給付基礎日額の算定に係る参考資料集の活用について/事務連絡 令和5年3月31日【給付基礎日額の算定に係る参考資料集】

事務連絡
令和5年3月31日

都道府県労働局長労働基準部労災補償課長殿

厚生労働省労働基準局補償課長補佐(業務担当)

給付基礎日額の算定に係る参考資料集の活用について

近年、給付基礎日額を争点とする労災保険に係る訴訟において、被災労働者の管理監督者性や、事業場が被災労働者に対し支払っていた固定残業手当の有効性が争われる事案が増加する傾向にありますが、近年の労災保険に係る裁判例等を基に、別添のとおり、「給付基礎日額の算定に係る参考資料集(管理監督者性及び固定残業手当に係る裁判事例について)」を作成しましたので、今後の給付基礎日額の算定に活用していただくようお願いします。

また、調査の結果、給付基礎日額の算定に当たって疑義が生じる場合には、監督部署に協議いただくようお願いします。なお、本件については、労働基準局監督課とあらかじめ協議済みであることを申し添えます。

機密性2【業務参考資料】
給付基礎日額の算定に係る参考資料集(管理監督者及び固定残業手当に係る裁判事例について)
令和5年3月 労働基準局補償課

給付基礎日額の算定に係る参考資料集について(目次)

目次

※ 本件資料については、労働基準局監督課とあらかじめ協議済みであることを申し添えます。

管理監督者関係

管理監督者に係る裁判事例(目次)

1 労働基準法第41条の管理監督者該当性の判断について
2 「職務内容、責任と権限」に係る裁判例
3 「勤務態様」に係る裁判例
4 「賃金等の待遇」に係る裁判例

※ 管理監督者該当性の検討に当たっては、本資料集で紹介する裁判例と併せ、東京地 裁労働部に所属していた裁判官有志が執筆した「類型別 労働関係訴訟の実務」〔改訂版〕Ⅰ(青林書院)・Q91ないし96(248ないし255ページ)を参照されたい。

1 労働基準法第41条の管理監督者該当性の判断について

「監督又は管理の地位にある者」(管理監督者)とは、一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にあるものの意であり、名称にとらわれず、実態に即して適切に判断すべきものである。その際、昭和63年3月14日付け基発第150号・婦発第47号「労働基準法関係解釈例規について」(参考資料記の3(P83))や過去の裁判例等を踏まえると、以下の3つの判断要素を踏まえ、総合的に判断することが適当である。
なお、多店舗展開する小売業、飲食業等に係る管理監督者性の判断については、平成20年9月9日付け基発第0909001号「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」(以下「平成20年通達」という。(参考資料記の3(P87))に基づき、適切に判断する必要がある。

判断要素1 労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容、責任及び権限を有していること

労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にあり、労働時間等の規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有し、また、経営者から重要な責任と権限を委ねられている必要がある。
判断に当たっては、肩書の名称にとらわれることなく、その職務内容、責任及び権限に着目する。
具体的には、「課長」、「リーダー」といった肩書があっても、自らの裁量で行使できる権限が少なく、多くの事項について上司に決裁を仰ぐ必要があったり、上司の命令を部下に伝達するに過ぎないような者は、管理監督者とはいえない。

判断要素2 現実の勤務態様が、労働時間等の規制になじまないようなものであること

管理監督者は、時を選ばず経営上の判断や対応が要請され、労務管理においても一般労働者と異なる立場にある必要がある。労働時間について厳格な管理をされているような場合や長時間労働を余儀なくされている場合は、管理監督者とはいえない。

判断要素3 賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること

管理監督者は、その職務の重要性から、定期給与、賞与、その他の待遇において、一般労働者と比較して相応の待遇がなされていなければならない。

2 「職務内容、責任と権限」に係る裁判例

1 労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容、責任及び権限を有しているか否かについて、裁判例においては、採用、解雇、人事考課及び労働時間管理や経営への参画状況も踏まえて判断しているものが多くみられる。

2 労災裁判例において、管理監督者性を否定した根拠は、以下のような例により判断しているものが見受けられる。

① 権限の一部は与えられていたものの、独自の権限はわずかに過ぎず、最終の決定権限は有さないなど、その権限の行使に当たっても全体として他の管理者等の指揮命令下にあったと判断されたもの(裁判例A1、A4、A5)
② 担当部門(組織)において一定の権限を与えられ、部下の労務管理を行っていたものの、会社全体でみた場合に、担当部門(組織)は会社内で限定された部署の一つでしかなく、また、部下の人数からみてもその権限の及ぶ範囲はわずかであったと判断されたもの(裁判例A2、A5)
③ 経営方針の決定の場となる経営会議等に出席していたものの、自身の所掌事務の状況を報告するに留まり、影響力を有していなかったと判断されたもの(裁判例A1)

上記と併せ、前掲「類型別労働関係訴訟の実務」〔改訂版〕Ⅰ・Q91及び92(249ないし252ページ)を参照されたい。

○参考1:労災裁判例

【裁判例A1】 東京地裁令和4年4月13日判決

〔要旨〕 独自の権限を有していたのは僅かな業務にすぎず、他の業務は上司等の指揮監督下で行っており、また、経営会議等に出席していたものの、自身の所掌事務の状況を報告するに留まっていたもの。(否定)

労務管理以外の面においても、原告の所掌事務は、上場を控える本件会社において重要性が高まっていたとはいえ、独自の権限を有していたのは、経理事務のうち仕訳に関する点のみであり、その他の所掌事務は、原告が在籍中に行ったシステムの改変等も含め、上司に当たるJ本部長や、M社長の指揮監督下において行われ、経営会議や経営方針発表会においても、単に所掌事務の状況と今後の方針をM社長以下の経営陣に報告していたにすぎないと認められる。

【裁判例A2】 東京地裁令和元年11月7日判決

〔要旨〕 採用や解雇に関する権限を有していなかったほか、人事考課の一次査定や時間外労働の命令に関する一次決裁の権限は有していたが、最終的な決定権限を有していたものとは部の部下従業員の労務管理を行っていたにすぎなかったもの。(否定)

本件会社の組織は、技術本部を含む3つの本部からなり、技術本部の下に4つの技術部が置かれていたところ、亡Bは、第3技術部に設けられた新Yオフィスの下に置かれた本件グループのマネージャであったことが認められる。このように、本件グループは技術本部の下部組織である第3技術部の中に設けられた一部署に過ぎず、所属する従業員も17名と本件会社の全従業員244名の1割に満たない人数であり、しかも、亡Bが労務管理を行っていたのは部下全員の15名であるが、業務の進行管理を行っていたのはそのうちの6名にすぎなかったものである。そうすると、亡Bは本件グループという本件会社の限定された部署内において、部下従業員の労務管理及び一部の部下従業員の業務の進行管理を行っていたにすぎないというべきである。
労務管理の権限についてみるに、亡Bは、部下の人事面談、人事考課の一次査定を行い、月60時間超の時間外労働見込みの社長伺いに関する一次決裁等を担当していたものの、職務権限規則上、昇給、昇格、賞与及び解雇についての決定権限を有しないだけでなく、事実上その決定に大きな影響力を有していたことをうかがわせるに足りる証拠もない。加えて、新規の職員採用は本社で行われており、職務権限規則上、部下の賞罰、人事異動、所属及び業務分担の決定権限はいずれもマネージャではなく、部長以上にあるとされていたことも考慮すると、その余の前記認定に係る事実を併せ考慮しても、亡Bが有していた労務管理に関する権限が大きいものであったとみることはできない。

【裁判例A4】 福岡地裁平成24年5月16日判決

〔要旨〕 人事考課や勤務時間管理等の労務管理に関する権限を有していたものとは認められなかったもの。また、独自の権限を有していたのは僅かな分野にすぎず、全体的な管理は上司が行っていたもの。(否定)

一郎は、本件会社の商品部第4課長の地位にあり、同課が担当する家電等に関し、本件会社として仕入れる商品の選択、仕入値及び数量並びに店舗での販売価格の決定権限が与えられている。しかし、一郎の上記権限は、多岐にわたる本件会社の取扱商品のうちの限定された一分野に関するものである上、商品部の各課の全体的な売上げの状況などは、商品部部長が管理していることからすると、一郎は、本件会社から与えられた一定の裁量の範囲の中で、家電等の商品の仕入れや販売価格の決定等を行っていたことが推認できる。
したがって、一郎が上記の権限を行使していたことをもって、一郎が本件会社の経営全体に関する決定に参画していたなどということはできず、他にこれをうかがわせる事実を認めるに足りる客観的な証拠はない。
また、一郎は、本件会社の予算策定に関し、その前提となるヒアリングを行うにすぎず、予算策定に直接的に関与してはいない。
さらに、本件証拠上、一郎が、各店舗に配置された家電等の販売を担当する社員に対し、販売促進に関する指導等の範囲を超えて、指揮監督権限を行使していたことをうかがわせる事実は認められないから、一郎の部下は4名だけということになる。
そして、一郎が、この4名の部下に対し、人事考課、勤務時間の管理及び給与等の待遇の決定など、労務管理上の指揮監督権限を有し、これを行使していたことを認めるに足りる客観的な証拠は見当たらない。
以上のとおり、一郎が、本件会社の経営全体に関する決定に参画したとか、予算策定に直接的に関与していたとはいえない上、部下に対する労務管理上の指揮監督権限を有していた事実が認められないことなどからすれば、その業務内容、権限及び責任に照らし、一郎が労務管理等に関して経営者と一体的な立場にあったとまではいえない。

【裁判例A5】 大阪地裁平成22年3月3日判決

〔要旨〕 独自の権限を有していたのは会社内の僅かな部門に限られるだけでなく、業務遂行は上席者の指揮監督下で行っていたもの。(否定)

原告は、本件会社にとって重要特定顧客とされていたY工場に設置されていた本件作業所の統括所長として、5名の部下を擁し、本件各工事の工程管理や部下に対する指示や、数ある下請会社の統制や元請けのみならずY工場を稼働させているD側との交渉を行い、同作業所内での人員配置・職務の割当に関する決定権、また、同作業所において行う工事の工事計画を作成して支社に提出し、施主であるEとの間で作業内容の調整を行ったり、工事の原価管理及び工程管理を行ったり、本件作業所内での業務遂行に必要な納入仕様書、工事計画書、作業手順書、施工図、施工要領等の書類の決裁権を有していた。
しかし、原告が所属していた大阪支社技術2部技術1課にはいわゆるラインの課長である管理課長としてC課長がいるところ、原告は、7等級の課長職とはいえ業務の遂行に当たって、同課長の指揮監督を受ける立場にあった上、職制上も現場における専任課長にとどまるものであったこと、大阪支社は、営業部、産業設備部、設計部、技術1部及び技術2部から構成されており、それぞれに複数の課が設けられているところ、原告の権限、職責の及ぶ範囲は、技術2部の技術1課の中でも本件作業所が受け持っている事項に限られていたこと、(中略)原告は、職能資格等級7等級であったが,本件会社の定めている職能資格等級基準によっても、7等級及び8等級の者の基本的任務は、あくまで所属する部門内において、部門の方針に従って職務を遂行することにあるものとされ、全社的観点から部門を統括することが期待される9等級及び10等級の者の基本的任務とは明らかに区別されていたこと、本件会社の正社員総合職は1713名であるが、このうち7等級から9等級の者は310名であり、大阪支社に限ってみても、原告の本件疾病発症当時、嘱託所員除く従業員合計151名のうち7等級以上の者は41名、技術2部においても33名中8名という従業員構成とそれほど差がなかったことがあった。以上の事実を踏まえると、原告は、労働時間等に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ないほどの重要な職務と責任・権限を有していたものということはできない。

〇参考2:平成20年通達において示されている「職務内容、責任と権限」の判断要素

1 平成20年通達においては、「職務内容、責任と権限」についての判断要素として、

① アルバイト・パート等の採用について責任と権限が実質的にない場合
② アルバイト・パート等の解雇について職務内容に含まれず、実質的にも関与しない場合
③ 人事考課の制度がある企業において、部下の人事考課について職務内容に含まれておらず、実質的にも関与しない場合
④ 勤務割表の作成、所定時間外労働の命令について責任と権限が実質的にない場合を示しており、これらについて管理監督者性を否定する重要な要素としている。

3 「勤務態様」に係る裁判例

1 現実の勤務態様が、労働時間等の規制になじまないようなものであるか否かは、裁判例では、管理監督者と扱われている労働者について、タイムカード等による出退勤・勤務時間管理や遅刻・早退による賃金減額の有無のほか、職員との交替勤務の有無等を検討の上、判断しているものが多くみられる。
2 また、労災裁判例においては、その前提として、対象労働者が長時間の時間外労働に従事した結果も考慮して労災認定されたものが多いと考えられるところ、長時間労働を余儀なくされたという事実をとらえて、対象労働者には労働時間の自由裁量がないと判断されている事例が多くみられる(裁判例A2、A4、A5)。

※上記と併せ、前掲「類型別労働関係訴訟の実務」〔改訂版〕Ⅰ・Q91及び93(249、250、252及び253ページ)を参照されたい。

○参考1:労災裁判例

【裁判例A2】 東京地裁令和元年11月7日判決

〔要旨〕 業務処理のため長時間労働に従事していたこと、また、部下に業務を分担させる権限を有していたとしてもその実現は困難であったと判断されたもの。(否定)

亡Bは、平成23年10月以降、複数の見積業務を処理するために、週40時間を超える労働の時間数が1か月160時間を超え、同年11月28日から同年12月17日まで20日間にわたる連続勤務をするなど、極度の長時間労働に従事せざるを得ない状況に陥っていたものである。上記見積業務は、本来はマネージャである亡Bが自ら担当するような業務ではなく、亡Bが部下に指示して行わせるべき業務であったが、同見積業務の処理にはある程度の経験が必要であったことや、Gを含めた本件グループの複数の従業員について月60時間超の時間外労働が見込まれるなどの諸事情に照らせば、当時の本件グループは繁忙度が高い状況であったといえるから、亡Bが同見積業務を部下に指示して遂行させることは、上司として指示する権限自体は有していたとしても、現実的には困難な状況であったというべきである。

【裁判例A4】 福岡地裁平成24年5月16日判決

〔要旨〕 出退勤管理がなされていないことは、業務の内容や性質によるものにすぎず、また、長時間労働の勤務実態にあったと判断されたもの。(否定)

本件会社は、一郎の労働時間について、タイムカード等による出退勤管理をしていない。しかし、役職に就いていないバイヤーについても同様の取扱いをしていたことからすると、単に、業務の内容及び性質からこのような取扱いをしていたにすぎないといえる。したがって、上記の事情をもって、一郎が労働時間について裁量権を有していたことを根拠づけるものと評価することはできず、他にこのことをうかがわせる事情は見当たらない。

かえって、一郎は本件会社の設置した出勤簿に押印していた上、1週問ごとに一郎の予定稼働状況等については、本件会社がこれを一定程度管理していたことがうかがわれる。これに加えて、一郎の勤務実態からすると、一郎が相当の長時間労働の状況にあったことが推測されることからすれば、一郎に労働時間に関する広い裁量権が与えられていたということはできない。

【裁判例A5】 大阪地裁平成22年3月3日判決

〔要旨〕 制度上は出退勤について厳格な取扱いとはされていなかったものの、長時間労働の勤務実態にあったと判断されたもの。(否定)

原告は、6等級以下の者が受けるような勤怠管理を受けていたわけではなく、制度上は、出退勤について厳格な取扱いの対象とはなっていなかった。しかし、原告は、平日は概ね午前8時より前に出勤し、午後7時以降に退勤するという状況で、日によって大きな違いがなく、本件作業所に勤務する原告以外の従業員の就労時間に準じた態様で勤務をしている上、連日法定労働時間を大幅に上回る時間数の労働をしており、本件疾病発症の直前においても1か月の労働時間が240時間を超え290時間に及ぶような状況が続いていた。

以上の事実を踏まえると、原告が自身の出退勤についてなにがしかの裁量を働かせる余地があったとまで認めることはできず、その他、原告の出退勤について裁量を働かせることができたと認めるに足る的確な証拠はない。

〇参考2:平成20年通達において示されている「勤務態様」の判断要素

1 平成20年通達においては、「勤務態様」についての判断要素として、

① 遅刻、早退等により減給の制裁、人事考課での負の評価など不利益な取扱いがされる場合
② 長時間労働を余儀なくされるなど、実際には労働時間に関する裁量がほとんどないと認められる場合
③ 労働時間の規制を受ける部下と同様の勤務態様が労働時間の大半を占めている場合

を示しており、このうち、①については管理監督者性を否定する重要な要素、②及び③については管理監督者性を否定する補強要素としている。

2 なお、同通達では、①について、「管理監督者であっても過重労働による健康障害防止や深夜業に対する割増賃金の支払の観点から労働時間の把握や管理を受けている場合については、管理監督者性を否定する要素とはならない」としていることに留意が必要である。

4 「賃金等の待遇」に係る裁判例

1 賃金等が管理監督者の地位にふさわしい待遇であったといえるか否かは、裁判例では、管理監督者と扱われている労働者について、他の役職者や、管理監督者と扱われていない労働者(最上位職の者)と比較して優遇されているものと評価できるどうかを検討の上、判断しているものが多くみられる。

2 また、上記1の検討の視点として、特に、管理監督者と扱われている労働者が長時間の時間外労働に従事した結果、管理監督者と扱われていない者が同程度の時間外労働を行った場合の賃金額との間に逆転現象が生じること(または生じる可能性)があり、これをもって「賃金等の待遇」が十分ではないと判断される事例が労災裁判例においてみられる(裁判例A2、A4)。

3 なお、労災裁判例の中には、賃金額の多寡によって判断しているものもみられるが、必ずしも賃金が比較的高額であること又は低額であることのみをもって判断されるものとはいえない。
例えば、
・ 賃金月額は社内で本部長に次ぐ高い金額であったものの、他社からの引抜き目的で加算された手当は除外してその待遇について判断されたもの(裁判例A1)、
・ 月額30万円という金額が、店舗の運営や労働者の稼働実態を踏まえた労働者の業務や権限に見合う金額でなかったとはいえないと判断されたもの(裁判例A3)がある。

※上記と併せ、前掲「類型別労働関係訴訟の実務」〔改訂版〕Ⅰ・Q91及び94(249、250、253及び254ページ)を参照されたい。

○参考1:労災裁判例

【裁判例A1】 東京地裁令和4年4月13日判決

〔要旨〕 賃金月額は本部長に次ぐ高い金額であったが、他社からの引抜き目的で加算された手当は除外してその待遇について判断されたもの。(否定)

原告の給与月額(72万円)はJ本部長(94万円)に次ぐ高額であったものの、これは分掌する権限や裁量の広さに対応するものではなく、本件会社が東京に居住する原告を引き抜くため、前職と同水準の報酬を要求する原告の希望に沿うよう、給与規程に定めのない住居手当の名目で上乗せをした結果であって、基本給(24万円)及び管理手当(4万円)は主任以上の他の役職者と同額、役職手当(26万円)も他の部長及び担当部長と同程度であったと認めることができる。引抜き目的の上乗せであった月額18万円の住居手当を除外すれば、原告の給与月額は54万円にとどまり、労基法による労働時間規制の対象外としても保護に欠けないといえる待遇と評価することは困難である。

【裁判例A2】 東京地裁令和元年11月7日判決

〔要旨〕 役職就任後の賃金増額が時間外労働の実態に見合っていないとして、待遇が十分ではないと判断されたもの。(否定)

亡Bの月額賃金は、平成23年4月にマネージャに昇進したことにより、月額36万6000円から月額42万9000円へと6万3000円増加し、年間の賞与額も約65万円増加して年間173万円となったことが認められる。
しかしながら、先に認定したとおり、マネージャに昇進する前の平成23年1月ないし4月支払分の給与として上記固定給の月額36万6000円に加えて、平均約7万4000円という上記増加額よりも多額の時間外及び休日労働手当が支給されていたこと、マネージャへの昇進後も繁忙期には週40時間を超える労働に月160時間以上従事することもあったことを踏まえると、前判示に係るマネージャの固定給の額や増額後の賞与額は、時間外及び休日労働手当が支払われず、労働時間の枠組みに縛られずに勤務することが要請されるマネージャに対する待遇として相当なものであったと評価することは困難であり、マネージャと管理監督者でない一般社員との間で管理監督者該当性に影響を与えるような有意な待遇差があったと評価することはできない。

【裁判例A3】 大阪地裁平成31年3月4日判決

〔要旨〕 月額30万円という金額が、管理監督者としての労働者の業務や権限に見合う金額でなかったとはいえないと判断されたもの。(肯定)

月額30万円という金額の提案自体は、亡Aから、本件店舗の運営に対する全ての報酬を含む趣旨でなされたものと認められ、C社長は、亡Aの提案に変更を加えることなく了承したと認められる。また、本件店舗を開店するに至った経緯及び亡Aの権限や労働時間に関する自由裁量を有していた点も併せかんがみれば、本件店舗の運営については、実態として業務委託に類するものであるということが認められるところ、亡Aは、C社長との間で本件店舗の運営方法等について相談したにもかかわらず、その結果を踏まえて、自らに対する支給額を月額30万円とする提案を修正したという事実は認められないことからしても、亡Aの提案に係る上記支給月額は、本件店舗の運営及び亡Aの稼働実態を踏まえた相応な額であったと推認することができる。

【裁判例A4】 福岡地裁平成24年5月16日判決

〔要旨〕 役職就任後の賃金増額が時間外労働の実態に見合っていないとして、待遇が十分ではないと判断されたもの。(否定)

平成18年度における一郎の年収と、一郎の部下であり、労基法41条2号にいう管理監督者には当たらないと認められる商品部第4課係長、主任及び一般社員(バイヤーのアシスタント)の各年収との間には、相応の差異があるものといえる。
しかしながら、一郎が係長から課長へ昇進・昇給する前後の給与の額を比較すると、基本給はわずか2,000円、合計額も7,000円増えているだけである。また、一郎の勤務実態からすれば、一郎は相当長時間の時間外労働に従事していたことが推認できることを踏まえると、一郎の上記給与の額は、必ずしも高額であるとはいえないというべきである。
したがって、一郎の上記給与の額は、労基法の労働時間等の規定の適用を排除される管理監督者に対する待遇としては、十分であるとは言い難い。

〇参考2:平成20年通達において示されている「賃金等の待遇」の判断要素

平成20年通達においては、「賃金等の待遇」についての判断要素として、

① 時間単価換算した場合に最低賃金額に満たない場合
② 時間単価換算した場合にアルバイト・パート等の賃金額に満たない場合
③ 基本給、役職手当等の優遇措置が、割増賃金が支払われないことを考慮すると十分でなく、当該労働者の保護に欠ける場合
④ 年間の賃金総額が、勤続年数、業績、専門職種等の特別の事情がないにもかかわらず、他店舗を含めた当該企業の一般労働者と比べ同程度以下である場合

を示しており、このうち、①については管理監督者性を否定する極めて重要な要素、②については管理監督者性を否定する重要な要素、③及び④については管理監督者性を否定する補強要素としている。

管理監督者に係る労災裁判例判決文(目次、PDF)

A1 令和4年4月13日東京地裁判決・令和2年(行ウ)第366号(11~22頁)

A2 令和元年11月7日東京地裁判決・平成30年(行ウ)第131号(23~40頁)

A3 平成31年3月4日大阪地裁判決・平成29年(行ウ)第171号(41~50頁)

A4 平成24年5月16日福岡地裁判決・平成23年(行ウ)第2号(51~64頁)

A5 平成22年3月3日大阪地裁判決・平成21年(行ウ)第38号(65~82頁)

参考資料(目次、PDF)

1 昭和63年3月14日付け基発第150号・婦発第47号「労働基準法関係解釈例規について」(第41条関係)(抄)(83~86頁)

2 平成20年9月9日付け基発第0909001号「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」(87~90頁)

3 平成20年10月3日付け基監発第1003001号「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化を図るための周知等に当たって留意す べき事項について」(91~94頁)

固定残業関係

固定残業手当に係る判例及び裁判事例(目次)

1 (区分性要件・対価性要件)
固定残業手当について確認する要件等について

2 (区分性要件)
固定残業手当における区分性要件について

3 (対価性要件)
労働契約書や就業規則(賃金規程)において固定残業手当の定めがない場合や、使用者から労働者に対する説明が行われていない場合の評価について

4 (対価性要件)
固定残業手当が対象とする時間外労働等の評価について

5 (対価性要件)
固定残業手当と基本給部分の金額等の比較における評価について

6 (対価性要件)
固定残業手当において想定されている時間外労働等の時間数の評価について

7 (対価性要件)
想定されている時間外労働等の時間数と実際の時間外労働時間数との間に大きな乖離がある場合における当該固定残業手当の有効性について

※略称
「最高裁平成29年判決」…最高裁平成29年7月7日第二小法廷判決
「最高裁平成30年判決」…最高裁平成30年7月19日第一小法廷判決
「最高裁令和2年判決」…最高裁令和2年3月30日第一小法廷判決

※固定残業手当の有効性の検討に当たっては、上記と併せ、東京地裁労働部に所属していた裁判官有志が執筆した「類型別労働関係訴訟の実務」〔改訂版〕Ⅰ(青林書院)・Q44ないし51(183ないし210ページ)を参照されたい。

(区分性要件・対価性要件)
1 固定残業手当について確認する要件等について

1 労働基準法第37条に定める計算額以上の額の割増賃金を支払う限り、必ずしも同条に定める計算方法に従う必要はない。

2 この点、割増賃金を定額で支払う場合については、このような取扱いが直ちに同条に違反するものではないが、平成29年7月31日付け基発0731第27号「時間外労働等に対する割増賃金の解釈について」(参考資料記の4(P232))や過去の判例等を踏まえ、次の3点を確認する必要がある。
・ 第1に、就業規則その他労働契約における賃金についての定めにおいて、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分が判別できるようにする必要がある(区分性要件)。
・ 第2に、ある手当の支払いをもって割増賃金が支払われたといえるためには、その手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものと認められるものであることが必要である(対価性要件)。
・ 第3に、割増賃金に当たる部分の金額が、同条に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回るときは、その差額を支払わなければならない。

3 なお、第2の対価性要件の判断に当たっては、労働契約に係る契約書等の記載内容のほか、具体的事案に応じ、使用者の労働者に対する当該手当や割増賃金に関する説明の内容、労働者の実際の労働時間等の勤務状況などの事情を考慮して判断すべきであるとされている。

4 また、上記3の判断枠組みに関し、
① 労働契約に係る契約書等の記載内容のほか、使用者の労働者に対する当該手当や割増賃金に関する説明が不十分な場合は「契約上の位置づけ要件」を欠き、
② 労働者の実際の労働時間等の勤務状況に照らした手当の額と時間外労働等の実態との関連・近接していない場合は「実態要件」を欠くとして、割増賃金の支払とは認められないことになると具体的に示した学説があるが(水町勇一郎・ジュリスト1523号4頁)、これは労災裁判例における判断とも矛盾しないため、参考になるものと考えられる。

※上記と併せ、前掲「類型別労働関係訴訟の実務」〔改訂版〕Ⅰ・Q45(184ないし191ページ)を参照されたい。

○参考1:労災裁判例

【裁判例B1】 東京地裁令和5年1月26日判決

〔要旨〕 月80時間を超える時間外労働のような恒常的な長時間労働を想定して固定残業手当を支払う旨の合意が成立したと認めることは、労働契約の当事者の通常の意思に反すると判断されたもの。
1か月当たり150時間前後という、80時間を大きく超える法定時間外労働は、上記の法令及び労使協定の趣旨に反することは明らかであって、本件労働契約において、このような恒常的な長時間労働を想定して職務手当を支払う旨の合意が成立したと認めることは、労働契約の当事者の通常の意思に反するものというべきである。

【裁判例B2】 東京地裁令和4年1月18日判決

〔要旨〕 固定残業手当の内訳について、賃金規程の記載内容等から労働者が知り得たのは、法定時間外労働に対する対価であることにとどまり、休日労働等に対する対価であることを承諾したものとは認めることができないと判断されたもの。
原告は、採用面接を受けた際に、雇用条件の確認をした旨の書類に年月日と氏名を記載し、入社後の3日間の新入社員初任研修を受けた際、初日に本件会社の就業規則、本件賃金規程等の9種類の規程類を閲覧する時間を45分間設けられ、原告は、その日に、本件賃金規程を含む規程類を確認した旨の書面に署名しているが、原告が本件賃金規程を閲覧したとしても、原告が理解し得るのは、運行時間外手当が法定外時間外勤務に対する対価であることのみであり、このほかに法定内時間外勤務、深夜勤務及び休日勤務に対する対価も含むものと理解することはできない。そして、原告に対して労働条件を説明すべき立場にあるBは、運行時間外手当が法定外時間外勤務のほかに法定内時間外勤務,深夜勤務及び休日勤務に対する対価も含むことを原告に説明したことについては、曖昧な証言をするにとどまっており、これを直ちに採用することはできない。このほかに、本件会社が原告に対して運行時間外手当が法定内時間外勤務、法定外時間外勤務、深夜勤務及び休日勤務に対する対価である旨を説明したことを認めるに足りる証拠はない。
仮に、Bが「残業から何から全部引っくるめた額だ」などと説明したことがあったとしても、原告は、本件会社が求人サイトに掲載していた固定残業代に言及がない「月給30万円」という広告を見て応募したものであって、その月給に残業代が含まれるという認識は全くなかったものであるから、これをもって運行時間外手当が法定内時間外勤務、法定外時間外勤務、深夜勤務及び休日勤務に対する対価であることについて原告が承諾したものと認めることはできない。

【裁判例B3】 東京地裁令和3年3月18日判決

〔要旨〕 対象労働者に直接適用される賃金規程は存在しないものの、給与担当者による説明や給与明細書の記載内容などからして、固定残業手当が時間外労働及び休日労働に対する対価として支払われることについて、労使間の合意が成立していたと判断されたもの。
給与担当者は、常時十数名以上いた出向者が出向する際には、通常、出向者に対し、時間外手当及び休日出勤手当が定額で支給されることについて、その具体的金額や旧給与明細書の記載方法なども含めた説明をしていたこと、平成22年4月から亡くなるまでの約2年間、被災者が受け取っていた新給与明細書には、「時間外時数」の欄に30時間と記載され、「時間外手当」の欄に本件会社の賃金規程に従って計算した時間外手当の30時間分の金額が記載されていたところ、被災者は、原告との間で、この定額の手当に関し、時間外手当の金額が決まっていて増えないなどといった会話をしており、この定額の手当が時間外労働に対する対価であるとの認識を示していたことからすれば、被災者がDに出向する際、前記給与担当者(証人F)が、被災者に対して、①出向前は、本件会社が把握した時間外労働及び休日労働の時間数に応じた時間外手当及び休日出勤手当が支払われていたが、出向後は、時間外手当及び休日出勤手当として、本件会社の賃金規程に従って計算した時間外手当の30時間分の金額が支払われるようになること及びその具体的な金額、②出向後に出向手当が支給されること及びその具体的金額、③出向後は、旧給与明細書の「時間外手当」及び「休出手当」の欄は空欄になり、「職出地手当」の欄に、前記①の定額の手当及び前記②の出向手当の合計額が記載されるようになることを説明した旨の証人Fの証言は、十分信用するに足りるものであり、前記証言どおりの説明をした事実を認定することができる。
そして、このような説明を受ければ、周知されていた本件会社の賃金規程の記載内容とも併せて、出向後は、時間外労働及び休日労働の対価として、本件会社の賃金規程に従って計算した時間外手当の30時間分の金額が定額で支給されることは、明確に理解できるといえるから、被災者の受け止めに照らし、被災者がこれを承諾し、その旨の合意が成立した事実を認めることができる。

【裁判例B4】 東京地裁平成31年4月26日判決

〔要旨〕 雇用契約は口頭でなされ、有効な就業規則及び賃金規定も認められず、さらに、使用者から固定残業手当の説明が行われた事実も確認できず、固定残業手当が時間外労働等の対価として支払われることの合意があったものとは認められないと判断されたもの。
本件雇用契約は、口頭でされたにすぎず、これを証する契約書は作成されていない。また、本件会社名義の就業規則及び賃金規程は、本件会社の設立日よりも前にいずれも施行されているなどの問題があることからその効力を認めることはできない。さらに、G社長が被災者に対して本件雇用契約締結時において本件固定残業代と割増賃金の関係について説明したことも証拠上窺われない。(中略)
しかしながら、被災者が、上記のとおり、雇用契約書も就業規則もなく、しかも、本件雇用契約締結時において、本件会社から本件固定残業代についての説明がされたことは窺われないような状況において、わずか4か月程度の給与明細書の交付と本件固定残業代の受領のみをもって、本件雇用契約の締結に当たり、本件固定残業代が時間外労働等に対する対価として支払われることについてその内容を理解した上で、応諾するに至ったことを推認することまではできず、その他にこれを認めるに足りる証拠はない。

○参考2:判例評釈等

1 対価性要件に関し、最高裁平成30年判決の評釈においては、
・ 雇用契約に基づいて支払われる手当が時間外労働等に対する対価として支払われたか否かについては、当該雇用契約においてどのような合意がされたかによって定まるものと解される(池原桃子・ジュリスト1532号76頁)
・ 雇用契約書等の記載内容や使用者の労働者に対する固定残業手当や割増賃金に関する説明の内容を考慮要素として、当該手当が時間外労働に対する対価として支給される旨の合意の存在が問われることになる(浜村彰・労働法律旬報1922号6頁)
などとされており、個別の事案に即して、労使間で固定残業手当が時間外労働等の対価として支払われるものであることの合意がなされているか、検討することが必要となる。

2 最高裁平成30年判決の判示(本文3)は、最高裁令和2年判決により、対象となる固定残業手当の賃金体系全体における位置付けにも留意すべきことが加えられている(最高裁令和2年判決の評釈として、賃金制度は体系的に構成されるもので、ある手当を単独で見るだけではその性質決定に十分でないことは有り得るため、賃金体系を踏まえることは当然ともいえる(土岐将仁・ジュリスト1548号94頁)としたものがある。)。

(区分性要件)
2 固定残業手当における区分性要件について

1 基本給とは別に設けられた手当について、時間外労働の割増賃金を含むものとして取り扱われている場合であっても、そのことのみをもって区分性要件を満たすということはできない。

2 具体的には、労災裁判例において、
・ 固定残業手当が想定する時間外労働時間数や、
・ 基本給と固定残業手当の金額の比率、
・ 固定残業手当を除いた基本給の1時間当たりの単価などを考慮し、時間外労働等に対する対価以外のものを含んでいたと判断したもの(裁判例B1及びB2)などがみられることから、これらの要素についても併せて検討する必要がある。

3 そして、これらの検討の結果、固定残業手当に時間外労働等に対する対価以外のものが含まれていると判断された場合、当該固定残業手当については、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができないことから、固定残業手当として有効な支払がなされていたものと評価することはできない。

※上記と併せ、前掲「類型別労働関係訴訟の実務」〔改訂版〕Ⅰ・Q45、48及び49(184ないし191、202ないし208ページ)を参照されたい。

○参考:労災裁判例

【裁判例B1】 東京地裁令和5年1月26日判決

〔要旨〕 月80時間を大幅に超える時間外労働を前提とした固定残業手当の支給は、当事者の通常の意思に反すること等から、固定残業手当には職責に対応する業務への対価としての性質を有する部分があると判断されたもの。
本件労働契約に係る契約書や本件会社の就業規則の記載を踏まえても、原告の本件会社における地位及び職責に照らし、通常の労働時間に対応する賃金が基本給の限りであったと認めるには無理があること、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強いと評価される80時間を大幅に超える1か月当たり150時間前後の法定時間外労働を前提とする職務手当を支給することは当事者の通常の意思に反することを総合考慮すると、本件会社から支払われた職務手当には、その手当の名称が推認させるとおり、通常の労働時間も含め、原告のE事業部マネージャーとしての職責に対応する業務への対価としての性質を有する部分が一定程度は存在したと認めるのが相当である。

【裁判例B2】 東京地裁令和4年1月18日判決

〔要旨〕 基本給と固定残業手当の金額の比率や基本給の1時間当たりの単価等から考えて、固定残業手当には時間外労働に対する対価以外のものを含んでいると判断されたもの。
基本給と運行時間外手当の金額の比率及び基本給の1時間当たりの単価、運行時間外手当に見合う法定外時間外労働時間数、基本給の増額と運行時間外手当の減額の経緯等の事情を考慮すれば、本件会社が原告に対して支払った運行時間外手当には、法定外時間外勤務に対する対価以外のものを相当程度含んでいるものとみるのが相当である。(中略)そして、運行時間外手当のうちどの部分が法定時間外勤務に対する対価に当たるかは明らかでないから、運行時間外手当のうち、通常の労働時間の賃金に当たる部分と労働基準法37条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することはできないこととなる。

(対価性要件)
3 労働契約書や就業規則(賃金規程)において固定残業手当の定めがない場合や、使用者から労働者に対する説明が行われていない場合の評価について

1 労働契約書や就業規則(賃金規程)において固定残業手当の定めがない場合(定めはあっても規定内容が具体的でない場合を含む)や、使用者から労働者に対する説明が行われていない場合であっても、そのことのみをもって、直ちに当該固定残業手当の有効性が否定されるものではないが、当該固定残業手当が有効であると判断するためには、給与明細書等その他の資料の記載内容等も参考としつつ、当該内容について労使の合意が成立し、労働契約の内容になっていたかどうかまでをみて総合的に判断することが求められる。

2 労災裁判例においては、
・ 対象労働者に直接適用される就業規則ではないものの、その規定内容や実際の運用事実をとらえて、固定残業手当が時間外労働等に対する対価として支払われていたことを認定したもの(裁判例B3)、
・ 使用者からの明示的な説明が認められないものの、給与規定の記載内容や対象労働者に交付されていた通知書の記載内容を併せみて評価することで、固定残業手当が時間外労働等に対する対価として支払われていたことを認定したもの(裁判例B5)
などがある。

※上記と併せ、前掲「類型別労働関係訴訟の実務」〔改訂版〕Ⅰ・Q45及び46(184ないし201ページ)を参照されたい。

○参考1:労災裁判例

【裁判例B3】 東京地裁令和3年3月18日判決

〔要旨〕 対象労働者に直接適用される就業規則ではないものの、その規定内容や実際の運用事実を捉えて、固定残業手当が時間外労働等に対する対価として支払われていたものと判断されたもの。
関係会社管理規程は、本件会社の就業規則に該当するとは認められない。
もっとも、本件会社が、関係会社を規律する関係会社管理規程において、関係会社への出向者に対し時間外手当(含む休日出勤手当)として定額の手当を支払う旨定めていた事実、及び、本件会社の平成15年当時の給与担当者において、この規定内容に沿って、関係会社ごとの定額の手当の時間外の時間数を示した一覧表を作成していた事実は、本件会社が、他の法人への出向者に対して、時間外労働及び休日労働の対価である時間外手当及び休日出勤手当を定額の手当で支払うこと、その定額の手当は、一定の時間数分の本件会社の賃金規程に従って計算した時間外手当の金額とすることという運用を継続して行っていた事実の裏付けになる。

【裁判例B5】 東京地裁平成31年3月28日判決

〔要旨〕 固定残業手当について使用者からの明示的な説明が認められないものの、給与規定の記載内容や対象労働者に交付されていた通知書の記載内容を併せみて評価することで、固定残業手当が時間外労働等に対する対価として支払われていたと判断されたもの。
各年度ごとに原告に交付されていた年収見込通知書には、「固定残業6万2600円」、「深夜固定残業5100円」などと記載されており、その名称等に照らしても時間外労働及び深夜労働に対する対価として支給される趣旨の手当であることは明確である上、給与規程上、時間外手当として「固定時間外」が支給される旨の定めがあることや、給与の支給に当たっても、これらの固定残業手当については他の費目から明確に区別されて支給されていたと認められ、以上の事情に照らせば、本件会社が原告に対して固定残業代の支給について明示的に説明していないとしても、そのことをもって、対価性や明確区分性が否定されるものではないというべきである。

○ 参考2:判例評釈等

最高裁平成30年判決の評釈においては、
・ 契約書等の記載内容や使用者の労働者に対する説明内容がそれぞれ必須の要件や要素となることを示したものとは解されない(池原桃子・ジュリスト1532号76頁)、
・ 契約書等が不明確であっても、使用者の労働者に対する説明や勤務実態によって有効と評価され得る(岩出誠・ジュリスト1529号116頁)
などとしたものがある。

(対価性要件)
4 固定残業手当が対象とする時間外労働等の評価について

1 固定残業手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものであったとして、その対象としては、法定時間外労働のほか、休日労働や深夜労働、さらには、所定時間外(法定時間内)労働が含まれることも想定される。

2 このことについて、労災裁判例においては、契約書等の記載内容から、固定残業手当が法定時間外労働のほかどの労働に対して支払われるものかが明らかでないものについて、固定残業手当に含まれる時間外労働時間数を算出する際の計算式や休日手当等他の手当の規定内容に照らし、当該固定残業手当の対象は法定時間外労働のみと認め、休日労働等に対する対価として支払われたものではないと判示したものがある(裁判例B2)。

3 このような場合、当該固定残業手当が法定時間外労働の対価として支払われていたと評価されるかどうかは別として、少なくとも休日労働や深夜労働に対する賃金が支払われていたものとは評価されない場合においては、給付基礎日額の算定に当たっては、休日労働や深夜労働に対して支払われるべきであった割増賃金の額を算入する必要があることについて、留意が必要である。

※上記と併せ、前掲「類型別労働関係訴訟の実務」〔改訂版〕Ⅰ・Q45及び46(184ないし201ページ)を参照されたい。

○参考:労災裁判例

【裁判例B2】 東京地裁令和4年1月18日判決

〔要旨〕 固定残業手当が所定時間外労働のうちどの時間を対象として支払われるものかが明らかでないものについて、その計算式や休日手当等他の手当の規定内容に照らし、法定時間外労働のみに対する対価として支払われたものと判断されたもの。
本件契約書においては、運行時間外手当について、「通常発生する時間外相当額として支給」する旨が定められ、含まれる時間外労働時間数を算出する計算式について、1時間当たりの単価に1.25を乗じたもので運行時間外手当を除することとされている。そして、本件賃金規程上も、運行時間外手当について「通常発生する時間外相当額として支給」するとし、含まれる時間外労働時間数を算出する計算式についても、基準内賃金を月平均労働時間数で除した金額に1.25を乗じたもので運行時間外手当を除することとされ、本件契約書と同旨の定めがされている。そして、本件賃金規程上は、時間外勤務手当、休日勤務手当、深夜勤務手当が別個に定められていること、上記の1.25という係数が法定外時間外労働をする場合の係数であることに照らすと,上記の「時間外相当額」の「時間外」とは法定外時間外労働勤務をいうものと認めるのが相当である。(中略)
したがって、本件契約書及び本件賃金規程によれば、運行時間外手当は、法定外時間外勤務に対する対価であって、このほかに法定内時間外勤務、深夜勤務及び休日勤務に対する対価も含むものと認めることはできない。

(対価性要件)
5 固定残業手当についての基本給部分に係る金額の多寡等の比較における評価について

固定残業手当の金額の多寡のみをもって、直ちに当該固定残業手当の有効性が否定されるものではないが、対象労働者に支払われる賃金のうち、固定残業手当を除く額(割増賃金の基礎となる賃金に限る。)を時間単価に換算した場合に、最低賃金額を下回っているような場合には、当該固定残業手当が時間外労働等に対する対価以外のものを含んでいると評価され、その全体が時間外労働等の対価としての支払を否定される可能性があるため、留意が必要である。

※上記と併せ、前掲「類型別労働関係訴訟の実務」〔改訂版〕Ⅰ・Q45及び46(184ないし201ページ)を参照されたい。

○参考:労災裁判例

【裁判例B1】 東京地裁令和5年1月26日判決

〔要旨〕 固定残業手当を除く基本給部分を時間単価に換算した場合に、最低賃金を下回る又は最低賃金額と同額程度となり、不自然なまでに低額であると判断されたもの。
原告の基本給は、本件労働契約当初は15万円と設定され、その後も平成27年3月まで15万円、同年4月から平成28年1月まで16万円、同年2月以降は17万円と推移しており、この基本給を1か月当たりの平均所定労働時間(173時間)で除して賃金単価を計算すると、それぞれ867円、925円、983円となる。これは、調理師として一定の職務経験を有する労働者として本件会社に雇用され、本社E事業部のマネージャーとして、調理業務のみならず、F各店舗の管理運営に関する業務等も担当してきた原告の地位及び職責に照らし、不自然なまでに低額であると言わざるを得ない(なお、この間のZにおける最低賃金は、平成25年10月19日から869円、平成26年10月1日から888円、平成27年10月1日から907円と推移している。)。

【裁判例B2】 東京地裁令和4年1月18日判決

〔要旨〕 固定残業手当を除く基本給部分を時間単価に換算した場合に、最低賃金を下回る又は最低賃金額と同額程度となり、明らかに低額すぎると判断されたもの。
原告の賃金は、入社当初は、基本給及び評価給の合計額が15万8600円であるのに対し、運行時間外手当は14万9900円となっており、ほぼ同額となっている。そして、評価給は、本件会社においては無事故手当という位置付けであるから、これを除いた基本給は14万1800円となり、運行時間外手当14万9900円より低額となっている。そして、基本給及び評価給の合計額15万8600円を月平均所定労働時間173.75時間で除すると913円(小数点以下四捨五入)となるが、これは平成29年のZ県の最低賃金871円に近い金額となるし,評価給を除いた基本給14万1800円を月平均所定労働時間173.75時間で除すると816円(少数点以下四捨五入)となるが、これは最低賃金を割り込んだ金額となり、大型運転免許とフォークリフト免許という特殊な免許を持つトラック運転手である原告の時給としては明らかに低額にすぎるものと認められる。(中略)
以上のような基本給と運行時間外手当の金額の比率及び基本給の1時間当たりの単価、運行時間外手当に見合う法定外時間外労働時間数、基本給の増額と運行時間外手当の減額の経緯等の事情を考慮すれば、本件会社が原告に対して支払った運行時間外手当には、法定外時間外勤務に対する対価以外のものを相当程度含んでいるものとみるのが相当である。

(対価性要件)
6 固定残業手当において、想定されている時間外労働等の時間数の評価について

固定残業手当について、その想定されている時間外労働等の時間数をもって、直ちに当該固定残業手当の有効性が否定されるものではないが、当該時間数が、時間外労働及び休日労働に関する協定書で定める時間外労働時間の延長時間を大幅に超えるような場合や、労働基準法上の時間外労働の上限時間を上回るような場合には、当該時間数を前提とした労使間の合意そのものが否定される可能性があり、すなわち、時間外労働等に対する対価としての支払も否定される可能性があるため、留意が必要である。

※上記と併せ、前掲「類型別労働関係訴訟の実務」〔改訂版〕Ⅰ・Q45及び46(184ないし201ページ)を参照されたい。

○参考:労災裁判例

【裁判例B1】 東京地裁令和5年1月26日判決

〔要旨〕 月80時間を大幅に超える時間外労働を前提とした固定残業手当の支給は、当事者の通常の意思に反するものというべきで、当事者間の合意が成立したものとは認められないと判断されたもの。
労基法36条は、労使協定が締結されている場合に、例外的にその協定に従って同法32条により制限された労働時間の延長等をすることができる旨定めるところ、労使協定における労働時間の上限は、平成10年12月28日労働省告示第154号「労働基準法第三十六条第一項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」において、1か月当たり45時間と定められている。また、厚生労働省労働基準局長が発出した平成13年12月12日付け基発1063号「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」は、脳・心臓疾患の発症が業務上と認定されるための具体的要件を定めたものであるところ、発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できることを踏まえて判断すると定められている。これに加え、原告が平成28年1月から3月まで勤務していた事業場における労使協定においても、平成27年12月1日から平成28年11月30日までの間、本件会社が上記事業場の従業員に対して命ずることができる1か月当たりの法定時間外労働時間数の上限は45時間とされ、1年に6回までは1か月当たり75時間までの法定時間外労働を命ずることができるものとされているのであるから、1か月当たり80時間を超える法定時間外労働を命ずることは予定されていないというべきである。
そうすると、1か月当たり150時間前後という、80時間を大きく超える法定時間外労働は、上記の法令及び労使協定の趣旨に反することは明らかであって、本件労働契約において、このような恒常的な長時間労働を想定して職務手当を支払う旨の合意が成立したと認めることは、労働契約の当事者の通常の意思に反するものというべきである。

【裁判例B2】 東京地裁令和4年1月18日判決

〔要旨〕 基本給と固定残業手当の金額の比率や基本給の1時間当たりの単価等から考えて、固定残業手当には時間外労働に対する対価以外のものを含んでいると判断されたもの。
原告の運行時間外手当は14万9900円であるところ、これを法定外時間外勤務の時間単価1141円(913円×1.25=1141.25円)で除すると、運行時間外手当に含まれる法定外時間外労働時間数は約131.38時間(少数点第3位以下四捨五入)となる。本件会社は、平成28年10月22日、従業員代表との間で時間外労働及び休日労働に関する協定書(いわゆる36協定)を締結しているが,上記協定書においては,自動車運転者につき「突発的な発注の変更に対処する」などのため1か月に90時間を限度として労働時間を延長させることができる旨を定めている。上記約131.38時間はこの36協定の上限の90時間を大幅に超え,さらに,「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」(令和3年基発第1号による廃止前の平成13年厚生労働省基発第1063号)が定める一月当たり100時間という時間外労働時間の基準すら超えるものである。(中略)
以上のような基本給と運行時間外手当の金額の比率及び基本給の1時間当たりの単価、運行時間外手当に見合う法定外時間外労働時間数、基本給の増額と運行時間外手当の減額の経緯等の事情を考慮すれば、本件会社が原告に対して支払った運行時間外手当には、法定外時間外勤務に対する対価以外のものを相当程度含んでいるものとみるのが相当である。

(対価性要件)
7 想定されている時間外労働等の時間数と実際の時間外労働時間数との間に大きな乖離がある場合における当該固定残業手当の有効性について

1 固定残業手当がその想定する時間外労働等の時間数(以下「想定時間」という。)について、実際の時間外労働時間数(以下「実労働時間」という。)との間に大きな乖離が認められた場合、当該固定残業手当が時間外労働等に対する対価として支払われていないと判断される要素の一つになり得る。

2 労災裁判例においては、
・ 想定時間と実労働時間との間に大きな乖離が認められることをもって、固定残業手当が時間外労働等に対する対価として支払われていないことを推認させると判示するものがあるが(裁判例B4)、
・ この乖離について、想定時間よりも実労働時間が恒常的に相当少ない場合は、当該固定残業手当が実際には割増賃金としての支払ではなく、他の趣旨で支払われていると評価される可能性がある一方、想定時間よりも実労働時間が恒常的に相当多い場合には、その事実のみをもって、当該固定残業手当が時間外労働等に対する対価として支払われていないとは必ずしも評価されないと判示するものもある(裁判例B5)。

※上記と併せ、前掲「類型別労働関係訴訟の実務」〔改訂版〕Ⅰ・Q45及び46(184ないし201ページ)を参照されたい。

○参考1:労災裁判例

【裁判例B4】 東京地裁平成31年4月26日判決

〔要旨〕 固定残業手当の想定時間と実際の時間との間に大きな乖離が認められることをもって、固定残業手当が時間外労働等に対する対価として支払われていないことが推認されると判断されたもの。
超過手当においてあらかじめ想定される時間外労働時間数(約67時間)と被災者の実際の時間外労働時間数(約123時間ないし約141時間)から窺われる勤務状況との間に約2倍もの大きな乖離が見られるところであり、この点はかえって本件雇用契約において本件固定残業代が時間外労働等に対する対価として支払われていないことを推認させるものである。

【裁判例B5】 東京地裁平成31年3月28日判決

〔要旨〕 固定残業手当の想定時間と実際の時間が乖離する場合における評価の考え方について判示されたもの。
固定残業代の対象となる時間外労働の時間数と比較して実際の労働時間数が恒常的に相当に少ない場合には、固定残業代名目で支払われている当該手当は、実際には割増賃金の支払としてではなく、他の趣旨の手当等として支払う旨の合意であるにもかかわらず、名目的に固定残業代として支払っている場合があり得ることから、これを考慮要素の一つとしたものと解される。
逆に、固定残業代の対象となる時間外労働の時間数と比較して実際の時間外労働の時間数が継続的に相当多い場合には、後述の固定残業代の合意が公序良俗違反により無効となる場合を別とすれば、固定残業代の支払が割増賃金の一部の弁済にとどまっている状況が継続していることにはなるものの、そのことのみをもって、固定残業代として支払われてきた当該手当の法的性質を固定残業代とみることが直ちに困難となるとはいえず、したがって、前記合意をもって固定残業代を支払う旨の合意又は充当指定とみることが直ちに困難になるとはいえないというべきである。

○参考2:判例評釈等

平成30年最高裁判決の評釈として、そもそも固定残業手当はあくまで内払いであるため、想定時間が少ない場合は問題とはなり得ず、想定時間が労働基準法上の時間外労働の上限時間に近似する又は上回る場合で、それが実態と「大きく乖離する」場合にのみ、有効要件の阻害事情として判断されることがあり得るにすぎないとしたものがある(岩出誠・ジュリスト1529号116頁)。


固定残業手当に係る労災裁判例判決文(目次、PDF)

B1 令和5年1月26日東京地裁判決・令和3年(行ウ)第555号

B2 令和4年1月18日東京地裁判決・令和元年(行ウ)第321号

B3 令和3年3月18日東京地裁判決・令和元年(行ウ)第261号

B4 平成31年4月26日東京地裁判決・平成29年(行ウ)第284号

B5 平成31年3月28日東京地裁判決・平成29年(行ウ)第254号

B6 平成31年1月31日東京地裁判決・平成29年(行ウ)第21号

参考資料(目次、PDF)

1 最高裁令和2年3月30日第一小法廷判決

2 最高裁平成30年7月19日第一小法廷判決

3 最高裁平成29年7月7日第二小法廷判決

4 平成29年7月31日付け基発0731第27号「時間外労働等に対する割増賃金の解 釈について」

5 平成29年7月31日付け基監発0731第1号「時間外労働等に対する割増賃金の 適切な支払いのための留意事項について」

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安全センター情報2024年3月号