議員らが全国的な熱中症労働者保護を推進/KQED, USA, 2023.7.28

カリフォルニア州選出のアレックス・パディラ上院議員は水曜日、全米の灼熱のなかで働く労働者を保護するための新たな規則を早急に制定する法案を発表した。
米国労働安全衛生庁[OSHA]によれば、暑さは、米国における天候関連の死因の第一位であり、その危険性は近年、とくに農業や建設業などで高まっている。
しかし、連邦機関が2年近く前に取りかかった国内初の暑熱専門の職場基準は、少なくともあと数年は完成しない見込みだ。
そのような規則がないなかで、アスンシオン・バルディビア法-2004年にカリフォルニア州セントラルバレーで熱中症により死亡した農業労働者にちなんで命名-は、使用者に冷たい飲料水の提供や有給休憩の提供を義務づけるなど、法成立後1年以内にOSHAが保護措置を講じることを求めるものである。
「政権は労働者を保護する権限をただちに行使すべきだ」と同じ民主党のシェロッド・ブラウン(民主党、オハイオ州選出)、キャサリン・コルテス・マスト(民主党、ネバダ州選出)と共同で法案を提出したパディラは、KQEDにこう語った。「この1週間の酷暑を経験した人なら、この問題の緊急性を知っているはずだ」。
この法案では、OSHAは最終的な規制を策定するまでの間、暫定的な熱中症予防規制の施行を開始することができる。
2021年にパディラが共同提出した同様の法案は、OSHAに暫定基準を発表するまでに2年強の猶予を与えるものだったが、前議会では前進しなかった。しかし、パディラ上院議員は、今年はこの法案に共和党の支持を集めたいと語った。
「どの州でも起きていることであり、このような酷暑にさらされる労働者は政治的なスペクトルを超えている。だから、党派政治がここで問題にされるべきではない」とパディラは言う。「われわれは、全米の多くの重要な労働者の基本的な健康と安全について話しているのである」。
米国労働統計局によれば、2011年から2021年の間に、全米で430人以上の労働者が仕事中の環境熱曝露が原因で死亡し、約34,000人が負傷している。また、カリフォルニア州では2005年以降、州規制当局が54人の暑さによる死亡を確認している。
しかし、労働衛生の専門家によれば、これらの数字は、誤診や過少報告が一般的であるため、かなりの過少数である可能性が高いとのことである。
非営利団体「パブリック・シチズン」は最近の報告書で、米国では毎年2,000人の労働者が死亡し、17万人が負傷していると推定している。
すでにいくつかの州では、特定の雇用主に対し、労働者の熱ストレスを防止するための措置を講じることを義務づけているが、その規制内容は様々である。オレゴン州の保護は屋内と屋外の両方の労働者を対象としているが、カリフォルニア州の規則は屋外の環境にしか適用されない。
連邦政府機関に相当する州のCal/OSHAは現在、カリフォルニア州の暑熱基準を屋内作業所にも拡大する作業を進めている。しかし、2019年までに新規則を発行することを法的に義務づけられていた同機関は、その期限を吹き飛ばして5月に規制案に関する最初の公聴会を開催した。パンデミック(世界的大流行)の最中、当局はCOVIDの作業現場での危険への対応に苦慮していたため、この遅れはさらに深刻化した。
今月行われた記者会見で、熱ストレスの危険にさらされる仕事をしている南カリフォルニアの労働者グループは、使用者と州に対し、労働者の安全を守るためにもっと努力するよう要求した。
40歳のコック、フアン・モランは、蒸し暑いグリルエリアから離れて水を飲みに行くことを上司からよく顰蹙を買うという。彼は腰痛だと思いはじめたが、後にその痛みが腎臓にあることに気づいたという。
ロサンゼルスのメキシコ料理レストランで働くモランは、スペイン語でこう語った。「それがわかってからは、仕事の前後に水筒を持参して、常に水分補給をするようにしている」。
全国のすべての使用者はすでに、業務上の既知の危険から労働者を保護するための措置を講じることを義務づけられている。しかし、暑さに特化した規制を設けることで、使用者の責任を明確に示すことができると、より安全な職場を提唱する全米労働安全衛生評議会([全米COSH])のジェシカ・マルティネス共同事務局長は言う。
「気候変動は国全体に影響を及ぼしており…連邦レベルでの保護が必要である」と彼女は言う。
OSHAのダグ・パーカー労働次官補は声明のなかで、同機関は最終規則の制定に向けて熱心に取り組んでいると述べた。その一方で、2021年4月以来、2,500件以上の暑熱関連監督を実施して、執行を強化していると付け加えた。
「熱中症予防は(OSHAの)最優先事項のひとつである。熱中症予防に関する規則の提案に向けて取り組む一方で、使用者と労働者に熱中症の危険性とその予防方法を理解してもらうため、執行遵守努力も強化している」とパーカーは言う。

安全センター情報2023年10月号