重大災害の遅い捜査、起訴までに平均一年半かかる/韓国の労災・安全衛生2025年10月14日

工場火災で労働者23人が死亡したリチウム電池製造業者アリセル惨事の108日目の夕方、ソウルのサムソン電子瑞草社屋前で追悼祭が行われた。イ・ジョングン専任記者

2022年1月の重大災害処罰法の施行後に発生した重大災害事件が、検察の起訴に至るまでに平均1年半かかったことが判った。雇用労働部と検察の遅い捜査は、重大災害再発防止の可能性を低くし、遺族たちの被害回復も遅らせると指摘されている。

  14日にハンギョレが、国会・気候エネルギー環境労働委員会のイ・ヨンウ「共に民主党」議員を通じて確保した、重処法施行から9月末までの重処法違反事件の公訴状138件を分析してみたところ、重大災害の発生から起訴までにかかった期間は、平均561.7日だ。該当期間の起訴事件の全てを分析したのは、今回が初めてだ。

  ただ、事件別の偏差は大きかった。「釜山バンヤンツリーリゾート火災事件」(74日)や「アリセルバッテリー工場火災事件」(92日)など、社会的に耳目が集中した事件は、処理速度が早かった。一方、起訴までに二年を越えた事件は36件、26.1%で、甚だしくは1000日を遙かに超えた事件も6件に達する。一例として、2022年2月21日、双龍C&E東海工場で発生した下請け労働者の墜落事故は、検察の起訴までに1268日がかかった。2022年2月7日に大邱の住商複合新築工事現場でHビームとぶつかって下請け労働者が亡くなった事件も、7月1日に起訴され、事件発生から起訴までに1240日かかった。

  年を重ねる毎に、起訴までにかかる期間は延びる傾向にある。重処法施行初年度の2022年に起訴された事件(11件)は、事故発生から平均235.1日目に起訴されたが、2023年(23件)は426.9日、2024年(41件)は620.8日、今年(63件)は629.5日と、徐々に延びた。2024年1月から、重処法の適用事業場が今までの50人以上の事業場から5人以上の事業場に拡大し、先の事件が処理されない状況で、重大災害が引き続き発生したために、処理速度が更に遅くなると見られる。

  重処法違反の捜査は、特別司法警察である労働部勤労監督官が、検察の指揮を受けて捜査して送致すれば、検察が補完捜査を指示したり、直接捜査して起訴する形態だ。各段階に分けて事件処理期間を見てみると、全体起訴事件(138件)の内、関連情報が公開された129件を基準にして、労働部が検察に送致するまでにかかった平均期間は322.8日、検察が送致された事件を裁判に渡すのにかかった平均期間は245.8日だった。

  捜査遅延の原因が労働部にあるのか、検察にあるのか、一律的に究明することは難しい。ただし、労働部の捜査期間よりも検察で遙かに時間がかかっている事件もある。双龍C&E事件は、労働部が事故発生から261日目に、元請け双龍C&Eと下請け建設業者を、起訴意見で検察送致したが、検察は1007日間捜査をして、下請け業者だけを起訴した。2022年6月17日、坡州の骨材採取場で発生した事故は、労働部が事故発生から31日目に検察に渡したが、検察が起訴するまでは、二年半を超える955日がかかった。

  シン・ハナ「民主社会のための弁護士会」労働委員長は、「捜査が長引くほど、関連者の記憶が歪曲されたり忘れられたりもし、被疑者が証拠をなくしたり、証拠を操作する可能性もある。」「特に、企業に対する遺族の損害賠償請求は、刑事裁判が終わってから本格化されるが、捜査が遅れるほど、遺族は生計のために処罰不願書を作成するなどの合意を選択することになる」と話した。イ・ヨンウ議員も「捜査の遅延は、重大災害処罰法の実効性を大きく弱める。」「検察と労働部の迅速な捜査が必要だ」と指摘した。

2025年10月14日 ハンギョレ新聞 パク・テウ記者

https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/1223349.html