メリット制の対象となる特定事業主の労働保険料に関する訴訟における今後の対応について/基発0131第2号令和5年1月31日

基発0131第2号
令和5年1月31日

都道府県労働局長殿

厚生労働省労働基準局長

メリット制の対象となる特定事業主の労働保険料に関する訴訟における今後の対応について

労働者災害補償保険制度においては、事業の種類ごとに労災保険率が定められているが、事業の種類が同一であっても、業務災害について支給された労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号。以下「労災保険法」という。)の規定による保険給付及び労働者災害補償保険特別支給金支給規則(昭和49年労働省令第30号)の規定による特別支給金の額(以下「労災給付額」という。)と労災保険分に係る労働保険料の額(非業務災害率に係る部分を除く。)から算定されるメリット収支率の値に応じ、個別事業の労災保険率を増減(最大で-40%から+40%まで)し、一定の事業の規模を有する事業主(以下「特定事業主」という。)の労働災害防止努力の促進や労働保険料負担の公平性の確保を図っているところである(以下「メリット制」という。)。

今般、被災労働者等の法的地位の安定性を堅持しつつ、メリット制を介して労働保険料の増大という不利益を受ける可能性がある特定事業主の手続的保障を図る観点から、特定事業主が、労働保険料認定決定の取消訴訟等において、労災支給処分が労災保険法に従った決定ではなかったこと(以下「労災支給処分の支給要件非該当性」という。)を主張することを認める余地がないかに関して、厚生労働省労働基準局において「労働保険徴収法第12条第3項の適用事業主の不服の取扱いに関する検討会」を開催し、当該検討会において有識者により報告書(以下「検討会報告書」という。)が取りまとめられ、令和4年12月16日の厚生労働省労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会において検討会報告書の内容が報告されたところである。

ついては、検討会報告書の内容を踏まえ、メリット制の対象となる特定事業主の労働保険料に関する訴訟における今後の対応に関しては下記によることとするので、下記事項に留意の上、事務処理に遺漏なきょう取り扱われたい。

1 特定事業主による労働保険料認定決定取消等請求訴訟

特定事業主は労働保険料認定決定取消等請求訴訟において労災支給処分の支給要件非該当性を主張することが可能であり、労働保険料認定決定取消等請求訴訟において、メリット収支率算定基礎対象となる労災支給処分の支給要件非該当性について審理されることがあり得ること。

これに伴い、特定事業主の主張及び提出する証拠に基づき、メリット収支率算定基礎対象となる労災支給処分の支給要件非該当性を理由として、労働保険料認定決定を取り消す等の判決が確定することがあることについて、留意すること。

2 労働保険料認定決定取消等請求訴訟判決後の都道府県労働局における対応

メリット収支率算定基礎対象となる労災支給処分の支給要件非該当性を理由として、労働保険料認定決定を取り消す等の判決が確定した場合には、都道府県労働局は、当該判決の趣旨に沿って速やかに、当該判決の理由中で労災支給処分の支給要件非該当性が認められた事案に係る労災給付額をメリット収支率算定基礎対象から除外してメリット収支率を算定した上で労働保険料の額を算定し直し、必要な対応を行うこと。

また、都道府県労働局においても下記3に留意すること。

3 労働保険料認定決定取消等請求訴訟判決後の労働基準監督署における労災支給処分の取扱い

メリット収支率算定基礎対象となる労災支給処分の支給要件非該当性を理由として、労働保険料認定決定を取り消す等の判決が確定したとしても、そのことを理由に当該判決の理由中で支給要件非該当性が認められた労災支給処分を行った労働基準監督署が同処分を取り消すことはしないこと。

安全センター情報2023年3月号