COVID-19と安全衛生・労災補償⑪/ついに請求1万、認定5千件突破/精神障害、ワクチン接種等で動き-第四波のなかの新型コロナ感染症労災(2021年5月4日)

労災保険

厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症に係る労災請求件数等の状況について、前号で紹介した3月26日現在の3月31日公表以降、4月2日、4月9日、4月16日、4月23日現在の4月28日公表と、1週間ごとの情報更新を継続している。昨年4月30日現在の公表以来、145回の情報公表となる(図1参照)。

請求件数は、2019年度-昨年3月の請求1件からはじまり(表1)、昨年7月13日に500件を突破した後、9月2日に1,000件、11月12日に2,000件、今年1月15日に3,000件、2月5日に4,000件、2月19日に5,000件、3月12日に6,000件、3月19日に7,000件、3月26日に8,000件、4月16日に8,000件突破と増加し続け、4月23日現在10,218件と、ついに1万件を突破した。表1でわかるように、今年1月は1,070件、2月1,873件、3月2,768件、4月は23日までで1,783件という急増ぶりである。

前号で紹介した3月26日現在の8,173件と比較すると25.0%の大幅増加である。業種別では、医療従事者等が6,316件から7,991件へと26.5%の増加、医療従事者等以外が1,848件から2,214件へと19.8%の増加となっている。

認定(支給決定)件数は、5月14日に最初の2件が現われ、8月31日に500件を突破、11月12日に1,000件、2月5日に2,000件、3月12日に3,000件、3月12日に4,000件、4月23日に5,000件を突破して、5,340件となった。3月26日の4,038件と比較すると32.2%増加した。3月は1,846件、4月は23日までで846件の認定である。業種別では、3月26日と比較して4月23日までで、医療従事者等が3,139件から4,234件へと34.9%の増加、医療従事者等以外が887件から1,094件へと23.3%の増加である。

請求件数に対する支給決定件数として計算した「認定率」は、2021年に入ってから請求件数の急増に処理が追いつかずに減少も見えたが、4月23日現在で、全体で52.3%、医療従事者等が53.0%、医療従事者等以外が49.4%という状況である。

不支給決定件数は、昨年10月20日現在で初めて現われ11件だったが、昨年末(12月28日現在で33件)時点では、すべてが新型コロナウイルス感染症ではなかった事例と確認されている。4月23日現在の不支給決定件数は204件で、医療従事者等の154件は新型コロナウイルス感染症ではなかった事例と考えられるが、医療従事者等以外の50件に新型コロナウイルス感染症であるのに業務上と認められなかったものが含まれるかどうかは不詳である。(支給+不支給)決定件数に対する不支給決定件数の割合は、全体で3.7%、医療従事者等では3.5%、医療従事者等以外では4.4%となっている。全体で決定件数の96.3%は認定(支給決定)されているということになる。

4月23日現在の業種別の状況を表2に示した。請求件数に対する支給決定件数の割合としての「認定率」が、不動産業・物品賃貸業で32.1%と落ち込んでいるが(ただし不支給決定件数はゼロ)、他はいずれも40%は超えている。

地方公務員災害補償

地方公務員災害補償基金による地方公務員災害補償の状況の公表は、前号で紹介した3月24日現在の3月26日公表の後、5月4月現在まで更新されていない。したがって、図2及び表3は前号と同じ3月24日現在のものである。

労災保険の場合と同様、請求医・認定件数とも増大するなかで、3月24日時点での請求件数に対する認定率は72.1%と、労災保険よりも高い。公務外認定事例はまだ現われていない。

その他

東京都の新型コロナウイルス感染症モニタリング会議の資料に、昨年7月28日以降について1週間ごとの接触歴等判明者(濃厚接触者)における感染経路別割合が含まれ、感染経路は職場、同居、施設、会食、接客を伴なう飲食、その他に区分されている。別の資料から毎日の新規陽性者数と接触歴等判明・不明者数もわかるので、1週間ごとの新規陽性者における感染経路別割合も計算することができる。

昨年7月28日から今年4月26日までの接触歴等判明者/新規陽性者に占める感染経路「職場」である者の割合は10.9/4.6%であった。

1週間ごとの状況を図3に示した。この情報の信頼性については、新規陽性者数が1日300人を超えるとうまく機能しない等とも言われ、また、今年1月22日~2月25日の間は「積極的疫学調査」が放棄された。この期間前後の感染経路「職場」の割合は減っているように思われる。

感染経路が「施設」「接待を伴う飲食」の者や接触歴等不明も含めて、業務上の疾病として労災認定される事例があり得ることにも留意したい。

新型コロナウイルス感染症発症後に診断された精神障害の労災認定が2020年度に2事例(2021年4月9日 衆議院厚生労働委員会)
医療労働者等の新型コロナワクチン接種による健康障害、針刺し事故によるコロナ発症も労働災害・公務災害-厚生労働省・地方公務員災害補償基金(2021年4月27日)

安全センター情報2021年6月号

[関連情報の御案内]コロナ労災:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の労災補償について