『猛暑死亡』今年既に6人・・・・作業中止権の法制化『急げ』 2021年7月20日 韓国の労災・安全衛生

資料写真/労働と世界

猛暑による死亡者がますます増える中で、猛暑時に労働現場を止めることができる『作業中止権』を法制化すべきだという声が大きくなっている。

行政安全部が20日に発表した資料によれば、今年5月20日~7月18日までに発生した熱射病患者は436人で、この内6人が死亡した。これは前年同期の339人(死亡者は0)より1.3倍も多い数だ。最近10年間の暑さによる熱射病患者は1万5372人で、この内143人が亡くなった。

2016年、2018年、2019年の資料を見ると、熱射病は主に室外で多く、野外の作業場が29.1%、農地13.0%、路上12.1%の順に発生した。

猛暑日は気候危機と地球温暖化によって増えると予測され、具体的な猛暑対策が作られなければならないという声が高まっている。1973年から観測された全国平均猛暑日を見ると、2018年には31.5日(熱帯夜17.7日)で最も多く、1994年が31.1日(熱帯夜17.7日)、2016年が22.4日(熱帯夜10.8日)と続いた。

増える猛暑による産災の心配が大きくなるが、未だに産業災害が発生する危険があれば直ちに作業を中止する『作業中止権』は法制化されていない。

現行の産業安全法第52条(勤労者の作業中止)は、『労働者が、産業災害が発生する緊急で切迫した危険がある場合は、作業を中止して待避できる』となっているだけだ。猛暑に対する定義が具体的でなく、中止による責任の主体が明確でないため、実効性がないと指摘される。

昨年、国家人権委員会が労働部に、△公共部門の建設現場で、猛暑による労働者の作業中止が可能なようにすること、△作業中止時間を勤務中の休憩時間と見て、労働時間と認定する方案を作ること、△それにともなう賃金保全方案を作ること、などを勧告した。これに対して労働部は、人権委の勧告を一部受け容れながら、強制力のある作業中止権は実行していない。

労働部は、猛暑時の安全施設が不備だったり、不安定な状況が発生して作業が行えないと判断される場合、労働者が作業を拒否できる『作業拒否権』を行使すれば良いと主張する。しかし、まず猛暑についての基準が曖昧で、特に建設の現場作業は色々な工程が連結されているため、個々の労働者が作業を中止できないと主張される。また、作業拒否には懲戒と損害賠償が付いていて、実質的に使えないということだ。

民主労総のチェ・ミョンソン労働安全保健室長は、政府が出す熱射病患者の統計が実際よりも過小集計されているという点も指摘した。

チェ室長は、「例えば建設現場で、猛暑で労働者がめまいを訴えて墜落する事故が発生すれば、これは熱射病ではなく単純な墜落として集計される。」「配達労働者、宅配労働者など特殊雇用労働者の場合、猛暑でも仕事をしなければならない状況なのに、産災保険の適用対象が狭く、集計が難しい」と話した。

また「全国すべての事業場に労働者の休憩空間の設置を義務化する産業安全保健法の改正案が国会本会議の通過を目前にしているが、猛暑保護措置としての休憩施設の設置を施行令に委任している状態で、具体的で根本的な中身が必要だ」と付け加えた。

2021年7月20日 労働と世界 チョ・ヨンジュ記者

http://worknworld.kctu.org/news/articleView.html?idxno=403741