労災保険メリット制の廃止を!国会院内集会を開催●全国安全センター

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全国安全センターは2023年5月22日、衆議院第一議員会館第6会議室において、院内集会「労災被災者の生活と権利を守り、労災保険料のメリット制の廃止を!」を開催した。

定員40名の小さな集会だったが、この問題に理解のある多彩な団体の代表のほか、福島みずほ参議院議員(社民党)、岸まきこ参議院議員(立件民主党)、宮本徹衆議院議員(日本共産党)が参加してあいさつしてくれたほか、メディアの参加もあった。

神奈川労災職業病センターの川本浩之事務局長の司会で、まず、あんしん財団事件弁護団の嶋崎量弁護士が、労働法律旬報2030(2023年4月下旬)号の特集「労災保険給付決定の取消訴訟-あんしん財団事件・東京高裁判決の衝撃」に寄せた論文と2月17日日本労働弁護団の「労災保険支給決定に対する事業者による異議申立てに断固反対し、メリット制のあり方について見直しを求める幹事長声明」の内容を紹介しながら、「事業主による労災取り消し訴訟の動きなど」について解説。

これを受けて全国安全センターの古谷杉郎事務局長が、「労災保険料のメリット制 なぜいま廃止を議論する必要があるのか」問題提起。3月号の特集記事及び海外情報を紹介しながら、以下のようにまとめた。

  • 「労働災害防止努力の一層の促進」に効果があるという根拠はない(審議会でも指摘されながら、厚生労働省は分析を可能にするような努力をしたこともない)。
  • 「保険料負担の公平性の確保」と言いながら、メリット制適用事業場数に関するデータしか公表されず、保険財政に対する影響は公表されていない。適用を受けず、割引分を負担させられている95%の事業にとって「公平性」はない。
  • 日本医師会や労働組合等から再三「労災隠しを助長する」と指摘され、審議会でも取り上げられてきた(厚生労働省は、①そういう証拠はない、②別の要因もある、③メリット制の議論と別に対処する、とはぐらかしてきた)。
  • 直接または労災保険料決定めぐる争いを通じて、労災認定決定に対する事業主の不服申し立てを容認しようとする新たな動きの根拠とされている。
  • 国際的にも二面性があると指摘され、労働災害の頻度と重大性を減らすインセンティブを与える「効果あるという信頼に足る証拠はない」とされる一方で、「労災保険制度を敵対的にする」ともされる(ILO労働安全衛生エンサイクロペディア)。
  • 使用者に、請求の提出を妨げまたは抑制し、積極的な情報を差し控え、請求に反対し、請求者に有利な決定に不服申し立て、請求者に早期に職場復帰を迫り、請求者に関する個人医療情報を求め、請求者にさらなる医学的検査を要求する等の経済的なインセンティブを与える(同前) 。

続いて関西労働者安全センターの西野方庸さんが「メリット制による保険料の試算」を具体的に示しながら、「メリット制が中小事業主や労働者を不当に苦しめている」と訴えた(表紙写真参照)。

集会では、以下の方々からも発言をいただいた。

  • 田久悟・全国建設労働組合総連合労働対策部長
  • 岡本哲文・コミュニティユニオン全国ネットワーク事務局長
  • 渡辺洋・全国労働組合連絡協議会議長

若干の質疑の後、東京労働安全衛生センターの天野理さんが集会のとりまとめを行ない、労災被災者の生活と権利を守るために避けて通ることのできない課題として、労災保険料のメリット制の廃止を実現していくという決意を表明した。

※YouTube配信 https://www.youtube.com/watch?v=mlLIqJvOXcA

安全センター情報2023年7月号