コスト削減、速度戦、未熟練労働者・・・崩壊事故は繰り返される 2023年08月09日 韓国の労災・安全衛生
京畿道安城商店街の工事現場で9日、労働者二人が死亡した崩壊事故を巡り、工事期間と費用を減らすための工法の採用と、熟練労働者の不足が噛み合った惨事だと分析されている。
建設労組は10日、国会で「安城新築工事現場事故関連緊急記者会見」を行い、「無理な速度戦と噛み合ったデッキプレートでの施工が災害の原因だ」と主張した。前日、安城市の新築工事現場で、この工法を採用してコンクリート打設をしていたところ、9階のデッキプレートが崩れ、二人が死亡し、四人が軽傷を負った。死亡したのはベトナム国籍の兄弟で、このうち一人はビザが切れた状態だった。建設労組は、「現在問題になっているデッキプレートの工法もやはり、迅速な施工のために(建設会社が)好んで採用するが、韓国の建設現場の不法多段階下請けと速度戦が相まって、労働者には『恐怖の工法』になっている」と付け加えた。
「デッキプレート」工法は、建物の床にコンクリートを打設する時、普通使う合板の構造物(型枠)ではなく、あらかじめ作られた鉄でできた構造物(デッキプレート)を床に敷き、その上にコンクリートを打つ方式だ。型枠を使った工法に比べ、コンクリートが固まるまでの荷重に耐える銅バリ(仮設支持台)を設置せず、支柱は梁の方にだけ設置すればよい。そのため、早い建設が可能で、資材費用節減の効果がある。ただデッキプレートを柱にしっかり固定しなければならず、重心を上手く合わせなければならないなど、施工の過程で熟練した技術が必要だ。
建設労組は、昨年7月に大田市の住商複合新築マンション建設の現場と、昨年10月に安城で発生した低温物流倉庫新築工事の現場もデッキプレート工法を使い、継ぎ目部分の溶接不良で事故が起きたと主張した。労働安全研究院のハム・ギョンシク院長は「該当の工法は、施工の過程で梁とデッキプレートを連結する段階での不良の発生が高い工法」とし、「施工する建設労働者の技能のレベルが労災事故と不良工事に絶対的な影響を与えることになるが、これを検証する国家的シなステムが全く作動していない」と話した。
特に今回の死亡事故のように、安全が保障されていない建設現場では、移住労働者はより簡単に労災事故に巻き込まれるという指摘も提起されている。建設業での移住労働者の労災死亡万人率は2020年基準で5.97で、全労働者(2.81)の二倍以上高かった。すべての産業において、労働者全体と外国人の労災死亡率の格差が最も大きかった。安城工事現場の事故でも、死亡者二人はベトナム国籍、負傷者四人は中国国籍の労働者だった。
建設労組のチョン・ジェヒ労働安全保健室長は「外国人人材、特に、未登録労働者の場合、制度的な保護なしで低賃金・長時間労働に追い込まれやすい上に、複雑な工法や危険な状況などに対する説明を理解できずに投入されることが多く、簡単に危険に曝される。」「不法雇用に関する政府の緩和策が外国人の未熟練労働者を増やし、更に危険に追い込む要因」と指摘した。政府は6月、不法外国人人材雇用が摘発された時、該当業者に実施していた雇用制限を、該当事業場(工事現場)だけに適用するように規制を緩和した経緯がある。
2023年8月10日 ハンギョレ新聞 チャン・ヒョンウン記者