華城に向かった2500の心「心からの謝罪だけが真実を開く第一歩」/韓国の労災・安全衛生2024年08月18日

『8.17アリセル希望バス』の参加者がソウル発の希望バス2号車に搭乗している。/パク・チェヨン記者

17日午後、依然として焼跡が生々しく残っている華城アリセルリチウムバッテリー工場の前に全国各地から多くの人たちが集まった。この日、50の都市から出発した希望バスとワゴン車など、100台余りが2500人ほどを乗せて来た。

彼らは遺影が並ぶ焼香所で黙祷した後、白い菊を置いた。「真心のこもった謝罪だけが真実を開く第一歩」「安全な世の中になりますように」等、青いリボンに各々の願いを込めた言葉を書いて、工場のフェンスに括り付けた。

ソウルから出発した『希望バス』8台に記者も乗った。2号車『宗教バス』に搭乗したある修道女は、「一番苦しいことを経験した時は寂しくはないが、追悼集会では、ずっと感謝しますと言う遺族を見て、希望バスに乗る決心をした」と話した。ある芸術家は「仕事に行く時、命を懸けて行かなくてもよい社会になって欲しい」、ある大学院生は「遺族の涙が心にしこりのように残った」と体を乗せた。

『8.17アリセル希望バス』の参加者が、アリセル火災現場の近くのフェンスに、追悼の言葉を書いた青いリボンを括り付けている。/パク・チェヨン記者

社会的連帯を代表する象徴となった『希望バス』は、2011年に韓進重工業の解雇労働者のキム・ジンスクさんの復職闘争の過程で始まった。これまでに23回の希望バスが走っている。密陽送電塔反対座込み場に、大宇造船下請け労働者などに集まった心が、今回は華城アリセルリチウムバッテリー工場に向かった。真相究明と責任者の処罰を求めるためだ。

華城アリセル惨事は6月24日に発生し、23人の労働者が死亡し、8人が負傷した。犠牲者の内、17人が中国同胞、1人がラオス出身の移住労働者だった。23人の内、15人は女性だった。遺族たちは55日間、工場をはじめ、雇用労働部、警察署、京畿道庁、華城市庁などに向かった。

この日、『希望バス』の参加者たちは猛暑の中での闘いを共にした。2500人がアスファルトの道路を2キロ歩いた。セウォル号惨事の生存者であるチャン・ドンウォンさん(54)は、「惨事が繰り返され、このような連帯が続いている。」「無残に23人が死んだのに、責任を負う人はいないではないか。国民が死にかけているのに、これはどういった社会なのか」と話した。天安で15年間、ネイティブの講師をしているケイトさん(54)も、「韓国人か外国人かを問わず、一つの空間で本当に多くの人が死んだ」とし、東南圏造船所で溶接の仕事をする移住労働者のAさんも、「(惨事の便りに)悲しかった」と、一緒に路上に立った。

『8.17アリセル希望バス』の参加者2500人が、京畿道華城市庁まで2km余りを徒歩で行進している。/パク・チェヨン記者

暑さにも慣れた人たちが、街頭行進を終えて華城市庁の隣の、遺族の憩いの場として運営されている「全ての分かち合いセンター」に到着した。遺族40人ほどが、亡くなった家族の写真を持って、『希望バス』の参加者たちを迎えた。

白基晥バス、宗教バス、気候バスなど、部門別のバス代表者たちと市民が舞台に上がり、遺族たちに慰労と連帯の思いを伝えた。ソウル江西区から妻と小学生の息子2人と一緒に来た会社員のハン・ボムスンさん(51)は、「一人一人の顔をよく見たのは、今日の焼香所が初めて」で、「とても若い。とても残念だ」と話した。彼は「韓国社会には移住民が非常に多く、彼らも社会構成員だが、多くの人たちが、彼らを見ない振りをしているようだ」と話した。

慶北亀尾から来た金属労組・韓国オプティカルハイテク支会のイ・ジヨン事務長は、「アリセル工場と焼けた私たちの工場が似ていて、胸がとても痛かった。」「オプティカル支会は、火災を口実に清算した外国人投資企業に抗して、七ヶ月にわたって2人の労働者が高空籠城中だ。共に闘い、共に勝利しよう」と話した。

続いて、黄色いひまわりと「今日もアンニョン」と書かれたカーキ色のTシャツを着た遺族たちが舞台に上がった。遺族たちは「私たちのアンニョンは6月24日以後に止まった。最初は死を受け容れることができず、今は50日以上、何の真相も究明されず、悔しくて道路に出た」と話した。

アリセル労災被害家族協議会のキム・テユン共同代表は、「爆発当日、非常口に完成品を積んで置かなかったとすれば、爆発時に早く逃げろと教育していれば、死ななかっただろう。」「惨事が起きるそれまでの三年間にあった4回の爆発事故の原因を、関係当局が確認していたとすれば、55日はアンニョンだっただろう」と話した。続いて「私たちの家族は不法派遣による不安定雇用の状態で、自分がどの会社で働いているのかも判らないまま死んでいった」と話した。

アリセル華城惨事の犠牲者の遺族が、京畿道華城市の「全ての分かち合いセンター」前の「8.17アリセル希望バス」の現場に座っている。/パク・チェヨン記者

雇用労働部は13日、アリセルに対する産業安全保健特別監督の結果を発表した。この日、一緒に発表した安全対策には、不法派遣など雇用構造の改善は含まれておらず、危険性評価などが大きく改善されていない『盲点』だという指摘が続いた。労働部はアリセルの重大災害処罰法・派遣法などの違反の有無に関する捜査結果は、後日発表するとした。遺族たちは、民・官の合同機構による調査を求めている。

妻の甥のキム・ジェヒョンさんを亡くした遺族のコン・ミンギュさんは「アリセルは遺族に解決金による合意を強要し、アリセルのパク・スングァン代表など、役職員に対する『処罰不願書』を突き付けた。」「私たちの家族を連れて行って業務指示をしておきながら、遺族をこのように追い込むことが妥当なのか」と話した。遺族たちはアリセルに、「個別合意接触」を止め、協議会とのきちんとした交渉に臨むことを要求している。遺族たちは近い内に、パク・スングァン代表に対する拘束捜査を要求する請願を始める。

アリセル惨事の遺族の1人が華城市庁1階の焼香所に白い花を持って入っている。/パク・チェヨン記者

舞台の上から犠牲者の名前を次々と読み上げた民主労総京畿道本部のキム・ジンヒ本部長は、「社会的惨事の原因を明らかにし、責任を問い、再発防止対策を作るのは、誰の役割でもなく、被害当事者と市民の役割だということを、今回の惨事で再び確認した。」「政府は、国は、どこにあるのか」と叫んだ。遺族の誰かは顔をしかめ、誰かは眼鏡を外して涙と汗を拭い、誰かは無表情に床だけを見詰めた。

2024年8月18日 京郷新聞 パク・チェヨン記者

https://www.khan.co.kr/national/labor/article/202408181531001