原発被ばくなど放射線被ばくによる疾病(電離放射線障害)の労災認定状況~新たに白血病で認定 2023/3/10福島・富岡労基署~
目次
- 電離放射線障害の業務上外認定(労災認定)のされかた
- 最近の業務上外判断についての公表状況(厚生労働省HPより)
- 2022年06月28日公表 前立腺がんと放射線被ばくに関する医学的知見の公表等
- 2022年05月20日公表 参集者名簿
- 2021年12月06日公表 参集者名簿
- 2021年09月08日公表 咽頭がん(福島第1原発事故後作業労働者2名)認定(2021年9月6日付 福島・富岡労基署)
- 2021年09月08日公表 咽頭がん・悪性黒色腫と放射線被ばくに関する医学的知見を公表します~国際的な報告や疫学調査報告などを分析・検討して報告書を取りまとめ~
- 2020年03月19日公表 脳腫瘍と放射線被ばくに関する医学的知見を公表します~国際的な報告や疫学調査報告などを分析・検討して報告書を取りまとめ~
- 2018年06月27日公表 膵がんと放射線被ばくに関する医学的知見を公表します~労災請求を受け、国際的な報告や疫学調査報告などを分析・検討して報告書を取りまとめ~
- 2017年10月27日公表 肝がんと放射線被ばくに関する医学的知見を公表します~労災請求を受け、国際的な報告や疫学調査報告などを分析・検討して報告書を取りまとめ~
- 2016年12月16日公表 甲状腺がんと放射線被ばくに関する医学的知見を公表します~労災請求を受け、国際的な報告や疫学調査報告などを分析・検討して報告書を取りまとめ~
- 2016年8月19日公表 白血病(福島第一原発事故後の作業従事者1名)を認定(2016年8月18日検討会)
- 2015年10月20日公表 白血病(福島第一原発事故後の作業従事者1名)を認定(2015年10月13日検討会)
- 2015年01月28日公表 膀胱がん・喉頭がん・肺がんと放射線被ばくに関する医学的知見を公表します~労災請求を受け、国際的な報告や疫学調査報告などを分析・検討して報告書を取りまとめ~
- 2012年9月28日公表 胃がん・食道がん・結腸がんと放射線被ばくに関する医学的知見の公表~労災請求を受け、疫学調査報告を分析・検討して報告書を取りまとめ
- 2011年4月27日 第9回検討会 参集者名簿
- 2009年09月09日 第1回検討会開催
電離放射線障害の業務上外認定(労災認定)のされかた
原子力発電所(原発)などでの被ばくを原因とする疾病の労災請求を受け、業務上疾病として認めるかどうかは、労災認定基準である「電離放射線に係る疾病の業務上外の認定基準に号昭和」(基発第810号昭和51(1976)年11月8日)によるとされている。
認定結果は職業病リスト(労働基準法施行規則別表第1の2)上の
第二号 物理的因子による次に掲げる疾病
5 電離放射線にさらされる業務による急性放射線症、皮膚潰瘍等の放射線皮膚障害、白内障等の放射 線眼疾患、放射線肺炎、再生不良性貧血等の造血器障害、骨壊死その他の放射線障害
又は
第七号 がん原性物質若しくはがん原性因子又はがん原性工程における業務による次に掲げる疾病
15 電離放射線にさらされる業務による白血病、肺がん、皮膚がん、骨肉腫、甲状腺がん、多発性骨髄腫又は非ホジキンリンパ腫
に該当する疾病として分類されて記録される。
上のリンクをクリックすると2020年度までの労災認定件数を示した一覧表をみることができる。これは当全国安全センターが厚生労働省に対する情報公開請求などにより作成入手した。
上記の労災認定基準に
なお、以下に認定基準を定めていない電離放射線障害、認定基準を定めている疾病のうち白血病及び認定基準により判断し難い電離放射線障害に係る事案の業務上外の認定については、別添「電離放射線に係る疾病の業務起因性判断のための調査実施要領」により調査して得た関係資料を添えて本省にりん伺されたい。
「電離放射線に係る疾病の業務上外の認定基準に号昭和」(基発第810号昭和51(1976)年11月8日)
と記述されており、「白血病及び認定基準により判断し難い電離放射線障害に係る事案の業務上外」については「本省りん伺」により判断される。
この判断を行うのが、厚生労働省の「電離放射線障害の業務上外に関する検討会」である。
電離放射線障害の業務上外に関する検討会
厚生労働省のHP上に記載されている開催リストの最も古い「電離放射線障害の業務上外に関する検討会」(以下、検討会)は、2003(平成15)年10月23日第1回検討会である。
このときの「第1回」の開催要綱には、
1 開催目的 放射線業務従事者に発生した疾病の労災認定に当たっては、昭和51年11月8日付け基発第810号「電離放射線に係る疾病の業務上外の認定基準について」に基づき、その処理を行っているところであり、認定基準に定めていない電離放射線障害については、本省りん伺事案として取り扱われているところである。
電離放射線障害の業務上外に関する検討会開催要綱 2003(平成15)年10月23日第1回検討会
今般、多発性骨髄腫を発症したとして、原子力発電施設で放射線業務に従事していた労働者から労災請求された事案について、福島労働局長より本省労働基準局長に対し、りん伺されたところである。
ついては、当該事案について業務上による疾病か否かの判断を行う必要があることから、「電離放射線障害の業務上外に関する検討会」(以下「検討会」という。)を開催し、業務上外の判断に係る医学上の意見を求めるものである。
とある。血液がんの一種である多発性骨髄腫にかかる労災請求があったことを受けての設置、開催となったものだった。当時、検討会は「本省りん伺」があったときその都度、開催されていた。
このときの「多発性骨髄腫にかかる労災請求」とは、福島第1原発などで作業歴のあった長尾光明さんのケースである。
その後は、
2006年05月22日第1回検討会(平成18年度その1)「今般、急性リンパ性白血病を発症したとして、原子力発電施設で放射線管理業務等に従事していた労働者から労災請求された事案に係る業務上外の判断について、福島労働局長より本省労働基準局長に対し、りん伺されたところである。(開催要綱)」
2006年12月14日第1回検討会(平成18年その2)「今般、急性リンパ性白血病を発症したとして、原子力発電施設で電気計装関係の検査・点検工事等に従事していた労働者から労災請求された事案に係る業務上外の判断について、福島労働局長より本省労働基準局長に対し、りん伺されたところである(開催要綱)。」
2007年11月22日第1回検討会「今般、電離放射線業務に従事する労働者に発症した造血器の腫瘍の業務上外に関し、認定基準により判断が困難であるとして、大阪労働局長より本省労働基準局長に対し、意見を求められたところである(開催要綱)。」
このときの検討会は、悪性リンパ腫で死亡した喜友名正さんのご遺族が大阪・淀川労基署に労災請求した事案の検討を行った。
検討会では、悪性リンパ腫が労災認定基準上の疾病ではなかったために、疫学文献レビューなどを行い報告書をまとめ、業務上疾病として労災認定した。
これ以降は、2009年9月9日に第1回検討会が開かれ、直近は2023年3月14日の第82回検討会である。
最近の業務上外判断についての公表状況(厚生労働省HPより)
2009年9月9日第1回検討会からの主な内容を新しい順から以下に紹介する。
本省りんしされた個別事案の検討結果が公表されたとき、及び、りん伺事案が新たな疾病の請求事案だった場合にはその疾病の業務上外判断をどうするかの検討がおこなわれて報告書が出されたときをピックアップしてある。
2023年03月14日公表 白血病(福島第1原発事故後作業労働者)認定(2023年3月10日付 福島労働局富岡労基署)
電離放射線障害の業務上外に関する検討会(非公開)について
○「電離放射線障害の業務上外に関する検討会」(座長:東京医療保健大学 教授明石真言)では、東京電力電福島第一原発における事故後の作業従事者から、白血病を発症したとして労災請求がなされたことを受け、当該疾病が業務によるものかどうか、検討を行った。
(参考) 白血病の認定基準
(昭和51年11月8日付け基発第810号「電離放射線障害に係る疾病の業務上外の認定基準について」)
①被ばく線量 : 5mSv×従事年数以上
②潜伏期間 : 被ばく開始後1年を超えた後に発症
③対象疾病 : 骨髄性白血病又はリンパ性白血病
検討会の検討結果について
○東京電力福島第一原発における事故後の作業従事者に発症した白血病について、業務上との結論。(令和5年3月6日開催)
労災認定された事案について
○労働者は40歳代に白血病を発症した男性。
○平成10年5月~令和3年12月のうち約23年、放射線業務に従事。(東京電力福島第一原発事故後は、同原発構内での作業にも従事)
○総被ばく線量 約124mSv [うち事故後の東京電力福島第一原発での作業:約95mSv]
○全国の原子力発電所において原子力発電所の運転操作業務等に従事し、東京電力福島第一原発事故後は、主に、同原発における原子炉への給水操作、水処理設備の運転操作等の業務に従事した。
○事故後の東京電力福島第一原発での業務では防護服・全面マスク等を着用。
東京電力福島第一原発における事故後の作業従事者の労災認定状況
○これまでに労災認定された東京電力福島第一原発における事故後の作業従事者に発症した疾病は、白血病4件、真性赤血球増加症1件、咽頭がん2件、甲状腺がん2件、肺がん1件。
緊急作業従事者への労災補償制度の周知について
○緊急作業従事者(約2万人)に対し、平成24年度から電離放射線被ばくによる疾病の労災補償に関するリーフレットを計10回、直接送付している。
※本件は、緊急作業従事者を含む東京電力福島第一原発における事故後の作業従事者に労災認定要件を満たせば労災補償が受けられること等を周知する観点から、請求人の同意を得て公表するもの。
2022年12月23日公表 真性多血症及び白血病(福島第1原発事故後作業労働者2名)認定(2022年12月21日付 茨城・日立労基署、福井・敦賀労基署)
○東京電力福島第一原発における事故後の作業従事者2名にそれぞれに発症した真性赤血球増加症及び白血病について、業務上との結論。(令和4年12月19日開催)
労災認定された事案について①
○労働者は60歳代に真性赤血球増加症(真性多血症)を発症した男性。
○昭和54年12月~平成29年6月のうち約5.9年、放射線業務に従事。
(東電福島第一原発事故後は、同原発構内での作業にも従事)
○総被ばく線量 約139mSv [うち事故後の東電福島第一原発での作業:約60mSv]
○全国の原子力発電所において電気系統の定期検査の業務等に従事し、東電福島第一原発事故後においては同原発構内での電気系統の工事における指導業務に従事したもの。
○事故後の東電福島第一原発での業務では防護服・全面マスク等を着用。
労災認定された事案について②
○労働者は70歳代に白血病を発症した男性。
○平成6年1月~平成30年2月のうち約8.6年、放射線業務に従事。
(東電福島第一原発事故後は、同原発構内での作業にも従事)
○総被ばく線量 約78mSv [うち事故後の東電福島第一原発での作業:約31mSv]
○全国の原子力発電所の関連設備の建設作業に従事し、東電福島第一原発事故後は同原発構内でタンク新設工事業務等に従事した。
○事故後の東電福島第一原発での業務では防護服・全面マスク等を着用。
2022年12月23日公表 腎臓がんと放射線被ばくに関する医学的知見
2022年06月28日公表 前立腺がんと放射線被ばくに関する医学的知見の公表等
2022年05月20日公表 参集者名簿
2021年12月06日公表 参集者名簿
2021年09月08日公表 咽頭がん(福島第1原発事故後作業労働者2名)認定(2021年9月6日付 福島・富岡労基署)
○東京電力福島第一原発事故後の作業従事者2名にそれぞれに発症した咽頭がんについて、それぞれ業務上との結論。(令和3年8月30日開催)
労災認定された事案について①
○労働者は発症時60歳代の男性。
○昭和52年4月~平成27年5月のうち約35年、放射線業務に従事。(東電福島第一原発事故後は、構内での作業に従事)
○総被ばく線量 約199mSv [うち事故後の作業:約85mSv]
○東電福島第一原発において原子炉の運転・監視業務に従事し、東電福島第一原発事故後は、東電福島第一原発構内における、がれきの撤去、原子炉への注水のためのホースの敷設業務等に従事。
○東電福島第一原発事故後の業務では防護服・全面マスク等を着用。
労災認定された事案について②
○労働者は発症時40歳代の男性。
○平成8年5月~平成31年2月のうち約15年、放射線業務に従事。(東電福島第一原発事故後は、構内での作業に従事)
○ 総被ばく線量 約386mSv [うち事故後の作業:約44mSv]
○ 医療機関において放射線技師としてX線撮影業務に従事し、その後、全国の原子力発電所において作業員の被ばく線量管理等の業務に従事し、東電福島第一原発事故後は、東電福島第一原発構内における放射線量測定業務等に従事。
○ 東電福島第一原発事故後の業務では防護服・全面マスク等を着用。
2021年09月08日公表 咽頭がん・悪性黒色腫と放射線被ばくに関する医学的知見を公表します~国際的な報告や疫学調査報告などを分析・検討して報告書を取りまとめ~
2020年03月19日公表 脳腫瘍と放射線被ばくに関する医学的知見を公表します~国際的な報告や疫学調査報告などを分析・検討して報告書を取りまとめ~
2018年06月27日公表 膵がんと放射線被ばくに関する医学的知見を公表します~労災請求を受け、国際的な報告や疫学調査報告などを分析・検討して報告書を取りまとめ~
2017年10月27日公表 肝がんと放射線被ばくに関する医学的知見を公表します~労災請求を受け、国際的な報告や疫学調査報告などを分析・検討して報告書を取りまとめ~
2016年12月16日公表 甲状腺がんと放射線被ばくに関する医学的知見を公表します~労災請求を受け、国際的な報告や疫学調査報告などを分析・検討して報告書を取りまとめ~
2016年8月19日公表 白血病(福島第一原発事故後の作業従事者1名)を認定(2016年8月18日検討会)
電離放射線障害の業務上外に関する検討会について
○開 催 日 平成28年8月18日
○検討結果 東京電力福島第一原発事故後の作業従事者に発症した白血病に ついて業務上との結論。
労災認定された事案について
○ 労働者は50歳代の男性。
○ 平成23年4月~平成27年1月の3年9か月間放射線業務に従事。
○ 従事した作業の概要は、東電福島第一原発構内における機械修理業務。※作業時には防護服・鉛入りベスト・全面マスク等を着用。
これまでの原発労働者の労災認定状況
○ 原発労働者に係る放射線被ばくによる「がん」の労災認定は、これまで計14件。(白血病7件(※)、悪性リンパ腫5件、多発性骨髄腫2件)
※昨年10月に労災認定された東電福島第一原発事故後の作業従事者に発症した白血病1件を含む。
2015年10月20日公表 白血病(福島第一原発事故後の作業従事者1名)を認定(2015年10月13日検討会)
検討結果について
○開 催 日 平成27年10月13日
○検討結果 東京電力福島第一原発事故後の作業従事者に発症した白血病について業務上の方針。
労災認定された事案について
○労働者は30歳代の男性
○平成23年11月~平成25年12月の間で1年6か月放射線業務に従事
東電福島第一原発での作業は平成24年10月~平成25年12月までのうち、1年1か月間
○従事した作業の概要は、原子炉建屋の覆い設置工事や廃棄物焼却設備の設置工事※作業時には防護服・鉛ベスト・全面マスク等を着用
これまでの原発労働者の労災認定状況
○ 原発労働者に係る放射線被ばくによる「がん」の労災認定は、これまで計13人。(白血病6人、悪性リンパ腫5人、多発性骨髄腫2人)
2015年01月28日公表 膀胱がん・喉頭がん・肺がんと放射線被ばくに関する医学的知見を公表します~労災請求を受け、国際的な報告や疫学調査報告などを分析・検討して報告書を取りまとめ~
2012年9月28日公表 胃がん・食道がん・結腸がんと放射線被ばくに関する医学的知見の公表~労災請求を受け、疫学調査報告を分析・検討して報告書を取りまとめ
2011年4月27日 第9回検討会 参集者名簿
2011年3月11日 東日本大震災・福島第1原発事故