米環境保護庁(EPA)はアスベストの継続的な使用を禁止することを提案し、人々をがんのリスクから守る歴史的な一歩を踏み出す
US-EPA. 2022.4.5

ワシントン(2022年4月5日)-今日、合衆国環境保護庁(EPA)は、現在アメリカに輸入されている唯一の既知の種類のアスベストの継続的な使用を禁止する規制案を発表することによって、アスベスト曝露から人々を守るための行動を起こす。この規則案は、2016年に成立した有害物質規制法(TSCA)に基づく、既存化学物質の安全性を評価・対処する新しいプロセスのもとで発行される初めてのリスクマネジメント規則である。

EPA長官のマイケルS.リーガンは、「本日、われわれは、公衆衛生を保護し、最終的に合衆国における危険なアスベストの使用に終止符を打つための重要な一歩を踏み出す」と述べた。「この歴史的な禁止提案は、既知の発がん物質であるクリソタイルアスベストへの曝露からアメリカ人を守るものであり、また、TSCA法を実施して、もっとも弱い立場の人々を守るために大胆で長年の懸案であった行動をとるというわれわれの取り組みにおける大きな進展を示している」。

規則案は、アスベスト隔膜、シートガスケット、ブレーキブロック、中古自動車ブレーキ/ライニング、その他の自動車摩擦製品や、同じく合衆国に輸入されているその他のガスケットなどの製品に含まれている、現在合衆国に輸入されている唯一の既知の種類のアスベストであるクリソタイルアスベストを禁止する。

この提案は、アスベストやその他の既存化学物質による人の健康へのリスクに対処する、TSCAのもとでのEPAの権限を大幅に弱めた、EPAによる1989年のアスベスト禁止を覆した1991年の裁判所の決定を是正するだろう。TSCAの2016年改正により、同法は、より明確な要件と、化学物質を包括的に優先順位付け及び評価して、あらゆる不合理なリスクに対して強力かつタイムリーな保護を導入することを義務づけられたことによって、抜本的に変革された。

EPAはまた、業界基準や労働安全衛生庁の要求事項、アスベスト有害大気汚染物質国家排出基準(NESHAP)に沿った、対象を絞った廃棄・記録管理要件も提案している。提案された廃棄・記録管理要件は、最終規則の発効日から180日後に発効する予定である。

合衆国におけるアスベストの使用は数十年にわたり減少しており、その使用は50か国以上で禁止されている。アスベストにはいくつかの種類が知られているが、合衆国内で現在使用のために輸入、加工または流通されていることが知られている唯一のアスベストの種類はクリソタイルである。現在合衆国に輸入されている原料クリソタイルアスベストは、もっぱらクロルアルカリ産業でのみ使用されている。歴史的にクリソタイルアスベストを含有していたほとんどの消費者向け製品は製造中止になっている。2020年12月にEPAは、6つのカテゴリーの製品に関連する使用条件から、人の健康に対する不合理なリスクを見出したとした最終リスク評価を発表していた。

これらの不合理なリスクに対処するために、規則案は、アスベスト隔膜、シートガスケット、油田用ブレーキブロック、中古自動車ブレーキ/ライニング、その他の自動車摩擦製品、及びその他のガスケット-の6つのカテゴリーのクリソタイルアスベスト含有製品の製造(輸入を含む)、加工、商業流通、及び商業利用を禁止する。また、製造、加工、及び商業流通に関する禁止の提案は、クリソタイルアスベストへの消費者の曝露に対処するものでもある。アスベスト隔膜とシートガスケットの商業利用に関する禁止は最終規則の発効日から2年後に発効するよう提案され、また、油田用ブレーキブロック、中古自動車ブレーキ/ライニング、その他の自動車摩擦製品、及びその他のガスケットの商業利用に関する禁止は最終規則の発効日から180日後に発効するよう提案されている。

クロルアルカリ化学物質は、国民生活にとって重要な部門や、クロルアルカリ工程で製造された塩素を使用する飲料水処理など、人の健康を守るのに役立つ事業で使用されている。塩素は水処理によく使用される殺菌剤であるが、塩素と水酸化ナトリウムの生産にアスベスト隔膜をいまもなお使用しているクロルアルカリ工場は、合衆国内で10か所しかない。今年中に1工場が閉鎖される見込みである。アスベスト隔膜を使用している残りの9つのクロルアルカリ工場は、築40年から築123年の範囲で、約17年の間にアスベスト隔膜の使用を増やしたところはない。アスベスト隔膜の使用は減少しており、また、これらの残存工場は、国内のクロルアルカリ生産の約3分の1を占めているにすぎない。クロルアルカリ工場向けのアスベスト含有隔膜の代替品は存在しており、代替品、とくにメンブレンセルの使用は、国内のクロルアルカリ生産のほぼ半分を占めている。

クリソタイルアスベスト曝露の人の健康への重大な影響に対処することに加えて、本日の提案は、実行されれば、クロルアルカリ製造はもっともエネルギー集約的な産業活動のひとつであることから、電気発生に伴う大気汚染の低減による健康効果も期待される。クロルアルカリ施設やその他の化学製品製造者周辺の地域社会における環境正義上の懸念に対しても、そうした施設を支えるために必要な電気発生による煤煙やその他の大気汚染レベルの低減による利益があるだろう。

以上とは別に、EPAは、アスベストについての補足的リスク評価のなかで、遺産使用[既存アスベスト]と関連する廃棄、クリソタイル以外のアスベスト繊維の種類、及びタルク・タルク含有製品におけるアスベストの使用状況についても評価しているところである。EPAは、2021年12月にアスベストリスク評価第2部の対象範囲案を公表しており、2024年12月1日までに最終リスク評価を公表する予定である。

EPAは、クリソタイルアスベストの規則案について、連邦官報に掲載後60日間、パブリックコメントを受け付ける。

https://www.epa.gov/newsreleases/epa-proposes-ban-ongoing-uses-asbestos-taking-historic-step-protect-people-cancer-risk

本ウエブサイト上の「アスベスト禁止をめぐる世界の動き」関連情報