アスベスト管理に対する安全衛生庁(HSE)のアプローチ「5 アスベスト産業の規制」-イギリス下院労働・年金委員会報告書から, 2022.4.21
アスベスト管理に対する安全衛生庁(HSE)のアプローチ-イギリス下院労働・年金委員会報告書,2022.4.21
1 はじめに
2 今日のアスベスト・リスク
3 戦略的アプローチの採用
4 HSEによる執行
5 アスベスト産業の規制
結論と勧告
付録1:アスベスト曝露限界値
付録2:国際的アプローチ
アスベスト作業と曝露限界
103. アスベストを管理する義務(第4条)に加えて、アスベスト規則はアスベスト関連作業に責任を負う者の法的義務も設定している。これらの義務は、使用者、労働者及び意図的にアスベストを攪乱する可能性のある作業を行う自営の人々、若しくは補助的な作業またはそのような作業を監督する者に適用される(第3条)。囲み3は、アスベスト産業で働くこれらの人々の主要な役割を示している。規則の重要な原則は、最初にアスベストの所在を特定するためのリスクアセスメントを実施することなしに、非居住用建物に対して、アスベストを攪乱する可能性のある作業が行われてはならないということである。
囲み3:アスベスト産業における主要な役割
調査者-アスベスト含有物質を特定するために施設を調査する「適切な訓練を受けた者」。調査者は、建物の義務保持者がアスベスト管理義務を果たすのを支援する。HSEは、「認証を受けた調査者を使用することを強く勧告」しているが、それは法的要求事項ではない。
認可アスベスト除去業者とその労働者-認可アスベスト作業を行うことをHSEから認可された業者。
分析者-認可アスベスト除去作業については、行われる作業の品質保証を完了するために、アスベスト分析者が指名されなければならない。これは4段階のクリアランス手続で、除去現場を建物の利用者に引き渡す前にアスベスト繊維レベルをチェックする大気検査が含まれる。この役割を果たすアスベスト分析者は、英国認証サービス(UKAS)-認証を受けていなければならない。分析者はまた、調査者のために、アスベスト含有物質のサンプリングを行うこともできる。
104. また、アスベスト規則とガイダンスは、アスベストが関わる作業中に超えてはならない大気中の繊維レベル(繊維/cm3)-「管理濃度」-も設定している。この限界値は、短時間曝露限界値とともに、アスベスト作業の分類の基準と作業を行うために必要な管理のレベル(例えば認可を受けた業者によって行われなければならないかなど)を定義する役割も果たしている。また、ガイダンスは、アスベスト現場をその利用者に引き渡す前に達成されなければならない、作業完了後の「クリアランス曝露限界値」も示している。アスベスト・ガイダンスは、これらの職業曝露限界値は大気中のアスベスト繊維の安全レベルを表すものではなく、目標は常に「合理的に実行可能な限り」低減することであることを明らかにしている。付録1は、現在イギリスで職業環境に適用されている繊維曝露限界値を示している。
アスベスト作業の分類
105. リスクアセスメントは、アスベスト含有物質が関わる除去作業が開始される前に実施されなければならない。高リスクと評価される作業は、認可を受けた業者によってのみ行われ、少なくとも作業を開始する14日前にHSEまたは他の執行当局に届け出られなければならない。これは、「認可作業」と呼ばれる。この分類にあてはまる作業は、作業中の大気中のアスベスト繊維濃度が「管理限界値」(0.1繊維/cm3)を超える可能性があるか、またはリスクの高いアスベスト含有物質が関わるという種類・規模のものである。
106. 「非認可作業」は、認可を受けた業者によって行われる必要はない。この作業は、短時間で、かつ、管理限界値を超えない散発的で低強度のアスベスト繊維曝露しか生じさせないものと予想されている。一部の「非認可作業」は、「届出作業」に分類され、作業が行われることをオンラインで関係規制当局に届け出る必要性と記録を維持する必要性を含め、追加的な規制手続の対象となる。この第3の分類の作業については最低届出期間は設定されておらず、執行当局からの許可を待つ必要もない。
107. IOSHは、アスベストに関する認可作業の定義は「曖昧であり、専門家でないアスベスト除去作業者をリスクにさらす可能性がある」と述べた。IOSHは、アスベスト含有物質が関わる作業を開始する前に、「何が短時間で、何がそうでないかを言うのはかなり難しい」と言う。IOSHは、義務保持者が警戒的なアプローチをとって、不確実性がある場合には認可を受けた業者に委託する場合もあるが、認可を受けた業者を「本当は使用すべきであるのにまったく使わない」場合もあると言った。IOSHはわれわれに、認可作業と非認可作業の区別をより明確にする必要があると話した。
108. 安全衛生コンサルタント会社であるEthos Environmental Ltd社長のBrian Gardner氏は書面による証拠のなかで、「もっともリスクのある人々はいまもなお、認可作業であれ、非認可作業を行っているより広い建築業であれ、活発にアスベスト関連作業を行う者たちである」と述べた。彼は、非認可作業を行う者は、「彼らの実際の曝露リスクの信頼できる継続的評価に関して、ほとんど何の支援も受けていない」と述べた。英国職業衛生協会は、相対的に小さな建設業、エネルギー・保温業者や廃棄物処理業者も対象とした、「信頼できる監視」体制が必要であると述べた。
109. また、われわれは、アスベスト規則のもとで「届出作業」でもある「非認可作業」の分類に関する懸念も聞いた。Darren Evansは、HSEが受け付けた非認可アスベスト作業に関する情報をどのように扱っているかについて、ほとんど明らかになっていないと述べた。彼は、「HSEがこうした人々や彼らの能力をチェックしているか、また現場を訪問しているか、私にはわからない」と言う。彼はわれわれに、分析者は「こうした非認可現場に行ってチェックすることも、何らかの監視を行うことも義務づけられていない」と話した。Graham O’Mahony氏はわれわれに、欧州連合の要求事項によって促された、2012年規則へのアスベスト物質の第3の分類(届出非認可作業)の追加は、「事態を一層混乱させた」と話した。彼はまた、HSEが届け出られた情報をどのように利用したか知らないし、こうした場合で規制当局がアスベスト除去前に現場訪問を行ったとは思えないと述べた。
110. Curran教授はわれわれに、アスベスト作業の第3の分類をもっている「もっとも重要な理由」は、建築環境におけるアスベストの偏在性を踏まえて「リスクベースの視点」を反映させることだと話した。その後の書面による証拠のなかでHSEは、「これらの[非認可作業の]届出のどれだけが直接監督につながったかについての数字はもっていない」が、「今後の介入に役立てる」ために収集した情報を使っていると述べた。HSEはまた、その焦点は、認可作業を監督することにあるが、定期的な監督の一環として非認可作業の一部も評価しているとも述べた。
111. 現在イギリスでは、一部のアスベスト除去作業は認可を受けた業者によって行われる必要はないが、この一部には作業を開始する前にHSEに届け出る必要があるものもある。この作業の3分類は混乱を招くものであり、その価値も疑問視される。分類の数を減らすとともに-場合によっては、予想されるアスベスト繊維曝露に関する管理基準をさらに厳しくすることにより、または認可作業から除外されるアスベスト物質の種類と条件を減らすことにより-認可業者によって行われなければならないアスベスト除去の割合を多くすることが、想定外の曝露の減少と廃棄慣行の改善につながる可能性がある。しかし、認可業者を使用する要求事項を拡大することが意図しない結果を招くかもしれないリスクはあり、何らかの変更は慎重に検討される必要がある。HSEは、現在のアスベスト作業の分類の利点を評価するために、アスベスト規則の5年ごとのレビューを活用すべきである。
112. われわれは、HSEが、アスベスト管理規則の2022年法定レビューの一環として、現在のアスベスト作業の分類をどのように統合、厳格化及び簡素化できるか検討するよう勧告する。レビューでは、変更に伴う正味の行動への影響と費用を慎重に評価すべきである。
質と独立性
113. HSEのアスベストに関する規制モデルは、安全慣行を確保するために、アスベスト産業に大きく依存している。Kevin Bampton教授はわれわれに、「HSEを非常に尊敬している」が、アスベスト産業を監視するためには、「リソースが非常に限られており」、「キャパシティがあまりない」と話した。彼は、そのため、HSEは「産業に依存しており、産業はその依頼人の」支払う意欲と…依頼人が物事を進めたいと望む緊急性に「依存している」と述べた。Bampton教授によれば、それゆえ、「誰もがリスクの回避[と]費用の削減のために可能な限りアスベスと評価を安く行うことを望んでいる」状況において、重大な品質リスクを緩和するのに役立つ管理が実施されていることが重要である。
調査の質
114. アスベスト規則は義務保持者に、アスベスト含有物質を特定・評価するために、彼らに代わってアスベスト調査を行う第三者を指名することを許している。アスベスト規則に付随する承認実施基準は、義務保持者は、「調査を行うために…調査者が認証を受けていることをチェックすることにより」、彼らの適切性を評価することができるとしている。HSEの実施基準は、「[UKAS-]認証を受けた調査者を使用することを強く勧告」しているが、これを義務づけはしていない。その一方で、実施基準は、認可アスベスト作業後に現場クリアランス証明と物質の分析に関わる分析者はUKAS-証明を受けていなければならないと言っている。
115. HSEが明確に勧告しているにもかかわらず、Darren Evans氏によれば、「どんな老人でも出かけて、調査を行うこともできる」状況が続いているという。彼は、他方で、彼の分析者メンバーは「UKASにより認証されていなければならず」、また、「監査を受けていなければならない」と述べた。彼は、「競争の場はまったく公平ではなく」、これは「正される必要のあることのひとつである」と付け加えた。英国職業衛生協会も、アスベスト調査者の質と義務保持者に代わって業者によって行われる報告についての懸念を表明した。同協会は、これらは、「チェックボックス式の作業とみなされているかもしれず」、それが務保持者をリスクと機会を完全に知らされないままにしている。同協会は、これらの報告についての国家規格は、「義務保持者、アスベスト除去業や規制当局を支援する」だろうと言った。
116. 口頭による証拠のなかでSarah Albon氏は、全体的アスベスト規制体制についてHSEが監視しているにもかかわらず、なぜアスベスト規則が分析者にUKAS-認証を受けているべきことを要求し、調査者に要求していないのかについて、「われわれはおそらくUKASに聞かなければならないだろう」と言った。その後、HSEは、「2004年頃」に調査者の認証について検討したが、非規制的選択肢の方が負担は少ないと判断して、実施に至らなかったと説明した。HSEは、その後の自主的な認証制度は、参加者が少なく、成功しなかったと付け加えた。HSEは、調査者の能力は「HSEにとって重要な問題として残っており」、認証は「この領域における何らかの将来の取り組みの一部として検討される可能性がある」と述べた。
分析者の独立性
117. 分析者は、アスベスト含有物質が関わる作業後の完了後に、大気サンプリングを行うことを委託される。これは、建物の利用者に引き渡される前に、現場にアスベストがない状態であることをチェックするためである。アスベストに関する分析者ガイドは、現場のクリアランス証明を提供する分析者は、「施設の管理において、資金供給において独立的であって、建物の所有者または占有者(すなわち建物の依頼者)から雇われる」ものであることが「強く勧告される」としている。Kevin Bampton教授はわれわれに、実際には「請負業者が分析者を指名することがきわめて多く」、これは「不健全な潜在的関係」であると話した。分析業界を代表するDarren Evans氏はこれを、分析者は「[除去業者から]支払ってもらって宿題を採点している」ようなものだと表現した。彼は、分析者は「圧力にさらされる可能性があり」、「われわれが作業の品質チェックのために分析者の指名を分離するまでは…現実にはないとしても、つねに利害の対立があると考えられるだろう」と述べた。
118. 自身がコンサルタントでもあるBrian Gardner博士は、以下のように述べた。
「この繊維計測サービスを提供している分析所が、その性能が監査を受ける対象である組織-認可を受けた業者から雇われ、支払われていること」に気づいている者はわずかである。業者は、「自分の宿題を採点している」とまではいかないかもしれない-が、明らかに採点する者の財布の紐をしっかり握っている。
この結果は、(かつてなく厳しく、より規範的なガイダンスとUKAS-認証システムを通じて)除去業者と分析者の関係を取り締まろうとする多大な努力にもかかわらず、前者が、(それがプロジェクトの遅延や商業的損失につながるかもしれない場合に)検査や分析作業に完全な厳密さを適用することを、分析者に非公式に思いとどまらせようとすることがあまりにも多いということである。
[…]残念ながら、業界には、いまだに悪習や不正、誘因が蔓延しており、HSEが対処できないように思われる部屋のなかにいる象である…」
119. Gardner博士は、この解決策は、除去業者から独立した検査分析者と分析所を指名することを、義務保持者の義務にすることであると述べた。Sarah Albon氏はわれわれに、「様々な検査で」分析者による「過少採点」を示す「何らかの兆候や示唆を見たことはない」と話した。彼女は、HSEは、認可を受けた除去業者は「圧倒的に正しい基準で作業しており」、彼らは「手抜きに加担するような分析者をみつけようとしているわけではない」と確信していると話した。にもかかわらず、2015年に実施されたHSE独自の分析者への監督計画は、分析者による分析の質と独立性についてこの専門職の間にいくらかの懸念があることを明らかにしており、分析者の約4分の1が常にまたはほとんど認可アスベスト業者から委託されていた。
120. アスベスト調査者は、義務保持者が施設内のアスベストを特定・管理するのを支援するうえで重要な役割をもっている。われわれは、調査者の質のばらつきに関する懸念を聞いた。アスベスト調査者についての規制・品質要件がなぜ、UKAS[イギリス認証機関認定審議会]の認証を受けていなければならない分析者についてよりも厳しくなくてよいのか、われわれには明確でない。
121. 認証を受けていなければならないという要件にもかかわらず、認可を受けたアスベスト請負業者がその作業のチェックを自らの分析者に委託するのを許している規制上の仕組みによって、分析者の業務は支障をきたされ続けている。われわれは、現在のモデルがこの重要な品質チェックの独立性を損なっているという気がかりな説明を、いくつかの情報源から聞いた。証人はわれわれに、基準を改善させる簡単な方法のひとつは、すべての状況において分析者を雇うことを、建物所有者または依頼者に対する要求事項にすることだろうと話した。
122. われわれは、HSEが、認可された認証機関による認定を受けているべきことを、アスベスト調査を行うすべての人々の要件にするよう勧告する。われわれはまた、HSEが、施設に対して行われるアスベスト作業のチェックを認証を受けたアスベスト分析者に委託することを建物所有者または占有者に対する法的要求事項にすること、またさらに拡張して、アスベスト除去業者がそれを行うことを違法とすることの影響を評価するよう勧告する。
アスベスト曝露の抑制
123. 現在、欧州では、アスベストに関する規制枠組みを強化する必要があるかどうかについて広範な議論が行われている。これに関して-欧州連合及び国レベルで-アスベスト関連作業を行う者についての繊維曝露限界値を引き下げる提案がなされている(イギリスの曝露限界値に関する付録1と、われわれの調査の一環として手配した欧州の3つの国に関する付録2参照)。2021年10月に欧州議会は、欧州委員会に対して「すべてのアスベストの除去のための欧州戦略」を示すよう要求し、EU全体の職業曝露限界値を0.001繊維/cm3に引き下げることを勧告した、雇用・社会問題委員会の決議を採択している。欧州委員会の2022年の計画には、アスベストに関する管理を強化することを意図した政策措置が含まれるものと予測されている。一部の国はすでに、アスベストについてより低い曝露限界値を採用している。例えば、Burdorf教授はわれわれに、オランダは、「リスクを許容…せず…社会的決定に基づいた、非常に厳しい職業上の…曝露限界値」を採用していると話した。
124. 英国職業衛生協会の支援を受けた専門家団体であるアスベスト評価・管理協会は、職業限界値の引き下げは、「意図しない結果をもたらす可能性があり」、「より費用と時間のかかる測定方法を要求する」可能性があると言ってきた。とりわけ、彼らが懸念しているのは、曝露限界値の強化が、意図せずに、労働者の曝露の監視を減らし、違法なアスベスト含有物質の処理を増やす可能性である。Curran教授はわれわれに、欧州の一部における職業限界値を引き下げる動きは、「現実世界」の行動に基づいたものではないかもしれないと話した。彼は、それは「理論的な構成」に頼るというよりも、「リスク-ハザードの問題のバランスをとること」と、アスベスト関連作業を行う人々について可能性のある曝露のパターンについて「現実的に考えること」であると述べた。Sarah Albon氏も、イギリスは欧州の多くの地域と比較して「アスベスト使用量が著しく多く」、これは、曝露限界値やより広いアスベスト政策に関する決定における関連する考慮事項であると述べた。
電子顕微鏡の利用
125. 大気中のアスベスト繊維の濃度は顕微鏡を使用して計測される。現在、HSEは、アスベスト繊維計測に世界保健機関(WHO)位相差顕微鏡(PCM)の使用を求めている。「Airtight on Asbestos」キャンペーンは、PCMの倍率の限界は、アスベスト含有物質が関わる作業完了後の現在の測定閾値である、0.01繊維/cm3を超える解像度を計測できないことを意味していると言ってきた。UKAS認証を受けた調査・分析機関であるSOCOTEC Asbestos Limitedは、その見解では、このことは、アスベスト分析者が「合理的に実行可能な限り低く」繊維曝露を低減するという基本的な規制要求事項を現実には満たしていないことを意味していると述べた。透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型電子顕微鏡(SEM)を含め、他の顕微鏡技術が利用可能である。「Airtight on Asbestos」キャンペーンは、TEM分析は時々言われるほど高価ではないと言い、1サンプル当たりの費用を約80.335ユーロと推計した、フランスのアスベスト・コンサルタントITGAによるデータを紹介した。
126. HSEは、電子顕微鏡が、ひるがえって「分析上のアドバンテージ」をもつ、より粒の細かい分析と「解像度の向上」を可能にし得ることを認めている。しかし、HSEは、電子顕微鏡は、部分的にはイギリスにおける限られた分析所のキャパシティのゆえに、「はるかに高価」で、「実用性が低い」と言う。Curran教授はわれわれに、「われわれは、人々が…除去プロセスから何らかの繊維をみつけた場合に、何をするかについて迅速な決定をするのを…可能にすることを望んでいる」から、アスベスト除去後にPCMの使用を勧告し続けていると話した。彼は、電子顕微鏡技術はすぐに結果を提供することができず、これは人々が「迅速な介入をすることが可能でない」ことを意味していると言う。にもかかわらず、Curran教授は、研究目的には電子顕微鏡が重要であり、アスベスト除去作業者の曝露を調査したHSEの最近の分析で使用されたことは認めた。
127. HSEは、アスベスト・リスクを管理し、証拠のバランスを評価し、アスベスト曝露と行動の職場パターンを理解するための独自の研究を委託するアプローチの国際的進展を監視するうえで重要な役割をもっている。欧州における進行方向は、アスベスト規制の強化と、電子顕微鏡技術の使用の増大に依拠した曝露限界値の低減に向かっている。これらの変化は、除去の時期と方法を含め、アスベストを管理するやり方に実践的・金銭的影響を与えるかもしれない。HSEは、欧州における進展は、必ずしもアスベスト曝露の現実世界での経験に基づくものではないかもしれず、より現実的なアプローチが正当化されると言っている。また、イギリスにおける問題の一部は、アスベストが広くいきわたっていることだと、われわれに話した。われわれの懸念は、いますぐ現実的なものだけを優先するアスベスト規制政策は、長期的に相対的に貧弱な健康基準とより高い費用を許容するリスクがあるということである。
128. われわれはHSEに、アスベスト管理規則の現在のレビューに、欧州におけるよりアスベスト職業曝露限界値をより厳しくする動きについての徹底的な書面評価を含めるよう勧告する。費用と便益を十分に考慮に入れたうえで、それらのイギリスへの適用を慎重に検討すべきである。イギリスにおけるアスベストの遺産の規模が、相対的に貧弱な健康基準を許容する理由とみられないことを確保すべきである。