国連総会が清潔で健康的な環境へのアクセスを普遍的人権と宣言-UN News, 2022.7.28

国連総会は木曜日[2022年7月28日]、賛成161票、棄権8票で、清潔、健康的でかつ持続可能な環境へのアクセスを普遍的な人権と宣言する、歴史的な決議を採択した

昨年人権理事会で採択された同様の文章[2021年12月号参照]に基づくこの決議は、国、国際機関と企業に対して、すべての者に健康的な環境を確保するための努力をスケールアップすることを求めている。

国連事務総長のアントニオ・グテーレスは、この「歴史的」な決定を歓迎し、この画期的な進展は、気候変動、生物多様性の損失と汚染という3つの地球的危機に対して、加盟国が一丸となって闘うことができることを示すものであると述べた。

「この決議は、環境上の不正を減らし、保護の格差をなくし、とくに環境人権擁護者、子ども、若者、女性や先住民など、脆弱な状況にある人々に力を与えるのに役立つだろう」と、彼はその報道官室が発表した声明で述べている。

この決定は、各国が環境と人権に関する彼らの義務と公約の実施を加速させるのにも役立つだろうと付け加えた。

「国際社会はこの権利に普遍的な承認を与え、われわれがそれをすべての者にとって現実のものにすることに近づけた」と、彼は言う。

グテーレスは、しかし、この決議の採択は「はじまりにすぎない」と強調し、新たに認められたこの権利を「すべての者、すべての場所で現実のものとする」よう各国に対して促した。

早急な行動が必要

ミシェル・バチェレ国連人権高等弁務官も声明のなかで、総会の決定を歓迎して、その実施に向けた緊急行動を求める事務総長の呼びかけに同調した。

「今日は歴史的な瞬間であるが、健康的な環境に対するわれわれの権利を確認するだけでは十分ではない。総会決議は非常に明確である。各国は国際公約を履行し、その実現に向けた取り組みを拡大しなければならない。われわれは皆、いま、集団的に環境危機を回避するために協力しなければ、環境危機からはるかに悪い影響を受けることになるだろう」と述べた。

バチェレ氏は、人権義務に基づく環境活動は、経済政策やビジネスモデルに重要なガードレールを提供するものであると説明した。
「それは、たんに裁量的な政策ではなく、行動する法的義務の裏付けを強調するものである。 また、より効果的、合法的かつ持続可能なものである」と付け加えた。

地球全体のための決議

昨年6月にコスタリカ、モルディブ、モロッコ、スロベニア、スイスが提出し、現在100か国以上が共同提出しているこの文書は、健康的な環境に対する権利が既存の国際法に関連していることを指摘し、その促進には多国間環境協定の完全な履行が必要であると断言している。

また、気候変動の影響、天然資源の持続不可能な管理と使用、大気・土地・水の汚染、化学物質と廃棄物の不健全な管理、及び結果としての生物多様性の損失は、この権利の享受を妨げ-環境破壊は、直接的にも間接的にも、すべての人権の有効な享受にマイナスの影響を与えることを認識している。

人権と環境に関する国連特別報告者であるデヴッド・ボイド氏によると、今回の総会での決定は、国際人権法の本質を変えることになるという。
「各国政府は何十年もの間、環境の浄化と気候緊急事態への対処を約束してきたが、健康的な環境に対する権利をもつことで、人々の視点が『物乞い』から政府に行動を要求することに変わる」と、彼は最近国連ニュースに話している。

50年にわたる勝利

1972年にストックホルムで開催された国連環境会議は、独自の歴史的な宣言で幕を閉じ、環境問題を国際的な関心事の中心に据え、経済成長と大気・水・海洋の汚染、そして世界の人々の幸福との関連性について先進国と途上国の対話を開始する契機となった。

当時の国連加盟国は、人々には「尊厳と幸福のある生活を可能にする質の環境」に対する基本的権利があると宣言し、この権利を認め、具体的な行動をとるよう呼びかけた。

昨年10月、モルディブ諸島のような気候変動の最前線にいる国や、1,000以上の市民社会団体が数十年にわたって取り組んできた結果、人権理事会はついにこの権利を認め、国連総会にも同じように認めるよう呼びかけた。
「1972年のストックホルム宣言を足がかりに、この権利は、憲法、国内法や地域協定に統合されてきた。今日の決定は、この権利を本来あるべき場所、すなわち普遍的な承認に格上げするものである」と、国連環境局長のインガー・アンデルセンは今週木曜日に発表した声明の中で説明している。

これらの国連機関が健康的な環境に対する権利を認めたことは、法的拘束力はない-つまり各国には遵守する法的義務はない-ものの、行動のきっかけとなり、一般の人々が政府に責任を負わせる力を与えることが期待されている。

「だから、この権利が認められたことは、われわれが祝うべき勝利である。加盟国と何千もの市民社会団体、先住民族グループ、そして何万人もの若者たちが、この権利のために執拗に提唱したことに感謝する。しかしいま、われわれは、この勝利の上に立ち、この権利を実行に移さなければならない」とアンデルセン氏は付け加えた。

三重の危機への対応

国連事務総長が言及したように、新たに認められた権利は、三重の地球的危機に対応するためにきわめて重要である。

これは、気候変動、汚染と生物多様性の損失という、人類が現在直面している、相互に関連した3つの主な環境脅威に言及しており-いずれも決議文のなかでふれられている。

これらの問題にはそれぞれ原因と影響があり、われわれが地球上で生存可能な未来を手に入れるためには、これらを解決する必要がある。

気候変動の影響は、干ばつの強度と深刻度の増加、水不足、山火事、海面上昇、洪水、極地の氷の融解、壊滅的な嵐、生物多様性の減少など、ますます明白になってきている。

一方で、世界保健機関(WHO)によると、大気汚染は世界最大の疾病と早死の原因であり、毎年700万人以上が汚染が原因で早死にしている。

最後に、動物、植物、生態系を含む-生物学的多様性の減少や消失は、われわれがよく知っているように、食糧供給、清潔な水へのアクセスや生命に影響を及ぼす。

*棄権した国:中国、ロシア連邦、ベラルーシ、カンボジア、イラン、シリア、キルギスタン、エチオピア

https://news.un.org/en/story/2022/07/1123482