日本の学校における吹付け石綿等の状況-3.2%の機関が保有・除去実態不明-学校・教員アスベスト
文部科学省はクボタ・ショック以降、学校施設等における吹き付けアスベスト等の使用実態調査と対策の進捗状況のフォローアップ調査を実施している。
最新のものは2013年10月1日時点であり、次表のとおりである。ここには示していないが、建物種別、都道府県別等のデータも集計されている。
これによると、2013年10月1日時点で、135,892機関中4,290機関(3.2%)が「吹付けアスベスト等がある室等を保有(①)」しており、そのうち、3,362機関(2.5%)が「措置済状態にある室等を保有(②)」、1,234機関(0.9%)が「損傷、劣化等による石綿等の粉じんの飛散により、ばく露のおそれがない室等を保有(③)」、15機関(0.01%)が「損傷、劣化等による石綿等の粉じんの飛散により、ばく露のおそれがある室等を保有(④)」、調査中が25機関(0.02%)-調査完了率99.8%とされている。③及び④が、「措置済状態ではない室等を保有」する機関としてくくられる。
この調査によっても、いまだに全国で4,290機関、36,734室、350万m2に「吹付けアスベスト等がある室等」が残っているということであるが、機関数でそのうちの78.4%が②措置済=すなわち封じ込め・囲い込み等がなされている状態、28.8%が③「ばく露のおそれがない」と評価されていて、0.35%(15機関)だけが④「ばく露のおそれあり」で措置が必要ととらえられているというのが現状である。
この調査は2005年7月末から開始され、2006年6月末時点をもって当時の調査対象151,925機関すべての調査を終わったとして、最終結果が8月23日に公表されている。さらに、この最終結果に基づき9月15日現在の対策状況が10月31日に公表され、その後フォローアップ調査が継続されるようになった。
2006年の最終結果と、2013年10月1日時点の状況を比較したものが、次表である。
2006年6月末時点までに8,603機関(5.7%)が「吹付けアスベスト等がある室等を保有(①)」していることが確認され、同年9月15日の時点でそのうち、②が4,392機関(51.1%)、③が4,264機関(49.6%)、④が968機関(11.3%)という状況であった。
④「損傷、劣化等による石綿等の粉じんの飛散により、ばく露のおそれがない室等を保有」している機関数についてのみ、現在に至るまでの間の経過を次表のように確認することができる。
2006年9月15日時点で968機関であったものが、2013年10月1日時点で結果的には15機関になった=△953機関の減少したわけであるが、その経過は、968機関から、その後分析調査の徹底により、④でないことが判明したのが△43機関、④であることが判明したのが145機関、経年劣化等により新たに判明したものが30件、前回調査との重複△2機関で、合計1,098機関に増加。このうち、対策工事を実施したもの-除去が△888機関(80.9%、2007年4月1日時点の172件はすべて除去と仮定した)、封じ込め・囲い込み(一部「除去工事を実施」したものも含む)△170機関(15.5%)、その他△25機関(2.3%)の合計1,083機関。1,098-1,083=15機関(1.4%)がまだ未措置状態という経過である。
①②③に関しては、このような経過を追えるデータが公表されていない。①「吹付けアスベスト等がある室等を保有する機関」は、8,603機関から4,290機関へと4,313機関減少しているが、上述のこの間に除去工事が行われたとされる888機関(20.6%)以外は、「吹付けアスベスト等がある室等」がどうなったのかがわからないということ。
除去や除去を含んだ解体等の全体像がわからない状況である。クボタショック以前も含め、学校にどれだけのアスベストがあって、どのような経過を経てきたのか、可及的速やかにできるだけ正確な全体像を把握する必要性を痛感する。
2006年9月1日の労働安全衛生法施行令改正を受けて石綿含有率「0.1%を超え1%以下の吹き付けアスベスト等」、また、2008年3月31日以降、「石綿6種類のうち分析調査の対象としていない場合が見受けられたアクチノライト、アンソフィライト及びトレモライトの3種」について調査が「拡大」されてはいるものの、吹き付けアスベスト等に限定してみても、適切な調査が確保されているとは言いがたい。
2010年12月27日に「非飛散性アスベスト含有成形板の除去に係る留意事項について(事務連絡)」が発出されているなどしているものの、調査は吹き付けと折板裏打ち石綿断熱材にほぼ限定されたもので、学校におけるそれ以外のアスベスト含有建材等の状況は明らかにされていない。
そもそも、このような調査の適切さを担保する法令上の根拠、技術的・財政的・人的資源等が確保されていないという根本的問題がある。一方的に調査が指示され、現場が困惑するという事態が、今回のクボタショックや1980年代後半の学校パニックを含めて繰り返されてきたのである。
国土交通省による建築物石綿含有建材調査者資格者制度がようやく動き出したことも踏まえて、この際、あらためて見直しを行う必要がある。また、「石綿等の使用の有無を調査し、その結果を記録するとともに、石綿等が使用されていることが明らかになった場合にはリスク・アセスメント及びそれに基づく除去計画及び/または除去されるまでの間の管理計画を作成・実行しなければならない」という原則を法令上明確するとともに、石綿のない社会/環境を実現するための目標時期設定とロードマップをもった国家(戦略)計画とその実行体制の確立が求められている。
安全センター情報2014年6月号