論評:異常気温は労働問題/Times Union, USA, 2023.7.31

連邦政府による行動がないなかで、ニューヨーク州は危険な暑さや寒さの期間中の労働者保護を義務づけなければならない。
7月4日は、少なくとも1979年以来、地球上でもっとも暑い日となった。多くのニューヨーカーが記録的な暑さに対処するためにエアコンに逃げ込む一方で、ニューヨークの屋外で働くエッセンシャルワーカーは連邦法によって保護されていない。熱中症が職場におけるハザーズのトップに挙げられているにもかかわらず、OSHA[労働安全衛生庁]が公式な温度基準をもっていないことを知り人々はしばしばショックを受ける。
使用者が労働保護拡大反対の理由として使うことの多い「一般的福祉」要求事項は、具体的で深刻な職業ハザーズに取り組むには、あまりにも曖昧な指針すぎることが証明されている。バイデン政権は、気温上昇に対処するための連邦規制制定プロセスに取り組む意向を表明しているが、このプロセスは長く困難なものであり、率直に言って労働者には待っている余裕はない。
前議会でラトヤ・ジョイナー下院労働委員長と私は、TEMP法案として「温度以上緩和プログラム」を提出した。これは、猛暑と極寒の両方を考慮した全国初の法案である。バッファローからベイリッジまで、気候危機の最前線にいるニューヨーカーは、吹雪や熱波に対処している。TEMPは、使用者が安全で生産性の高い職場を管理するうえで考慮しなければならない職業リスクの中に、温度に関連したストレス傷害を含めるよう設計されている。
他の州ではすでに、極端な気温が労働者に及ぼす影響に取り組んでいるが、必ずしもよい方向に向かうとは限らない。カリフォルニア州とオレゴン州は、猛暑時の休憩、給水、日陰を義務づける州レベルの要求事項を定め、ワシントン州は、極寒期の労働者保護に取り組んでいる。しかし、テキサス州は連邦規則がないことを悪用して、先月アボット州知事が、屋外労働者に給水休憩を義務づける地方規則を撤廃する法案に署名した。その翌月には、ある郡だけで少なくとも11人が死亡し、熱中症に関連した救急外来受診者が急増した。
熱中症は深刻で、死に至ることもある。疾病管理センターによる屋外労働者向けガイダンスによると、身体が過熱すると、体温を自分でコントロールできなくなる。労働者は、錯乱や発作を起こし、昏睡状態に陥ることさえある。労働者本人にとって信じられないほど危険なだけでなく、配送トラックやクレーン、トラクターなどの重機や工業用オーブンを操作している場合は、同僚やすぐ近くにいる人々にとっても危険である。毎年夏には、ニューヨーク市だけで平均350人が熱中症が原因で早期死亡し、その数は過去10年間で着実に増加している。郵便労働者、建設労働者、農作業従事者は、気候危機の影響を受けやすくなっている。
昨年夏にUPSの配達員が配達中に倒れるという恐ろしい動画が話題になったことは記憶に新しい。とくに暑い日には、多くの消費者が配達員のために水を置いていく。これは感動的な連帯行為だが、労働者の健康と安全を考慮する場合には、気候変動の影響が着実に強まっていることを考慮しない使用者がいることを知ると落胆する。チームスターズが新たな暫定協約を批准するかどうか固唾をのんで見守る一方で、ストライキに対応できる大規模な労働組合の力を背景に持たない労働者のために、私たちは何ができるだろうか。
わずかな休憩、簡単な日陰対策、給水の確保でさえ、労働者の熱中症を防ぐ能力に驚くほどの違いをもたらす可能性がある。私たちの法案は、使用者が労働者に暑さ緩和策を公表することを義務づけ、健康か給料かの二者択一を迫られることのないよう、強力な内部告発者保護を盛り込んでいる。
これは、気候危機が労働問題として現われるひとつの具体的な方法である。労働者は機械ではなく、使い捨てでもない。彼らの健康を維持するためのコストは、たんなる間接費ではない。家族に愛され、頼りにされている労働者がシフト終了時に無事に帰宅するために必要なのは、ときには給水休憩だけである。連邦政府の指針がないいまこそ、立法府が行動を起こす時である。

※筆者のジェシカ・ラモスは上院労働委員長

安全センター情報2023年10月号