新たな建材メーカー訴訟を提起/全国10地裁●全国191人原告が一斉提訴

建設アスベスト被害にかかる国の給付金制度スタートするなか、建材メーカーは一向に救済制度について協力の姿勢をみせていないため、全国で建材メーカーに対する集団提訴が追求されている。

6月7日には最高裁判決後はじめて全国一斉提訴が行われた。

建材メーカー訴訟提訴に当たっての声明

2022年6月7日
建設アスベスト訴訟全国連絡会

2022年6月7日、原告191人(被害者数136人)が、全国10地裁(札幌、仙台、さいたま、東京、横浜、京都、大阪、岡山、高松、福岡)において、アスベスト建材製造メーカーに対して一斉提訴した[下表参照]。

建設アスベスト訴訟は、原告の命を懸けた裁判闘争の結果、昨年5月17日の最高裁判決を受けて、国との基本合意の成立、建設アスベスト給付金法の成立・施行を実現した。屋外作業者の排除や国の違法期間の短さなど問題を残しつつも、国との間では、基本的に裁判は終結に向かい、未提訴の被害者の給付金法に基づく救済も進んでいる。現に、1審原告を含む建設アスベスト訴訟原告(被害者単位)1011人中914人が最高裁判決と決定、基本合意に基づく和解によって国との裁判を終結させ、今年5月段階で給付金支給決定も330人に上っている。

しかし、建材メーカーらは、最高裁判決・決定によって責任が確定した11社も含めてすべての建材メーカーが、被害者の早期救済に踏み出そうとしていないどころか、様々な口実で裁判の長期化を策し、被害者の多くが泣き寝入りすることを狙っているとしか言いようのない不当な対応を取り続けている。こうした建材メーカーの対応は、菅首相(当時)が最高裁判決の翌日に、原告団及び全国連絡会の代表に深々と謝罪した態度と比較してもその悪質さは明らかである。そうした対応は、各建材メーカーらのCSR(企業の社会的責任)を持ち出すまでもなく、人道上も決して許されない態度である。
最高裁判決で裁かれた建材メーカーらの責任は、遅くとも国と同じ時期にアスベストの危険性を認識しながらも、その危険性を現場の建設作業者に警告することが容易であったにもかかわらず、自らの利潤追求を最優先して警告表示を怠り、そのために、建設現場で多くのアスベスト被害を発生させたというものであり、その責任は国以上に重いと言わざるを得ない。建材メーカーらには、司法判断と自らの責任の重さを正面から受け止め、早期に深刻な建設アスベスト被害の救済に踏み出すことが求められている。

本日の全国一斉の建材メーカー訴訟は、建材メーカーらに対する原告被害者の強い怒りを示すものであり、建材メーカーらに、被害者への真摯な謝罪と訴訟の一日も早い解決、そしてすべての建設アスベスト被害者を全面的に救済する制度への参加を決断させ、建設アスベスト被害の全面救済を広く世論に訴える意義を有している。

本日の建材メーカー訴訟の提訴に当たり、原告被害者、弁護団、支援団体は、より一層の団結を固め、建設アスベスト被害の全面解決に向け奮闘する決意である。

安全センター情報2022年8月号