イギリスの学校アスベストに関する最新情報と政府の方針レビューに対する提案-学校・教員アスベスト
イギリス・学校におけるアスベスト(AiS)グループ
目次
イギリス政府の方針のレビュー
[2014年]1月31日に教育省(DfE)は、学校におけるアスベスト管理に関する政府方針のレビューを開始した。彼らはこの重要課題に関心をもつすべての者からの意見と考えを求めている。
彼らはとりわけ、学校においてアスベストの日々の管理に関わっている者から、その経験と学校が責任を満たすのにDfEが支援できる方法について聞きたがっている。すべての証拠は2014年3月31日までに提出されなければならない。
この根拠に基づく情報提供の照会を可能な限り幅広く知らせ、全面的に回答していただきたい。
- レビューはこの問題に関心をもつすべての団体及び個人から根拠に基づく情報提供を求めている。
- これには、地方当局、学校、教師、サポートスタッフ、ガバナー[理事]、労働組合、保護者、疫学者、科学者、リスク専門家、アスベスト・コンサルタント、政治家、被災者、医師、弁護士、検視官-学校におけるアスベストに関わっている、または影響を受けたことのあるすべての者が含まれる。
- この重要な問題の大きさと、政府の現行の方針が機能しているかどうかを明瞭に示す広い範囲にわたる証拠をDfEに提供することがきわめて重要である。
- アスベスト管理の失敗及び教職員と生徒たちの曝露に関する証拠の大部分は秘密にされる性質のものである。
- 証拠の秘匿性は尊重されるはずなので、そのままのかたちで、また必要な場合には名称・所在地を消して、提出していただきたい。
- 求められている質問事項は限られた性質のものである。それらに限定されないでいただきたい。言うべきことがあれば何でも言っていただきたい。
- これは、学校におけるアスベストに関する政府の方針を根本的に変えさせるチャンスである。
- リンク:[46頁に全文を紹介]
- 回答用紙を埋めていただきたい:[URL省略]
背景及び勧告
要約
- 歴代の政府が学校におけるアスベスト問題について見出したことは「手に余るほど大きすぎる」ということであり、結果的に彼らは現状を維持する短期的方針を採用してきた。しかし、それは根本的に問題に対処するものではなかったのであり、そうではなくて長期的な戦略的施行と方針が必要とされている。
- 政府方針のレビューは、団体と個人に学校における現在の状況に関する証拠を提出する機会を与えている。また、様々な問題を改善する方法や学校におけるアスベスト問題を最終的に解決するためにはいかに長期的方針が不可欠であるか勧告する機会も与えている。
- 本文書は、現在の学校におけるアスベスト問題の背景を提供する。また、現行の方針の不備を示し、勧告を行う。
- イギリスは世界最悪の中皮腫罹患率をもっており、これはわれわれが他の諸国よりも相対的に多くのアモサイト(茶石綿)を輸入したためと考えられている。イギリスの学校の4分の3以上がアスベストを含んでおり、しばしば生徒たちによって損傷を受けやすい箇所にアモサイトが広範囲に使われている。医学研究評議会(MRC)の報告書は、「学校の人口全体が学校建物内でアスベストに曝露してきたとみなすのは不合理ではない」と結論づけている。
- 政府の方針が、除去するよりも、建物の耐用期間の間アスベストを管理するというものであることから、大部分のアスベストはそのまま残されている。1980年代に大都市圏協議会は、それがより安全であるばかりでなく長期的には相対的に安上がりであるという理由から、もっとも危険なアスベストを確認して積極的に除去するという方針をもっていた。
- 1986年にアメリカは、学校におけるアスベスト監査を実施して、占有者に対するリスクを評価した。彼らは、今後30年以上の間に何千もの人々が学校におけるアスベスト曝露によって死亡し、その90%が生徒たちにおけるものだろうと結論づけた。彼らは、アスベストに対する子供の脆弱性の増加を認め、結果的に学校が有効にアスベストを管理する資源をもつようにするために、学校に対する特別の厳しい法律を導入した。これには、教職員と生徒に対する情報提供方針、義務的訓練、監督体制及び資金提供が含まれていた。
- 2013年にオーストラリア政府は、自国からアスベストを根絶し、アスベスト疾患を撲滅するための国家戦略計画を採用した。同計画は、学校に優先順位を与えつつ公共及び商用建物からアスベストを安全に除去するためのタイムラインの設定を含め、重要な側面のすべてに対処する。これはまさにイギリスで必要とされている、方針の抜本的見直しと長期的戦略的思考である。
- アスベスト・コンサルタントがイギリスの学校を訪問し、多くの学校が効果的にでも安全にでもなくそのアスベストを管理していると結論づけている。にもかかわらず、学校のガバナーや教職員に対するアスベスト訓練は義務付けられていない。これが、教職員や生徒が、しばしば普通の教室での活動によって定期的に、累積的に著しいレベルの繊維に曝露してきた、莫大な数のアスベスト事件につながってきた。
- 政府は、地方当局の学校がそのアスベストを管理しているかどうかを判定するシステムをキャンセルして、地方当局の管理外の学校のきわめて小さな部分だけを監督している。地方当局の管理からアカデミーやフリースクールに移行する数が増加するにつれて、安全を確保する責任が、アスベスト対策に必要な資源が配分されるのを確保する知識も経験もまずないガバナーにかかっている。
- 著しい数の教師、サポートスタッフ、元生徒たちが、アスベスト関連がんである中皮腫によって死亡してきたし、死亡しつつある。2013年に政府のがんに関する助言委員会は、子供は大人よりもアスベストの危険性に対してより脆弱であり、小さい子供ほどリスクが大きくなると結論づけた。これを見解に入れるために、学校で子供のときに経験したアスベスト曝露によって毎年200~300人の人々が死亡している可能性があるという証拠が、2013年に教育特別委員会のヒアリングである指導的な疫学者から提供された。20年間では4,000~6,000人の死に相当する。生徒に対するリスクはそのようなものであり、学校について一般的なアスベスト・リスク保険は存在していない。
- アメリカとは異なり、イギリス政府は、この問題のスケールを評価したことはなく、おそらくは学校を保守または改修する場合にもっとも費用のかかる項目のひとつであるという事実にもかかわらず、学校建物の状態に関する現行の監査からアスベストを除外している。これは、彼らの財政的見通しが意味を持たないであろうことを意味している。
- 教育省は、その方針を安全衛生庁(HSE)の助言に基づいている。HSEは、学校を他の何かの労働現場として扱い、子供のリスクの増加を考慮せずに、学校に対して労働現場向けの法令及びアスベスト繊維管理レベルを適用してきた。証拠に反するにも関わらず、彼らは教育大臣に、学校におけるアスベストによるリスクはきわめて低く、教職員や生徒はリスクにさらされていないと助言してきた。
- 透明性が欠如しており、また、リスクが軽視されてきたことから、人々は一般に問題があることに気づいていない。それは、歴代の政府が、学校を安全にするために必要な行動をとるのを無期限に遅らせることができると考えてきたことを意味する。この立場はもはや維持することはできず、方針のレビューは政府に、学校の占有者のアスベストの危険性からの安全を本当に確保するであろう方針を採用する機会を与えている。
問題
- 学校には深刻なアスベスト問題がある。2012年2月に労働安全衛生に関する全党議員グループは、これは国家スキャンダルであり、緊急の取り組みが必要であると表明した。
- 4分の3以上の学校がアスベストを含んでおり、すべてのアスベストが古く、多くは劣化している。アスベストに使用の絶頂時期であった1945~1975年の間に、14,210の学校が建築され、他に多くが改修された。アモサイトが大々的にそれらの建築に使用され、青石綿(クロシドライト)を含んだものもあり、大多数は白石綿(クリソタイル)を含んでいる。
- イギリスは世界最高の中皮腫罹患率をもっており、フランス、ドイツまたはアメリカの2倍以上である。HSEのある報告書は、これはわれわれが他の諸国よりもアモサイトを相対的に多く輸入したためであると結論づけている。すべての種類のアスベストがアスベストがんである中皮腫を引き起こすが、アモサイトはクリソタイルよりも100倍この疾病を引き起こし、クロシドライトは500倍引き起こしそうである。
- 学校の占有者はアスベストに曝露しつつあり、結果としてますます多くが中皮腫によって死亡している。イギリスにおける中皮腫で死亡する学校教師の数は1980年代の年3人から過去10年間の年15人に増加している。1980年以降267人以上の学校教師が中皮腫により死亡し、140人以上が過去10年間に亡くなっている。おそらくいくらかは他のどこかで曝露したが、多くは学校において曝露したことが知られており、教師のキャリア・パターンからみて、死亡診断書に記録された職業が曝露を生じた職業でありそうである。
- それ以下と同じ数の人々がそれ以上の年齢で中皮腫で死亡しているにもかかわらず、職業統計は74歳より上の中皮腫死亡を含んでいない。調査研究は、平均して曝露が低いほど潜伏期間が長く、それゆえ教師などの専門職では、同数またはおそらくそれ以上の教師が74歳より上で亡くなっていると仮定するのは合理的である。そうであれば、職業統計は、死亡した教師の数を著しく過小評価している。学校の管理人、清掃人、調理人、事務員、教育助手、保育園職員や元生徒たちもまた、このがんによって死亡している。
- 学校は、労働者だけを含んでいるのではなく、大人よりもアスベスト曝露によるリスクが高い子供も含んだ、独特の労働現場である。イギリスにおけるすべての子供は学校に行くことを求められているから、潜在的曝露に直面している数は他のいかなる労働現場よりも多い。医学研究評議会が委託したある報告書は、学校建物におけるアスベストの広がりを検証し、「したがって、学校の人口全体が学校建物内でアスベストに曝露したとみなすのは不合理でない。…学校におけるアスベストへの曝露はしたがって曝露全体の重大な一部をなす」と結論づけている。非常に若い年齢の多数の人々の広範な曝露が、イギリスにおける並外れた中皮腫罹患率に貢献しているとみなすことも、同様に合理的である。
- 2011年に最高裁判所は、ダイアナ・ウイルモアは学校で生徒として不注意にアスベストに曝露し、この曝露が実質的に彼女の中皮腫に寄与したとした判決を支持した。最高裁判所はまた、それ未満ならリスクがないというアスベスト曝露のレベルは知られていないという専門家の医学的意見も承認した。
- どれくらいの教師が亡くなっているかはわかっているものの、長い潜伏期間のゆえに、どれくらいの子供が結果的に死亡しているかはわからない。2013年6月7日に政府の発がん性に関する助言委員会(COC)は、大人と比較した子供のアスベストに対する相対的脆弱性に関する報告書を発表した。彼らは、「子供は相対的に脆弱であり、若い子供ほどリスクが高い」と結論づけた。5歳の子供の中皮腫罹患の生涯リスクは、30歳の大人よりも5倍高い。別掲の表は、若い子供についてのリスクの増加の見込みをまとめたものである。COCの結論はこの表に基づいている。
- 子供の身体の未熟さが彼らを相対的に脆弱にさせるか否かを判定するための科学的調査研究の実施が不十分であったために、委員会はこの側面について結論にいたることができなかった。しかし、ある指導的小児科医は、若年の肺は傷害に対してとりわけ感受性があり、5歳未満での重大な肺の損傷は障害を通じて残ると警告した。彼はまたCOCに対して、知見が不完全であるからこそCOCは子供が関わりがあるものとして予防原則に従わなければならないと強く助言した。
- 2013年3月の特別委員会のヒアリングで、指導的疫学者でCOCのメンバーでもあるピート教授が証拠を提供した。彼は、子供はアスベスト曝露に対してより脆弱であると確認した。彼はまた、学校での子供のときのアスベスト曝露による中皮腫によって毎年200~300人の人々が死亡している可能性があると推計した。それは、学校での子供のときのアスベスト曝露による、20年間に6,000人までの中皮腫による死亡と同等である。これは明らかに国家的重要性をもつ問題であるが、これまで適切に取り上げられたことはなかった。
- この推計は1960年代と1970年代の間の曝露レベルに基づいており、HSEは、学校における曝露の現在のレベルはかつてよりも低いと主張した。しかし、この主張は、学校における過去及び現在の繊維レベルのしっかりした証拠に基づいていない。大気中繊維レベル、及びとりわけ現在の繊維レベル、に関する十分なデータの不足がCOCによって強調された。アスベストの大部分はそのまま残されており、それゆえリスクをもたらす。そのすべてがいまでは古く、学校施設の保守が不十分であったことから、多くは劣化しつつある。証拠は、アスベスト事故が継続し、結果的に教職員や生徒がいまもなおアスベストに曝露し、長い期間に及ぶこともあるという事実である。
- 学校におけるアスベストの広がりとその意味の詳細な検証については、学校アスベスト・グループ(AiS)[Asbestos in Schools Group]が発がん性に関する委員会に提出した文書を参照していただきたい。
http://www.asbestosexposureschools.co.uk/pdfnewslinks/AiSreportonASBESTOSINSCHOOLS.pdf
政府の方針-不備及び基本的仮定
- 2012年2月の学校におけるアスベストに関する議会の討論において、教育大臣は、「今年後で(COC)委員会の報告を受け取ったら、われわれのアスベスト管理に関する方針及び学校に対する助言をレビューする」と表明した。COCは、大人よりも子供は相対的によりリスクがあると結論づけた。これまでは子供のリスクの増加は考慮に入れられたことはなく、その代わりに学校は他の何らかの労働現場として取り扱われてきた。リスクの増加が将来のすべての決定及び学校についての方針の基礎とならなければならない。
- 方針レビューはいま行われており、政府の現在の方針が長年失敗しており、時代遅れであり、学校の占有者に適切な保護を与えておらず、また直接の結果として多数の人々が死亡していることを示す証拠が政府に提出されることが決定的に重要である。方針は短期的手段であり、長期的解決策を提供するものではない。学校が安全にされるべきであるならば、方針の抜本的再考がなくてはならないが、兆候は大臣及びそのDfEとHSEにおける公務員が、彼らの現在の方針が機能していると満足しているということである。
- 2013年11月にAiSは、学校担当大臣との面会に、中皮腫と闘病中の保育園教師に付き添った。この教師はきわめて雄弁であり、政府の方針が学校の子供や教職員の安全を確保するのにいかに失敗しているか立派に説明した。彼女は、現在の政府の方針が機能しておらず、抜本的方針変更がなされなければならない証拠を提供した。
- 大臣は、アスベストが学校の教職員と生徒にリスクを引き起こすという証拠があれば、そのときには費用に関わらず、学校が安全にされるよう確保するための諸措置がとられるだろうと断言した。しかし彼は、その方針がHSEの助言に基づいていること、及び学校は安全で、教職員と子供は学校におけるアスベストによるリスクにはさらされていないと強調した。彼はまた、一般的に学校は有効にそのアスベストを管理していると主張した。したがって彼が入手可能な証拠に基づいて、学校におけるアスベストの影響の軽減に関して巨額を費やす必要性を財政委員会に正当化することができなかった。
- 大部分の人は、何千もの元生徒が学校でのアスベスト曝露によって死亡していそうであり、そのアスベストほとんどがそのまま残されているときに、学校が安全かつ教職員と生徒はリスクにさらされていないとは考えないだろう。しかし、大臣に対するHSEの不備のある助言はおそらく、大臣の方針を支持し、正当化している。それは政府に、学校におけるアスベストという非常に深刻な問題に対処するよりも、現状を維持するのを正当化する理由を与えている。それは政府の金を節約するのである。
- HSEの助言が根拠がないという多くの証拠がある。学校におけるアスベスト管理の効果がなく安全でない基準、学校におけるアスベストのかく乱、子供のリスクの増加及び結果としての教職員や元生徒の死に関する証拠がDfEとHSEに提出されてきた。大臣は会合で証拠を見て見ぬふりすることを選んでいる。
- 学校におけるアスベストに関する政府の方針は、「よい状態にあり、かく乱または損傷されそうにないアスベストは、それを除去するプロセスよりも占有者に対する曝露のリスクが相対的に少ないことから、そのまま残して建物の寿命が終わるまで管理するほうがよい」というものである。
- 歴代の政府が同じ方針をとってきたため、アスベストはそのまま残されている。長く続いた方針はいまや不完全かつ時代遅れであり、エデユケーション・キャピタル・レビューは、「学校施設の多くの部分が容認しがたい状況にあったし、いまもある」と結論づけている。それは、保守不足、長期的投資不測、通常の損耗や破損行為を通じて、ぼろぼろの状態にある。PfSのCEOは、学校施設の80%が設計寿命を超えていると述べている。
- すべてのアスベストがいまや古く、建物が劣化するにつれて、その含有するアスベストも劣化してきている。結果的に大部分のアスベストがもはやよい状態になく、かく乱または損傷されている。
- アスベスト除去の技術も近年進歩しており、適切に実施されるならば、占有者にリスクをもたらさない。いくらかの学校は、国会議事堂、教育省事務所や環境章本部を含めた多くの他の建物と同様に、すでにアスベストを安全に除去している。
- 加えて、学校において莫大なアスベスト事故が発生してきたし、いまなお発生しているために、占有者に対するリスクは進行中である。アスベストが存在すれば、そこには常にそれがかく乱され、アスベスト繊維が飛散する可能性がある。
- アスベストの全面除去が目標でなければならないが、それは一夜にして達成することはできない。1980年代に大都市圏協議会は、それがより安全かつ長期的にはより安上がりであることから、もっとも危険な物質を優先することによって、段階的に除去する方針をとった。この慣行は、同組織が存在をやめたときに終わったが、段階的除去はノッティンガムシャー州の方針のなかに残った。それはまたオーストラリアの政府方針としても採用されてきた。
- 2013年6月3日にオーストラリア連邦議会は、アスベスト安全・根絶法案を通過させた。それは、アスベスト問題をきっぱりと解決するというオーストラリア政府の公約の基礎をなすものである。それは、学校におけるアスベスト方針のレビューにおいて、政府に対してベンチマークを設定した。これはまさに、イギリスで緊急に必要とされている、抜本的戦略的思考である。
- 法案は、オーストラリアにおけるアスベスト問題を調査する国家機関を設立する。この機関は、アスベストを根絶し、アスベスト疾患を撲滅するための戦略計画を実行することを任務としている。多数の鍵となる目標が国家戦略計画のなかに設定されており、なかでも「公共及び商用建物からのアスベスト含有物質の優先順位付けされた安全な除去及びかかる物質の安全な処分のためのシステム、タイムライン及びプロセス」を確立している。
- 法案を紹介するなかで、ビル・ショーテンは、政府は「オーストラリアの建設環境からアスベストを最終的に除去…」に取り組むと述べた。また彼は、「明らかに、子供たちの曝露はとりわけ不愉快である…」と付け加えて、学校からのアスベストの除去が優先順位にされることに同意した。
- オーストラリアは、アスベストとアスベスト疾患を根絶する戦略的方針を採用した。イギリスにおける方針のレビューは、この機会をつかまなければならない。われわれは、同様の遠大な方針を採用し、社会でもっとも脆弱な人々-子供たちを保護するために、学校からアスベストの遺産を根絶する抜本的諸措置をとらなければならない。
- 段階的除去が国の方針として採用されれば、問題は最終的に解決されるであろうが、採用されなければアスベストは永久に学校における問題を残すだろう。
方針における財政的不備
- 効果的なアスベスト管理は資源に関しては継続的排出であり、学校におけるアスベストはたとえ最小の保守仕事であっても追加費用を招く。何千もの建物におけるサービスがすでにその設計寿命を超えているが、アスベストが存在するとしたら、最初にアスベストが除去された場合にのみ建て替えることができる。学校が改修または解体される場合には、アスベスト対策の費用が主要な費用のひとつになりえ、予測しなかったアスベスト対策及び除去作業によって大きな費用の過不足が生じてきた。しかし、国の学校におけるアスベスト問題の規模がわかっていないために、学校の保守、改修または除去のための現実的な財政的見通しをすることはできない。
- スクールズ・キャピタル・レビューは、政府はその1,100億ユーロの学校資産の状態を知っていないと批判した。彼らは、「教育省は緊急にその資金提供している教育施設の状態に関するよりよい情報を確立する必要がある…最初のステップとして、既存のすべての情報源を照合して、この情報を管理するための簡潔かつよく設計されたデータベースを確立すべきである」と勧告している。この勧告にもかかわらず、DfEは、施設情報調査計画(PDSP)から特定的にアスベストを除外したし、アスベストに関するいかなる情報もそのデータベースに照合しないだろう。これは、監査に基づいたいかなる将来の財政的見通しも意味を持たないことを意味している。
- DfEは、アスベストを除外した決定は、現在の5年間の契約が経過するまで覆すことはできないと言ってきたし、2013年1月の大臣との会合でDfEは、学校の状況調査にアスベストを含めるのはやりすぎだと主張した。おそらくこの言い訳はその意図が学校建物の調査にアスベストを含めることであれば通用するかもしれないが、この場合は当てはまらない。提案は、学校と地方当局においてすでに入手できているアスベストに関するデータをDfEの資産管理ソフトウエア・システムに入力するということなのである。すでに専門家の助言は得られており、プロセスのこのステージであってさえ、実現できない正当な技術的または論理的理由はない。2013年11月に国務大臣はPDSPは今後8か月間に拡大されるだろうと発表したが、またしてもアスベストは除外されてしまった。
- 問題の全体的スケールを知り、最悪のアスベスト問題をかかえている学校と地方当局を確認できるようにするために、データがDfEの資産管理ソフトウエアと照合されるべきである。そうすれば政府はしっかりした長期的な財政的見通しを行うことができるだろう。限られた資金がもっとも必要性が高く、最大のリスクを示す学校における保守、改修及び除去に向けられるように、ふさわしい資源を配分できるようになるだろう。
方針における訓練と管理の不備
- 政府の方針は、学校が、必要な資源を利用でき、全教職員がアスベストの認識またはアスベスト管理について訓練されたうえで、アスベスト管理の厳密かつ効果的なシステムをもつことに依拠している。しかし、証拠は、長期間にわたってこの方針が失敗してきたを示している。
- アスベスト・コンサルタント協会のメンバーが国中の学校を訪問して、「証拠は、多くの学校におけるアスベスト管理のシステムは適切な基準を満たしておらず、いくらかでは効果的でなく、ほとんど存在していなかったり、危険ですらある場合もある…こうしたことは、近年しのびこんだマイナーな問題ではなく、むしろイギリスの学校に固有の根本的問題である…」と結論づけた。
- 2011年にHSEは、そのアスベスト管理の基準を決定するために、アカデミー及び地方当局の管理外の学校で実施した監督の結果を発表した。この監督の結果、17%の学校でアスベスト管理の失敗について執行活動がとられている。独自の保守及び建築作業を実施した80の学校のうちの過半数がその教職員の訓練を行っていなかった。
- 地方当局[管理]学校に対する監督の以前の2回のラウンドは、システム建築の学校におけるアスベスト管理の失敗についての執行活動の実行につながった。監督の最初のラウンドでは、17%の学校に対して改善通告が発行され、次のラウンドでは、監督が行われた42の地方当局の24%に発行され、さらに残りに対してはそのアスベスト管理を改善するよう公式の指導が与えられた。いくつかの場合、地方当局はそのすべての学校において重大なアスベスト指導にしたがえていなかった。
- 教育特別委員会は、アスベスト管理の失敗についてHSEによってとられた執行活動に関する証拠を吟味した。委員会のあるメンバーは、「子供たちの安全のための要求事項を遵守しなかったために、執行活動に関する見方について、5または6にひとつの学校に同様の執行通告が必要だとしたら、それはすべての新聞の一面を飾ることになるだろう」と述べた。-しかし、これはアスベストについてはあてはまらなかった。
- 2012年10月にウェールズのある中学校が、損傷されたアスベスト、広範囲に及ぶアスベスト破片及びアスベスト繊維を教室内に吹き散らしていた教室のヒーターを確認した報告書を受け取った即時の結果として、閉鎖された。この学校はアスベストの安全管理に失敗し、ヒーターからのアスベスト繊維の可能性を警告した30年前に発行されていた手引きの遵守にさえ失敗していた。ヒーターの種類は学校でもっとも一般的なもののひとつで、だからこそ学校アスベスト・グループはDfEに、これらのヒーター固有の危険性について、すべての学校に対して緊急の警告を発行するよう求めていたものである。HSEはDfEに、そのような警告は「資源をそらす」として、警告を発行しないよう助言していた。2014年2月20日時点で、DfEとHSEのどちらも警告を発していない。
- ウェールズ議会で教育大臣は、すべての地方当局に、「アスベスト管理計画のコピーとともに、法令にしたがって法令上の義務を果たしていることを確認」するよう求めた。返答を分析した後に大臣は、「地方当局がアスベストを管理するその法令上の義務を果たし、十分な計画を実行していると、現段階では十分に断言できないと感じている」と述べた。これは、著しい数の学校がそのアスベストを安全に管理していないという全証拠を補強するものである。
- 比較的最近の問題は、アカデミーになって地方当局の管理から離れる学校の数が増加しているということである。そうすることによって、それらは通常地方当局の知識を失い、多くの場合、学校当局のガバナーはそのアスベストを効果的に管理する訓練または知識をもっていない。これは、責任が特に学校ガバナーにかかっているアカデミーやフリースクールで増えつつある問題である。2014年2月1日時点で、イングランドには3,657のアカデミーと126のフリースクールがある。
- 2013年7月にHSEは、HSEに代わって調査を実施した出向校長の調査結果を要約した報告書「学校における安全衛生のリーダーシップ」を発表した。それは、校長を含めた学校のリーダーたち、とりわけガバナーは、しばしば安全衛生に関連したその義務を知らないと結論づけ、義務的な訓練を提案した。
「すべての学校リーダーが安全衛生についてのリーダーとしての責任をわかっているようにする理想的な方法は、安全衛生の注意喚起に関する義務的なプログラムを実施することであろう。新たなイニシアティブと国の戦略の教育環境の絶え間ない変化を踏まえれば、義務的プログラム以外の何かが、学校における安全衛生を優先事項となるように十分に注意を喚起するだろうとは考えられない…この選択肢は、ガバナー/義務保持者と校長/責任者向けの安全衛生の戦略的リーダーシップにねらいをつけた内容の平準化されたプログラムを設定するだろう。」 - この報告書は2010年7月に完成していたが、HSEはそれを公表せず、FOIが要求しても拒否していた。3年後、さらにFOIが要求した後に、HSEはついに報告書の要約を発表した。
- 2013年に教育特別委員会は、学校を運営する主体の役割に関する証拠を調べた。その結果は、出向校長の調査結果を反映している。特別に安全衛生訓練を検討したわけではないが、ガバナーの訓練の一般的問題を検討して、「あまりにも多くのガバナーが適切な訓練を受けておらず、政府がすべての学校に対して、新たなガバナーに訓練を提供するよう求めることを提案する」と結論づけた。
- 2014年2月の時点で、出向校長と特別委員会の勧告は実行されていない。AiSは、各々の役割に応じた訓練による、ガバナー、校長、教師及びサポートスタッフの義務的な訓練を提案する。
地方当局学校における積極的監督の欠如
- 政府の方針がアスベストを管理することであるなら、学校が満足できる安全な諸基準を遵守するのを確保するシステムが存在し、機能していなければならない。
- アスベスト管理基準を監督する包括的なシステムがウェールズの学校で実施されていたとしたら、そのアスベスト管理の失敗は何年も前に明らかにされ、数世代にわたる教職員と生徒のアスベスト曝露は防止できていただろう。
- HSEの監督の第二ラウンドが最近、イングランド、スコットランド、ウェールズの地方当局の管理外の150の学校について完了したが、これは全学校のたった0.5%だけを監督した一度限りのものであった。2011年3月以降、政府の方針は、HSEは地方当局[管理]学校で積極的な監督を行ってはならないというものだった。HSEは、法令上の基準を達成していないそれら地方当局学校を指揮するためにどのようなシステムが実施されているのか尋ねられた。HSEは、アスベスト事故が起きた後、または教職員が問題を警告した場合にだけ監督を行うと回答した。
- これは、安全基準が実現されるのを確保するための十分な長期的戦略とはいえない。学校の教職員が、学校内のアスベストが安全に管理されていないことに懸念を表明した数多くの事例がある。いくつかの場合には彼らの生活が困難にさせられ、ある事例では上級教師、また別の事例では学校ガバナーが辞職しなければならないと感じることになった。
- 事故が起きた後でHSEが監督を実施した場合には、すでに損害が生じており、監督の結果として基準が改善されるかもしれないものの、積極的監督の方針が実施されてさえすれば事故は最初の段階で回避されていたかもしれない。安全衛生に関する適切な品質保証の欠如がHSEの出向校長から指摘されており、「外部機関による安全衛生の品質保証は現在、学校における安全衛生に対してとられているアプローチの一部になっていない」と言っている。学校に対するHSEの入力は、主として調査のために選択された事故の結果としてのものである。
- OFSTEDはその学校監督のなかで「学校の管理及び生徒の安全におけるリーダーシップの質」を評価する法令上の義務を負っている。2011年にDfEは主任学校監督官に、アスベスト管理基準とアスベストの危険性からの生徒の安全を含めたらどうかと尋ねた。OFSTEDは、アスベストはその監督の一部にはならないと回答した。
- HSEとOFSTEDは、学校の占有者がアスベストの危険性から安全であることを確保するために、監督を実施するためにある。しかしHSEは、地方当局学校ではそれをしようとせずに、それ以外の学校のごくわずかを監督するだけである。OFSTEDはの監督は、生徒の安全を評価することとされているが、アスベストの場合にはそれをしようとしていない。地方当局の監督官は学校を監督することを認められていない。それゆえ、学校がアスベストを安全に管理しているか、教職員と生徒がリスクにさらされていないかを見極めるための機能するシステムは存在していない。積極的監督はその価値を証明してきており、学校がそのアスベストを管理することを期待されているのであれば、そうするよう確保するためのシステムが実施され、機能していなければならない。
- AiSは、アスベスト管理の基準を判定するために、すべての学校において積極的監督を復活させることを提案する。
労働現場の管理限界を学校に適用すべきではない
- アスベストについての労働現場の大気中繊維管理レベルが、学校の占有者に適用されている。それ以下であればリスクがないという曝露の閾値は知られていないのであるから、これは不安全かつ不適切である。
- 清掃指標[Clearance Indicator、0.01f/ml]はアスベスト請負業者に対する労働現場のレベルであるが、学校におけるアスベスト作業後またはアスベスト事件の後に教室を再占有することができるレベルとして、それが既定のものとして採用されてきた。しかし、それは人が時間当たり6,000~10,000本の繊維を吸入するレベルであることから、安全レベルではない。HSEは、それが通常の占有に対して容認できる環境レベルではないと助言し、改訂された認証実施基準[ACOP]がこれを補強している。
- 世界保険機関は、既知の閾値がないことを認め、「クリソタイルの発がんリスクについて閾値は確認されていない」と述べている。HSEのアスベスト曝露によるリスクに関するホジソン・ダルトン文書は、様々な調査研究を用いて中皮腫を引き起こす可能性のあるレベルを検討し、「これらすべての観察の結果は、比較的短時間の曝露が低い、しかしゼロではない、中皮腫を引き起こすリスクをもたらす可能性がある。この証拠を総合すると、中皮腫について何らかの閾値を仮定することがよいこととは考えられない」と結論づけている。政府の科学に関する助言委員会であるWATCHによってこの証拠が再検討され、2011年に彼らは、「曝露が低いほど、リスクは低いであろうが、『安全』な閾値を確認することはできない」と確認した。
- 医学研究評議会が委託したある報告書は、アスベストがよい状態にある学校におけるバックグラウンドのアスベスト繊維レベルは0.0005f/mlと結論している。裁判所と専門家の医学的意見は、法的目的において[for legal purposes]このレベルより上の曝露は「著しい」ものであり、実質的に中皮腫罹患のリスクを増加させる可能性があるというものである。清掃指標は、バックグラウンド・レベルよりも20倍高く、それゆえ医学的及び法的双方の意味において、実質的に中皮腫罹患のリスクを増加させる。
- 1979年に政府のアスベストに関する助言委員会は、「子供は大人よりも長期間生涯において曝露しうるから、潜伏期間の長い発がん物質の影響をこうむる機会が多い」と言って、子供に対するリスクの増加を警告した。1983年に教育省は、「したがって学校におけるレベルは『平均的』人口に対するものよりも相対的に低くなければならず、職業限界の1/80から1/100というファクターが採用されるべきであると提案することは、不合理でないだろう」と結論づけた。
- この提案は採用されたことがないのであるが、オランダ政府は、現行の職業レベルは安全ではないとし、アモサイトについてEUレベルよりも約300倍低い職業レベル[クロシドライトも含め0.0003 f/ml]とし、現行の職業レベルよりも3,000倍低い環境レベルを勧告した、オランダ健康評議会の報告書の勧告を採用した。このレベル[0.000003 f/ml]は、2014年に実施されることが予定されている。
- 学校に環境レベルを採用に関する事例は、以下のURLがリンクしている。
http://www.asbestosexposureschools.co.uk/pdfnewslinks/Environmental%20asbestos%20fibre%20level%20for%20schools%2014%20Jun%2013.pdf
大気サンプリングはリスクを確認している
- 学校において大気サンプリングがアスベスト繊維の教室内の飛散を確認した数多くの事例がある。いくつかの場合には、飛散が長年続いたものの、知らされないまま経過したと思われる。例えば、教室の戸棚、扉、壁や柱、掲示された子供たちの作品、ヒーターからのアモサイト繊維の飛散は、大気サンプリングによってのみ確認できたものである。
- アスベストの存在がハザーズであるが、占有者に対するリスクは、アスベスト繊維が大気中に飛散し、吸入されうるようになった場合に生じる。その危険性が大気中の繊維の吸入であることから、学校にはアスベスト繊維が室内に飛散しているかどうかを確認する方法が存在していなければならない。
- ピート教授は教育特別委員会に証拠を提供して、学校における大気中アスベスト繊維のレベルを測定することの重要性を強調した。彼は、「学校を調査することに集中したアプローチが必要であり、いくらかでもあり、そのレベルが非常に高い場合には…ただいまのところ大気サンプリングは高価である。私がHSEに提案したいことは-行うよりも言うほうが容易であるが-一定期間にわたって非常に幅広い量の大気サンプルを入手する何らかの手順、及びそのアスベスト繊維を測定することである。それは費用がかかるが、おそらくいま行っていることよりは高価ではない」と述べた。
「…子供たちがアスベストを吸っているかどうかだけが重要なのであり、それを見極めるまでは、それ以外のことはすべてたわ言である」。 - 発がん性に関する委員会も、現在のレベルを判定し、占有者のリスクのより正確な評価ができるようにするために、学校において大気サンプリングが必要であると結論づけた。彼らは、「学校においてみられたレベルに関する情報は大いに歴史的なものであり、学校におけるアスベストに関する現在のデータを欠いている。この問題の重要性に照らして、新しい曝露データをつくりだすことは有用であろう」と勧告した。
- HSEは同意していない。ある上級幹部は、教育特別委員会に証拠を提供し、現行の法令に対する批判を退けて、「サンプリングに代えられるべきだという批判があったが、われわれは同意しない。サンプリングはスナップショットにすぎない。意味があるような情報を提供できるようにするには、洗練されたサンプリングを実施するために学校当たり5,000~10,000ユーロかかる」と述べた。この見解はDfEのアスベスト運営グループでHSEの代表によって繰り返され、学校におけるアスベスト管理のなかに大気サンプリングの場所はないとされた。HSEはまた、学校におけるサンプリングを行き渡せるための手法を完全なものにするトライアルもはねつけたが、アスベスト繊維が飛散しているかどうかをどのように判定するか、解決策は示さなかった。
- 2014年1月にAiSは、すぐにデータが読み出せるアスベスト繊維検出器である「ALERT」に関する説明会に出席した。このシステムは現在開発の最終段階にあり、他の簡易繊維検出器に大きな改善を加えている。それは、精密なレベルを判定するために伝統的サンプリングが実施されるかもしれない時点で、アスベスト繊維が検出されることを示して、「煙」検知器のように作動する可能性をもっている。学校に対する適合性を判定するために設計者によってトライアルが現在行われており、DfEの方針レビューに対して暫定結果を提出することが意図されている。
- アスベスト調査はハザードを確認するが、リスクを確認することはまれであるのに対して、学校における大気サンプリングはリスクを確認し、さらなる飛散を防止するために措置に狙いを定められるようにするだろう。改善措置は学校、及び実際に問題が存在する教室に狙いを定めるものであるから、それは費用対効果があるだろう。長期的にはそれは命を救うだけでなく、費用も節約するだろう。
- AiSは、学校におけるサンプリングを行き渡せるための手法を完全なものにするためにさらなるトライアルを実施することを提案する。
一般に生徒はアスベスト・リスクについて付保されていない
- 学校における子供のときのアスベスト曝露によって毎年200~300の死亡している可能性があるという証拠が、教育特別委員会に提供された。したがって、学校及び地方当局に対するアスベスト関連請求件数が増加する可能性があり、それはアスベストが学校に残っている限り不可避的に続くだろう。にもかかわらず、子供や非被用者は一般に付保されていない。議会の書面によるある回答は、「公共責任保険については一般的にアスベスト除外条項がある」と確認している。
- 保険会社が生徒をカバーする保険を提供していないという事実は、アスベストによるリスクを視野に入れさせる。しかし、民間保険がないなかでは、将来の請求は地方当局学校では引き続き自己保険として処理される可能性がある。しかし、大部分のアカデミーやフリースクールはそうする資源をもっていない。
- 2014年2月時点でイングランドには3,657の学校があり、生徒と非被用者の安全についての法的責任はアカデミートラストに頼っている。したがって彼らは、アカデミーに対してなされたすべての請求について法的責任がある。政府は、いかなる責任も認めないと主張してきたが、将来の請求にどのように対処するのか回答を示したことはない。中皮腫の長い潜伏期間はアカデミーで曝露した者による最初の請求は30年間はないかもしれず、そのときには請求に対処する基金がないことに気づくにはあまりに遅すぎるのであるから、これは方針の不備である。
- 学校を担当する国務大臣は、議会の書面によるある回答のなかで、いかなる金銭的責任も政府によって対処されないだろうという状況を明らかにした。彼は、「教育担当国務大臣は…いかなる補償裁定についても法的に合理的でもなく、何らかのそのような責任についてアカデミーを補償する取り決めに資金提供によってしばられることもない」と述べた。
- 教育特別委員会で学校が請求に対処できない場合にどうするのか尋ねられたときに大臣は、リスクがあろうがなかろうが中央政府は勘定を持たなければならないだろうと回答を拡張した。大臣は、「それについて私が言いたいことは、潜在的な金銭的リスクについてのわれわれの判断は、仮にそれが政府にまわってきたとしても膨大なものにはならないだろうということである。これまでこの分野でたった1件うまくいった[被害者が勝訴した]事例があるだけであると言うのは正しいと思う。責任の第一線は義務保持者にあると期待している。1件しかうまくいった事例がないということを踏まえれば、政府について非常に大きな不測の責任がありそうにはみえない…ガバナーが義務保持者であり、それゆえここでは彼らに責任がある」と回答した。
- これは、請求に対処する基金がないということで、中皮腫で死亡しつつある元生徒が補償を受け取ることができないことを意味するのであって、明らかに満足できない状況である。また、運営する主体と個々のガバナーは個人的に将来のアスベスト関連請求を解決する責任があるかもしれない。議会のある質問では、政府はガバナーに対して状況を知らせる手引きを発したことがあるかと尋ねられた。解答は、「アスベスト曝露リスクの保険カバーに関して、地方当局アカデミーまたはフリースクールに対して手引きを発したことはない」というものであり、これは不可避的に、多くのおそらく大部分のガバナーは、政府が知らせていないために潜在的責任に気づいていないということを意味している。
- 将来のアスベスト請求に対処する信頼できる措置がなければ、アスベストを管理する政府の方針は実行可能とみなすことはできない。実行可能な措置が展開されること、及びそれまでにガバナーが潜在的責任について知らされることが不可欠である。
- 公共責任アスベスト・リスク保険の不在に関する検証の詳細については、以下のURLがリンクしている。
http://www.asbestosexposureschools.co.uk/pdfnewslinks/INSURANCE%20Schools.%20lack%20of%20asbestos%20risk%20public%20liability%20insurance%204%20Dec%2013.pdf
HSEは政府に助言するがリスク管理の枠組みに従っていない
- あるHSEの出版物は、リスク管理に関する意思決定の枠組みについて、以下のように記述している。
「枠組みは、以下のことを明らかにしている。
・ リスクが容認できないか、まあまあであるかまたは広く受け入れられるかどうかを決定する場合には、当該活動またはプロセスによって生じる個々人レベルのリスクと社会的関心の双方が考慮に入れられなければならない。
・ 意思決定のプロセス及び採用された基準は、とられた行動が本質的に予防的であるようなものである。」
HSEは、学校におけるアスベスト管理に関する政府に対するその助言において、この枠組みに従っていない。以下は彼らの失敗に関する分析である。
アメリカ政府はリスクを評価して容認できないとした、イギリスでは評価がない
- 決定がなされ方針がとられる場合に、考慮にいれられなければならない証拠は、多くの教師、学校サポートスタッフ及び生徒に対する個々人のリスクがあるということである。
- 医学研究評議会の文書は、システム建築の学校では角閃石系が広く使われた、また、学校人口全体が学校建物内でアスベストに曝露してきたとみなすのは不合理ではないと結論づけた。彼らの仮定は、学校におけるアスベスト繊維の飛散と占有者の曝露に関する多数の証拠によって確認されてきた。不可避的な結果は、学校教師、学校サポ-トスタッフや元生徒がアスベスト関連疾患で死亡しつつあるということである。
- 1980年代にアメリカ政府は、学校におけるアスベスト問題とリスクのスケールを評価した。彼らはまた、子供の大きな脆弱性と子供が教師と同時にアスベストに曝露している可能性を考慮に入れた。彼らは、30年以上にわたって、学校におけるアスベスト曝露によって1,000人の人々が死亡し、そのうち900人は元生徒におけるものだろうと評価した。したがって彼らは、たしかな科学的基礎をもって、このリスクは容認できないと結論づけた。結果的に、1986年に彼らは、学校に対する特別のアスベスト法令を導入して、学校において教職員ととりわけ生徒のリスクを低減するための予防的対策がとられたのである。
- 生徒から損傷を受けやすい箇所に大量のアモサイトを含んでいることからリスクが一層大きいにもかかわらず、イギリスではこのようなことが起こらなかった。代わりに多数の正反対の証拠にもかかわらず、HSEは政府に対して、学校におけるアスベストによるリスクはきわめて低いと助言してきた。この助言のために大臣は、そうであればアスベストの影響を低減するのに巨額の資金を費やすことは正当化できないと言明してきたのである。
HSEは本質的に予防的な決定は正当化できないと主張
- HSEの助言と政府の方針はしっかりした科学的証拠に基づいていない。歴代の政府は、問題のスケールに関する出他の照合に失敗し、そのアスベスト管理方針が機能しているかどうか評価するプロセスをキャンセルしてきた。代わりに彼らはその方針の基礎を主としてHSEからの助言においた。しかし、HSEの助言は間違っているとみなす専門家団体の意見は数多く、また増加している。
- すべての証拠を考慮に入れる代わりに、HSEは、学校におけるアスベストによるリスクはきわめて低いと言う彼らの助言を支持する気に入ったものだけをつまみ食いしている。ひとつの例は、彼らが政府の科学に関する助言委員会(WATCH)と発がん性に関する委員会の両方に提出したひとつの文書である。この文書は、「次回のWATCHの会合のために、建物内における大気中のアスベストのレベルに関する知見を要約」するよう、WATCHから求められたものだった。HSEの文書は、重要でないデータを含めて関係のあるデータを除外し、繊維レベルの上昇を示したテストはすべて除外して、以前にイギリスの建物内でみられたよりも一桁低い程度であったふたつの例外的に低いレベルだけを含めた。
- 同様のバランスを欠いた、ミスリードする要約が、COCのアスベストに対する子供の相対的脆弱性の評価のために、同委員会事務局に提供された。両委員会はこの証拠を額面どおりに受け入れた。両委員会は政府に対して助言しているが、HSEからの間違った助言のために彼らの決定と方針の「科学的」基礎はなお不備があった。HSEがかく乱と繊維レベルがしばしばHSEが委員会に伝えたのよりも著しく高くなりうることを示した他の権威ある証拠を認めたのは、HSEデータの不備がCOCに対して示された場合だけであった。
- 教師とサポートスタッフの労働組合すべてが、学校におけるアスベストによる組合員と生徒のリスクに関心をもっていることから、彼らはアスベストの危険性から学校を安全にするための自らの資源の調整に協力してきた。彼らは政府、HSE及びDfEに対して、そのアスベスト管理に関する方針が機能してこなかったし、またいまも機能していないことを助言してきた。抜本的変化がなされない限り、そのために組合員と元生徒が死亡しつつあり、死亡し続けるだろう。アスベスト・コンサルタントは、多くの地方当局と学校が効果的または安全にそのアスベストを管理していないことを確認してきた。HSEは、そのメンバーが現場にいる専門家団体から聞かされたことを無視しているのである。アスベスト管理に関する方針が機能しているという政府に対するHSEの保証は、学校で起きていることについての現実または証拠の適切な分析にしっかり基づいたものではないのである。
- 地方当局、労働組合、アスベスト・コンサルタントその他からの助言にもかかわらず、政府は学校建物の監査からアスベストを除外する決定をとっている。加えてHSEは、学校において大気サンプリングを行き渡らせるトライアルを実行するようにという要求をはねつけた。彼らはリスクと財政費用を評価するためのしっかりした基礎とするために必要な重要なデータを故意に除外しているのであるから、これらの決定は正当化することはできない。
- 検視官の法廷が学校における著しい曝露の証拠をみつけた場合、彼らは学校教師やサポートスタッフの検視に基づいて職業病による死亡の評決を与えている。しかし、それらの曝露は、学校以外のどこかで起こっただろうという推測をもって、HSEの上級幹部や政府の大臣から退けられてきた。加えて、証拠を吟味することもなしに、検視官が間違っているという含みをもって、HSEも評決を退けてきた。彼らが曝露の証拠と法廷の見解を退けてきたため、価値のある教訓が失われてきたのである。
- HSEは、彼らの方針は「本質的に予防的」であると主張する。しかし、彼らはデータ収集を怠り、選択的にデータを選び、現場の専門家が彼らに伝えることを無視し、人々が学校でアスベストに曝露してきたし、いまも曝露し続けており、かかる曝露がすでに人々に死を引き起こし、今後も引き起こし続けるだろうという証拠の増加をはねつけてきた。これは本質的に予防的でなく、むしろ都合の悪い証拠を除外または退ける偏狭なアプローチである。そうすることによって彼らは歴代政府に対して、その方針の基礎とすることのできるしっかりした科学的基礎を提供するのに失敗してきたのである。
- 歴代の政府はHSEによって、学校における占有者のリスクはきわめて低いと助言されてきた。結果的に彼らは、アスベスト除去するよりもそれをそのまま残して管理することがより安全であるというその方針を正当化することができると感じてきた。もしHSEがいま彼らが間違っていたと公に認めたら、彼らにとって気まずいだけでなく、政府も気まずくさせるだろう。それは、政府がその方針が不備があったし、いまも不備があると公に認めるべきであったということを意味するからである。その直接的意味合いは、数世代にわたる学校の教職員と生徒がリスクにさらされてきたし、いまもリスクにさらされていることを黙認するということである。
- 2013年1月に発表された欧州環境機関のある文書は、HSEとその助言に直接関係している。それは以下のように言っている。
「科学のエリートたちは徐々に世間の支持を失っていった。これは部分的には危害の欠如に関する根拠のない確実性の事実の数が増加したことによるものであり、それは正反対の証拠にもかかわらず、ヒトの健康に対するリスクを低減するための予防対策を遅らせた。」 - HSEはほぼ40年間にわたって歴代の政府に対して助言を提供してきた。その助言はリスクを軽視し、政府に対してその方針を支援する必要があるという証拠を与えた。このため各政府は次々に、アスベストによる学校の占有者に対するリスクを低減することが是が非でも必要な抜本的な予防的対策をとるのを遅らせることができると感じてきた。
透明性の欠如が「社会的」関心への対処を回避させている
- 政府が事実を社会から隠しておける限り、社会的関心を考慮に入れるという問題も回避される。しかし、人々が問題の大きさに気がつけば、学校の教師、サポートスタッフや子供が学校にいたという単純な行いのためにアスベストに曝露し、またその結果として死亡しつつあるということを、社会が容認できると考えるだろうかと問われなければならない。
- 歴代の政府が学校におけるアスベストの問題を手に余るほど大きすぎると考えたことは明らかである。政府は、社会が問題の真のスケールに気づき、パニックに陥り、子供の学校からすべてのアスベストの除去を要求したらということに関心がある。この分別のない恐れが、問題のスケールについての評価がなされず、ふさわしい対策が一度もとられてこなかった理由である。その方針は、「ぐるぐるまわり」を社会の見解や科学よりも上に置くことにつながった。それはまた、多くの教職員や保護者がアスベスト事故や彼らと彼らの子供の曝露について知らされてこなかったことも意味していた。この透明性の欠如は、野党と政府双方のオープン方針に逆行するものである。
- 事実が社会から隠されてきたことから、歴代政府に対する問題に取り組むよう求めるプレッシャーもなく、それゆえ彼らは必要とされる対策をとることを無期限に遅らせることができてきた。社会の関心が高まり、保護者、教師、学校サポートスタッフや労働組合が、これまで与えられてきた保証が正当化できるかどうか疑問を呈するようになるにつれて、その方針はもはや持続可能ではない。彼らは当然のことながら、自らが働き、またはその子供が通う学校が本当に安全かどうかに関心がある。また、安全でなかった場合には、彼らはいまや肯定的な対策がとられるべきことを期待している。
- 対照的に25年以上にわたってアメリカは保護者と教師が、あらゆるアスベストの存在と状態及びそれを管理するためにとられる措置について毎年最新情報を知らされるよう求めてきた。これはパニックを生じさせなかったが、教職員や保護者がアスベストの危険性を知っていることを意味しており、また学校が占有者を安全にするための容認できる基準を実現することにつながった。
- 意思決定プロセスはしばしば、利益に対して対策をとる金銭費用を重視する、費用対効果分析に基づいている。アスベストの場合、利益のひとつは救われる命の数に関して測定される。とりわけ子供が関わる場合には、プロセスが社会の監視にオープンでなければならず、方針は社会の関心を考慮に入れなければならない。それはアメリカでは起こったが、イギリスでは起こっていない。イギリスでは問題のスケールとリスクは評価されたことがなく、そのため意思決定と費用対効果分析は確固とした科学的データに基づいてこなかった。加えて、透明性の欠如のために、社会の影響と監視がなく、計算や決定に社会が関与してこなかった。
- いかなる政党のものであってもすべての政府が、学校におけるアスベストという重要な問題に適切に対処することに失敗してきた。すべての政党がいまや、その表明する透明性の方針を実行し、問題とリスクのスケールを評価し、学校におけるアスベストの問題を解決するために協力すべきである。
- 方針レビューは、個々人と団体に問題のスケールを示す証拠を政府に提出する機会を提供している。政府は公平かつ徹底的にその方針をレビューすべきである。それはアメリカとオーストラリアの実例をフォローし、学校に優先順位を与える長期的な戦略的方針を採用すべきである。学校が効果的にそのアスベストを管理し、またリスクが最大のものに優先順位をつけて、学校からすべてのアスベストを漸進的に除去する方針が採用されるように、バランスの取れた資源が配分されるべきである。
提案
以下のことを提案する。
- 公開性の方針が採用されるべきである。保護者、教師及びサポートスタッフは、彼らの学校におけるアスベストの存在及びそれを管理するためにとられようとしている措置について毎年最新の情報を知らされるべきである。
- 問題のスケールを知り、財政的見通しを立て、最悪のアスベスト問題をかかえた学校及び地方当局を確認及び目標を定めることができるようにするために、DfEの資産情報調査計画の一部としての資産管理システムに学校におけるアスベストに関するデータが照合されるべきである。
- アスベスト訓練に基準を設定し、訓練を義務とすべきである。訓練には適切に資金提供がなされるべきである。
- アスベスト管理の基準を決定するために、すべての学校において積極的監督が再開されるべきである。
- 将来のアスベスト請求に対処するために実行可能な仕組みが実行されるべきである。その間にガバナーは彼らの潜在的責任について知らされるべきである。
- 学校について環境大気中繊維レベルを採用すること。
- 学校に大気サンプリングを行き渡らせるトライアルを委託すること。
- 政府は、アスベストがもっとも危険または損傷を受けているとみなされた学校に優先順位を与えつつ、すべての学校からアスベストを段階的に除去する計画を策定すべきである。
- 政府は、その方針レビューに対して提出された証拠を公平に分析しなければならない。証拠が、現行の方針が学校の占有者の安全を確保していないことを示すようなものであった場合には、根本的な方針の変更がなされなければならない。
メイケル・リーズ
2014年2月21日
参考文献省略
安全センター情報2014年6月号