労働におけるアスベストへの曝露に関連したリスクからの労働者の保護に関する指令2009/148/ECを改正する欧州議会及び理事会の指令の提案-2022.9.28 欧州委員会通知COM(2022)489最終版

欧州議会及び欧州連合理事会は、

欧州連合の機能に関する条約、とりわけ第153(2)条(b)項及び段落1(a)項を考慮し、それに関して

欧州議会からの提案を考慮し、

立法草案が各国議会に送付された後、

欧州経済社会委員会の意見を考慮し、

地域委員会の意見を考慮し、

通常の立法手続に従って行動し、

一方:

(1)欧州議会及び理事会指令2009/148/ECは、労働の場所におけるアスベストへの曝露による健康と安全に対するリスクから労働者を保護することを目的としている。同指令では、加盟国が最低要求事項の一貫した適用を確保するための一般原則の枠組みによって、アスベストへの職業曝に関連したリスクからの一貫したレベルの保護が規定されている。これらの最低要求事項の目的は、[欧州]連合レベルで労働者を保護することであり、加盟国はより厳しい規定を設定することができる。

(2)本誌例の規定は、欧州議会及び理事会指令2004/37/ECに含まれるより厳格な及び/または特定の規定を損なうことなく、適用されるべきである。

(3)アスベストは非常に危険な発がん因子であり、労働者が曝露する高いリスクにさらされる場合、建設・改修、鉱業、採石、廃棄物管理及び消防などの様々な経済部門にいまなお影響を及ぼしている。アスベスト繊維は、欧州議会及び理事会規則(EC)1272/2008によって、発がん因子1Aに分類されている。吸入すると、大気中のアスベスト繊維は中皮腫及び肺がんなどの重篤な疾病につながる可能性があり、曝露の瞬間から疾病の最初の兆候が現われるまでに平均30年かかり、最終的に労働関連死亡につながるかもしれない。

(4)この分野における新たな科学的及び技術的進展に伴い、アスベストに曝露する労働者の保護を改善し、それによって労働者がアスベスト関連疾患に罹患する可能性を低減させる余地がある。アスベストについては、閾値のない発がん因子であることから、それ以下であれば曝露が健康への悪影響につながらないレベルを確認することは科学的に不可能である。代わりに、過剰リスクの許容可能なレベルを考慮することによって、職業曝露限界(「OEL」)の設定を促進する、曝露-リスク関係(ERR)を導き出すことはできる。結果として、アスベストについてのOELは、曝露レベルを引き下げることによってリスクを低減するために改正されるべきである。

(5)欧州がん撲滅計画は、発がん物質からの労働者の保護の分野における行動の必要性を支持している。アスベストに曝露する労働者の保護の改善は、とりわけ欧州のリノベーション・ウェーブを含む欧州グリーンディールとの関連でも重要である。欧州の未来に関する会議の枠組みにおける市民の勧告も、公正な労働条件、とりわけ指令2009/148/ECの改正を強調している。

(6)それを超えてはならない、アスベストについての拘束力のある職業曝露限界値は、適切なリスク管理措置(RMMs)及び適切な呼吸器その他個人保護具の提供に加えて、指令2009/148/ECによって確立された労働者保護のための一般的取り決めの重要な要素である。

(7)指令2009/148/ECで設定されるアスベストについての限界値は、委員会の評価及び最近の科学的証拠と技術データに照らして改正されるべきである。その改正は、それによって全加盟国において予防・保護措置が更新されることを確保するための効果的な方法でもある。

(8)改正される限界値は、社会経済的影響及び作業現場での曝露測定プロトコルと技術の利用可能性の十分な評価に基づいて、最新の科学的証拠と技術データを含む利用可能な情報に照らして、本指令で設定されるべきである。

(9)関連する科学的専門知識及び、連合レベルでの労働者の適切な保護と影響を受ける(SMEs[中小企業]を含む)経済事業者の不釣り合いな経済的不利益・負担を回避することを同時に確保するバランスのとれたアプローチを考慮して、8時間時間加重平均(TWA)として0.01繊維/cm3に相当する改正OELが確立されるべきである。このバランスをとったアプローチは、必要なアスベストの安全な除去をめざす公衆衛生目標に裏打ちされたものである。また、効果的な除去を可能にするための経済的・技術的配慮も考慮したOELを提案することも考慮された。

(10)委員会は、条約第154条に従って、連合レベルで2段階の労使協議を実施した。また、OEL改正オプションを首尾よく実施するための情報も提供する意見を採択した、ACSHとも協議を行った。欧州議会は、アスベストの脅威から労働者を保護するための連合の措置を強化するために、指令2009/148/ECを更新する提案を要求した、決議を採択した。

(11)光学顕微鏡は、健康に有害な最小の繊維を計測することはできないものの、現在、定期的なアスベストの測定のために最も使用されている方法である。位相差顕微鏡(PCM)により0.01f/cm3相当のOELを測定することは可能であるため、改正OELの実施に移行期間は必要としない。ACSH[労働安全衛生三者構成助言委員会]の意見に沿って、適切な適応期間及び異なる電子顕微鏡法のEUレベルの一層の調和化の必要性を考慮しつつ、電子顕微鏡に基づいたより現代的かつ感度のよい方法が利用されるべきである。

(12)欧州議会及び理事会指令2009/148/EC及び欧州議会及び理事会指令2004/37/ECで規定された曝露最小化の要求事項を考慮して、使用者は、労働の場所におけるアスベストへの労働者の曝露に関連したリスクが最小限に、またいかなる場合であっても技術的に可能な限り低いレベルまで低減されていることを確保すべきである。

(13)そのような曝露に関連したリスクの低減に大きく寄与するために、労働者を除染の手順及び関連する訓練の対象にするなど、アスベストに曝露し、または曝露する可能性のある労働者に対しては、特別な管理措置及び予防措置が必要である。

(14)アスベストに曝露する労働者の健康の保護のための予防措置及び、彼らの健康の監視に関して加盟国に想定されている関与、とりわけ曝露終了後の健康監視の継続が重要である。

(15)使用者は、関連する登録を含め、適当な場合には施設の所有者及びその他の情報源から情報を入手することによって、推定されるアスベスト含有物質を確認するために必要な手段を講じるべきである。また、何らかのアスベスト除去プロジェクトを開始する前に、建物または設備内のアスベストの存在または推定される存在を記録し、この情報を、その使用、メンテナンス若しくは建物内または建物に対するその他の活動の結果として、アスベストに曝露するかもしれない他者に伝えるべきである。

(16)本指令の目的、すなわち、そのようなリスクの予防を含め、労働におけるアスベストへの曝露から生じる、または生じる可能性のある健康と安全に対するリスクから労働者を保護することは、加盟国によっては十分に達成することはできず、むしろ連合レベルでよりよく達成することができることから、連合は、欧州連合に関する条約第5条に規定された補完性の原則に従って、諸措置を採用することができる。同条に規定された、比例性の原則に従って、本指令は、その目的を達成するために必要なことを超えてはいない。

(17)本指令は、労働の場所における労働者の健康と安全の保護に関係することから、その発効日から2年以内に[加盟国の国内法に]移行されるべきである。

(18)したがって指令2009/148/ECはそれに応じて改正されるべきである。

本指令を採択した。

第1条
令2009/148/ECの改正

指令2009/148/ECは以下のように改正されるべきである。

(1)第1条(1)中、以下の第3段落が追加される。
欧州議会及び理事会指令2004/37/EC*の諸規定は、それらが労働における労働者の健康と安全にとってより好ましい場合はいつでも適用される。

  • 2022年3月9日の欧州議会及び理事会指令(EU)2022/431によって最後に改正されたものとしての、2004年4月29日の労働における発がん性、変異原性及び生殖毒性物質への曝露に関連したリスクからの労働者の保護に関する欧州議会及び理事会指令2004/37(理事会指令89/391/EEC第16条(1)の意義の範囲内で6番目の個別指令)

(2)第2条が以下によって置き換えられる。
「第2条
本指令の目的のために、『アスベスト』とは、規則(EC)1272/2008*により発がん因子1Aに分類される、以下の繊維状珪酸塩を意味するものとする。」

  • 指令67/548/EEC及び1999/45/ECを改正し、規則(EC)1907/2006を改正する、2008年12月16日の物質及び混合物の分類、ラベル表示及び梱包に関する欧州議会及び理事会規則
    1(a)アスベスト、アクチノライト、CAS* 77536-66-4
    (b)アスベスト、アモサイト、CAS 12172-73-5
    (c)アスベスト、クリソタイル、CAS 12001-29-5
    (d)アスベスト、クロシドライト、CAS 12001-28-4
    (e)アスベスト、トレモライト、CAS 77536-68-6.’
  • CAS:Chemical Abstract Service Number

(3)第6条が以下によって置き換えられる。
「第6条
第3条(1)に掲げるすべての行動について、労働の場所におけるアスベストまたはアスベスト含有物質から生じる粉じんへの労働者の曝露は、とりわけ以下の措置によって、最小限に、またいかなる場合でも第8条に定める限界値以下で技術的に可能な限り低いレベルに低減させなければならない。

(a)アスベストまたはアスベスト含有物質から生じる粉じんに曝露する、または曝露する可能性のある労働者の数は、可能な限り少ない数に限定されなけれならない。

(b)作業工程は、アスベスト粉じんを発生させないように、またはそれが不可能な場合、大気中へのアスベスト粉じんの飛散を回避するように設計されていなければならない。

(c)アスベストの処理に関わるすべての施設及び設備は、定期的かつ効果的に清掃及び維持が可能でなければならない。

(d)アスベストまたは粉じんを発生するアスベスト含有物質は、適切な密閉された梱包で保管及び輸送されなければならない。

(e)廃棄物は、可能な限り迅速に、適切な密閉された梱包で労働の場所から収集及び除去されなければならない。この措置は採掘活動には適用されない。廃棄物はその後、欧州議会及び理事会指令2008/98/EC*に従って処理されなければならない。

  • 2008年11月19日の廃棄物及び一定の指令の廃止に関する欧州議会及び理事会指令2008/98/EC

(4)第7条(6)中、最初の段落が以下によって置き換えられる。
「繊維の計測は、世界保健機関(WHO)によって1997年に推奨された方法*、または可能な限り、電子顕微鏡(EM)に基づく方法など、同等のまたはよりよい結果をもたらすその他の方法によって実施されなければならない。

  • WHO「大気中繊維濃度の測定:位相差光学顕微鏡による推奨される方法(メンブレンフィルター法)」1997年

(5)第8条が以下によって置き換えられる。
「第8条
使用者は、いかなる労働者も、8時間の時間加重平均(TWA)として1cm3当たり0.01繊維を超えるアスベストの大気中濃度に曝露しないことを確保しなければならない。」

(6)第11条中、最初の段落が以下によって置き換えられる。
「解体またはメンテナンス作業を開始する前に、使用者は、適当な場合には施設の使用者及び関連する登録を含むその他の情報源から情報を入手することによって、推定されるアスベスト含有物質を確認するために必要なあらゆる手段を講じなければならない。」

(7)第19条中、段落2が以下によって置き換えられる。
「使用者は、第3条(1)に掲げるすべての行動に従事する労働者に関する情報を、登録に入れなければならない。当該情報は、活動及び労働者が対象となった曝露の性質及び期間を示さなければならない。医師及び/または医学的監視に責任を有する機関は、この登録にアクセスできなければならない。各労働者は、彼または彼女個人に関連する登録の結果にアクセスできなければならない。労働者及び/または労働者の代表は、登録中の匿名の集団的情報にアクセスできなければならない。」

第2条

  1. 加盟国は、遅くとも本指令の発効日から2年後までに、本指令を遵守するために必要な法律、規則及び行政規定を発効させなければならない。加盟国は、それらの措置のテキストを速やかに委員会に通知しなければならない。

加盟国がそれらの措置を採択する場合、加盟国は、本指令への参照を含めるか、または公式な発行の際のそのような参照によって補完されなければならない。

  1. 加盟国は、本指令の対象となる分野で採択した国内法の主要な措置のテキストを委員会に通知しなければならない。

第3条

本指令は、欧州連合官報に公布された日から12日以内に発効しなければならない。

第4条

本指令は加盟国に向けられたものである。

https://ec.europa.eu/social/main.jsp?langId=en&catId=89&furtherNews=yes&newsId=10418#navItem-relatedDocuments

安全センター情報2022年12月号