「重大災害法で初の起訴」トゥソン産業、違憲提請申請 2022年10月13日 韓国の労災・安全衛生

2020年4月27日、労災死亡対策準備共同キャンペーン団の主催で『2020最悪の殺人企業選定式』の記者会見/イ・ジュンホン記者

労働者が仕事中に死亡したとき、事業主はもちろん、元請けの経営責任者まで処罰するようにした重大災害処罰法が、憲法裁判所の違憲審判台に上がると見られる。この法に違反した疑いで初めて裁判に附されたトゥソン産業が、憲裁が、重大災害法が違憲かどうかを判断するように、法院が提案して欲しいと要請した。労働界は重大災害法を無力化しようとすることだと批判した。

トゥソン産業を弁護するファウ弁護団は13日、昌原地裁に重大災害法に対する違憲提請申請を出したと明らかにした。1月27日の重大災害法施行以後、違憲提請申請が出たのは初めてだ。

エアコン部品を作るトゥソン産業の労働者16人は、洗浄液を使用して、毒性化学物質であるトリクロロメタンによる急性中毒と判定された。重大災害法は、同じ有害要因で急性中毒などの職業性疾病者が、1年以内に3人以上発生すれば重大災害と見て、安全措置をしていない経営責任者を処罰すると定めている。検察は、トゥソン産業の経営責任者が安全保健管理体系を構築せず、有害物質を取り扱いながら局所排気装置の設置など、必要な保健措置を正しく行っていなかったと判断し、6月にトゥソン産業を起訴した。

弁護団は「重大災害法の規定内容が曖昧で、不明確で恣意的な法解釈と執行が可能だ」とし、「罪刑法定主義の明確性原則に反する」と主張した。また、重大災害法が経営責任者に与える刑事責任を過度に重くし、過剰禁止原則と平等の原則にも反するとした。重大災害法が、労働者が死亡した時に1年以上の懲役、傷害を与えた時に7年以下の懲役など、産業安全保健法よりも重い法定刑を規定しているのが問題だということだ。

弁護団のアン・チャンホ弁護士は、「今回の違憲提請申請を通じて、不明確な犯罪構成要件と過重な刑事処罰を規定した重大災害法の違憲性が確認されるべき」で、「関連規定が、より予測可能で、合理的に実行可能な明確な内容で補完されることによって、重大災害を予防できる実効性のある法制に改善される契機になることを願う」と話した。

昌原地裁が申請を受け容れて違憲提請をすれば、直ちに憲裁で違憲の可否を審理することになる。裁判所が申請を棄却すれば、弁護団は別途に憲法訴願を提起することができる。どのような方式であれ、トゥソン産業事件を契機に、重大災害法が違憲かどうかを憲裁が判断することになる。

重大災害法は、労働者の死亡事故が発生した事業場の事業主や現場所長、安全管理者だけを処罰しても問題は解決されないという問題意識によって制定された。重大災害法の施行にも拘わらず、雇用労働部が集計した今年1~8月の労災事故による死亡者は432人に達した。韓国の平均死亡事故万人率は、昨年は0.43で経済協力開発機構加盟国の中で最高水準にある。

民主労総はこの日声明を出し、「裁判所はトゥソン産業の違憲提請申請を直ちに棄却し、経営界と尹錫悦政府は、重大災害法の無力化を止めろ」と要求した。民主労総は、「毎年2400人の労働者が亡くなっているのに、1人の死亡に対して400万ウォンの罰金で、末端の管理者と労働者だけを処罰したのが労働部・検察・裁判所だった」とし、「居直り・厚顔無恥な姿を見せるトゥソン産業、労働者の死を金儲けの手段として、法技術を駆使する法律事務所を糾弾する」とした。

2022年10月13日 京郷新聞 イ・ヘリ記者

https://www.khan.co.kr/national/court-law/article/202210131739001