報告書は「労災申請が考課に影響を与えないように制度を改善することが重要だ」と指摘した。

調査に応じた労働者の半分以上は「安全保健教育が形式的に行われ、役に立たない」と答えた。事業場別の回答率を見ると、サムソン電子で61.2%、サムソン電子サービスで57.8%、サムソン電子販売で64.7%、サムソンSDIで67.6%がこのように答えた。

四社の労働者全員が安全保健教育が役に立たない理由の第一順位として「オンライン教育の限界」を挙げた。「教育に集中するほどの時間を作り出すのが難しいため」あるいは「別途の教育時間が配分されないため」という応答も多かった。報告書は「これは、会社が安全保健教育を業務の一つとして認めていないということを示している」と指摘した。

面接調査では、自分の職務と合わない一律的な教育内容が問題だという点も確認された。サムソン電子の家電分野で働く労働者のBさんは「教育内容を見ると、有害化学物質、半導体のページがある。私たちがやっている仕事には関係ないと思って、誰も見ていないようだ」と話した。

サムソン電子は「特定の時点の、一部の回答者の一方的な回答を、事実であるかのように誇張している」として、報告書の内容が虚偽主張だと話した。

2024年3月4日 京郷新聞 キム・ジファン記者

https://www.khan.co.kr/national/labor/article/202403040600121