重大災害3号判決、また執行猶予「最低刑で固定か」 2023年06月27日 韓国の労災・安全衛生
「重大災害3号」事件でも、元請け代表に執行猶予が宣告された。「2号事件」で韓国製鋼の代表に懲役一年の実刑が宣告された以外、一審は全て執行猶予の結論が出た。検察の軽い求刑に加え、法定刑も下限線で固まるのではないかという懸念が出ている。
中国国籍の下請け労働者が死亡、五つの義務違反
二度の罰金刑の前歴でも下限を超えられない
仁川地裁は23日、重大災害処罰法(産業災害致死)などで裁判に付された華城市の建設会社・シナジー建設の代表A氏に、懲役一年執行猶予三年を、建設会社の法人に罰金5千万ウォンをそれぞれ宣告した。今年2月2日に起訴されてから4ヵ月目だ。
産業安全保健法違反などの疑いで起訴された元請けの現場所長と下請け業者B社の代表には、各々懲役六月に執行猶予二年を宣告し、産業安全事故予防講義の受講40時間を命じた。下請けの法人は罰金700万ウォンを宣告された。
裁判官は「被告人たちの義務違反によって、被害者の死亡という取り返しのつかない重大な結果が発生し、被告人たちの罪責は重い。」「事業場の従事者の安全権を確保し、安全管理システムの不備によって繰り返される重大災害を事前に防止するためには、厳重に責任を問う必要がある」と指摘した。
特に、A氏が産業安全保健法違反の疑いで二回の罰金刑を受けていた事実を強調した。シナジー建設の法人も2017年に罰金刑を宣告されていた。その一方で「A氏は過去に産業安全保健法違反の疑いで罰金刑を受けた前歴があるが、これを超える前科はない」とし、遺族が合意によって処罰を望んでいないことなどを有利な情状として参酌した。
A氏は安全保健確保義務の五つ以上に違反していたことが判った。検察は、△有害・危険要因の確認および改善業務手続き(施行令4条3号)、△有害・危険要因の改善に必要な予算編成と執行(4条4号)、△安全保健管理予算と業務遂行評価基準の作成(4条5号)、△従事者の意見聴取手続きの作成と履行可否の点検(4条7号)、△重大産業災害発生時の危険要因除去マニュアル作り(4条8号)、などの施行令規定に違反したと主張した。
下請け会社所属の中国人労働者B氏(死亡当時42歳)は、昨年3月16日午前9時40分頃、仁川市の近隣生活施設新築工事現場の地下1階で、型枠を支える仮設支持台の高さを調整していたところ、仮設支持台が倒れて胸を強打した。その衝撃で倒れて、積まれていた鉄筋の山に頭をぶつける二重の事故に遭った。病院に運ばれたが亡くなった。事故現場は工事金額が50億ウォン以上で、重大災害処罰法が適用された。
法曹界「重大災害の深刻性への認識がない」
「加重要素に目をつぶって軽い処罰」
法曹界は、法定刑の下限に止まった判決だと批判した。A氏の場合、懲役一年に執行猶予三年を言い渡され、下限線に止まる。検察の求刑の二年の半分だ。「重大災害2号」判決の韓国製鋼事件(元請け代表に懲役一年を宣告)を除けば、すべてが執行猶予に終わった。 一号事件のオンユパートナーズの代表も懲役一年六月に執行猶予三年が宣告された。
これについて、「重大災害予防と安全権実現のための学者・専門家ネットワーク」(重大災害専門家ネット)の共同代表のクォン・ヨングク弁護士は、「元請けの代表は罰金刑を二度受けた前歴があり、加重要素に該当すると思われるにも拘わらず、法定の最低刑を宣告した。」「重大災害の深刻性に対する裁判官の認識不在」と批判した。ムン・ウンヨン弁護士は、「元請け代表の処罰の前歴が明確でなく、宣告された刑に与えた影響が判らない。」「再犯の内容が十分判決に反映されたのかは疑問」と指摘した。ソン・イクチャン弁護士は、「事案の深刻性について、十分に検討していないようだ」と批判した。
昨年、仁川で労働災害で亡くなった労働者は全部で35人で、重大災害処罰法の適用対象は19件だった。しかし、シナジー建設の他には、元請け代表が裁判に付された事例は未だにない。この中では、大宇建設とSKエコプラントなど、大企業の事件も捜査中だ。
2023年6月27日 毎日労働ニュース ホン・ジュンピョ記者
http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=215844