金鎔均(キムヨンギョン)事故の責任者の罪の対価、更に値下げした控訴審 2023年2月10日 韓国の労災・安全衛生

泰安火力発電所で亡くなった故キム・ヨンギュン労働者の母親キム・ミスク金鎔均財団理事長(左から3人目)が9日、大田地方裁判所であった韓国西部発電と韓国発電技術の責任者に対する控訴審の宣告直後に行われた記者会見で、判決を糾弾している。/ホン・ジュンピョ記者

泰安火力発電所で一人で作業していて、ベルトコンベヤーに挟まれて亡くなった故キム・ヨンギュン労働者の死亡事故に関連する元・下請けの責任者らの量刑が、控訴審で大幅に減軽された。一審で一部有罪と認められた元請けの産業安全保健法違反の疑いが、全て無罪と判断されたことによる結果だ。遺族と労働界は大きく後退した判決だとして、裁判所を強く批判した。

「有罪→無罪」に変わった泰安発電の本部長
責任者の罰金刑・禁錮刑は執行猶予に減刑

大田地裁刑事控訴二部は9日に判決公判を開き、産業安全保健法違反と業務上過失致死の疑いで起訴された西部発電のキム・ビョンスク前代表に、一審と同様に無罪を言い渡した。一緒に裁判にかけられた元・泰安発電本部長にも、原審(懲役1年、執行猶予2年)を破棄して無罪を言い渡した。西部発電の法人も一審の罰金1千万ウォンから無罪を宣告された。

下請け業者も量刑が軽減された。韓国発電技術の元・代表は、一審の懲役1年6月・執行猶予2年から、禁錮1年・執行猶予2年に減軽された。泰安事業所の所長も、懲役1年6月・執行猶予2年から、懲役1年2月・執行猶予2年に4ヵ月減刑された。韓国発電技術の法人は罰金1200万ウォンを宣告され、一審より300万ウォン軽くなった。

残りの西部発電の関係者6人は、禁錮6月~1年・執行猶予2年が、韓国発電技術の関係者3人には罰金700万ウォン~禁錮10月・執行猶予2年が宣告された。元・下請けの責任者の量刑が一審に比べて軽くなったわけだ。検察の求刑も宣告には反映されなかった。

裁判所は「フルコードスイッチ不良」等、二つを除いた残りの産業安全保健法違反の疑惑を無罪と判断した。裁判長は1時間以上判決文を朗読し、量刑理由を明らかにした。裁判所は「この事件は、被告人のうちの誰か一人の決定的な過誤に起因したと見ることは難しい」、「被告人が産業現場で安全保健措置の重要性を多少看過し、各自の業務上の注意を怠った結果が重なって重大な結果に至ったもので、一人ひとりの過失の程度が非常に重要だとは言えない」とした。元・下請けが遺族に金銭を賠償し、再発防止措置を履行した部分も有利な情状と判断した。

裁判所「個人の過誤で事故が発生したのか」
元請けは「実質的な使用者ではない」とした不正な一審を維持

量刑が大幅に軽くなったのには、産業安全保健法違反の疑いが無罪とされたことが決定的だった。特に、裁判所は西部発電と下請け労働者は「実質的な雇用関係」に該当しないと見た原審を、そのまま維持した。韓国発展技術が独自性と専門性を備え、所属する労働者に指揮・命令をしたと見た。傍聴席からは「これでは話にもならない」「請負人ではなく、実質的な使用者だ」という大声が溢れた。

裁判所の判断で西部発電の前代表と前本部長はいずれも責任を免れた。裁判所は前代表が事故当時、ベルトコンベヤーの様子を確認したとされる証拠がない点などを根拠に、「具体的で直接的な義務」を負担すると断定できないとした。前代表が義務違反事項を知りながら設備を放置したり、作業を指示したとは見難いということだ。

特に、前本部長は一審で有罪が認められた業務上過失致死と作業中止違反義務まで、疑惑がないと判断され、無罪が宣告された。裁判所は「安全措置義務違反は故意犯だけが処罰されるが、被告人が設備の具体的な状況や運転員の作業のやり方に関して、具体的に知っていたとは見難い」とし、「被告人が違反事項を未必的ではあるが認識しながら、韓国発電技術に設備を提供したと認めるには不充分だ」と判示した。それと共に「被告人が石炭設備と委託管理業務に直接関与したなど、特別な事情が認められない限り、これは抽象的な義務に過ぎない」と強調した。

キム・ヨンギュンさんの母親は「人を殺す判決」
二審判決の当日、別の発電労働者が墜落死

宣告直後、キム・ビョンスク前代表は、感想を聞く取材陣を避けて慌てて去って行った。労災の遺族と労働者たちは目頭を赤くした。キム・ヨンギュンさんの母親のキム・ミスク金鎔均財団理事長は、裁判所の前での記者会見で「余りにも悔しくて、悔しさが爆発する裁判の結果だ。裁判長が人を殺す役割をしている」、「こういった裁判で労災を減らすことができるか」と糾弾した。

「使用者がきちんと安全措置をせずに労働者を死なせたということが刻印されるまで闘う」と話した。キム・ドクヒョン弁護士は「一審よりもはるかに後退した判決が宣告された」、「設備だけでなく、裁判所の判決にも、労働者の安全について余りにも多くの穴が空いていることが分かった」と批判した。

参加者たちは、もう一人の発電労働者がこの日に亡くなった事実に言及した。キム・ヨンギュンさんの同僚のイ・テソンさんは「裁判が行われた今日、中部発電の保寧火力発電所で、50代の労働者が落炭作業中に命を失った」とし、「キム・ビョンスク前代表がなぜ処罰されるべきかを証明する資料を裁判所に提出する」と話した。金鎔均財団は15日に最高裁の前で、控訴審判決を糾弾する記者会見を行う予定だ。

故キム・ヨンギュン労働者の母親キム・ミスク金鎔均財団理事長(中央)が9日、大田地方裁判所で開かれた控訴審の宣告公判を傍聴した後、宣告結果に失望して涙を流している。/ホン・ジュンピョ記者

2023年2月10日 毎日労働ニュース ホン・ジュンピョ記者

http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=213408