安全保健の役員を「経営責任者」と見た検察 2023年08月22日 韓国の労災・安全衛生
蔚山地検が、昨年5月に爆発事故で下請け労働者死亡事故が発生したSオイルの代表理事を「重大災害処罰法上の経営責任者」ではないとして不起訴とした。昨年1月の重大災害法施行後、代表取締役は経営責任者ではないと判断した初めての事例だ。労働界は、このような判断が繰り返されれば、重大災害法が無力化しかねないと反発している。
蔚山地検は11日、重大災害法違反の疑いで告発されたフセイン・A・アルカタニ・Sオイル代表理事を不起訴とした。Sオイルはサウジアラビアの国営企業のサウジアラムコ・グループが63%の持分を保有しており、代表取締役を含めた社内取締役5人全員がサウジアラビア国籍だ。
重大災害法上、経営責任者は「事業を代表して事業を総括する権限と責任がある者、またはこれに準じて安全保健に関する業務を担当する者」である。この間、経営界は「これに準じて安全・保健に関する業務を担当する者」を選任すれば、代表理事は免責されるべきだと要求してきた。
蔚山地検は、Sオイルでの重大災害法上の経営責任者は、代表取締役ではなく安全保健担当役員(CSO)だと判断した。先立って雇用労働部も、この事件を検察に渡す時、代表取締役が外国人という点などを考慮して、CSOを経営責任者と見た。
蔚山地検は不起訴決定書で「Sオイルの理事会は、2021年11月『既存の運営総括傘下の安全保健部門を本部に格上げし、CSOに既存の代表理事の権限の内、安全保健に関する総括的かつ最終的な権限を委任』することを議決した」と明らかにした。更に、「代表理事は昨年2月、経営委員会の会議で、産安法による安全保健計画の報告書の内容と安全保健の組織構造が一致するかを確認し、重大災害法に備えるためのITシステムの開発・検討に言及した。」「しかし、このような事情だけで、代表理事がCSOに安全保健に関する具体的な指示・関与をしたとは見難い」と判断した。
民主労総は22日に声明を出し、「今回の決定は、一地方検察庁の決定ではなく、重大災害法違反事件の全体に影響を与え、法の趣旨を無力化する決定」だとした。「重大災害のない世の中作り蔚山運動本部」は、蔚山地検の決定は、代表理事を経営責任者と見て捜査・起訴をしてきた従来の検察の立場にも反すると指摘した。運動本部は「労働部の解説書、最高検察庁の重大災害法罰則解説には、『安全保健担当理事が選任されているという事実だけで、事業を総括する権限と責任のある者(代表理事)の義務が免除されるとは見られない』という内容が含まれている」とした。
重大災害専門家ネットの共同代表であるクォン・ヨングク弁護士は、「重大災害法上の経営責任者の概念を、蔚山地検のように解釈すれば、今後、代表理事は全て処罰できなくなる。安全保健責任が『外注化』されるということだ」と話した。
2023年8月22日 京郷新聞 キム・チファン記者
https://www.khan.co.kr/national/labor/article/202308221712011