2021年4月1日施行の特定化学物質障害予防規則・作業環境測定基準等の改正(塩基性酸化マンガン及び溶接ヒュームに係る規制の追加)-厚生労働省の解釈(問答)通達とQ&A

目次

「特定化学物質障害予防規則における第2類物質『溶接ヒューム』に係る関係省令等の解釈等について」(令和3年1月15日付け基安化発0115第1号都道府県労働局労働基準部長宛て厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課長通達)

令和2年4月22日に公布された特定化学物質障害予防規則及び作業環境測定法施行規則の一部を改正する省令(令和2年厚生労働省令第89号)による改正後の特定化学物質障害予防規則(昭和47年労働省令第39号。以下「新特化則」という。)等の内容等については、「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令等の施行について」(令和2年4月22日付け基発0422第4号)及び「金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場に係る溶接ヒュームの濃度の測定の方法等の施行について」(令和2年7月31日付け基発0731第1号)により通知したところであるが、その施行に伴う解釈等は、下記のとおりであるので、了知の上、これらの取扱いについて遺漏なきを期されたい。

1 新特化則第38条の21第2項関係

(1)「溶接ヒューム」にマンガンが含まれていない場合の適用

(問)溶接材料等にマンガンを含まないアーク溶接で発生するヒュームについても、溶接ヒュームの濃度測定を行わなければならないのか。
(答)溶接ヒュームのばく露による有害性については、含有されるマンガンによる神経機能障害に加え、溶接ヒューム自体のばく露による肺がんのリスクが上昇していることが報告され、溶接ヒュームとマンガン及びその化合物の毒性、健康影響等は異なる可能性が高いことから、第2類物質について、改正安衛令において、「マンガン」とは別に「溶接ヒューム」を規定したこと。
溶接材料及び母材の成分の中に、不純物による混入を含め、マンガンが全く含まれていないことを証明することは困難であり、マンガンが含まれていないとされている溶接材料及び母材から生じた溶接ヒューム中にマンガンが測定されることはありえること。また、溶接ヒュームの濃度は、溶接方法や諸条件によって大きく異なるため、実際に測定してみなければ、溶接ヒューム中のマンガンの濃度を把握することは困難であること。このようなことから、溶接ヒュームの濃度測定を行う必要があること。
なお、新特化則の規制対象となる第2類物質は、マンガンの含有の有無にかかわらず「溶接ヒューム」としていること。

(2)「継続」の定義

(問)金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場において、当該作業の頻度が少なければ、溶接ヒュームの濃度測定は不要か。
(答)
新特化則第38条の21第2項の規定に基づく溶接ヒュームの濃度測定は、当該濃度測定の結果を踏まえた作業環境の改善を図るために実施するものであること。このため、同じ場所で繰り返し行われない金属アーク溶接等作業については、溶接ヒュームの濃度測定の結果を作業環境の改善に活かすことが難しいことから、新特化則における義務としていないこと。
一方、金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場については、その頻度が少ない場合であっても、溶接ヒュームの濃度測定の結果を作業環境の改善に活かすことができることから、溶接ヒュームの濃度測定を実施する必要があること。

2 新特化則第38条の21第5項関係

有効な呼吸用保護具の選択

(問)新特化則第38条の21第5項における有効な呼吸用保護具の性能はどのようなものか。
(答)
「防じんマスクの選択、使用等について」(平成17年2月7日付け基発第0207006号。以下「マスク選択通達」という。)に基づき選択するものであること。

3 新特化則第38条の21第6項関係

(1)有効な呼吸用保護具の選択

(問)新特化則第38条の21第6項における有効な呼吸用保護具について、溶接ヒュームの濃度がマンガンに係るばく露の基準値である0.05㎎/m3以下の場合の性能はどのようなものか。
(答)
新特化則第38条の21第6項の厚生労働大臣の定める有効な呼吸用保護具は、金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場に係る溶接ヒュームの濃度の測定の方法等(令和2年厚生労働省告示第286号)において、要求防護係数を上回る指定防護係数のものを選択しなければならないこととしていること。
溶接ヒュームの濃度測定の結果、マンガンの含有濃度が0.05㎎/㎥以下の場合、要求防護係数は1以下となるが、その場合も要求防護係数を上回る指定防護係数を有する呼吸用保護具を選択する必要があること。
ただし、金属アーク溶接作業にあっては、別途粉じん障害防止規則(昭和54年労働省令第18号。以下「粉じん則」という。)第27条第1項の規定に基づく有効な呼吸用保護具を使用させなければならないこと。

(2)新特化則と粉じん則の関係

(問)新特化則第36条の21第6項に基づく有効な呼吸用保護具と粉じん則に基づく防じんマスクは、どちらを選択すべきか。
(答)
新特化則においては、神経機能障害を発症させるマンガンを含んだ溶接ヒュームのばく露を防止するために有効な呼吸用保護具を使用させるものであり、上記(1)のとおり、要求防護係数を上回る指定防護係数を有するものを使用させなければならない。
一方、粉じん則においては、じん肺を発症させる粉じんのばく露を防止するために呼吸用保護具を使用させるものであり、マスク選択通達に基づき、性能がRS2、RS3、DS2、DS3、RL2、RL3、DL2又はDL3の防じんマスクを使用させなければならない。
このように、それぞれ求められる目的や性能が異なるものであるが、いずれかのうち防護性能の高い方の呼吸用保護具を使用させること。
たとえば、新特化則に基づく有効な呼吸用保護具の性能がDS1又はDL1で、マスク選択通達に基づく防じんマスクの性能がRS2、RS3、DS2、DS3、RL2、RL3、DL2又はDL3であった場合、より性能の高い後者を選択し、使用させること。

4 その他

特定化学物質障害予防規則第21条(不浸透性の床)関係

(問)建設現場における鉄格子(すのこ状のもの)の足場板については、不浸透性の材料で造られた床に該当するか。
(答)
特定化学物質障害予防規則第21条では、管理第2類物質については発じんの防止又はその漏えい物の処理の見地から、当該物質を製造し、又は取り扱う作業場の床を不浸透性のものとしなければならないことを求めている。このため、不浸透性の床とする範囲については、当該影響を及ぼすおそれのある区画された作業場をいうものであること。
建設現場における鉄格子(すのこ状のもの)の足場板については、不浸透性の材料で造られた床に該当しないが、この特定化学物質障害予防規則第21条の規定の趣旨を踏まえれば、溶接ヒュームの影響を及ぼす区画が建設現場の屋外作業場であり、繰り返し行われない金属アーク溶接等作業であって、かつ、溶接ヒュームが堆積するおそれのない場合であれば、特定化学物質障害予防規則第21条の規定の趣旨である発じんの防止や漏えい物(堆積粉じん)の処理作業を行う必要のないものであることから、不浸透性の床でなくても差し支えないこと。
なお、作業場内の床面等に堆積した粉じん等の中で溶接ヒュームの含有量が1パーセント以下の場合は、当該作業場の床を不浸透性の材料とする必要はないことに留意すること。

「改正特定化学物質障害予防規則に関するQ&A」(令和3年1月16日厚生労働省ウエブサイト掲載)

(略称一覧)
・ 特定化学物質障害予防規則及び作業環境測定法施行規則の一部を改正する省令(令和2年厚生労働省令第89号)…改正省令
・ 改正省令による改正後の特定化学物質障害予防規則(昭和47年労働省令第39号)…改正特化則
・ 「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令等の施行等について」(令和2年4月22日付け基発0422第4号)…通達
・ 労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令(令和2年政令第148号)による改正後の労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号)…改正安衛令
・ 「令和元年度化学物質による労働者の健康障害防止措置に関する検討会報告書」(令和2年2月10日)…報告書
・ 粉じん障害防止規則(昭和54年労働省令第18号)…粉じん則
・ 金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場に係る溶接ヒュームの濃度の測定の方法等(令和2年厚生労働省告示第286号)…告示
・ 「金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場に係る溶接ヒュームの濃度の測定の方法等の施行について」(令和2年7月31日付け基発0731第1
号)…告示に係る施行通達
・ 改正省令による改正前の特定化学物質障害予防規則…特化則

1 溶接ヒューム・金属アーク溶接等作業に係る定義・適用

問① 溶接ヒュームについて、溶接材料及び母材の成分にマンガンを含んでいない場合は、改正特化則の適用除外と考えて良いか。
答①
 溶接ヒュームのばく露による有害性については、含有されるマンガンによる神経機能障害に加え、溶接ヒューム自体のばく露による肺がんのリスクが上昇していることが報告され、溶接ヒュームとマンガン及びその化合物の毒性、健康影響等は異なる可能性が高いことから、第2類物質について、改正安衛令において、「マンガン」とは別に「溶接ヒューム」を規定しています。
溶接材料及び母材の成分の中には、不純物による混入を含め、マンガンが全く含まれていないことを証明することは困難であり、マンガンが含まれていないとされている溶接材料及び母材から生じた溶接ヒューム中にマンガンが測定されることはありえます。また、溶接ヒュームの濃度は、溶接方法や諸条件によって大きく異なるため、実際に測定してみなければ、溶接ヒューム中のマンガンの濃度を把握することは困難であること。このようなことから、溶接ヒュームの濃度測定を行う必要があります。
なお、新特化則の規制対象となる第2類物質は、マンガンの含有の有無にかかわらず「溶接ヒューム」としています。

問② 金属アーク溶接等作業とは、具体的にどのような作業をいうのか。TIG溶接や炭酸ガスアーク溶接(MIG、MAG等)、プラズマガス溶接は含まれるのか。
答②
 金属アーク溶接等作業は、アークを熱源とする溶接、溶断又はガウジングがすべて含まれ、TIG溶接や炭酸ガスアーク溶接(MIG、MAG等)、プラズマアーク溶接も対象となります。
一方、燃焼ガス、レーザービーム等を熱源とする溶接、溶断又はガウジングは対象ではありません。

問③ 小口径ステンレス配管溶接に使用しているクローズ式自動溶接機での溶接作業においては、発生する溶接ヒュームは目視不能なレベルであるが、屋内で使用する場合は本規制の対象となるのか。通常の被覆アーク溶接は多くの溶接ヒュームが発生するが屋外であれば本規制の対象外とされるのか。
また、溶接ヒューム発生の低いクローズ式自動溶接機を用いるサンプリング測定の結果等により、アーク溶接の中でも溶接機の種類によって適用除外と認定されるような定義又は制度を検討しているのか。
答③
 作業場所が屋内・屋外であるか自動溶接機・被覆アーク溶接であるかを問わず、アーク溶接する作業等を行う場合は「金属アーク溶接等作業」に含まれます。
なお、自動溶接を行う場合、金属アーク溶接等作業には、自動溶接機による溶接中に溶接機のトーチ等に近付く等溶接ヒュームにばく露するおそれのある作業が含まれ、溶接機のトーチ等から離れた操作盤の作業、溶接作業に付帯する材料の搬入・搬出作業、片付け作業等は含まれないことを通達で示しています。

問④ 製鉄業の製鋼工程で塩基性酸化マンガンを含むヒュームが発生する場合がある。管理が必要となるヒュームは、発生源となる溶鋼等に含まれるマンガンが1%以上の場合でよいか。
答④
 製鉄業の製鋼工程で発生する塩基性酸化マンガンを含むヒュームは、発生源となる溶鋼等に含まれるマンガンが1%を超える場合、改正安衛令で規定する第2類物質中「マンガン及びその化合物」として、改正特化則の規定の適用対象になります。なお、改正特化則別表第1第33号で定めているとおり、当該溶鋼等に含まれるマンガン又はその化合物の含有率が重量の1%以下のものは特化則の適用を受けません。

問⑤ 塩基性酸化マンガンを含む固体は、塊の状態の時は改正特化則の規制を受けないが、破砕・粉砕・篩分け等の作業により粉じんの状態で空気中に発生・拡散する時は規制対象になるか。
答⑤
 塩基性酸化マンガンは、通常、溶接ヒューム又は溶解フェロマンガンヒュームの中に含まれるため、塊のような状態であることは想定されません。なお、一般的に、マンガンの蒸気、粉じん等に労働者の身体がばく露されるおそれがある作業は、マンガン及びその化合物を製造し、又は取り扱う作業に含まれます。

2 特定化学物質作業主任者について(改正安衛令第6条第18号関係)

問① 溶接ヒュームが特定化学物質になることにより、新たに特化作業主任者の選任が必要となるが、常時溶接作業を行わないような場合でも特化作業主任者の選任が必要となるのか。
答①
 特定化学物質作業主任者の選任は対象の作業頻度の程度による例外は設けておらず、アーク溶接作業に労働者を従事させる場合は同作業主任者の選任が必要となります。

問② 特定化学物質作業主任者は、金属アーク溶接の作業場所ごとに、作業員の中から有資格者を選任する必要があるのか。どのくらいの範囲か、作業クルーを統括する人が当該作業主任者を持つ必要があるのかなど、目安が判らない。
答②
 特定化学物質作業主任者の職務として、金属アーク溶接等作業の方法を決定し、労働者を指揮することや、呼吸用保護具の使用状況を監視することが必要となります。このため、事業者は、事業場での当該金属アーク溶接等作業の規模を勘案して、その職務が十分に遂行できる者を選任していただく必要があります。

3 改正特化則第38条の21について

(1)第1条関係
定義について

問 「その他の溶接ヒュームを製造し、又は取り扱う作業」とは、具体的にどのような作業を指すのか。
 金属アーク溶接等作業により発生した溶接ヒュームが作業場内の床面等に堆積したものを掃除する場合や、集塵機に溜まった溶接ヒュームを廃棄する等の作業を指します。
なお、溶接ヒュームの含有量が重量の1%以下の製剤その他の物については、当該作業は不要とされています。

屋内作業場の換気について

問 金属アーク溶接等作業を臨時で行う屋内作業場については改正特化則第5条第2項の規定により全体換気装置が必要になるのか。また、全体換気装置やその他必要な措置(プッシュプル型換気装置、局所排気装置等)の性能はどのようなものが求められているか。
 改正省令により、金属アーク溶接等作業を行う屋内作業場については、臨時で行う場合を含め、全体換気装置による換気の実施又はこれと同等以上の措置を講ずること(改正特化則第38条の21第2項(※))、有効な呼吸用保護具を労働者に使用させること(同条第6項)等を新たに義務付けました。
※当該換気の実施等を行う場合、改正特化則第5条の規定の適用除外となります。
金属アーク溶接等作業では、溶接不良を避けるため、風速を制限する必要があることから、報告書において、「全ての事業場において、局所排気装置等の措置のみによってマンガン濃度を0.05㎎/m3(レスピラブル粒子)まで一律に低減させることは困難だと見込まれる。」とされています。そのため、溶接ヒュームに係る換気の措置については、濃度測定を行い、当該測定結果がマンガンとして0.05㎎/m3以上だったとしても、換気装置の風量の増加等の措置を十分に検討し、その結果を踏まえた必要な措置をあらかじめ実施しているときに、さらなる改善措置を求めるものではないことを通達で示しています。このように、全体換気装置等の性能については、特段何らかの性能を求めるものではありません。

(2)第2項関係(告示第1条関係)
定義

問① 通達において、「「金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場」には、建築中の建物内部等で当該建築工事等に付随する金属アーク溶接等作業であって、同じ場所で繰り返し行われないものを行う屋内作業場は含まれないこと」とされているが、この「同じ場所の範囲」の考え方、「繰り返し」の頻度について、屋内の特定の場所で繰り返し行っている場合は、頻度に関係なく、たとえ年に数回であっても、その場所で溶接作業が必ず行われるのであれば、その機会に濃度測定が可能であるから、「金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場」に該当するとして良いか。
一方、手すり等の保全業務は、修繕場所は一定でないので、年間に数回、同じ工場建屋内で溶接しても、同じ場所とはみなさず、「毎回異なる屋内作業場」に該当する(設備工事業に近い。外注すれば設備工事業者が行うこととなる。)と考えられるが、建設機械の修理工場の場合は、特定の場所(溶接場)があれば(一般に部品の溶接修理は一定の場所で行う。)、「金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場」に該当すると考えて良いか。
答①
 貴見のとおりとなります。
お尋ねの「金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場」について通達で示した考え方については、建設現場での建物内部での金属アーク溶接等作業を対象とし、そのような場所では、建設現場の進捗により、例えば1階部分の鉄骨の溶接が終了すれば、その場所での溶接は行わず、次は2階部分での溶接と、同じ場所では繰り返し行わないような作業を想定しており、このような現場では溶接ヒュームの濃度測定等は不要としています。
したがって、屋内において特定の場所で繰り返し行っている場合、頻度に関係なく、たとえ年に数回であっても、その場所で溶接作業が行われるのであれば、その機会に濃度測定が可能であることから、「金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場」に該当します。一方、組立工場で行われている保全業務は、建設工事と同様に機械設備の修繕場所は一定でないとのことならば、年間に数回、同じ工場建屋内で溶接しても、同じ場所とはみなさず、「毎回異なる屋内作業場」に該当すると考えます。

問② 金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場において、新たな金属アーク溶接等作業の方法を採用しようとするとき、又は当該作業の方法を変更しようとするときは、あらかじめ、空気中の溶接ヒュームの濃度を測定しなければならないが、測定時期は採用(変更)前か採用(変更)後か。条文の内容の性格からすれば、新規作業方法採用後、直ちに測定する(本格的な作業開始する前にあらかじめ)と思料される。
答②
 貴見のとおり、新たな金属アーク溶接等作業を採用し又は作業方法を変更した際、その作業を本格的に開始する前を「あらかじめ」と定義しています。

問③ 改正特化則第38条の21第2項に違反した場合、作業環境測定であれば、明確に罰則の適用があるが、本条項は作業環境測定ではない。このため、同条の罰則の適用はあるか。
答③
 改正特化則第38条の21第2項に違反したときは、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第22条(第1号)の違反となり、同法第109条第1号に該当するため、罰則の適用があります。
なお、第6条の3(粉じん作業を行う坑内作業場における粉じん濃度の測定)についても、作業環境測定ではありませんが同法第22条の違反となり、罰則の適用があります。

測定対象物質について(告示第2条関係)

問① 溶接ヒュームのうち何の濃度を測るのか。例えば、溶接後の溶接個所を研磨する際に発生する粉じん、サブマージアーク溶接作業におけるサブマージアーク溶接用フラックスを取り扱う際に発生する粉じん等は評価の対象に含める必要があるのか。
答①
 溶接ヒューム中のマンガンの濃度を測定します。
サブマージアーク溶接用フラックスを取り扱う際に発生する粉じんは、溶接ヒュームには含まれません。ただし、金属アーク溶接等作業の準備作業としてフラックス取扱作業を行う場合には、当該作業の時間も、一連の金属アーク溶接等作業の一部として空気中の溶接ヒュームの濃度の測定時間に含まれます。

問② 溶接ヒュームの中にマンガンだけでなく、コバルトやカドミウムなど、特定化学物質が含まれている場合は、どのように取り扱えばよいか。
答②
 溶接ヒュームの評価は、マンガンの濃度で0.05㎎/m3とされています。他の物質が含まれていても、マンガンの濃度で判断し、有効な呼吸用保護具の選択を選択していただくことになります。

溶接ヒュームに関する作業環境測定について(総論)

問① 金属加工業でマンガン含有金属を溶接、切断する場合、作業環境測定が必要になると解すれば良いか。
答①
 塩基性酸化マンガンを含めたマンガン及びその化合物を取り扱う作業については、改正特化則第36条に係る作業環境測定を行うことが必要になります。
なお、溶接ヒュームを製造し、又は取り扱う作業場については、塩基性酸化マンガンを含むか否かにかかわらず、改正安衛令第21条第7号により作業環境測定を行うべき事業場から除外されていますが、金属アーク溶接等作業を継続して行う場合は、改正特化則第38条の21による特別規制の対象となり、同条第2項等に規定する濃度測定等を実施する必要がありますのでご留意ください。

問② 溶接ヒュームの作業環境測定については、どこで規定されていたものか。
答②
 金属アーク溶接等作業については、粉じん則による特定粉じん作業に該当しないため、従来より作業環境測定の義務は課されていません。改正特化則により、作業環境測定ではなく、個人サンプリング法による溶接ヒュームの濃度の測定が義務付けられることになります。

問③ 現時点で金属アーク溶接等作業を行っている屋内作業場について、金属アーク溶接等作業の方法に変更がなく、当該作業の方法に変更がなければ、空気中の溶接ヒュームの濃度の測定はしなくてよいか。
答③
 改正省令附則第2条により、令和3年4月1日から令和4年3月31日までの間に金属アーク溶接等作業を継続的に行う屋内作業場については、告示に基づき、金属アーク溶接等作業に従事する労働者の身体に装着する試料採取機器等を用いて行う測定により、当該金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場について、空気中の溶接ヒュームの濃度を測定しなければならないこととされています。

問④ 個人サンプリング法による測定は、日本作業環境測定協会の実施する個人サンプリングの講習会を受けた人しか実施できないか。
答④
 溶接ヒュームの濃度の測定を実施する者については、特段定めていませんが、適切な測定を確保する観点から、日本作業環境測定協会の実施する個人サンプリング講習を修了した者も含め、第一種作業環境測定士、作業環境測定機関等、当該測定について十分な知識及び経験を有する者により実施されるようお願いします。

試料採取機器の採取口の位置について(告示第1条第1号関係)

問 溶接ヒュームの測定は、個人サンプラーにより溶接面体の内側でのサンプリングとなっています。しかし、溶接面体は四六時中作業者の顔前にある物でなく、溶接前準備や後処理(研磨やバリ取り)時は面体は使用していませんが、サンプラーのポンプは連続吸引となるので、溶接面体内側でのサンプリングの意味が分かりません。
 金属アーク溶接等作業時、溶接面体の外側の溶接ヒュームの濃度は、内側と比較して大幅に高いため、労働者の呼吸する空気中の濃度を適切に測定するためには、採取口の位置が溶接面体の内側となるように採取口を装着する必要があるという趣旨です。

均等ばく露作業について(告示第1条第2号関係)

問① 均等ばく露作業には何が含まれているのか。
答①
 告示に係る施行通達で示したとおり、「均等ばく露作業」には溶接方法が同一であり、溶接材料、母材及び溶接作業場所の違いが溶接ヒュームの濃度に大きな影響を与えないことが見込まれる作業が含まれています。

問② 溶接ヒュームの濃度測定は、溶接作業場所が複数あった場合、それぞれ測定しなければならないのか。
答②
 溶接ヒュームの濃度測定は、告示により、「金属アーク溶接等作業のうち労働者にばく露される溶接ヒュームの量がほぼ均一であると見込まれる作業」である「均等ばく露作業」ごとに測定する必要があります。この「均等ばく露作業」とは、告示に係る施行通達で示したとおり、「溶接方法が同一であり、溶接材料、母材及び溶接作業場所の違いが溶接ヒュームの濃度に大きな影響を与えないことが見込まれる作業」であるかを個別に判断していただくことになります。
このため、溶接ヒュームの濃度に大きな影響を与えないことが見込まれる作業ならば、1つの均等ばく露作業として、溶接ヒュームの濃度測定を行っていただいて構いません。

測定時間について(告示第1条第3号関係)

問① 金属アーク溶接等作業に従事する全時間は、「溶接作業の準備作業、溶接の合間に行われる研磨作業等、溶接後の片付け等の関連作業は一連の溶接作業として測定の対象とする。なお、組立や塗装作業等、溶接と関係のない作業は、測定時間に含めない。測定値は、測定時間に対する時間加重平均値とする。」との解釈でよいか。
答①
 貴見のとおりとなります。

問② 測定精度の観点から、個人サンプリングの分粒装置を用いた測定では流量が低く、1時間以上吸引しないと定量下限が管理濃度の1/10を下回ることができない。1時間未満の作業のような場合は測定の対象外として差し支えないか。
答②
 金属アーク溶接等作業については、その作業時間が短い場合であっても、改正特化則第38条の21第2項又は第4項の規定による空気中の溶接ヒュームの濃度の測定を実施しなければなりません。測定下限値を確保するための測定方法については、作業環境測定士等の専門知識を有する者にご相談下さい。

問③ アークタイムの長い溶接作業で、当該方法でマンガン測定を行ったところ、以下の課題があった。
粉じんの目詰まりが2時間ほどで起き、1日測定するとなると、何度もホルダーを交換する必要があり、大変手間がかかる。
また、襟元付近のマンガン濃度は、溶接ワイヤーのSDSの含有率よりも、大幅に気中マンガン濃度は高く、1立方メートル当たり0.05㎎の1.5倍を上回るかどうかが、管理の分かれ道かと考える。
さらに、溶接は一般に工学的対策が難しく、マスクの防護係数を出すのが、大きな目的かと思われます。
このことからも、1日のばく露濃度を測らなくても、管理指標としての半日程度の測定で十分であると考えて良いか。

問④ 試料空気の採取時間について、作業に従事する全時間となっているが、既存の作業は特にそうだが、新規作業においても反復する作業についての想定はできること、また、分粒装置の衝突板からのオーバーフローも考えられるため、不必要に長時間となる測定は避けたいことから、作業環境測定基準と同様に、「同一の作業を反復する等労働者にばく露される化学物質の濃度がほぼ均一であることが明らかなときは、二時間を下回らない範囲内において当該試料空気の採取等の時間を短縮することができる」として良いか。
答③④
  金属アーク溶接等作業により発生する溶接ヒュームの濃度は、作業時間中に大きく変化することもあるため、溶接ヒュームへのばく露を適切に評価するためには、金属アーク溶接等作業に従事する全時間において測定する必要があります。
なお、溶接ヒュームの濃度の測定については、金属アーク溶接等作業の準備作業、作業間に行われる研磨作業、作業後の後片付け等の関連作業の時間が一連の作業時間として含まれますが、金属アーク溶接等作業と関連しない形で行われる組立や塗装作業等の時間は含まれません。

問⑤ マンガンを含有する溶接ヒュームについて、溶接工程後の溶接箇所を研磨する作業等は、ヒュームが発生せず、マンガンを含有する粉じんが飛散すると考えられるが、この工程についてはマンガンとしての規制の対象となるのか。あるいは溶接工程の一環として、溶接ヒュームとしての規制の対象となるのか。
答⑤
 金属アーク溶接等作業に係る準備作業、溶接の合間に行われる研磨作業、溶接後の片付け等の一連の関連作業については、金属アーク溶接等作業としての測定時間に含まれます。

問⑥ 1日8時間の労働時間の間、朝に10分間、夕方に10分間程度の定常作業が行われる場合は、測定時間は連続した8時間と考えるべきか。あるいは朝の10分間で測定を中断し、夕方の作業開始で測定を再開して追加の10分間とするべきか。
答⑥
 金属アーク溶接等作業が同一の日に断続的に行われるときは、作業時間に合わせ、空気中の溶接ヒュームの濃度の測定も断続的に行います。これにより試料が複数に分かれた場合は、当該試料の測定結果を時間加重平均し、溶接ヒューム中のマンガンの濃度を評価してください。

問⑦ 複数名の金属アーク溶接等作業に従事している作業者において、各作業者の金属アーク溶接等作業時間が、1日に各自10分間しかない場合には、各自10分間の溶接ヒューム濃度測定を行い、複数の値を得て、評価することでよろしいか。
答⑦
 測定対象は「労働者が金属アーク溶接等作業を行う全時間」です。一方、告示に係る施行通達で示したとおり、「金属アーク溶接等作業と関連しない形で行われる組立や塗装作業等の時間は含まれない」ため、測定日における金属アーク溶接等作業を行う時間が10分間である場合は、ご指摘のとおりとなります。なお、全時間には、アーク溶接等作業の準備作業、作業の間に行われる研磨作業、作業後の後片付け等の関連作業の時間が一連の作業時間として含まれますのでご留意願います。

測定機器について(告示第1条第4号)

問① 個人サンプラー計測機器については、計測機器による精度差が感じられるが、計測機器についての指定若しくは推奨について行う考えはないのか。
答①
 ばく露実態調査において、市販されている測定機器により、適切に溶接ヒューム中のマンガンの濃度を測定できることが確認されています。測定機器の選定等については、作業環境測定士等の専門知識を有する者にご相談下さい。

問② 既存の作業について、同様の工程を複数測定する必要があります。効率的に測定を実施していく上で、レスピラブル粒子のマンガン質量に換算するための併行測定を行った上での簡易測定も認められないか。
答②
 溶接ヒュームの濃度測定は、告示において、分粒装置を用いるろ過捕集方式又はこれと同等以上の性能を有する試料採取方法としています。「これと同等以上の性能を有する試料採取方法」については、告示に係る施行通達で示しておらず、またマンガンの試料採取方法を規定している作業環境測定基準(昭和51年労働省告示第46号)第10条及び同告示別表第1においても、測定精度の確保の観点から、相対濃度測定方法による特定化学物質の濃度の測定を認めていません。

分粒装置について(告示第1条第4号関係)

問 粉じん濃度の高い場所で個人サンプリングを実施する場合、測定中に分粒装置のグリスの塗り替え等の手入れを頻繁に行う必要があるように思う。その場合、作業負荷が高くなることで、長時間サンプリングすることが難しい等の問題が生じるように思いますが、何か対策案や代替案はあるか。
 ばく露実態調査において、市販されている分粒装置(サイクロン式等)により、適切に溶接ヒューム中のマンガンの濃度を測定できることが確認されています。分粒装置の選定等については、作業環境測定士等の専門知識を有する者にご相談下さい。

(3)第6項関係
測定結果に応じた呼吸用保護具の選択・使用について(告示第2条関係)

問① 測定結果に応じた呼吸用保護具を使用させる労働者は、誰が対象になるのか。
答①
 測定結果に応じた呼吸用保護具を使用させる労働者は、「金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場において、金属アーク溶接等作業を行う労働者」となります。

問② 漏れ率低減のためにマスクのフィット性向上を目指したマスク構造の改良等を製造メーカーと行ってきた。このような努力の結果を反映できるよう、指定防護係数を一律だけでなく、実測フィットファクタの結果に基づいた呼吸用保護具の選択について、認められないか。
答②
 指定防護係数については、告示別表第4により、同表の上欄に掲げる呼吸用保護具を使用した作業における当該呼吸用保護具の外側及び内側の溶接ヒュームの濃度の測定又はそれと同等の測定の結果により得られた当該呼吸用保護具に係る防護係数が、同表の下欄に掲げる指定防護係数を上回ることを当該呼吸用保護具の製造者が明らかにする書面が当該呼吸用保護具に添付されている場合は、同表の上欄に掲げる呼吸用保護具の種類に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる値とすることができます。

(4)第7項関係
呼吸用保護具の装着の確認(以下「フィットテスト」という。)について(告示第3条関係)

問① フィットテストによる確認は、誰がやってもよいか。
答①
 労働安全衛生法令上、フィットテスト実施者の制限はありませんが、フィットファクタの精度等を確保するため、十分な知識及び経験を有する者が望ましく、例えば、保護具着用管理責任者が考えられます。

問② フィットテストの内容や体制、フィットテスト実施者向けの教育についてどのように考えているのか。
答②
 フィットテストが円滑に実施できるよう、マニュアルの整備、実施者の人材育成、計測機器メーカー等への協力要請を行ってまいります。

問③ 使い捨て式防じんマスク個体はおおむね毎日使い捨てとなるが、フィットテストに関しては、新たな個体を使用開始する度にテストする必要はなく、1年以内ごとに1回定期に、その時使用している使い捨て式マスクについて実施すれば良いと解してよろしいか。
答③
 貴見のとおりとなります。使い捨て式防じんマスクに限らず、改正特化則第38条の21第6項により選択した全て呼吸用保護具について、1年以内ごとに1回、定期に、フィットテストを実施しなければなりません。

問④ 面体を有する呼吸用保護具のフィットテストは機器を使って測定するのか。測定方法を教えてほしい。
答④
 フィットテストについては、告示に係る施行通達で示したとおり、改訂予定のJIST8150に定める「定量的フィットテスト」による方法によります。また、同等の方法として、「定性的フィットテスト」(半面形面体を有する呼吸用保護具に対して行うものに限る。)のうち定量的な評価ができるものも対象となります。

(5)第9項関係
清掃について

問 溶接作業を行わない日についても、毎日掃除は必要か。
 改正特化則第38条の21第9項の規定に基づき、金属アーク溶接等作業に労働者を従事させるときは、毎日掃除が必要となることとしています。アーク溶接等作業に労働者に従事させないときは掃除を行う必要がありません。

(6)第39条関係
特殊健康診断について

問① 今後金属アーク溶接作業者には、じん肺健康診断だけでなく、特殊健康診断の義務も課されるのか。
答①
 金属アーク溶接等作業に常時従事する労働者に対しては、作業場所が屋内・屋外であるかにかかわらず、じん肺健康診断に加え、改正特化則に基づき、医師による特殊健康診断を行うことが義務付けられます。

問② 金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場とあるが、「継続」とはどのような頻度を指すのか。特殊健康診断に関する「常時」とは異なる頻度を指すのか。
答②
 金属アーク溶接等作業については、従来、じん肺法(昭和35年法律第30号)に基づくじん肺健康診断が義務付けられていますが、同法の解釈では、「常時粉じん作業に従事する」とは、「労働者が業務の常態として粉じん作業に従事することをいうが、必ずしも労働日の全部について粉じん作業に従事することを要件とするものではない」と示しています。このじん肺健康診断と同様、特化則に基づく健康診断に係る対象者についても、作業頻度のみならず、個々の作業内容や取扱量等を踏まえて個別に判断する必要があります。
また、「継続」の頻度について、通達において「建築中の建物内部等で金属アーク溶接等作業を同じ場所で繰り返し行わないものは含まれません。」としています。これは建設現場での建物内部での金属アーク溶接等作業を対象とし、そのような場所では、建設現場の進捗により、例えば1階部分の鉄骨の溶接が終了すれば、次は2階部分での溶接を行うといった、同じ場所では繰り返し行わないような作業を想定しています。特殊健康診断における労働者の業務の状態を示す「常時」とは異なります。

問③ 屋内作業場だけではなく屋外作業場で行われることもあるアーク溶接について、屋外作業場での作業でも特殊健康診断が必要か。
答③
 改正特化則において、作業場所が屋内・屋外であるかにかかわらず、溶接ヒューム(これをその重量の1%を超えて含有する製剤その他の物を含む。)を製造し、又は取り扱う作業に常時従事する労働者に対して医師による特殊健康診断を行うことを義務付けます。

(7)その他各種規定の適用について

問 報告書の第3の5の4「特定化学物質としての作業管理等」に特化則第38条の3に基づく掲示の義務について記載がないが、必要なのか。
答 特化則第38条の3において、特別管理物質を製造し、取り扱う作業場において掲示の義務がありますが、改正省令でこの特別管理物質に、溶接ヒュームを追加していないため、同条の規定に基づく掲示の義務はありません。

(8)経過措置について

問 溶接ヒュームの濃度を測定する時期が令和3年4月1日から令和4年3月31日までの間でなければ法定要件を具備しないものか、それ以前に同項目を行った測定があれば事業者は期間中の測定を行ったことになり法定要件を具備するものか。
 改正省令附則第2条は、施行日(令和3年4月1日)から令和4年3月31日までについての措置を規定しており、施行日前(令和3年3月31日まで)については、規定していません。これは、単に、同条が施行日後の措置を規定しているだけであって、施行日前に改正省令附則第2条で読み替えた第38条の21第2項の測定(※)の実施は可能です。
※改正特化則第38条の21第2項の測定に該当する測定であるかどうかについては、改正省令の施行日(令和3年4月1日)に確定することとなります。

(解説)「溶接ヒューム」及び「塩基性酸化マンガン」を特定化学物質障害予防規則(特化則)の第2類特定化学物質に指定する新たな規制導入と経緯について~2021年4月1日より施行~