多発性骨髄腫で初の労災請求 原子力発電所での被曝が原因 /厚生労働省は検討会開始

片岡明彦(関西労働者安全センター事務局次長)

富岡労基署に労災請求

長尾光明氏(大阪市在住)は、1977年10月から 1982年1月にかけての原子力発電所の定検工事に従事し、放射線に被曝した。定年退職から8年後の 1994年頃から首の痛みがはじまり、1998年には、 第3頸椎病的骨折のために手術を受け「多発性骨髄腫」と診断された。以後現在まで療養を続けている。

原発内被曝による「多発性骨髄腫」労災請求中の長尾光明氏
(1981年12月東京電力福島第一原発2号機格納容器内定検工事にて)

2002年11月8日、原因は放射線被曝だとして福島県・富岡労働基準監督署に労災請求を行った。「多発性骨髄腫」は、白血病と同様に放射線と関連のある疾患とされ、白血病に類似した骨髄の腫瘍であり、いわゆる「血液がん」のひとつだ。長尾氏の場合、白血病の労災認定基準と比較すると3倍以上の被曝をしていることや、福島第1原発でα(アルファ)核種(ウラン、プルトニウムなど)による激しい汚染があった時期に作業をしていることなどから、被曝労働との関連は明らかとみられ、速やかな救済が求められる。

これまでに富岡署は、長尾氏からの聞き取り調査、長尾さんがかかっている3つの医療機関からの意見書収集(医学的因果関係などを詳細に述べた村田三郎医師(阪南中央病院)の意見書を含む)、 東芝等の会社側からの聴取、資料収集を行い、厚生労働省本省に対してりん伺した。これを受けて厚生労働省は、業務上外を検討する検討会を設置し、第1回会合が10月23日に行われている。

すでに厚生労働省交渉が取り組まれているが、支援活動を進めている市民団体、労働組合、各地域安全センターとともに、さらに長尾さんの労災認定を実現する運動を積極的に支援し、原子力被曝被災労働者の救済と安全衛生対策、労災隠し対策の徹底を政府、企業に対して要求する取り紅みを進めていきたいと考えている。

4年3か月で総線量70ミリシーベルト

長尾氏は、配管工事の技術者として定年退職まで各種のプラント工事に従事した。1973年に石川島プラント建設(IPC)(石川島播磨重工業(IHI)100%出資)に入社したが、前年からIPC関係の仕事に従事している。中部電力浜岡原発建設、住友化学新居浜工場、三井石油大竹工場、昭和電工大分工場、東亜燃料川崎工場など多数の現場で建設、補修工事に従事した後、1977年10月から東京電力福島第一原発に入った。

以後、長尾さんはベテランの配管技術者として3つの原発の定期補修工事に従事、その4年3か月間のうちの原発内作業歴と被曝線量は表1のとおり。労災請求の事業主証明は、最終放射線職場の福島第一原発2号機定検工事の元請会社である東芝が行った。
その4年3か月のうち表1に記載された期間以外は、原発以外の現場で働いているが、この歴年4年3か月の問に7,000mrern (ミリレム)=70mSv(ミリシーベルト)被曝したことが放射線管理手帳に記録されている。

長尾氏の放射線管理手帳

長尾氏の被曝線量は、当時長尾氏が放射線作業に従事した原発における労働者の被曝線量データと対比すると、最低1.5倍から最大3.5倍多かったことも見逃せない重大な事実である(表2)。

最後の福島第一原発2号機の工事では、汚染のはげしい原子炉格納容器内で、全面マスクをつけて作業している一方、長尾氏によればこれ以外の時、あるいは場所では、いずれもマスクなしか、簡易マスクだけの作業だったとのこと。特にこのことが、次に述べる「アルファ核種汚染」と相まって、「記録されない重大な被曝」の原因になったとみられている。

福島第一原子力発電所(2003年5月17日 撮影:筆者)

記録にない重大被曝の疑い

長尾氏の労災請求は

  1. 発症した多発性骨髄腫は白血病と同様に、放射線被曝との関連のある骨髄のがん(血液の悪性疾患)と考えられ、国内外の疫学調査が多発性骨髄腫と放射線被曝との間に因果関係があることを示していること。(「不当に厳しすぎる」と批判さ れている原爆症の認定においてすら、1993年度から2002年度の10年間で17例の多発性骨髄腫 が認定されていることが、厚労省健康局の資料から判明している。
  2. 被曝線量は、白血病の労災認定基準を大幅に超えており、かつ、同時期の他の労働者と比較しても相当大きいこと。

からして、早急に業務上疾病として認定されなければならない。(労災請求時には発病からすでに4年以上が経過してした。そのため労災保険法上、療養補償と休業補償の請求権の半分以上がすでに時効で消滅していた。そうした事情も踏まえて、早期救済が行われるべきである。)
ところが、こうした既存の情報に加えて、見過ごせない問題がわかってきた。それは、長尾氏が作業に従事した当時、福島第一原子力発電所1号機にα(アルファ)核種(放射線の中でもアルファ線を出す放射性物質)の激しい汚染にさらされていたという事実である(2002年10月24日付 毎日新聞が報道)。

福島第一原発
プルトニウム 外部漏れ
79~81年ごろ 市民団体公表
東電「規制値以下」
東京電力福島第1原発1号機(福島県大熊町)で79~81年ごろ、通常は原子炉内に閉じ込められているプルトニウムなどの放射性物質(アルファ核種)が排気筒から排出されていたことが分かった。関係者からの内部告発を受けた大阪市の市民団体「美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会」(代表・小山英之大阪府立大講師)が23日、資料を公表した。東電も放出を認めたが、「原発の敷地境界では、国の規制値の1万分の1以下の濃度になり、国に報告しなかった」と説明している。(30面に関連記事)
告発は9月27日に電子メールで届き、「東京電力株式会社」と印刷されて決裁印が押された内部資料や生データのコピー計18枚もその後送られてきた。
資料では、79~81年度に福島第1原発1,2号機が共用する高さ約120メートルの排気筒の排出口で測定されたアルファ核種の濃度が、測定機器の検出下限値の最大で30倍になっていた。これは敷地境界の規制値と比べると15倍になる。
1号機の原子炉建屋がアルファ核種で汚染されていたのが原因で、資料には、汚染のひどい場所でフィルターを設置したり、除染したりする対策を提言したことが示されていた。
97年に茨城県東海村にある再処理工場の火災・爆発事故でプルトニウムなどが放出されたが、原発でアルファ核種が建物外に放出されたのは初めてという。
東電は内部資料が「本物」だと認めたうえで、「当時は原子炉の燃料棒の被覆管の損傷が相次いでいた。このためアルファ核種が燃料棒から外部に漏れ出て、建屋内を汚染した。」と説明した。ただし、「敷地外への放出量は国の規制値以下で、施設内の汚染も対策を取ったため、国への報告義務はなかった」という。

毎日新聞 2002年10月24日

この事件は内部告発によって明らかになったもので、いまも市民団体による追及が続けられている。原因となっ たと考えられる燃料棒の破損状況、汚染状況の全貌など、核心部はまだ闇の中である。 アルファ核種汚染は、労働者に内部被曝をもたらすが、 放射線被曝管理記録に残されない可能性が大きく、 そこで働いていた労働者にとっても重大な問題なのである。
長尾氏が作業したのは2号機、3号機であって、 1号機ではないが、2号機と1号機は隣接していることなどから影響があった可能性が考えられ、IPC、東芝、東京電力に対しては、全面的な情報公開を求めていく必要がある。この問題に関連して、「アルファ核種汚染とこれによる内部被曝線量の推定値は100mSvを超える」とする小山英之氏(内部告発授けた「美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会」代表、元大阪府立大学工学部講師)作成の意見書が提出されている。
原子力発電所の労働現場が、アルファ核種(主としてプルトニウム)で激しく汚染され、そこで多くの労働者が知らずに被曝させられていて、しかもすべて隠蔽されていたといったことは、まさに日本の原子力発電史上でも前代未聞のことであり、非常に重大な問題だと言わなければならない。

一日も早い労災認定を

5月17日、福島県富岡町において、現地で長年原発反対運動に取り組んでいる双葉地方原発反対同盟(代表:石丸小四郎氏)などの主催による支援集会が行われた。
集会では、村田三郎氏と小山英之氏が講演し、長尾氏からのビデオメッセージも上映され 参加者の理解と協力を呼びかけた。その前日には、 同盟と関西労働者安全センター連名による富岡労基署に対する申し入れが行われた。

左から村田三郎、石丸小四郎、小山英之の各氏(富岡労働基準監督署前)

7月24日には、一日も早い労災認定を求めて、厚生労働省交渉が行われた(次頁写真)〇交渉に先立 ち、支援の13団体が連名で次の要望書を提出し交渉に臨んだ。

2003年7月24日

厚生労働大臣 坂口 力 殿

長尾光明氏の労災補償請求(多発性骨髄腫)についての要望書

貴職におかれましては、よき労働行政のため日夜邁進されておられることと存じます。
さて、標記長尾氏はベテランの配管技術者として多くの現場で手腕を発揮し無事定年まで勤め上げ、充実した余生を送っておられたところを、多発性骨髄腫という病魔に襲われてしまいました。なぜ、こんな病気になってしまったのか?思い当たるのは、原子力発電所での作業でした。

長尾氏は1973年から1986年1月31日定年退職までの期間、石川島プラント建設株式会社に所属しました。放射線に被曝したのはこの期間のうち、1977年10月から1982年1月までの間の原子力発電所における補修作業においてしかありません。長尾氏が所持する放射線管理手帳によると、この4年3ヶ月の間に、東京電力福島第一原子力発電所、動燃新型転換炉ふげん、中部電力浜岡原子力発電所の3カ所で放射線下作業に従事しており、外部被曝線量は合計70ミリシーベルトと記録されています。

体調の異変は1993、4年頃からはじまり、1998年に「第3頸椎病的骨折」の手術を受けるに及んで「多発性骨髄腫」に罹患していることが明らかとなりました。この確定診断から労災請求した昨年11月までは4年以上が経過しており、労災補償請求権の多くの部分が時効で消滅してしまいました。それぞれの医療機関は親身になって長尾さんの治療にあたられ、厳重な医療監視下にあるとはいえ、一定の小康状態にあります。長尾さんは自身の被曝歴をこれら医療関係者に訴えたといいますが、残念ながら一般的に医療機関の労災への理解、とりわけこうした分野への理解は乏しいのが実情であり、労災請求に行き着くのに貴重な時間が空費されてしまいました。

長尾氏は地元の労基署にも電話相談したことがありましたが、そのときも労災請求への道筋はつけてもらえなかったそうです。こうしたきわめて同情すべき状況の中でやっとのことで行われた労災請求であるという切実さを、まずもって、真剣にかみしめていただきたいと思います。
改めて労災請求を準備する中でわかったことは、長尾さんが直感した通り、発症した多発性骨髄腫が長尾氏の放射線曝露と因果関係があるということでした。まじめに仕事を勤め上げ、そのために被曝し、それが原因と考えられる疾病を発症し、長期間この病気と闘うことを余儀なくされた長尾氏への労災適用が、今さらできないようでは、何のための労災補償制度なのかということになってしまうのです。

以上の基本認識を踏まえ、以下の各項目について要望するとともに、誠実なご回答と対応をお願いする次第です。

(1)長尾氏の労災請求に対してできるだけ早期に業務上疾病として認め、支給決定を行うこと。

現行の電離放射線障害にかかる労災認定基準(基発第810号通達)に則って、「多発性骨髄腫」であることを理由に、所轄の富岡労基署から本省へりん伺されるに至ったことは、認定までに長期間を要することに繋がるものであり、被災者早期救済の観点からは不適切であると言わざるを得ません。現状において本件請求にかかる調査、審理等の段階、状況、また、今後どのように進めることになっているのかについて、具体的に明らかにされたい。仮に、専門家に検討を依頼するのであれば、誰に依頼するのか、個別案件として検討するのか、あるいは認定基準の見直しを含めて検討するのか、といった点についても明らかにされたい。

ただし、ここで強調したいことは、長尾氏の被曝線量が記録された外部被曝線量において白血病の認定基準線量の約3倍に達していること、多発性骨髄腫が白血病と類似の骨髄の癌(血液の悪性疾患)であること、多発性骨髄腫が放射線起因性の疾病であること(たとえば、すでに原爆症の認定疾患とされている)、国内外の疫学調査によって放射線被曝と多発性骨髄腫の関連が明らかであることから、すでに労災補償上の相当因果関係は明らかだということです。27年前に作られた認定基準上の手続きに、今、囚われるのではなく、白血病に準じて可及的速やかに支給決定するべきだと考えます。この点、どのようなお考えかお聞かせ願いたい。

(2)東京電力、核燃料サイクル開発機構、中部電力といった工事施主や東芝、石川島プラント建設等関係会社に対して被曝原因に関連する全資料の提出をさせるとともに、これらを開示すること。

長尾氏の被曝と多発性骨髄腫発症が相当因果関係にあることは、放射線管理手帳に記載された外部被曝線量によってもすでに十分明らかなところですが、ただその分だけが長尾氏の全被曝線量であると推定していいのかということについては疑義があります。

たとえば、長尾氏の就労時期を含んだ時期に、福島第一原発1号機においてα核種汚染が存在したという証拠が明らかになっていることは、貴職も承知されているところだと思います。この問題は未だに全貌が明かになっていないこともまた承知されているところでしょう。

長尾氏が就労したのは同原発2号機、3号機でしたが、このα核種汚染の影響が及んでいなかったという証拠は全くありません。それどころか、当時2号機の1次冷却水がα核種によって汚染されていたという証拠があります。この場合、長尾氏の作業現場となった原子炉建屋内がα核種で汚染されていたのは確実です。こうした、放射線管理手帳には記録されない内部被曝をもたらした可能性のある汚染状況が存在していたことの実態は、ぜひとも解明されなければならない重要な問題です。またこれは、長尾氏だけではなく、当時、福島第一原発で就労したすべての労働者に関係する問題であることに留意しなければなりません。

貴職として、施主である東京電力、元請会社である東芝、その下請けであり長尾氏の直接雇用主の石川島プラント建設に対して、当時の放射線管理記録、汚染調査記録等のすべての関連資料を提出するように命じるべきです。労災請求にかかる立証は請求者がするべきものと一般的にはされていますが、労働者にとって困難であることが多く、特に、原子力に関連する職場においてはさらに困難ですので、是非とも貴職の職権によって提出させるとともに徹底した事実究明が必要です。そして、請求者であり、汚染の影響を受けた当事者である長尾氏に対して、そうした情報を開示、提供していただきたい。

また、放射線管理手帳に記載された被曝線量以外の被曝の可能性の有無に関する詳細な調査は、この福島第一原発以外についても行われるべきであることは言うまでもありません。

以上。

関西労働者安全センター/東京労働安全衛生センター/神奈川労災職業病センター/全国労働安全衛生センター連絡会議/双葉地方原発反対同盟/ヒバク反対キャンペーン/美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会/被曝労働研究会/原水爆禁止日本国民会議/福島県平和フォーラム/脱原発福島ネットワーク/全造船石川島分会/原子力資料情報室

右側:厚生労働者側出席者

厚労省側からは、宇野浩一(労災補償部補償課職業病認定対策室職業病認定業務第二係長)、斉藤将(同第二係)、田村裕之(労災補償部補償課企画調整係長)、吉田貴則(安全衛生部労働衛生課業務第四係長)が出席した。
「個別案件についての回答は差し控えたい」としたため回答は一般的な内容となったが、「本省としては正式りん伺をこれから受けた上で、白血病に準じて扱うかどうかを含めて、専門家に相談しながら今後、調査検討を進める」というのがこの時点での回答だった。
そのため、当方から要望書の趣旨、詳細を説明することにほとんどの時間が当てられた。

参加した、北川れん子衆議院議員、各団体の代表が医学的側面、福島第1原発α核種汚染問題、大量の労働者被曝を生じている福島第一原発の異常な実態について厚労省側に具体的資料を提出しできる限り丁寧に説明した。

北川れん子氏と石丸小四郎氏

東京電力、東芝、石川島、IPCの責任追及

厚生労働省交渉の日、α核種汚染問題などに関する全面的な情報公開など求めて東京電力との交渉が緊急にもたれた。東電側の回答は全く不十分、不誠実であったが、その後、福島現地でこの問題についての交渉がはじまっている。
一方、長尾氏の労災請求に対して、長尾氏を直接雇用したIPCとその親会社の石川島播磨重工業、そして元請会社の東芝は、事業主として誠実に協力する義務ある。
長尾氏は全造船神奈川地域分会(横浜シティユニオン)に加盟、同ユニオンは3者に対して次のような要求書を送った。

2003年9月18日

株式会社東芝横浜事業所原子力フィールド技術部
取締役社長 岡村 正 殿
石川島播磨重工株式会社
代表取締役社長 伊藤 源嗣 殿
石川島プラント建設株式会社
代表取締役 上原 彰彦 殿

全造船神奈川地域分会(よこはまシティユニオン)
執行委員長 村野 元清

長尾光明の労働組合加入通知及び団体交渉要求書

石川島プラント建設株式会社の元従業員であり、東京電力福島第一原子力発電所などで働いた長尾光明(以下「組合員長尾」という。)が、2003年8月11日付けで、全造船神奈川地域分会(よこはまシティユニオン、以下「当労組」という)に加入したことを通知する。
すでに貴社らもご存知の通り、組合員長尾は、福島第一原子力発電所などでの放射線被曝によって、「多発性骨髄腫」(以下「本件原発労災」という)を発症し、現在富岡労働基準監督署に休業補償請求している。本件原発労災の業務との因果関係については、厚生労働省が調査中であるが、当時の職場における放射線等のデータ、実態については、貴社らおよび東京電力が当然把握・記録すべきものであり、それらを請求人が属する当労組に資料提供するなどして、早期業務上認定に協力すべきであると考える。
ついては以下の通り要求する。

  1. 貴社らが、組合員長尾が就労した当時の福島第一原発における放射線被曝の実態がわかるデータ、資料等を当労組に資料提供すること。
  2. 貴社らが把握していない当時の実態については、東京電力に対して資料提供を求めること。
  3. 組合員長尾と同様に当時福島第一原発で就労した労働者の情報を当労組に情報提供すると共に、当該労働者に対しては、当時の職場実態や関連する情報を積極的に提供するように要請すること。
  4. 本件原発労災に関する団体交渉を2003年10月16日までに開催すること。
  5. 上記4項目に対する貴社らの見解を団体交渉当日までに文書で回答すること。

以上

ユニオンでは今後、団交などを通じて会社側に対して誠実な対応と情報公開を求めていくことにしており、その動向が注目される。
また、7月24日に申し入れた支援団体、よこはまシティユニオンを中心とした長尾氏の早期労災認定を求める全国署名運動もはじまろうとしている。

厚労省検討会開始

10月22日、厚労省はホームページ上に次の内容の掲示をおこなった。

[非公開]
平成15年10月22日
電離放射線障害の業務上外に関する検討会(第1回)の開催について
標記検討会について、下記のとおり開催いたします。

1 日時 平成15年10月23日(木) 13:00 ~
2 場所 厚生労働省 専用第24会議室
(千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎第5号館19階 日比谷側)
3 議題
(1) 検討会開催の趣旨・目的について
(2) 個別労災請求事案に係る医学的事項について
(3) 追加調査等について
(4) その他
4 その他
○  本検討会は、個別事案を取り扱うため、検討会開催要領3の(1)により非公開とします。
照会先
厚生労働省労働基準局労災補償部補償課職業病認定対策室職業病認定業務第二係 (宇野・井野場)
〒100-8916 東京都千代田区霞が関1-2-2
電話 03-5253-1111(内線5571)FAX  03-3502-6488

問い合わせたところ、検討会は長尾氏の事案だけの業務上外を検討するためのもので、
開催要綱、検討委員名簿、配付資料(りん伺資料以外等の開示できると判断できるもの)については3週間以内にHPに掲載するとのことであった(即時開示は不当にも断られた)。

長尾氏の問題は、1)多発性骨髄腫でははじめての労災請求であり、白血病と同様に取り扱われるのかどうか、2)背景にある福島第一原発でのα核種汚染とこれによる被曝状況がどれだけ解明され、内部被曝が評価されるのかどうか、ということが大きな焦点である。また、長尾氏だけの問題でないことは言うまでもない。
こうした重要性を踏まえて、今後とも長尾氏労災認定支援に積極的に取り組むとともに、これを契機として、原子力職場の安全衛生対策、労災認定、労災隠しなどの問題についてさらに注目していきたいと考えている。

安全センター情報2003年11月号