最高裁「元請け代表が労災予防に責任」重大災害法への影響は? 2022年11月7日 韓国の労災・安全衛生

資料写真/チョン・ギフン記者

作業場の危険防止措置を執るべき実質的な義務は、元請け代表にあるという最高裁の判決が出た。事業全体を総括し、安全・保健関連施設への投資の執行を決めたとすれば、産業安全保健法で定めた『行為者』に該当するという趣旨だ。「重大災害処罰などに関する法律」(重大災害処罰法)が適用された事件でも、解釈の幅を拡げられる判決だと評価されている。

労災予防の不処理『行為者』が争点
「安全措置義務の負担」で下級審は分かれる

最高裁二部は先月27日、産業安全保健法違反で裁判に付された船舶修理・建造業者のオリエント造船のイ・ドンヒ前代表に無罪を宣告した原審を破棄し、事件を釜山地方裁判所に差し戻したと明らかにした。オリエント造船は2016年9月に、海上DCM(深層混合処理)工法のフレーム上部の切断作業を建設会社から請け負った。そして重量物を取り扱う過程で、下請け業者に所属する労働者が墜落する事故が起きた。

検察は前代表に、産業安全保健法違反を適用して起訴した。事業が専門分野の工事として施行される場合、「請負った事業主」が労災予防措置を執らなければならないとした、旧産業安全保健法(29条3項)に違反したという趣旨だ。検察は墜落・落下など、危険を予防する安全対策などを内容とする作業計画書を作成していなかったと判断した。

争点は、安全措置義務を負担する『行為者』を誰と見るかだった。旧産業安全保健法(23条3項)は、『事業主』は、勤労者が墜落する危険がある場所には、危険を防止するために必要な措置をしなければならない、と定めている。最高裁は2011年に『行為者』について、事故の発生と因果関係のある危険を予防するために、必要な安全措置を執る義務がある者を指す、と判決した経緯がある。

一審は前代表を有罪と認めたが、控訴審は一審を覆した。前代表が労災予防のための措置を執らなかった『行為者』に該当するとは見られないというのが理由だった。裁判所は、前代表が安全措置をしないままで、作業を指示したり放置したと断定することはできない、と判断した。同時に起訴されたオリエント造船にも無罪が宣告された。

最高裁判所「元請代表の実質的な作業指揮」
『経営責任者』の解釈の影響の可能性

ところが、最高裁で再び覆された。前代表が事業場に常駐し、作業準備会議にも参加し、実質的に関与していたという事実を基に、『行為者』と見た。前代表は、会議で下請の代表を呼んで、陸上クレーンの作業をしたかどうかを質問するなど、会議を主導したものと調査された。最高裁はこれについて、前代表が「具体的な指揮・監督をした」と判断した。

そして、造船の所長は安全保健総括責任者とは断定し難いと判示した。造船所長に与えた安全責任者の『任命状』が証拠として提出されたが、実質的な役割と責任が与えられたと見られる痕跡がないということだ。造船所長は裁判で、「安全・保健管理部署の業務についての決裁権限がない」と供述した。安全・保健管理の担当チーム長も「前代表が修理造船業務の全体を総括・経営するなど、事業を実質的に経営し、安全・保健施設の投資資金の執行も決定する」と証言した。

裁判部は、下請け業者は事実上『労務』のみを提供したと考えた。最高裁は「下請は、作業をするときはオリエント造船が提示する作業仕様を遵守し、作業指示に従って作業を行った後、確認と検査を受けなければならなかった。」「性質は一種の労務請負に過ぎなかったと見ることができる」と判示した。更に、「下請は、元請けの作業場所での災害防止に向けて、元請の安全規定と指示を遵守しなければならなかった」と付け加えた。

法曹界は『実質的な』権限と責任を判断した部分に注目すべきだと分析した。グォン・ヨングク弁護士は、「今回の判決は、形式によって判断するのではなく、実質的な権限と責任によって判断すべきだという意味に解釈される。」「重大災害処罰法の『経営責任者』に関する解釈でも、形式的な外形だけを持って経営責任者と看做すことなく、実質的に事業を代表し、事業を総括する権利と責任がある人が誰なのかを明らかにし、その者を経営責任者と見るべきだという解釈も可能になる可能性がある」と評価した。

ソン・イクチャン弁護士は、「誰が事業場で権限を持っているかによって、旧産業安全保健法上の『行為者』を具体的に判断した事案で」、「意味のある判決」と話した。

2022年11月7日 毎日労働ニュース ホン・ジュンピョ記者

http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=211807